落語家の階級

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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落語家の階級

 

落語家には階級があります。

階級は「見習い」「前座」「二つ目」「真打ち」という順に昇進していきます。

 

このページでは、弟子入りからどのようの真打ちに昇進していくかを追っていき、階級ごとの役割などをお伝えいたします。

 

昇進の仕方

弟子入りする

 

落語家になるには特別な資格や試験などは必要ありません。

門戸は誰にでも開かれていますが、長い修行の期間があり落語家として精進を続けていく必要があります。

落語家になる道は、真打の落語家に弟子入りするところから始まります。

 

真打とは
寄席の最後の出番に出演できる資格を与えられた落語家。「師匠」という敬称で呼ばれ、弟子をとることが可能となる。三遊亭小遊三、林家木久翁、三遊亭好楽など笑点でお馴染みのメンバーも真打ち昇進を果たしている。

 

憧れている落語家、あるいは「この師匠は優しそうだから」など人によって師匠選びの基準は違いますが、まずは弟子入りしたい師匠を決めます。

(ちなみに上方(関西)の場合は階級制度がありません。そのため、上方ではある程度のベテランの師匠に弟子入りすることになります。)

 

そして、師匠の家を訪ねたり寄席の楽屋口で出待ちをするなどして、師匠に直接志願するのが一般的な弟子入り方法です。

家を訪ねた場合、その師匠の弟子に追い返されてしまうこともありますし、新しい弟子が入ることによって兄弟子は自分の仕事が減るので歓迎してくれる場合もあります。

弟子入り志願も「タイミングが大事」ということですね。

 

人によっては知り合いに紹介してもらう、というパターンもあります。

大学の落研(落語研究会)出身者であれば、すでに落語家として活躍している先輩に頼んで師匠を紹介してもらえることもあります。

 

 

見習い

 

晴れて弟子入りが許されたら落語家としての修行生活が始まります。

まずは「見習い」からスタートします。

入門して数ヶ月~1年くらいの間、師匠の家に通いながら掃除や洗濯などの家事をしたり、師匠のかばん持ちをしたりします。そうしてようやく前座になることができるのです。

 

昔は師匠の家に住み込んで修行をする「内弟子」が主流でしたが、今は住宅事情の違いなどもあって、「通い弟子」がほとんどです。

見習いのうちはまだ舞台に立つことはできません。

 

階級 見習い
舞台に立つ頻度 なし
昇進期間 数ヶ月~1年
やること 師匠の家に通いながら、掃除・洗濯などの家事、師匠のかばん持ちなど。

 

前座

 

落語家には大きく分けて「前座」「二ツ目」「真打」という三段階の階級制度があります。

見習い期間を経て前座になると、寄席の楽屋に入るようになります。楽屋というのは会場内にある演者のための控室のことです。

 

通い弟子は朝早くから師匠の家に行き、掃除や炊事などをこなしてから寄席へ出勤します。

寄席での前座の果たす役割は大きく、やることがたくさんあります。下記に一部記載しますが、数え上げればキリがありません。

 

▼前座がやること

楽屋に出入りする師匠たちの履き物の整理と管理/電話番/先輩たちへのお茶出し/着物をたたんだり着替えを手伝う/寄席では高座(寄席の舞台)進行の手伝い/太鼓などの鳴り物の演奏/高座へ出て行って座ぶとんを返す/メクリ(出身者の名前を書いた紙の札)を返す…

 

前座は毎日、師匠の家と寄席を行き来しながら落語漬けの日々を送り、落語を体に染み込ませるという修行期間なのです。

 

 

入門して数ヶ月すると前座として初高座に上がる(初めて舞台で落語を演じる)ことが多いですが、その判断は師匠次第なので「必ず数ヶ月で初高座に上がれる」というわけではありません。

ちなみに、前座は高座にあがって落語を披露できますがその頻度は人によって違います。また、前座の落語は一般的な寄席で見ることができます。

 

階級 前座
舞台に立つ頻度 たまに~毎日
昇進期間 3~5年
やること ・履き物の整理と管理、電話番、お茶出し、鳴り物の演奏、座ぶとん・メクリを返すなど。

・前座は毎日、師匠の家と寄席を行き来しながら、落語漬けの日々を送り、落語を体に染み込ませるという修行期間。

 

二ツ目

 

二ツ目になると、着物は前座時代の着流しではなく、自前の紋付き袴で高座に上がれるようになります。

 

▼着流し

▼紋付き袴

 

師匠の家や楽屋での雑用からも解放されますが、今度は自分で高座(寄席の舞台)の仕事を探す必要があります。

仲間と一緒に勉強会を開いたりしながら、先輩や寄席の支配人、テレビやラジオのプロデューサーから声をかけてもらえるように研鑽することが二ツ目の修行です。

芸を磨くだけでなく、自分の主催する落語会にお客さんを呼んだり、企業やお店などから仕事をもらう努力も必要です。

 

二ツ目は毎日楽屋へ行く必要がなくなるため、高座に上がる数も減ってしまいます。そのため、しっかりと噺の稽古をしなければライバルとの差は開く一方となります。

二ツ目の在留期間は10年~13年で、業界の事情によっては15年以上かかる場合もあるため、二ツ目の人数は決して少なくはありません。

しかし、ひとつの公演に二ツ目の枠をたくさん取ることはできないので、寄席への出演は狭き門となってしまうのです。

 

この二ツ目時代に怠けてしまって、落語家としてダメになっていく人もいます。

様々な苦労と努力を積み重ねながら芸の修行に励み、高座数をこなしながら己を鍛えていくのが二ツ目時代なのです。

この時期にどれだけ芸を磨きあげ、どんな方向性をつかむかで、真打以降の落語家人生に大きく影響するのです。

 

階級 二ツ目
舞台に立つ頻度 たまに~毎日
昇進期間 10~13年
やること ・自分で仕事を探す。

・仲間と一緒に勉強会を開いたりしながら、先輩や寄席の支配人、テレビやラジオのプロデューサーから声をかけてもらえるように研鑽する。

▼現在二つ目の立川吉笑さんのインタビュー映像

 

真打

 

真打とは、寄席の最後の出番(トリ)に出演できる資格を与えられた落語家です。

落語家の目標のひとつは真打になることですが、「ここからがスタート」と考える人がほとんどです。

現在、落語界には、落語家が所属する団体(協会)が5つありますが、真打への昇進は各団体の理事会で決定します。

 

【筆者コラム】落語家の団体はなぜ5つもある?
落語家の団体には「落語協会」「落語芸術協会」「円楽一門会」「落語立川流」「上方落語協会」の5種類があります。

最初は明治時代に設立された落語協会だけでしたが「金銭問題」「人間関係上のこと」「落語界の改革のため」など、いろいろな理由によって分裂や統合を繰り返して今のような状態になっています。

各団体はそれぞれ独自に興行を打ったり、二ツ目や真打の昇進の決定などを行っています。

 

真打の昇進は大体は芸歴の順番で決まりますが、二ツ目の年数が浅くても抜擢されて真打になる人もいます。

昔と違って大学卒業後に落語界に入門するケースが多くなっているので、四十歳前後に真打になる人も珍しくありません。

 

真打になって初めて「師匠」と呼ばれるようになり弟子を取ることも許されます。

真打になると落語家の晴れ舞台といえる「真打披露興行」(=新たに真打ちに昇進した落語家を披露するための公演)を行います。

「真打は名実ともに一人前の落語家である」と言えるかもしれませんが、実際には師匠として歩き始めたばかりなのです。

ここから先は肩書きが変わることもないので、ひたすら落語家として芸の道を追求していく無限の出世街道になります。

そのまま「名人」と呼ばれる落語家になれればよいのですか、真打に昇進したことで安心、あるいは慢心して、その後はパッとしない落語家が大半、というのが現状のようです。

 

階級 真打
舞台に立つ頻度 一概に言えませんが、売れっ子であればほぼ毎日
昇進期間 肩書きが変わることはない
やること ひたすら落語家として芸の道を追求

 

次のページでは古典落語と新作落語の違いについてお伝えします。古典落語と新作落語の魅力の違いを知れば、落語の楽しみ方が広がるでしょう。

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落語の演目の基礎知識 【古典落語と新作落語の違い】

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落語の演目は「古典落語」「新作落語」に分けられる

 

落語の演目の種類は「古典落語」と「新作落語」に分けることができます。

古典落語と新作落語の違いは何を基準に区別するのかというと、一言でいえば「年代」です。

「古典落語」は江戸中期から明治にかけて作られた演目で、「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のことを指します。

 

 

以下では、古典落語と新作落語の特徴について詳しく解説していきます。

 

古典落語とは

 

古典落語とは「江戸中期から明治にかけて作られた演目」を指します。

 

古典落語は、決まった同じネタを色々な落語家さんが何度も行います。

ネタは、昔の落語家さんから新しい落語家さんへと引き継がれていきます。

長い年月をかけて師匠から弟子に受け継がれていくなかで、それぞれの時代の落語家によって練り上げられ、洗練されていくので、現代人の心にも響く名作が多いのです。

 

【編集部コラム】古典落語の進化
古典落語は先代から受け継がれてきた噺を全く同じに演じるという訳ではありません。ストーリーの大まかな流れは変わらなくても自分なりのアレンジを加え、登場人物の言葉遣いが変わったり、オチが変わったりすることがあります。そうして練り上げられているからこそ、現代人の心に響く名作が多いのです。

 

古典落語の演目の多くは江戸時代が舞台で、江戸庶民の暮らしぶりや江戸の文化、風俗を取り扱っているものが多くあります。

 

 

古典落語の数

 

演目の数ははっきりとはわかりませんが現在寄席で演じられているのは200~300くらいと言われており、やる人がほとんどいないものも全部合わせると、その数は500とも800とも言われています。

古典落語の多くは作者不明で、一部の演目を除いてそのほとんどは誰が作ったのかわかりません。

 

古典落語の種類

 

古典落語をジャンル分けすると、「滑稽噺」と「人情噺」の2種類があります。

 

滑稽噺

 

滑稽噺は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」のことです。

間抜けでドジな与太郎や、口が達者な江戸っ子、ぐうたらな若旦那などが活躍する噺でそのユニークな言動におかしみが滲み出て笑えます。

 

与太郎
落語に登場する架空の人物。楽天的な性格で失敗ばかり。「愚か者」の代名詞となっている。

 

一般的に落語と聞いてイメージするのはこの滑稽噺のほうでしょう。

 

滑稽噺のおすすめの演目は「天狗裁き」「粗忽長屋(そこつながや)」「代書屋(だいしょや)」です。こちらの演目については次の章(第2章)で解説いたします。

 

人情噺

 

人情噺は「ストーリー性を重視し、心温まる人情を描いた落語」のことをいいます。

扱うテーマは、夫婦愛や親子愛、友情がメインです。

オチはあるものとないものがありますが、あったとしても、取ってつけたような地口オチ(じぐちおち:ダジャレ)になっていることが多いです。

人情噺でおすすめの演目は「芝浜」「子別れ」「藪入り(やぶいり)」です。

こちらの演目についても次の章で解説しています。

 

古典落語の魅力

 

はじめに」でもお伝えしましたが「古典」と名前に付いていますが、特別な知識なく楽しめます。

江戸や明治、古典落語の世界に生きる人々の、のんびりとした日常に触れるのは「情報過多でストレスが多い現代人だからこそ価値がある」と考えています。

心が楽しいときでも寂しいときでも、古典落語がそばにあるだけでちょっとラクになれる、そんな不思議な力が古典落語にはあると私は思っています。

 

古典落語の魅力は「はじめに」のページで詳しく解説!

 

新作落語とは

 

「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のこと」を指します。また「創作落語」ともいいます。

落語家自身による創作が多いですが、落語作家が作ったものもあります。次々に作られるので、数を把握することは不可能です。

 

落語作家
落語の脚本を作る人のこと。昭和のラジオやテレビの時代に演芸番組に携わり、台本を提供していた。現在で言う放送作家のような立ち位置。「玉川一郎」「古城一兵」らが活躍した。

 

新作落語はその時代の旬のトピックや時事ネタを取り入れて作られることが多いので、古典に比べて内容がわかりやすく、落語初心者でも爆笑できるという特徴があります。

 

 

新作落語の楽しみ方

 

また、作者である落語家独自の世界観が色濃く反映されるので、バラエティ豊かな噺を楽しむことができます。

基本的に噺の舞台は現代ですが、未来を描いたり、異次元の世界を描いたものなどもたくさんあり、「とにかくおもしろければいい!」といった感じで次々と生み出されています。

現代を描くだけが新作ではなく、稀ではありますが、江戸を舞台にした作品もあり、これを「まげもの新作」と呼びます。

落語家には、古典しかやらない人もいれば、新作専門の人もいますし、古典も新作も両方やるという人もいます。最近では古典と新作のボーダーがあまりなくなり、両方やるという落語家も増えてきています。

 

古典と新作両方やる落語家
柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)さんは、古典と新作どちらも行います。新作落語では独自の世界観で楽しませてくれる爆笑必至です。また、古典落語にも定評があり喬太郎さんならではの解釈や演出を加え「喬太郎の古典」にしてしまうところがあります。喬太郎さんの魅力の解説は第3章にて!(現在第1章)

 

新作落語はどちらかというと、肩の力を抜いて聴ける爆笑ネタが多いですが、落語である以上は、やはりそこには普遍的なテーマやストーリー(夫婦愛、親子愛、友情、生と死、出世劇、逆転劇、転落人生など)があります。

 

時代を選ばないテーマやストーリーであるからこそ、演じられるたびに洗練されていき、将来的にはそれが古典と呼ばれる演目になり、後世までずっと残り続けていく可能性もあります。

新作落語を演じる落語家は、それが古典になることを目指しているというわけではありませんが、そうなる可能性があるという意識で聴いてみるというのも、新作落語の楽しみ方のひとつだと思います。

 

▼筆者おすすめ新作落語、春風亭昇太さんの「力士の春」収録作品

⚫落語 The Very Best 極一席1000 ストレスの海/力士の春(CD)

 

次のページでは「江戸落語」と「上方落語」の違いについてお伝えします。内容は同じでも、江戸落語では「時そば」上方落語では「時うどん」と演目のタイトルが違ったりするのです。

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著者:ミドケン

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落語の歴史

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落語について理解を深めることで、より落語を楽しむことができるようになるでしょう。

このページでは「落語の歴史」について解説してまいります。

 

年表

 

時代 出来事
戦国時代(1467-1591) 御伽衆
元和9年(1623) 『醒睡笑』
元禄期(1688-1704) 寄席の原型「辻噺」
寛政期(1789-1801) 寄席の誕生
文化・文政期(1804-1830) 落語ブーム
天保期(1831-1845) 天保の改革で人気下火
安政期(1854-1860) 水野忠邦失脚、再び人気
江戸時代末期(1853-1869) 「近代落語の祖」が活躍
大正時代初期~中期(1912-1922) SPレコードで人気
大正12年(1923年) 関東大震災で寄席消失
大正14年(1925年) ラジオ開局
昭和16年(1941年) 太平洋戦争、53演目禁止
昭和26年(1951年) 放送法成立、ラジオテレビで落語

 

落語の歴史

始まりは戦国時代

 

戦国時代には、面白い話や芸をして笑わせる「御伽衆(おとぎしゅう)」と呼ばれる人たちがいました。

 

御伽衆は戦国大名に仕えていましたが豊臣秀吉も多くの御伽衆を抱えていました。その中のひとり安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)という僧侶は、秀吉の前でおもしろおかしいオチのついた話を披露して喜ばれていました。

 

豊臣秀吉
1537年-1598年。戦国時代から安土桃山時代の武将。天下統一を果たした。

 

文人、茶人としても知られている策伝は幼少の頃から聞き覚えた約1000話の笑い話を集めた『醒睡笑(せいすいしょう)』という書物を書きました。

収められている話は落語の元となったものも多くあり、こうしたことから策伝は「落語の祖」と呼ばれています。

 

▼「醒睡笑 全訳注」江戸時代の初期に編纂された「醒睡笑」ですが、現代語訳と解説付きで読むことができます。

 

落語家・寄席の起源

 

元禄期(1688年~1704年)になると有料で滑稽話を聞かせる人たちが、江戸や大坂、京という都市に登場します。

彼らはお寺や神社の境内、街頭などの人が集まる場所に席を設けて、料金を取っておもしろおかしい話を披露する「辻噺(つじばなし)」を行っていました。

この辻噺は寄席の原型でありそれを行う人たちが落語家の始まりといわれています。

 

寄席の誕生

 

寛政期(1781年~1801年)になると、寄席が誕生します。

それまでの話をする会といえば、いろいろな場所を借りながら不定期で開催をしていました。寄席の誕生により特定の場所で入場料を取るという現在の寄席のような形態になりました。

 

▼寄席のイメージ

 

本格的な商売となると演者側には客を飽きさせないよう演目に工夫をこらすことが求められるようになります。その結果、より芸が磨かれた落語家が次々と現れ、落語のレベルは上がり寄席も拡大していきました。

 

隆盛と衰退

 

文化・文政期(1804年〜1830年)には、芝居噺や怪談話、音曲噺なども始まり、江戸では落語ブームが起こり、隆盛を極めます。

 

音曲噺
噺の途中に三味線などのの伴奏が入り、演者の唄や演奏者による唄が入り噺が進む落語。「稽古屋」「植木のお化け」などの演目がある。

▼稽古屋を聴く(mp3、ストリーミング)

 

ところが、老中・水野忠邦による「天保の改革」が始まってしまいます。

 

▼水野忠邦(老中=幕府の政治を行う役職)

 

質素倹約(しっそけんやく)を推奨し庶民の娯楽も厳しく制限したこの改革によって、文政(1804~1830)末期には120軒以上あったといわれる寄席が15軒ほどになってしまい、落語人気も下火になっていきます。

 

しかし町人や大名達から激しい反対に遭い忠邦は失脚。落語は再び人気を得て、安政期(1854年〜1860年)には寄席の数も約170軒に達します。

 

落語を変えた三遊亭圓朝

 

幕末になると、「近代落語の祖」といわれる初代三遊亭圓朝が活躍します。

 

▼初代三遊亭圓朝

 

圓朝は三味線や太鼓などを使う歌舞伎を真似た「芝居噺」で人気となりましたが、明治時代になると政府は寄席での演劇などの行為を禁止します。

圓朝は道具を使う噺を弟子に譲り、現在のような「扇子1本を使う喋り」を中心とした「素噺(すばなし)」というスタイルを確立しそれまでの落語の常識を変えてしまいました。

徐々にこの「素噺」が主流となり鳴り物を使った「芝居噺」は廃れてゆくことになります。

 

戦争の影響

 

大正時代はレコードの発達により、SP盤(SPレコード)で人気を得る落語家も現れ始めます。

 

▼SP盤


photo by:MASA CC 表示-継承 3.0

 

しかし大正12年の関東大震災で多くの落語家が犠牲となり、寄席も焼失したため、しばらくは興行が行われていませんでした。

大正14年にラジオ局が開局し、落語の放送が始まるとラジオを聴いて落語に興味を持った人が寄席にも足を運ぶようになり、落語に再び注目が集まるようになります。

 

 

昭和になると太平洋戦争(昭和16年)が勃発し、落語界にも大きな打撃を与えます。

遊廓(ゆうかく)などをテーマにした廓噺(くるわばなし)など時局にそぐわないと判断された53もの演目が禁止となってしまうのです。

 

廓噺(くるわばなし)の補足
遊郭(ゆうかく:男性に性的なサービスを行う遊女が集められた区画)をテーマにし、有名な作品に「明烏」がある。

 

放送法が成立

 

昭和26年(1951年)に放送法が成立します。

この放送法成立によって、それまではNHKが中心となって進められていたテレビ放送でしたが民間放送の設置が認められました。

それにより愛知県の中部日本放送(現CBCラジオ)や日本テレビなどが放送を開始し、ラジオとテレビによる落語の新時代が幕を開けます。

 

ラジオをつければ落語が流れるといった状況になり、寄席の数も増えて落語界は活況を呈します。

やがてテレビの時代となり、初代林家三平や7代目立川談志などタレント的な落語家も現れるようになります。

 

初代林家三平
1922年生まれの落語家、1966年~1972年に起きた演芸ブーム(テレビ番組を中心としたお笑いブーム)の火付け役かつ中心的存在。「昭和の爆笑王」として知られる。
7代目立川談志
1936年生まれの落語家。国民的人気番組「笑点」の企画者であり初代司会者。

立川談志について詳しい解説は第4章にて!(現在は第1章)

 

そんな落語家たちの人気もあって寄席も賑わい、それ以降の落語ブームはテレビによって生まれるようになるのです。

 

落語がどのように始まり発展していったのか、お分かりいただけたでしょうか。

何度も危機を乗り越え、その時代を代表する落語家たちによって発展し、今日の落語に繋がっているのです。

酸いも甘いも嚙み分けた歴史ある芸能だからこそ、時代を問わず多くの人々を魅了するのだと思います。

 

次のページでは「落語家の階級」についてお伝えします。落語家がどのように昇進していくかを知ると落語家さんの見え方が変わり、より落語が楽しめるかと思います。

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ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

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「東映実録映画」とは「東映で製作された実話を元にしたヤクザ映画」です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた作品は、現在では再現不可能と言えるでしょう。

東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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『東映実録映画入門』目次へ  (全21ページ)

 

終焉に向かう東映実録映画

▼ヤクザ映画の歴史、簡易年表

 

1973年の「仁義なき戦い」公開からわずか四年後、実録映画はある一本の映画をめぐる出来事をきっかけに終焉へ向かいます。

その作品は当初「新・仁義なき戦い」シリーズの四作目として製作が進められていましたが、製作当初は主演を演じる予定だった菅原文太が体調不良を理由に出演を断ったため、菅原文太ありきの「新・仁義なき」という題を冠することができなくなり、タイトルの変更を余儀なくされてしまいます。

 

新・仁義なき戦い
仁義なき戦いシリーズの番外編。新・仁義なき戦いシリーズの第1作目は、仁義なき戦いとほぼ同じ題材で作成された。

▼新・仁義なき戦い(画像クリックで商品詳細へ)

菅原文太
仁義なき戦いのシリーズ通しての主演。東映を代表するスター俳優。菅原文太氏につていは第4章(このページは第1章)で詳しく解説。

▼菅原文太氏

 

そのタイトルが変更された作品は「北陸代理戦争」というタイトルで1977年に公開されました。

「仁義なき戦い」の焼き直しである「新・仁義なき戦い」を別として、シリーズ二作目「新・仁義なき戦い 組長の首」および三作目「新・仁義なき戦い 組長最後の日」は実際の事件や人物に基づかない実録路線外の作品でした。

 

▼新シリーズ一覧(深作欣二監督作品)

公開年度 作品名 備考
1974 新・仁義なき戦い 前作の焼き直し
1975 新・仁義なき戦い 組長の首 実録路線外
1976 新・仁義なき戦い 組長最後の日 実録路線外
1977 北陸代理戦争 実録路線

 

しかし、「新・仁義なき戦い」シリーズに続く「北陸代理戦争」では一転して実在する人物の半生――しかも当時現在進行形だった抗争事件の経緯を描いています。

 

「北陸代理戦争」にまつわる一連の抗争は「三国事件」と呼ばれ、映画が現実の抗争事件に影響を及ぼした稀有な例として、東映実録路線の歴史に暗い影を落としました。(三国事件については第2章「三国事件」の項で詳しく述べています)

「仁義なき戦い」および「新・仁義なき戦い」シリーズの監督を務め、東映実録路線を牽引した深作欣二氏は本作を最後にやくざ映画の監督を切り上げ、時代劇やSF映画に主戦場を移していきます。

「北陸代理戦争」以降も東映は実録映画を数本製作しましたが、いずれも興行成績は芳しくありませんでした。

 

 

深作欣二監督はノワール文学にも関わっています!(別Webon「ノワール文学入門」で解説) 深作欣二監督はノワール文学にも関わっています!(別Webon「ノワール文学入門」で解説)

 

「極道の妻たち」

 

そんな状況の中、東映の当時のプロデューサー・日下部五郎氏が見出した血路が、極道社会に生きる女性の激しい生き様を描いた作品でした。

家田荘子(ノンフィクション作家)のルポルタージュ「極道の妻たち」を原案にとったそれらの作品は、数多くの東映実録映画の脚本を手掛けてきた名脚本家・高田宏治氏によって肉付けされ、1986年に世に送り出されます。

 

高田宏治(たかだ こうじ)氏
数多くの東映実録映画の脚本を手掛ける。

笠原和夫氏が降板した後の「仁義なき戦い」五部作の完結篇をはじめ、「新・仁義なき戦い」シリーズや「北陸代理戦争」「実録外伝 大阪電撃作戦」「沖縄やくざ戦争」、さらには和製ゴッドファーザーともいうべき「日本の首領」三部作など。

 

高田氏が脚本を手掛けた「仁義なき戦い 完結篇」では「極道社会に翻弄される女性の生き様」が描かれていました。

そのことからもわかるように、高田氏は「女性の存在がなければやくざの世界は成り立たない」と考え、彼の手がけた実録映画には強い決意をもってやくざを支える女性が頻繁に登場します。

 

宮尾登美子氏の同名小説を原作として1980年に公開された映画「鬼龍院花子の生涯」は、五社英雄監督の世界観と高田宏治氏の美学、俳優陣の鬼気迫る演技が高い次元で調和した傑作であると同時に、実録路線から極妻への転換を暗示していました。

 

▼鬼龍院花子の生涯(画像クリックで商品詳細へ)

※「極妻」シリーズもルポルタージュを下敷きにしているという意味では広義の「実録路線」に含まれますが、このWebonでは「実録路線」=「ヤクザ映画の中の1ジャンル」として扱っていますので、「極妻」シリーズは実録路線とは別物と認識しております。

 

「極道の妻たち」は全10作の映画作品に加えて、6本のオリジナルビデオ作品が製作される人気シリーズとなります。

時代劇→任侠→実録という変遷をたどった東映の屋台骨は「極道の女たち」シリーズを最後に散逸し、以降東映が特定の路線(=シリーズ)を敷くことはなくなりました。

 

▼ヤクザ映画の歴史、簡易年表

 

東映作品ブームの推移
東映作品に限ってブームの推移を俯瞰してみると、前のブームで描いていないものを描いた作品群が新たなブームになっていくという流れがあるのだと思います。

任侠映画→時代劇では悪玉であったヤクザ・侠客が主人公。

実録路線→任侠映画では描かれなかったヤクザの社会悪としての側面を強調。

極妻シリーズ→実録路線では取り上げられなかったヤクザ社会に生きる女性の生き様が主題、など。

 

<筆者コラム>おすすめ関連書籍②
 ・伊藤彰彦「映画の奈落 完結篇 北陸代理戦争事件」 

 

各方面への取材と膨大な資料を基に、三国事件の真相と映画「北陸代理戦争」をめぐるエピソードをまとめあげた一冊。

三国事件に関するルポルタージュだけでなく、脚本家・高田宏治氏の反省や東映の映画史、さらには実際の原稿を引用した「北陸代理戦争」のシナリオ分析が渾然一体となっているため、情報量が非常に多く、映画同様、読み終えるまでに少なからぬエネルギーが要求されます。

文庫版の補遺として巻末に収録されている川内弘氏(主人公のモデルとなった人物)の元側近のインタビューは必見です。

 

 

『東映実録映画入門』目次へ  (全21ページ)

 

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目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

Webon紹介目次著者
「東映実録映画」とは「東映で製作された実話を元にしたヤクザ映画」です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた作品は、現在では再現不可能と言えるでしょう。

東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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著者:國谷正明

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ヤクザ映画の歴史を通じて、東映実録映画の誕生の経緯について解説いたします。

ヤクザ映画の歴史は大きく3つに分けることができます。「時代劇の延長として作られていた時代」「任侠映画時代」「東映実録映画時代」です。

このページでは、1998年に極妻シリーズが完結するまでのヤクザ映画の歴史をお伝えさせていただきます。

初期のヤクザ映画

▼ヤクザ映画の歴史、簡易年表

 

ヤクザ映画は当初、時代劇の延長線上にあるものとして製作されました。

時代劇の名作として世界中で高い人気を誇る黒澤明監督の映画「用心棒」が、ヤクザの抗争を描いていることからも、その萌芽(ほうが)が見て取れます。

 

黒沢明「用心棒」
1961年に公開された時代劇映画。ヤクザ同士が抗争している最中、ふらりと現れた浪人がそこに関わっていく話。主演の三船敏郎氏は同作品でヴェネチア国際映画祭で男優賞を獲得している。

▼用心棒(画像クリックで商品詳細へ)

 

1950年代に隆盛を誇った時代劇は1961年に公開された「用心棒」と翌年に公開されたその続編「椿三十郎」のヒットを最後として斜陽の一途をたどり、時代劇が大きな柱となっていた東映は、時代劇に代わる主力商品の発案を余儀なくされました。

 

任侠映画の台頭

 

そんな折に製作された作品が「人生劇場 飛車角」です。

 

▼人生劇場 飛車角(画像クリックで商品詳細へ)

 

「人生劇場 飛車角」は小説家・尾﨑士郎氏の自伝小説を映画化した人気シリーズ「人生劇場」に登場する侠客(きょうかく)を主人公に据えたスピンオフ作品で、鶴田浩二(上記画像、上半身入れ墨の男性)氏を主演に起用して大きなヒットを記録しました。

 

侠客(きょうかく)とは
「弱気きを助け強きをくじく」を信条に掲げ、任侠を建前とした生き方をする人のことを指す。

 

「人生劇場 飛車角」のヒットに活路を見出した東映はその後も侠客の生き様を描いた映画を量産し続け、新たな一時代を築きます。

 

これらの作品群は「任侠映画」と呼ばれ、鶴田浩二や高倉健といったスター俳優を輩出しました。

 

高倉健
1931年生まれの俳優。「人生劇場 飛車角」に出演をきっかけに任侠映画を中心に活躍。その後、ハリウッド映画にも出演するなど、活動の幅を広げる。紫綬褒章や文化勲章の獲得する。

 

東映実録映画の誕生

 

しかし盛者必衰の例に漏れず、1970年代に差しかかると任侠映画の人気にも陰りが見えはじめます。

そこで東映は当時大ヒットを記録していたマフィア映画の名作「ゴッドファーザー」の東映版を製作すべく、任侠映画の脚本に多く携わっていた看板脚本家・笠原和夫(かさはら かずお)氏に、広島抗争を題材にとった作品の脚本を依頼しました。

 

広島抗争
終戦後に広島で行われた暴力団の抗争。広島抗争については次章で詳しく解説。

 

笠原氏が依頼を受けた1972年には事件関係者の多くが存命であったことから、不要なトラブルを避けるため当時週刊誌に連載中だったルポルタージュを原作に「添え物映画」として製作する予定でしたが、原作だけでは脚本を書けないと判断した笠原氏は事件の当事者へ取材をおこなうべく広島に飛びます。

 

添え物映画
当時の映画は2本立てで上映されており、添え物映画はメインの映画の添え物とし上映された作品。

 

「仁義なき戦い」と題されたそのルポルタージュは、広島抗争の当事者・美能幸三氏(=ヤクザ。広島抗争の中心人物の一人)が獄中で記した手記を基に、元新聞記者の経歴をもつ作家・飯干晃一(いいぼし こういち)氏が事件の推移をまとめたものでした。

 

 

笠原氏は単身で美能幸三氏への取材を敢行し、広島抗争にまつわるエピソードを七時間にわたって聞き取りました。

笠原氏の記した著書によれば、映画には使わないという条件で話を聞いたにもかかわらず、書き上げた脚本を美能氏に見せると、独自に脚色を加えた部分を除いて快く了承いただいたそうです。

 

美能氏の話を参考に笠原氏が書き上げた脚本は、原案となったルポルタージュと同じタイトル「仁義なき戦い」で映画化され、ヤクザ映画として初めて朝日新聞の映画評に取り上げられ、東映としては久しぶりの大ヒットを記録します。

「仁義なき戦い」のヒットを確信していた東映は一作目の撮影中に続編の製作を決定し、わずか一年半の間にシリーズ五部作が公開されました。

 

時代劇の延長線上にあった任侠映画では侠客の生き様を美化して描いていたのに対し、「仁義なき戦い」では権謀術数の渦巻くヤクザの世界を社会の病巣として批判的に描くことで、ヤクザ映画に新境地を切り開きました。

「仁義なき戦い」のヒットを皮切りに、東映は実際に起きたヤクザの抗争事件を題材にとった作品を数多く製作します。

このような作品は「実録路線」と呼ばれ、任侠映画に代わって東映の屋台骨を担うに至りました。(実録路線と東映実録映画は同義です。)

 

 

<筆者コラム>おすすめ関連書籍①
 ・笠原和夫「映画はやくざなり」 

「完結篇」を除く「仁義なき戦い」シリーズ四作をはじめ、「県警対組織暴力」「暴力金脈」「バカ政ホラ政トッパ政」「やくざの墓場 くちなしの花」など数多くのヤクザ映画の脚本を手がけ、日本アカデミー章優秀脚本賞や瑞宝章を受賞した名脚本家・笠原和夫氏の脚本家としての半生を綴った「わが「やくざ」人生」を収録。

また、笠原氏が長年の脚本家人生の中で会得したシナリオ術を披露した「秘伝 シナリオ骨法十箇条」を併録し、さらに幻の未映画化作品「沖縄進撃作戦」のシナリオを丸ごと収めた贅沢な一冊。

「仁義なき戦い」シリーズのファンはもちろん、笠原和夫氏の脚本術を学びたい方は必見です。

 

 

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目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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著者:國谷正明

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『Endless SHOCK(エンドレスショック)』入門 ~堂本光一主演ミュージカル~

著者:しあ

40代後半女性。Endless SHOCKは博多座にて多数鑑賞。ライブが大好きで今まで行ったライブは数百本。Endless SHOCKの帝国劇場での鑑賞経験はございませんが、精一杯魅力をお伝えします。お問い合わせはこちらから

 

 

「Endless SHOCK(エンドレスショック)」とはKinki Kidsの堂本光一さん主演の、日本一チケットが取れないと言われているミュージカルです。

「階段落ち」や光一さんが宙に舞う「フライング」などの演目の映像は、メディアでも多く取り上げれており知ってる方も多いのではないでしょうか。ただ、光一さんが最も大切にしているところは「ストーリー」であり、その素晴らしさについてもっと知っていただきたいのです。

このWebonではEndless SHOCKの「ストーリーの素晴らしさ」を中心に「みどころ」「光一さんの魅力」「鑑賞方法」をお伝えいたします。

 

~~私としてはストーリーの素晴らしさをもっと知って欲しいという想いがあります。堂本光一さん自身も「階段落ちなどがよく話題になるけれど、我々が一番大切にしているのはそのストーリーの部分なんです。」と語っています。~~
はじめに 「Endless SHOCK(エンドレスショック)とは」より

 

【2019年Endless SHOCK情報(帝国劇場)】

公演日程 2/4(月)~3/31(日)
料金 S席 13,000円/ A席 9,000円
出演 堂本光一(主演) 内博貴 他
一般販売 1/12(土)10:00~

チケットぴあ

 

はじめに

Endless SHOCK(エンドレスショック)は「5分に1回は観客を驚かせる」と言われており「マジック」「ダンスナンバー」「殺陣」「太鼓」と様々な演目を楽しめます。ただ、このミュージカルで一番大切にされているのはストーリーの部分なのです。

Endless SHOCK(エンドレスショック)とは

 

第1章 基礎知識

ここではEndless SHOCKの「歴史」「ストーリー」に解説します。

Endless SHOCKの歴史

Endless SHOCKのストーリー

 

第2章 みどころ

Endless SHOCKは演目も素晴らしいものであり「ストーリーと演目の相乗効果」によって素晴らしい舞台になっていると思います。「フライング」「殺陣」だけでなくたくさんの魅力的な演目があるのです。

この章ではみどころを紹介していきますがネタバレを含みます。ネタバレしたくない方は「Endless SHOCKの6つのみどころ」をご覧くださいませ。

Endless SHOCKのみどころ① ストーリー/劇中劇シェイクスピア

Endless SHOCKのみどころ② フライング/太鼓

Endless SHOCKのみどころ③ ダンスシーン

Endless SHOCKのみどころ④ 殺陣・階段落ち

Endless SHOCKのみどころ⑤ 夜の海

Endless SHOCKのみどころ⑥ 共演者 内博貴さん/神田沙也加さん

 

▼ネタバレしたくない方向けのみどころまとめページ

Endless SHOCKの6つのみどころ

 

第3章 主演 堂本光一の魅力

Endless SHOCKで感動できるのは、堂本光一さんの存在があってこそなのです。この舞台ではKinKi Kidsとしての光一さんとはまた違った魅力を知ることができます。

堂本光一の魅力① 舞台にかける情熱

堂本光一の魅力② 最高のエンターテイナー

 

第4章 鑑賞方法

Endless SHOCKを実際に鑑賞する方法についてお伝えします。「博多座での楽しみ方」「チケット購入方法」「Blu-ray/DVD」「サウンドトラック」について解説。

「Endless SHOCK」鑑賞方法 【博多座での楽しみ方】

「Endless SHOCK」鑑賞方法 【チケットの購入方法/Blu-ray、DVD】

「Endless SHOCK」鑑賞方法 【サウンドトラック】

落語の魅力とは

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)

 

落語の魅力

 

皆さんは落語を聴いたことがあるでしょうか。

「なんだか難しそう」「おもしろくなさそう」

というイメージを持っている方も多いかと思います。

 

しかし、そんな先入観で落語を敬遠しているとしたら非常にもったいないですよ!

 

落語は江戸時代から伝承されている伝統的な話芸ですが「誰が聴いてもわかりやすく、おもしろい芸能」なのです。

落語には、遊び人やお調子者、酒で失敗する人、働かない人、間抜けな泥棒など、いわゆる“ダメ人間”といわれるような人がたくさん出てきます。

そんな人々が生き生きと生活していて、そのなかで泣き笑い、憎しみ苦しみ、そうした人生の妙味をあらゆる角度から見せてくれる、それが落語の魅力です。

「人生捨てたもんじゃないよね」

と思わせてくれる人間賛歌としての価値が落語にはあります。

 

 

そんな落語を聴けば「人情の素晴らしさ」「人生の楽しさ」などを感じられるはずです。

たった1人の落語家が演じる話芸で、比類なき人間模様を味わいながら笑ったり感動したりする時間を過ごせることは幸せなことだと思いませんか。

 

▼落語を演じているシーン

想像力で広がる物語

 

落語で使う小道具は、基本的には扇子と手ぬぐいだけです。扇子を使って「パイプ」や「そばをすする箸」を表現したり、手ぬぐいを「財布」に見立てることもあります。

座布団の上に座っている落語家が1人で何役も演じながら話術だけで物語を展開していく落語は、あらゆる芸能のなかで最もシンプルな芸だといえるでしょう。

 

落語家はよく「落語ってのはお客さんの想像力に寄りかかった芸能なんです」という言い方をします。

お客さんの想像力によって物語が膨らんでいくというのも落語の魅力であり、こうしたスタイルのエンターテインメントは日本独自のものです。

 

古典落語のすすめ

 

落語には「古典落語」と「新作落語」があります。

 

「古典落語」と「新作落語」の違い
両者の違いは作成された時期です。

古典落語は、江戸時代~昭和に作成された作品。

新作落語は、戦後~現在に作成された作品。

詳しくは第1章で解説。(現在「はじめに」)

 

このWebonでは古典落語を中心に解説していきます。

「古典」と聞くとなんだか難しそうに感じるかもしれませんが、特別な知識がなくても古典落語は十分に楽しめます。

情報過多で何かとストレスの多い現代人だからこそ、江戸や明治に生きる人々、古典落語の世界に生きる人々の、のんびりとした日常に触れる価値があるのではないでしょうか。

心が楽しいときでも寂しいときでも、古典落語がそばにあるだけで、ちょっとラクになれる、そんな不思議な力が古典落語にはあると私は思っています。

つまり古典落語は「一生つきあっていける芸能」なのです!

 

何も考えずにただぼうっと聴くだけでよいのです。

難しいことはなにもありません。

 

落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて、落語(特に古典)の魅力についてわかりやすく伝えていきたいと思っています。

私は10年ほど前に古典落語にハマって以来ほぼ毎日落語を聴いていますが、飽きるどころかますますその世界に魅了され深みにハマっていっています。

この究極のエンターテインメントである落語の魅力が、1人でも多くの方に伝われば幸いです。

 

次の章(第1章)からは落語の基礎知識を紹介します。まずは落語の全体像を掴んでみてください。「難しくない」ということが伝わるはずです。

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)
 

【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

落語初心者入門

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。

お問い合わせはこちらから

 

落語に対して「難しい」という印象をお持ちの方も多いかもしません。ただ、落語は「誰が聴いてもわかりやすく、面白い芸能」なのです。

このWebonでは、10年程前よりほぼ毎日落語を聴いている筆者が魅力的な落語の世界についてお伝えします。

 

~~(落語には)“ダメ人間”といわれるような人がたくさん出てきます。そんな人々が生き生きと生活していて、そのなかで泣き笑い、憎しみ苦しみ、そうした人生の妙味をあらゆる角度から見せてくれる、それが落語の魅力です。「人生捨てたもんじゃないよね」と思わせてくれる人間賛歌としての価値が落語にはあります。~~
はじめに「落語の魅力とは」より

 

 

はじめに

落語は難しいものではありません。「誰が聴いてもわかりやすくおもしろい芸能」なのです。この章では落語の魅力についてお伝えします。

落語の魅力とは

 

第1章 基礎知識

落語は基礎知識を知っておくとさらに楽しめると思います。この章を読めば落語の全体像が掴めることでしょう。

落語初心者のための基礎知識

落語の歴史

落語家の階級

落語の演目の基礎知識 【古典落語と新作落語の違い】

江戸落語と上方落語の5つの違い

 

第2章 おすすめ古典落語

落語にはどんな噺があるかを解説します。「定番編」「滑稽噺編」「人情噺編」に分けて紹介します。聴いてみたい作品を見つけていただきたいです。

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【定番編】

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【滑稽噺編】

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

 

第3章 鑑賞方法

落語の魅力を知るには生で観るのが一番です。落語を鑑賞できる場所である「寄席」は基本飲食も可能で気軽に楽しめます。この章では寄席、そして自宅での鑑賞方法についてお伝えします。

寄席の基礎知識 【寄席の鑑賞方法①】

東京のおすすめ落語スポット7選 【寄席の鑑賞方法②】

人気のおすすめ落語家4選 【寄席の鑑賞方法③】

おすすめ落語CD・アプリ・ストリーミング 【自宅で落語鑑賞①】

落語が題材の映画・ドラマ3選 【自宅で落語鑑賞②】

 

第4章 おすすめ落語名人

落語は同じ演目でも演じる落語家が違えば見え方が変わります。落語の名人には「蕎麦をすする動作は落語会随一」「酒を飲んで高座に上がっても面白い」などそれぞれ違った個性や魅力があるのです。

初代 三遊亭圓朝 【おすすめ落語名人9選】

五代目 古今亭志ん生 【おすすめ落語名人9選】

六代目 三遊亭圓生 【おすすめ落語名人9選】

五代目 柳家小さん 【おすすめ落語名人9選】

三代目 古今亭志ん朝 【おすすめ落語名人9選】

七代目 立川談志 【おすすめ落語名人9選】

三代目 桂米朝 【おすすめ落語名人9選】

ニ代目 桂枝雀 【おすすめ落語名人9選】

十代目 柳家小三治 【おすすめ落語名人9選】

東映実録映画入門 ~実話を基にしたヤクザ映画~

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」などのコンテンツ作成も手掛ける。

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facebook(國谷) https://www.facebook.com/masaaki.kuniya.3344

 

「東映実録映画」は東映(映画の会社)で製作された「実話を元にしたヤクザ映画」です。有名な作品で言えば「仁義なき戦い」が挙げられます。

圧倒的なリアルなヤクザの世界が覗けるのが東映実録映画の魅力です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた世界観は、今の時代は規制によって製作するのは難しいと言えるでしょう。

このWebonでは東映実録映画の歴史、作品、俳優について解説していきます。

 

~~暴排条例が施行された現代では暴力団の活動が制限され、映画の題材となるような大きな事件が起こることは少なくなりました。事件の当事者たちの生々しい証言を反映した脚本と、現役ヤクザの生き様を目の当たりにしてきた俳優陣の演技が渾然一体となった実録映画の並々ならぬ熱量は、今の時代には再現することの難しいロスト・テクノロジー(失われた技術)であるといっても過言ではありません。~~
はじめに「東映実録映画とは」より

 

 

はじめに 東映実録映画とは

東映実録映画は、圧倒的なリアリティで描かれるヤクザ映画です。現代では再現不可能な理由や、その魅力をお伝えします。

東映実録映画とは

 

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史や予備知識を知れば東映実録映画がより楽しめるようになることでしょう。

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

 

第2章 東映実録映画の題材になった事件

東映実録映画は実際のヤクザの抗争や事件の取材を元に製作されています。この章では映画の題材になった実際の抗争について解説します。

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

 

第3章 おすすめ実録映画7選

筆者厳選の東映実録映画の名作を紹介いたします。美能幸三氏(ヤクザ)が獄中で綴った手記が映画化された「仁義なき戦い」をはじめ、実際のヤクザの事件に影響を及ぼした「北陸代理戦争」など。

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

 

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

ヤクザ映画には圧倒的な存在感の偉大な俳優の方が多く出演しています。この章では、ヤクザ映画である東映実録映画に出演する俳優の方の魅力を解説します。お気に入りの俳優を見つけて、そこから新たな作品を発掘していくのも面白いかもしれません。

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

東映実録映画とは

Webon紹介目次著者
「東映実録映画」とは「東映で製作された実話を元にしたヤクザ映画」です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた作品は、現在では再現不可能と言えるでしょう。

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はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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ヤクザ映画「仁義なき戦い」は「東映実録映画」

 


 

みなさんは「ヤクザ映画」と聞いて、どのような作品を思い浮かべるでしょうか。

 

最近では、北野武監督自身が主演を演じた「アウトレイジ」三部作や、役所広司が悪徳刑事を演じる柚月裕子原作の同名小説を映画化した「孤狼の血」が話題になり、国内外で高い評価を得ました。

 

「アウトレイジ」
弱小ヤクザ「大友組」の組長(役:ビートたけし)を中心にし、暴力団の抗争が描かれていく。過激なバイオレンスシーンが話題になる。

(画像クリックorタップで作品詳細へ)

孤狼の血(ころうのち)
暴力団対策法成立直前の昭和63年の広島を舞台に、暴力団同士の抗争や刑事との戦いが描かれた作品。原作者、柚月裕子氏は「仁義なき戦い」の大ファン。

(画像クリックorタップで作品詳細へ)

 

 

また、哀川翔氏や竹内力氏、小沢仁志氏らコワモテの俳優陣が活躍するVシネマから「ヤクザ映画」を想像する方も多いでしょう。

 

Vシネマとは
東映によってレンタルビデオ専用に作られた映画。極道やギャンブルを題材にした作品が多い。

▼Vシネマの例:主演小沢仁志「制覇」シリーズ

 

しかし、ヤクザ映画と聞いてもっとも多くの方が連想する作品は「仁義なき戦い」を置いて他にありません。

そしてこの「仁義なき戦い」こそ、このWebonのテーマである「東映実録映画」の草分けとなった作品なのです。

 

 

東映実録映画とは

 

東映実録映画とは、その名のとおり「実話をベースに東映(映画の製作と配給、興行を手がける会社)によって製作されたヤクザ映画」を指します。

 

広島におけるヤクザ同士の抗争を題材にとった「仁義なき戦い」がヒットして以降、さまざまな実録映画が公開されました。

今の時代では裏社会の住人との付き合いを取り沙汰された芸能人が非難され、ときには引退を迫られることさえあります。

 

芸能人が引退を迫られた例
いくつもの冠番組を持つ大物司会者島田紳助氏が、2011年に暴力団との交際発覚をきっかけに芸能界を引退する。

 

東映実録映画が隆盛を誇った70年代には良くも悪くもヤクザが芸能界に深く食い込んでおり、そういった環境がヤクザの生き様を生々しく描いた実録映画に圧倒的なリアリティをもたらしたことは想像に難くありません。

事件の関係者に取材を敢行することはもちろん、中には題材とする抗争の中心人物のバックアップの基で製作された作品さえあるほどです。

 

東映実録映画にしか描けない「リアルなヤクザの実態」

 

筆者を含めて、ヤクザ映画を娯楽として楽しむ視聴者のほとんどは、ヤクザの実態に関する知識に乏しい方でしょう。

ヤクザライターや元ヤクザの著作を読みあさったとしても、それらの知識は付け焼刃にすぎず、実際に踏み込んだ付き合いを体験しなければ、実録映画で描かれている彼らの姿が本質に迫っているかどうかを判断することができません。

実録映画にまつわる種々のエピソードや逸話こそ、ヤクザの実態を知らない視聴者にリアリティをもってその本質を知らしめる最良の手段であるといえます。

 

筆者コラム<暴力団関係者の方の納棺式>
筆者は納棺師時代に何度か暴力団関係者の方の納棺式を執りおこなった経験があります。

故人様の背中に大きな刺青が入っていたり、参列者の方数名の小指が欠けていたこと以外は至って普通で、むしろ一般の方と比べて輪をかけて礼儀正しい方が多い印象でした。

今でもほんとうに指を詰めることがあるんだな、と妙に感心した記憶があります。

 

暴排条例が施行された現代では暴力団の活動が制限され、映画の題材となるような大きな事件が起こることは少なくなりました。

事件の当事者たちの生々しい証言を反映した脚本と、現役ヤクザの生き様を目の当たりにしてきた俳優陣の演技が渾然一体となった実録映画の並々ならぬ熱量は、今の時代には再現することの難しいロスト・テクノロジー(失われた技術)であるといっても過言ではありません。

 

「暴排条例」による暴力団への影響
正式名称は「暴力団排除条例」。地上公共団体の条例で東京都では2011年に施行された。暴力団の影響力の排除を目的としており、暴力団員に家を貸す、雇用する、お金の貸し借りなどが禁止された。収入源が大きく絶たれたことにより、暴力団の規模は大幅に縮小された。

 

このWebonでは、東映実録映画の歴史や、作品をより深く楽しむための予備知識、おすすめの作品などをご紹介していきます。

皆さまの実録映画に興味をもつきっかけになれば幸いです。

 

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目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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