東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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『東映実録映画入門』目次へ (全21ページ)
実録映画(東映実録映画)は、東映(映画の会社)によって製作された実話をベースにしたヤクザ映画のことです。
この章では実録映画のおすすめ作品7選を紹介・解説いたします。
このページで紹介する作品は「実録・私設銀座警察」です。
▼おすすめ実録映画7選!それぞれのページで詳しく紹介!
実録・私設銀座警察とは
「実録・私設銀座警察」は戦後間もない銀座を舞台に、退役兵らによって結成された愚連隊が暴力を武器に裏社会を駆け上がり、そして破滅していく様を描いた実録映画です。
本作は東映実録映画屈指のカルト作品として、一部の映画ファンから熱狂的な支持を得ています。
※カルト作品・・・小人数の熱狂的ファンによって支持される映画のこと
概要
作品名 | 実録・私設銀座警察 |
公開 | 1973年7月4日 |
監督 | 佐藤純彌 |
脚本 | 神波史男、松田寛夫 |
出演 | 安藤昇、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、葉山良二、室田日出男、内田朝雄、待田京介、郷鍈治、藤浩子、中村英子、小林稔侍ほか |
▼告知の映像
作品解説
銀座警察のモデル
「実録・私設銀座警察」は「仁義なき戦い」シリーズをはるかに凌ぐ混沌とした内容であるため、観ていると思わず実録作品であることを忘れてしまうほどですが、劇中で主人公らが結成する愚連隊・銀座警察にはれっきとしたモデルが存在します。
事件の当事者たちの生々しい証言を反映した脚本と、現役ヤクザの生き様を目の当たりにしてきた俳優陣の演技が渾然一体となった実録映画の並々ならぬ熱量は、現代では再現は難しい。
銀座警察は浦上信之氏を中心とする浦上一派をモデルとしており、終戦直後の銀座で営業するダンスホールやビアホール、喫茶店、小料理屋のほとんどから用心棒代を徴収していたことから「銀座警察」との異名をとっていました。
当時(終戦直後)の銀座はいわゆる三国人(朝鮮・台湾人)による暴力事件が頻発するなどきわめて治安の悪い状態だったため、浦上一派が銀座を制圧することで治安が改善しました。
そのため、一時は大変な人気を誇りました。
しかし、組織としての統制がとれていなかったせいか次第に構成員たちの横暴が目立ちはじめ、数年後には警察による一斉検挙の対象となります。
浦上一派という名のとおり、浦上氏は銀座警察の署長として組織において権力をふるっていました。
一方で、住吉会系暴力団・大日本興業の創設者である高橋輝男氏も銀座警察の司法主任(=戦前の犯罪捜査を担当する警察官)として浦上氏に次ぐ高い地位に就いていました。
その他にも、浦上一派は後の都議会議員である荒木由太郎氏を擁していたことが周知されています。
架空のキャラクター「渡海菊夫」の存在
「実録・私設銀座警察」は実録映画の例に漏れず、葉山良二氏が演じる宇佐美義一(モデル:浦上信之氏)や安藤昇氏が演じる池谷三郎(モデル:高橋輝男氏)など、実在の人物をモデルにしたキャラクターを軸に物語が展開していきます。
▼安藤昇氏
しかし、実在の人物をモデルにとらない架空のキャラクターである「渡海菊夫」の怪物ぶりこそが、本作をカルト的名作に至らしめている要因であることは間違いありません。
本作は渡瀬恒彦演じる渡海が、外国人相手の娼婦(=売春を生業とする女性)に身をやつした妻の許(もと)を訪れるところから始まります。
▼渡瀬恒彦氏(銃を持っている男性)
妻が黒人の子を産んでいることを知った渡海は、激怒のあまりその乳児を二階から水たまりに投げ捨てると、半狂乱で我が子を助けようとする妻に暴行を加え、容赦なく殴り殺してしまいます。
苛烈な暴力シーンが珍しくない実録映画の世界でも、本作は全編を通して暴力描写が濃厚に描かれており、特に冒頭における暴力描写は群を抜いて衝撃的です。
そのことから「実録・私設銀座警察」が既存の実録映画とは一線を画す作品であることを早くも示唆していると言えるでしょう。
冒頭の出来事を苦に渡海が重度のポン中(=覚せい剤中毒者の意。「ヒロポン中毒」が由来)になると、覚せい剤を餌に銀座警察のヒットマン(殺し屋)として利用されるようになります。
ふたつの異なる視点の対比
「実録・私設銀座警察」は、「戦後の銀座を舞台に成り上がる愚連隊(=不良の集団)の栄華と破滅をユーモラスに描く」と同時に、「時代の敗残者である渡海の生き様をとおして戦争の余波を生々しく映し出す」という二重構造となっています。
ふたつの異なる視点の対比がそれぞれの要素を際立たせ、観る者に作品をより深く印象付けることに成功しています。
実録路線とエロ・グロ・ナンセンス、そして「反戦」のメッセージが高次元で融合した本作は、実録映画の枠を超えて評価されるべきカルト映画の傑作であるといえるでしょう。
ヤクザ映画好きやカルト映画ファンはもちろん、B級ホラーマニアの方もきっと楽しめるのではないかと思います。
作品を観る方法
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・DVD
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はじめに
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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