落語を100倍楽しむ為の基礎知識 【キャラクター】

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語を楽しむ為の基礎知識

 

落語はドラマや映画と違って、聴いている一人一人の頭の中に浮かぶ登場人物の顔や姿がすべて違います。

聴く人それぞれの想像力の中で、落語のキャラクターは自由にイメージされ、動き回り、活躍して、愛着のある存在に育つのです。

これもまた落語ならではの楽しみ方の一つで、かつ最大の特徴ともいえます。

このページでは、笑える面白キャラクターが登場する落語演目の数々を、滑稽噺(こっけいばなし=笑いの要素が強い落語)を中心に紹介していきましょう。

 

【コラム】キャラクターが出てくる落語演目の楽しみ方

テレビの連続ドラマを見ていて、主人公のキャラクターが活躍すると、自然と心理的に肩入れしてしまうことがあります。主人公ががっかりしたら自分も一緒にがっかりし、主人公が激怒したら自分も一緒になって憤慨するというような。

キャラクターが登場する落語はそれと同じことを、画面が無い分、聴く者一人一人の頭の中で顔から衣装まですべての画を想像し、舞台も風景も想像して、画面割りまで想像しながらストーリーを聴き進めます。

このような「想像上のエンタテインメント」をキャラクターが出てくる落語では楽しめます。

 

与太郎

 

落語の世界から生まれた最も有名なキャラクターといえば、与太郎です。

与太郎はちょっとおバカであまり物事は考えない性格ながら、たまに鋭い指摘をして周囲の者を驚かせるという、子供がそのまま成人したようなキャラです。

落語の設定では、世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まることが多めです。

 

【編集部コラム】与太郎

与太郎は代表的な落語の登場人物。間抜けでマイペースな性格をしている。一人称は「あたい」で現在でいうとニートのような存在で語られる事が多い。噺によっては女房がいることもある。落語には、口を半開きの状態でゆっくりとしゃべると間抜けな感じに聴こえるという技術があり「与太郎口調」と呼ばれる。

 

与太郎の魅力

 

与太郎というキャラは江戸の昔から「おバカ」として落語界全体が作り上げた共有財産です。

落語の中ではヘンなことを言ったりヘンな行動をしたりする「愚か者」という業務上の役割が任されていますが、数百年の時代を経て、人格が少し変貌していったのではないか、と思います。

親戚のおじさんをちょっと大人びたシニカルな視線で評したり、いきなり核心をついたりするのは、長い落語の歴史の中で、きっと与太郎に愛着を持った落語家さんが「こんなことを与太郎に言わせたい」とか考えて、ストーリーに盛り込んだのだと思います。

今の落語ファンの方々の中には、

「与太郎って有名人に例えたら〇〇かな?」

というキャスティング遊びをなさる方がおられます。落語のキャラクターにより親しんでもらう、わかりやすく想像してもらうには、最適の遊びでしょう。

 

与太郎が登場する落語演目

 

まずは世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まる演目を4つご紹介します。

 

1.かぼちゃ屋

~あらすじ~

20歳になってもろくに仕事もしない与太郎。面倒を見てくれているおじさんが見かねて与太郎にかぼちゃを売りに行かせる。元値を教え、そこに「上を見て売れ(売値をいくらか足して売れ)」と言われた与太郎であったが「上を見て売れ」の意味が分からず・・・

~概要~

人情噺『唐茄子屋政談』はまったく別の話。

【著者談】『かぼちゃ屋』はここがポイント!

展開のわかりやすいシンプルな構成で、与太郎の性格が最もわかりやすい落語です。おじさんとのやりとりの中で口にする与太郎のへらず口が素敵です。

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2.道具屋

~あらすじ~

20歳になっても働かない与太郎を見かねたおじさんが道具屋をやってみないかとすすめる。しかし何をやらせても上手くいかない与太郎はとことんお客さんに逃げられてしまう・・・

~概要~

小咄(短編話)を集めたオムニバス形式の話。その為寄席などでは途中で切り上げる事も多い。

【著者談】『道具屋』はここがポイント!

これもシンプルですが、笑えるポイントの数ではこれがトップ。露天の古道具屋が舞台なのでいろいろな品物が出てきて、その品物の数だけ笑いがあります。

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3.孝行糖

~あらすじ~

与太郎が親孝行をしていると奉行(武士の役職)から褒賞金をもらう。周りの人たちがそれを元手に商売を始めろと与太郎に勧める。親孝行した事から生じた商売「孝行糖」という飴を売ればいい、と勧めそれが飛ぶように売れるが・・・

~概要~

関西(上方)と江戸(東京)では周りの人が商売を始めろと勧める理由が異なる。上方では「上手くやれそうだから」、江戸では「褒賞金など若い人はすぐに使ってしまうのでもったいないから」。

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4.厄払い

~あらすじ~

いい年をして働かない与太郎を心配したおじさんが大晦日に近所の家々を回って「厄払い」を行い稼いでこいと告げる。早速厄払いの方法と文句をおじさんが与太郎に教えるがちっとも練習をせず与太郎は出かけていった・・・

~概要~

おじさんが与太郎に教える厄払いの文句は関西(上方)と東京(江戸)では多少異なる。東京の方が装飾されている。

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その他に与太郎が登場する落語演目を3つご紹介します。

父親が与太郎に「おじさんの家に出掛けて新築の家をほめて小遣いをもらって来い」とすすめる『牛ほめ(うしほめ)』、

『大工調べ』の大工のように最初から仕事に就いていたり、

『錦の袈裟(にしきのけさ)』のように所帯持ちだったりすることもあります。

 

5.牛ほめ

~あらすじ~

何をやらせても上手くいかない与太郎を見かねた父親。父親の兄が新築を建てたという事で与太郎を行かせて家を褒めさせようとする。兄貴は家を褒めたらお金をくれるぞと与太郎に言うと与太郎もその気に。しかし与太郎は父親の教える褒め言葉を上手く言えない・・・

~概要~

元々『池田の牛ほめ』という上方(関西)の落語演目だったのが江戸に伝わった。別題『普請ほめ』。

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6.大工調べ

~あらすじ~

大工をしている与太郎であったが家賃が払えなくなり大家さんに仕事道具を取り上げられる。困った与太郎は大工の棟梁に一緒に返してもらいに大家さんのところへ行く。結局喧嘩になってしまうのだが与太郎が言う大家さんの悪口はとんちんかんで・・・

~概要~

前半と後半に分かれており、前半だけで切り上げるパターンもある。

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7.錦の袈裟

~あらすじ~

隣町に住んでいる仲の悪い若者たちが遊廓(ゆうがく)で大きく遊び「こんな真似は隣町のやつらにはできない」と言っていた、と町の若い衆が聞いてくる。そこで町の若い衆たちは質屋で10枚の錦(にしき:高価な布)を買い、それでふんどしを作って遊廓で遊んで隣町のやつらを見返そう、という話になるが11人で行くことになるので与太郎の分の錦が足りなくなる。そこで与太郎は和尚に錦の袈裟(けさ)を借りに行くが・・・

~概要~

戦時中には性的描写のある演目とされ、国により禁止されていた。別題に『金襴の袈裟(きんらんのけさ)』『錦の下帯(にしきのしたおび)』『ちん輪(ちんわ)』。

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今挙げた7つの演目はすべて与太郎が主役・準主役として活躍する落語ですが、脇役やチョイ役で登場する『長屋の花見』『寄合酒』『芋俵(いもだわら)』『佃祭(つくだまつり)』などもあります。

 

8.長屋の花見

~あらすじ~

お金の無い連中が花見をしようと思い立つ。いざ花見に来てみるとお金持ちの連中がいて、彼らとの落差に消沈する。そこで喧嘩をしているふりをしてお金持ちを追っ払い、その隙に食べ物や酒を奪う策略を考え付くが、喧嘩のフリのつもりが本当に喧嘩になってしまう・・・

~概要~

上方落語では「貧乏花見」という名前の演目。短縮して演じられたり、オチ(サゲ)がいくつかあったりする。

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9.寄合酒

~あらすじ~

ある男がみんなで集まってお酒を飲もうと思いつく。しかし金がないので集まったそれぞれに酒の肴を持ち寄ってもらって宴会を開こうとする。しかし皆料理が苦手な男ばかりで持ち寄ったものがとんでもないものばかりになってしまう・・・

~概要~

寄合酒は「ん廻し(別名:運廻し)」という演目の前半部分。後半部分は「田楽喰い」という演目。

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10.芋俵

~あらすじ~

とある2人の盗賊が芋俵(いもを入れる俵)の中に入り、通りがかったお店に預け、夜になったら芋俵から出てお店のカギを内側から開けて盗みに入ろうという計画を立てる。そこで芋俵に入る人間を探したところ与太郎に白羽の矢があたる・・・

~概要~

上方(関西)落語では『芋屁』と呼ばれる。

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11.佃祭

~あらすじ~

とある旦那が佃島の祭りに行く。妻に必ず今日中に帰ると告げるが、最終の船に乗ろうとしたところ女に袖を引かれて乗り損ねる。聞けばその女は昔金が無くて思い詰めていたところへ旦那に5両をもらって生き延びた女だと言う・・・

~概要~

中国の逸話がモデルとなった噺。「情けは人の為ならず」が主題となっている。与太郎は最後に登場する。

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喜六と清八

 

与太郎のおバカキャラは、いわば落語界全体の共通財産ですが、登場するのは江戸落語(東京の落語)限定で、上方落語(関西の落語)には登場しません。

 

上方落語と江戸落語

落語は「上方落語」「江戸落語」で分けることができ、両者は「言葉遣い」や「演出」などが違う。例えば同じ内容の演目でもタイトルが違ったりする。

▼江戸と上方の違い一覧

江戸落語 上方落語
発祥地 江戸 関西(上方)
階級制度 見習い→前座→二つ目→真打ち なし
言葉 江戸弁 関西弁
道具 扇子・手ぬぐい 扇子・手ぬぐい・見台・ひざ隠し・小拍子
噺の演出の特徴 特になし ハメモノが入る演目が多い
江戸落語と上方落語について詳しくは「落語初心者入門」で! 江戸落語と上方落語について詳しくは「落語初心者入門」で!

 

代わりに「喜六(きろく)」と「清八(せいはち)」というコンビがいて、喜六がボケ役、清八がツッコミ役を務めるのが上方スタイルです。

 

上方落語の喜六と清八は、東京の与太郎よりもさらにもう少し業務的で、よりリアルな大阪の庶民です。

喜六は何かと言うと人を笑わせたがるイチビリ(目立ちたがり)で、清八はそのたしなめ役。この2種類の人格をわかりやすく例えたのが、漫才におけるボケとツッコミです。

したがって、喜六と清八の魅力はそのままリアル大阪人の面白味と相通じます。キャラクター(人間性)だけで言いますと、ボケとツッコミという構成上の業務をこなす役割のイメージが強く、与太郎ほどの際立った個性や面白味はありません。

 

与太郎や喜六・清八以外にも、複数の落語に掛け持ちで登場するキャラというのは枚挙にいとまがありません。以下で6つご紹介します。

 

メインキャストが登場する落語演目

 

お人よしの「甚兵衛」さん⇒『鮑のし(あわびのし)』『火焔太鼓(かえんだいこ)』など

 

12.鮑のし

~あらすじ~

おめでたい男、甚兵衛(関西では喜六)がお腹を空かして帰り嫁さんに言うと「ご飯が食べたければお金を50銭借りてこい」と言われる。何とか借りて帰ると、その金で鯛を買い大家さんにプレゼントをして1円をお返しでもらってこい、と嫁さんに言われる。しかし甚兵衛が50銭で買えたのは鮑(アワビ)だけだった・・・

~概要~

別題『鮑貝(あわびがい)』『祝いのし』。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

【著者談】『鮑のし』はここがポイント!

お人よしで恐妻家の甚兵衛さんが、口うるさい周囲の人たちからいろいろな挨拶やら喧嘩口上やらを教示されます。腹ペコなのに。その「困り」が笑いになっています。

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13.火焔太鼓

~あらすじ~

商売下手の道具屋甚兵衛がある日古い太鼓を仕入れてくる。しっかり者の妻から「どうせ売れない」と嫌味を言われるが、一人の侍が買いたいと申し出てくる・・・

~概要~

五代目 古今亭志ん生(ここんてい しんしょう)が膨らませて新たに作ったとも言われる古典落語の演目。

▼五代目 古今亭志ん生

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で詳しく紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で詳しく紹介!

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説教好きの「大家さん」⇒『一目上がり』『長屋の花見』(既出)など

 

14.一目上がり

~あらすじ~

長屋に住む職人が掛け軸の絵の横に書かれた字を見ていた。すると隠居が「あれは賛(さん)だ。お前も大家のところへ行き掛け軸を見て『良い賛ですね』の一言でも言ってこい」と言われる。そこで職人が大家さんの家に行ったが掛け軸に絵がなく文字しかない・・・

~概要~

別題『七福神(しちふくじん)』『軸ほめ(じくほめ)』。

【著者談】『一目上がり』はここがポイント!

長屋を舞台にした「長屋噺」の代表作の一つ。掛け軸に書かれた絵や字の呼称がすべて違っていて、一目上がりになっているのがこの演目のミソ。

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物知りの「ご隠居さん」⇒『やかん』など

 

15.やかん

~あらすじ~

何でも知っていると言うご隠居さんが八五郎を馬鹿にした。頭に来た八五郎は様々な物の名前の由来を聞いて鼻を明かしてやろうと試みるがご隠居さんは何でもあっさり答えてしまう・・・

~概要~

前半部分だけを『魚根問(さかなねどい)』とする場合もある。

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「糊屋の婆さん」⇒『たらちね』など

 

16.たらちね

~あらすじ~

独り身の八五郎の元へ大家さんが縁談を持ちかける。聞けば器量良しの若い女だがいかんせん話し方が丁寧すぎて何を言っているか分からないらしい。いざ八五郎が会ってみて、挨拶をされたがちんぷんかんぷんで・・・

~概要~

演目名は『垂乳女』と書いてたらちねと読む。糊屋の婆さんはちょい役で登場。関西ではこの噺の後日談として『つる女』という演目がある。

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長屋の八っつぁんと熊さん⇒多数・・・

 

これらのキャラクターがいます。

これらの落語(同じキャラが登場する落語)はほんの一例です。

キャラとは別に、落語の演目は主人公の職種や特徴で類別されることが多く、

泥棒・若旦那・殿様・僧侶・たいこ持ち(幇間:ほうかん)などの職業、

粗忽者・ケチ・乱暴者などの性格、

さらに動物(狐・狸など)・幽霊・天狗、

など様々なジャンルに分かれます。

あなたが興味のあるジャンルにターゲットを絞り、そこから聴き始めるのも一つの手段かもしれません。

 

【著者に聞きました】なぜ同じキャラが出てくる?

Q. なぜ古典落語では作者が違っても同じキャラが出てくるのでしょうか?

A. 江戸時代に生まれた古典落語は、歌舞伎やシェークスピアのように個人の著作が代々伝わっているわけでなく、数百数千もの落語家さんが年月をかけ、少しずつ工夫を織り交ぜて作り上げられたものです。先ほど『与太郎というキャラは江戸の昔から「おバカ」として落語界全体が作り上げられた共有財産』と書いたように落語界が年月をかけてキャラクターを作っていったのです。

 

唯一無二のキャラが登場する落語

 

落語は数多くのジャンルに分かれますが、中には、同じキャラが他の落語には登場しない唯一無二の演目というのもあります。

以下にそのような演目を古典落語と新作落語に分けてご紹介していきます。

まずは古典落語の代表例から。

 

17.元犬

~あらすじ~

ご隠居さんが白い犬に「白犬は人間に近く、信心すれば来世には人間に生まれ変われる」という俗信(迷信)を話した。そこで白い犬は寺院で「今生(今世)のうちに人間になりたい」と願う。するとみるみるうちに人間の見た目になっていった・・・

~概要~

『白犬は人間に近い』という俗信をもとにした落語。

【著者談】『元犬』はここがポイント!

犬が神社に願掛けの末に人間になるというSFチックな落語です。人間になった後の行動で、随所に犬っぽさが残ってしまうのが可愛く、また笑い所でもあります。

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18.弥次郎

~あらすじ~

ホラ話が得意な弥次郎がご隠居さんに話をし始める。「北海道で武者修行に行ってきました。北海道はあまりにも寒いので『おはよう』の挨拶まで凍っちまう。さらに火事が凍ってしまったんだが、物珍しいという事で本州まで火事を運んで行こうと思ったんだが火事が途中で溶けてしまって・・・」

~概要~

上方(関西)の演目名は『鉄砲勇助』。バリエーションがいくつもあり、どこでさげるか(終わらすか)は様々。

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19.天災

~あらすじ~

短気な男がいて、見かねた隠居が心学者の紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)先生を男に紹介して短気を直してもらおうとする。先生が「短気は損気」などの格言を言ってもなかなか感心することがない・・・

~概要~

紅羅坊名丸先生が伝える格言と男が聞き覚える格言の間違いにはバリエーションがある。

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20.鉄拐(てっかい)

~あらすじ~

舞台は中国の上海。毎年決まった時期に芸人を呼ぶ「上海屋」。しかしとうとう目新しい芸人さんがいなくなってしまった。そこで上海屋の店主が「どこかで探してこい」と番頭に命じた。番頭は『鉄拐(てっかい)』という名前の仙人を連れてくる。その芸は「息を吐くと自分の分身を出現させる」というものだった・・・

~概要~

中国が舞台の珍しい落語演目。内容がほぼ変わらず昔から伝わっている。

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続いて新作落語ですが新作落語は古典落語よりも世界観が大幅に広がるため、さらにキャラの種類が多岐にわたります。

 

21.鯛

~あらすじ~

とある生け簀の中。20年生け簀にいるという鯛が処世術などを説く・・・

~概要~

桂文枝師匠の新作落語。絵本にもなっている。

▼桂文枝

 By Ogiyoshisan投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

▼鯛(絵本)

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22.ぐつぐつ

~あらすじ~

とあるおでん屋台。ぐつぐつと煮られているおでん達が会話を始める・・・

~概要~

柳家小ゑん(やなぎや こえん)師匠の新作落語。2時間で創作されたと言われる。

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23.母恋いくらげ(ははこいくらげ)

~あらすじ~

とある海にくらげの親子がいた。その日はくらげの子が大海原へデビューする日。しかし悪天候によりくらげの子が陸の水たまりへ投げ出されてしまう・・・

~概要~

柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠の新作落語。絵本にもなった。

▼柳家喬太郎

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おすすめ落語家

 

最後に、面白キャラクター系落語を聴くにあたっての、おすすめ落語家さんをお教えしましょう。

キャラクター系落語を聴くとしたらオススメは上方落語の桂枝雀(かつら しじゃく)師匠です。

 

▼桂枝雀

 

枝雀師匠は生前、『代書屋』という演目の中で「松本留五郎(まつもと とめごろう)」という強烈なキャラクターを生み出しました。

 

▼桂枝雀の代書屋を聴く

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現役落語家では、人間国宝・柳家小三治(やなぎや こさんじ)師匠が演じるキャラクターの存在感が秀逸です。

 

▼柳家小三治

▼柳家小三治の落語を聴く

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その他、順不同で紹介しますと、立川志の輔師匠、三遊亭円楽師匠、柳亭市馬師匠、古今亭菊之丞師匠、春風亭一之輔師匠、瀧川鯉昇師匠、三遊亭遊雀師匠、桂文珍師匠、桂ざこば師匠などがおすすめです。

おすすめしている理由としてはいずれも、人物描写が卓越していることで定評のある落語家さんだからです。

 

できればCDや動画で終わらず、ライブの落語ではどのように演じられるかを確認するためにも、寄席や落語会にも出掛けてみてください。

きっと違う種類の感動が生まれるはずですから。

 

以上、落語を100倍楽しむ為の基礎知識でした。次のページから第2章。第2章ではとにかく笑える、爆笑落語(滑稽噺)をたくさん紹介していきます。

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著者:なかむら治彦

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落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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落語の演目は「古典落語」「新作落語」に分けられる

 

落語の演目の種類は「古典落語」と「新作落語」に分けることができます。

古典落語と新作落語の違いは何を基準に区別するのかというと、一言でいえば「年代」です。

「古典落語」は江戸中期から明治にかけて作られた演目で、「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のことを指します。

 

 

以下では、古典落語と新作落語の特徴について詳しく解説していきます。

 

古典落語とは

 

古典落語とは「江戸中期から明治にかけて作られた演目」を指します。

 

古典落語は、決まった同じネタを色々な落語家さんが何度も行います。

ネタは、昔の落語家さんから新しい落語家さんへと引き継がれていきます。

長い年月をかけて師匠から弟子に受け継がれていくなかで、それぞれの時代の落語家によって練り上げられ、洗練されていくので、現代人の心にも響く名作が多いのです。

 

【編集部コラム】古典落語の進化
古典落語は先代から受け継がれてきた噺を全く同じに演じるという訳ではありません。ストーリーの大まかな流れは変わらなくても自分なりのアレンジを加え、登場人物の言葉遣いが変わったり、オチが変わったりすることがあります。そうして練り上げられているからこそ、現代人の心に響く名作が多いのです。

 

古典落語の演目の多くは江戸時代が舞台で、江戸庶民の暮らしぶりや江戸の文化、風俗を取り扱っているものが多くあります。

 

 

古典落語の数

 

演目の数ははっきりとはわかりませんが現在寄席で演じられているのは200~300くらいと言われており、やる人がほとんどいないものも全部合わせると、その数は500とも800とも言われています。

古典落語の多くは作者不明で、一部の演目を除いてそのほとんどは誰が作ったのかわかりません。

 

古典落語の種類

 

古典落語をジャンル分けすると、「滑稽噺」と「人情噺」の2種類があります。

 

滑稽噺

 

滑稽噺は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」のことです。

間抜けでドジな与太郎や、口が達者な江戸っ子、ぐうたらな若旦那などが活躍する噺でそのユニークな言動におかしみが滲み出て笑えます。

 

与太郎
落語に登場する架空の人物。楽天的な性格で失敗ばかり。「愚か者」の代名詞となっている。

 

一般的に落語と聞いてイメージするのはこの滑稽噺のほうでしょう。

 

滑稽噺のおすすめの演目は「天狗裁き」「粗忽長屋(そこつながや)」「代書屋(だいしょや)」です。こちらの演目については次の章(第2章)で解説いたします。

 

人情噺

 

人情噺は「ストーリー性を重視し、心温まる人情を描いた落語」のことをいいます。

扱うテーマは、夫婦愛や親子愛、友情がメインです。

オチはあるものとないものがありますが、あったとしても、取ってつけたような地口オチ(じぐちおち:ダジャレ)になっていることが多いです。

人情噺でおすすめの演目は「芝浜」「子別れ」「藪入り(やぶいり)」です。

こちらの演目についても次の章で解説しています。

 

古典落語の魅力

 

はじめに」でもお伝えしましたが「古典」と名前に付いていますが、特別な知識なく楽しめます。

江戸や明治、古典落語の世界に生きる人々の、のんびりとした日常に触れるのは「情報過多でストレスが多い現代人だからこそ価値がある」と考えています。

心が楽しいときでも寂しいときでも、古典落語がそばにあるだけでちょっとラクになれる、そんな不思議な力が古典落語にはあると私は思っています。

 

古典落語の魅力は「はじめに」のページで詳しく解説!

 

新作落語とは

 

「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のこと」を指します。また「創作落語」ともいいます。

落語家自身による創作が多いですが、落語作家が作ったものもあります。次々に作られるので、数を把握することは不可能です。

 

落語作家
落語の脚本を作る人のこと。昭和のラジオやテレビの時代に演芸番組に携わり、台本を提供していた。現在で言う放送作家のような立ち位置。「玉川一郎」「古城一兵」らが活躍した。

 

新作落語はその時代の旬のトピックや時事ネタを取り入れて作られることが多いので、古典に比べて内容がわかりやすく、落語初心者でも爆笑できるという特徴があります。

 

 

新作落語の楽しみ方

 

また、作者である落語家独自の世界観が色濃く反映されるので、バラエティ豊かな噺を楽しむことができます。

基本的に噺の舞台は現代ですが、未来を描いたり、異次元の世界を描いたものなどもたくさんあり、「とにかくおもしろければいい!」といった感じで次々と生み出されています。

現代を描くだけが新作ではなく、稀ではありますが、江戸を舞台にした作品もあり、これを「まげもの新作」と呼びます。

落語家には、古典しかやらない人もいれば、新作専門の人もいますし、古典も新作も両方やるという人もいます。最近では古典と新作のボーダーがあまりなくなり、両方やるという落語家も増えてきています。

 

古典と新作両方やる落語家
柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)さんは、古典と新作どちらも行います。新作落語では独自の世界観で楽しませてくれる爆笑必至です。また、古典落語にも定評があり喬太郎さんならではの解釈や演出を加え「喬太郎の古典」にしてしまうところがあります。喬太郎さんの魅力の解説は第3章にて!(現在第1章)

 

新作落語はどちらかというと、肩の力を抜いて聴ける爆笑ネタが多いですが、落語である以上は、やはりそこには普遍的なテーマやストーリー(夫婦愛、親子愛、友情、生と死、出世劇、逆転劇、転落人生など)があります。

 

時代を選ばないテーマやストーリーであるからこそ、演じられるたびに洗練されていき、将来的にはそれが古典と呼ばれる演目になり、後世までずっと残り続けていく可能性もあります。

新作落語を演じる落語家は、それが古典になることを目指しているというわけではありませんが、そうなる可能性があるという意識で聴いてみるというのも、新作落語の楽しみ方のひとつだと思います。

 

▼筆者おすすめ新作落語、春風亭昇太さんの「力士の春」収録作品

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次のページでは「江戸落語」と「上方落語」の違いについてお伝えします。内容は同じでも、江戸落語では「時そば」上方落語では「時うどん」と演目のタイトルが違ったりするのです。

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目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから