はじめに ~落語の入口は百人百様~

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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はじめに

 

最近、ドラマや漫画などで落語界が舞台の作品がヒットした影響で、落語に対する注目度が急激に高まっています。

そんな落語ブームの流れとともに、動画サイトで落語を聴くようになった人や、初めて寄席に足を運んでみた人もきっと多くいらっしゃることでしょう。

 

▼近年ヒットした落語が題材(又は落語家が主要人物)の作品例

タイトル メディア 備考
「わろてんか」(2017)

テレビドラマ

【内容:芸能事務所・吉本興業がモデルとなった物語。多くの漫才師や落語家が登場する。】

平均視聴率約24.2%(ビデオリサーチ社調べ)
「昭和元禄落語心中」(2010~)

漫画・アニメ・テレビドラマ

【内容:弟子を取らない事で有名な落語の名人とその周りの人物の人間模様が描かれた物語】

漫画は累計190万部を超える大ヒット
「赤めだか」(2015・TBSドラマ)

エッセイ・テレビドラマ

【内容:落語の名人・立川談志とその弟子立川談春の物語(原作は立川談春のエッセイ)】

書籍発行部数10万部、テレビドラマ視聴率約10%(ビデオリサーチ社調べ)

 

その一方で、「これから落語に興味を持ってみたいけど、どこから入っていいのか分からない…」と、キッカケのつかみ方を迷っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

落語の演目数

 

ひとくちに『落語』と言いましても、様々なバリエーションが存在していることは皆さんお察しのことと思います。

では、落語っていったい何種類ぐらいあると思いますか?

 

落語の演目(演じられる題目)には、何十年何百年と伝承されている古典落語と、最近創作された新作落語(創作落語とも呼ばれます)の2パターンがあります。

 

古典落語と新作落語

古典落語と新作落語の定義は諸説あるため、一概には言えませんが、理解しやすい基準としましては、作者が明確なのが新作落語で、長年にわたり不特定多数の作者の手が加わって出来上がったのが古典落語という考え方です。

その一方で、一代限りで演者が途絶えるのが新作落語、何代もの演者によって口伝され継承されるのが古典落語、という考え方もあります。その意味では、昭和に完成した新作落語の中にも、多くの演者に受け継がれて既に古典化した演目もあります。

2015年に亡くなった桂米朝師匠が1950年代に自作した新作落語『一文笛』などは古典化したその好例でしょう。

 

そのうち古典落語の演目は、現在寄席や落語会でよく演じられているものがざっと200種類ほど。

上演回数の少ない珍しい古典落語を含めると、およそ500種類ほどと考えられています。

一方の新作落語の演目は、誕生後に世代を超えて後世に伝わり古典化した作品(古典落語のように受け継がれていくようになった演目)もあれば、昨日できたてホヤホヤの作品もあります。

中には落語家さんが1回高座(落語の舞台)で喋ったきり、日の目を見なくなる作品まであるため、新作落語の実数は誰にも分かりません。

 

 

以上を総合的に考えれば、現在コンスタントに演じられている落語の数は、古典・新作合わせて250~300種類ほどと考えるのが妥当でしょうか。

参考までに、東大落語会が編集した古典落語の演題事典『増補 落語事典』(青蛙房)には、約1,260作もの古典落語が紹介されています。

ただしその中には、小ばなし(数十秒で終わる短い落語)や演じ手が全くいない幻の演目が全体の何割かを占めています。

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また、『増補 落語事典』が刊行された1973年以降、新たに古典化した新作落語も数多くあります。

 

 

奥が深い芸能

 

これだけ種類がある落語ですから、当然ストーリーもまちまちですし、多くの場合、個々の落語家さんによって演出も異なります。

しかも、落語という芸能ジャンルに対する定義が個人個人で違うものですから、話は一層ややこしくなります。

 

「あなたにとって落語とは?」

そう質問されて、

ある人は「伝承話芸」と答え、

またある人は「お笑いの一ジャンル」、

またある人は「ストーリーテリング」、

またある人は「一人芝居」、

またある人は「言葉によるライブ芸

と答えます。

これらはいずれも視点が微妙に異なるものの、すべて正解と言えます。つまりそれだけ様々な要素を持ち合わせている奥の深い芸能が、落語なのです。

 

 

とはいえ、この定義というのがクセモノで、あまり固定観念を強く抱きすぎると、ファーストインプレッション(第一印象)で失敗する確率が高まってしまう恐れが出てきます。

いわく、「落語で笑いたかったのに全然笑えない内容だった」

「火の出るような熱い演技を期待して行ったら世間話みたいなゆるい口調で驚いた」

「落語の世界に没入したかったのに集中できなかった」

「『笑点』みたいな大喜利が見たかったのに「寄席ではやっていませんよ」と言われた」

等々。

初めての生落語に「思ってたんと違う…」とガッカリ、というこうした残念な事例の数々は、実は珍しくなく、落語初心者のあるあるエピソードでもあるのです。

 

 

ファーストインプレッションでガッカリしないためには、あまりシチュエーションにとらわれず、「とりあえず聴いてみよう」くらいの寛容な受け入れ体勢で臨むのがベターかもしれません。

 

 

回りくどい説明をしてしまいましたが、つまり、落語初心者にとって「入口選びはとても大切」ということをお伝えしたかったのです。

このWebonでは、あなたが落語に対して最高のファーストインプレッションを得られるように、条件を絞りながら最終的にあなたの好みにマッチした落語をご提案する処方箋システムで、落語の入口にご案内したいと思います。

 

まずは落語の定番中の定番からご紹介していきます。

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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