初心者におすすめ古典落語の演目11選 【滑稽噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選を紹介しています。

 

このページでは、ただただ笑えるおもしろい落語を3つ紹介。

落語といえばやっぱり、おもしろおかしい「滑稽噺」!

難しいことは考えずに、とにかく笑えることが落語の魅力です。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【滑稽噺編】

6 天狗裁き

あらすじ

 

家で寝ている八五郎は、笑ったりぶつぶつ言ったりしている。

それを見た女房が熊五郎を起こし「いったいどんな夢を見たんだい?」とたずねるが、熊五郎は「夢なんか見ていない」と言う。

 

 

嘘をつくなと問い詰めるが熊五郎は「見ていない」の一点張りで、ついには喧嘩になってしまう。

そこへ隣人が割って入り喧嘩をおさめる。しかし隣人もどんな夢なのか知りたくなり「女房に言えなくても、俺には言えるだろう」とたずねる。

しかし熊五郎は見ていないと言い、またもや喧嘩になるが今度は大家が来て仲裁をする。

 

女房と隣人の男を外へ出すと、大家が「親同然の大家になら言えるだろう」と迫る。

ここでも見ていないと答えると「だったら長屋から出ていけ」と無茶なことを言われ、困った熊五郎は奉行所(現在でいうところの裁判所)へ願い出る。

 

奉行の裁きにより長屋を出ていかなくてもよくなって熊五郎が喜んでいると、お奉行さまも「奉行になら喋れるだろう」と夢の話を聞きたがった。

「お奉行さまでも、見ていないものは喋れません」と答えると奉行の怒りを買って木に吊るされてしまう。

 

 

このまま死ぬのかと諦めかけたとき、一陣の風が吹いて熊五郎は飛ばされてしまう。

気がつけば山の中。

そして目の前には大天狗が立っていた。

 

 

–ネタバレ–

 

大天狗は八五郎を山奥へと連れて行くと「どんな夢だ。教えないと八つ裂きにする」と言われる。「うー、助けてくれー」と言う八号郎。

そこへ「ちょいとお前さん起きよ。どんな夢見てたんだい」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

見ていない夢のことでいろんな人から責められ、思わぬ事態に陥ってしまう熊五郎にはとても気の毒ですが、思わず笑ってしまいます。

天狗が出てくる不思議な噺ですがスピーディーな展開で飽きさせません。

そして最後のオチは秀逸だと思います!

 

【編集部コラム】実は続編がある?
「天狗裁き」は長編落語である「羽団扇」の前半部分の物語が独立した演目です。

そのため「羽団扇」では「天狗裁き」の続編のような噺を聴くことができます。「羽団扇」では、天狗に脅されていたところからなんとか脱出した後に、七福神と遭遇するという奇想天外な展開になっています。

 

▼筆者おすすめ「天狗裁き」が鑑賞できる作品

⚫特選!!米朝落語全集 第四集(DVD)

 

 

7 粗忽長屋(そこつながや)

あらすじ

 

同じ長屋に住む、八五郎と熊五郎は兄弟のように仲がいい。

ある日、日課である浅草の観音様詣に来た八五郎はその帰りに道端の人だかりに気づく。人だかりに聞くところ、行き倒れだという。

死体を確認した八五郎は「こいつは今朝会った熊五郎だ」と言う。

 

 

しかし役人は「こいつは昨晩からここにいるから、お前が言ってるのとは別人だ」と説明するが、熊五郎は「当人は死んでるのを忘れてんだよ、当人をここへ連れて来るよ」などと言い残し、急いで長屋へ戻った。

 

八五郎から話を聞いた熊五郎は「そんなはずはない」と反論するが「お前は粗忽者(そそっかしい人)だから自分が死んだことに気づいてないんだ」などと言われ、納得してしまう。

自分の死体を引き取るために、熊五郎は八五郎と一緒に浅草観音へ向かうのだが・・・。

 

–ネタバレ–

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死体を確認した後、死体が自分であると熊五郎は納得してしまう。

死骸を2人で持ち上げようとすると役人に、「(死骸は)お前さんじゃないんだから」と諭される。

「いいから遠慮するな、自分の死骸なんだから」と遠慮せずに死骸を抱いてしまうことを促す八五郎。

すると熊五郎が

「でも兄貴、なんだかわからなくなっちゃった。抱かれているのはたしかにおれだけれど、抱いてるおれは、一体どこのだれなんだろう」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「当人が自分の死体を引き取りに行く」という、あまりに不思議な噺ですが、八五郎と熊五郎のすっとぼけたやりとりが最高に面白い落語です。

粗忽者(そこつもの)とは「そそっかしい人」のことで、落語には「粗忽の〇〇」という演目がたくさんあります。

その粗忽シリーズの中でも個人的に一番好きなのが「粗忽長屋」です。

ぜひこの不思議でバカバカしい世界観を味わってください。

 

他の粗忽シリーズの例

⚫粗忽の釘

上方落語では「宿替え」として演じられる。江戸落語では「粗忽の釘」。そそっかしい男が引っ越しを行い、トラブルを起こす噺。

⚫粗忽の使者

原話は1701年に出版された「軽口百登瓢箪」に収録された話。「尻ひねり」とも呼ばれる演目。粗忽者の侍が使者として偉い人の屋敷に出向きトラブルを巻き起こす。

 

▼筆者おすすめ「粗忽長屋」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平 落語集「粗忽長屋」「干物箱」(CD)

 

8 代書屋

あらすじ

 

自分で字が書けない男が、代書屋(=本人の代わりに書類や手紙などの代筆を行う商売)のもとに履歴書を代わりに書いてくれとやって来る。

代書屋はさっそく仕事に取りかかるが、何を聞いてもトンチンカンな答えばかりで一向に前に進まない。

 

 

名前、生年月日、住所、何ひとつまともに答えることができない男に困り果てながらも、必死に履歴書を完成させようと代書屋は四苦八苦。

果たして履歴書は完成するのか・・・。

 

–ネタバレ–

 

これ以上聞いても意味がないと思った代書屋は、最後に「賞罰」を聞く。

罰がないかを確認するために聞いたが実は賞があると言う「大きな賞状もろて、新聞に写真入りで載った」と聞いて代書屋は驚く。

「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を八十六食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り・・・・・」

「そんなアホなこと書けるかいな」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

もとは上方落語ですが現在は東京の落語家も演じています。

昭和の初めに四代目・桂米團治が作った新作落語ですが、今では古典に近い演目となっており多くの落語家が演じています。

 

▼四代目・桂米團治

 

代書屋は何人かの客が出てくる噺ですが最後までやることは希で、ほとんどが一人目の客のくだりで噺を切ります。(上記ネタバレ部分は一人目の客のくだりまで紹介)

とにかく笑いどころ満載の落語ですっとんきょうな掛け合いは爆笑ものです。

 

▼筆者おすすめ「代書屋」が鑑賞できる作品

⚫柳家権太楼2「不動坊火焔」「代書屋」-「朝日名人会」ライヴシリーズ22(Amazon Music Unlimited)

 

このページでは滑稽噺を紹介してきました。落語には夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」があります。次のページでは人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を紹介します。

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