【子別れ】あらすじや見所など落語ファン歴10年による解説!

 

落語は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」滑稽噺と「心温まるような人情を描いた落語」である人情噺というジャンルに分けることができます。

人情噺の中でおすすめなのが「子別れ」です。

このページでは「子別れ」のあらすじや、どの落語家の「子別れ」を聴くのがおすすめかなどを徹底解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。また、このページの情報の一部は落語作家なかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』を参考にしております。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

子別れとは

 

『子別れ』(別題『子は鎹』『強飯の女郎買い)は離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

(解説:なかむら治彦)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

「子別れ」を聴く方法

 

「子別れ」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「子別れ」が聴けるサービスを紹介いたします。

 

audible

 

audibleでは「子別れ」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「子別れ」を聴くことができます。

Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「子別れ」の紹介でした。その他落語の人情噺の演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

【芝浜】あらすじや見所など落語ファン歴10年による解説!

 

落語は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」滑稽噺と「心温まるような人情を描いた落語」である人情噺というジャンルに分けることができます。

人情噺の中でおすすめなのが「芝浜」です。

このページでは「芝浜」のあらすじや、どの落語家の「芝浜」を聴くのがおすすめかなどを徹底解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。また、このページの情報の一部は落語作家なかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』を参考にしております。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

「芝浜」とは

 

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

(解説:なかむら治彦)

 

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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実は落語がお芝居になることはずっと昔からあって、歌舞伎では『芝浜革財布(芝浜)』などの人気演目があります。

 

「芝浜」の誕生の経緯

▲初代三遊亭圓朝

 

「芝浜」を作ったのは「近代落語の祖」と称される初代三遊亭圓朝(1839-1900)だといわれています。

初代三笑亭可楽(さんしょうてい からく)が始めたとされる「三題噺」というものがあります。これはお客さんからお題を3つもらい、それを使った落語をその場で作って演じるというものです。

落語の名作「芝浜(しばはま)」は圓朝が三題噺で作った演目といわれています。(『笹飾り』『増上寺の鐘』『革財布』という3つのお題で作られたと言われています。

 

 

 

「芝浜」が十八番の落語家

七代目立川談志

名前 七代目 立川談志(ななだいめたてかわだんし)
生年月日 戸籍上は1936年1月2日(実際は1935年12月2日生まれ)/没年2011年11月21日
「自身が司会を務めるでラジオ番組でゲストを残して途中で帰る」「居眠りした客を追い出す」など破天荒な行動が目立ち、好き嫌いが分かれる落語家。独自の落語の型を持ち落語家としての評価は著しく高い。日本テレビ「笑点」の初代司会者を務める。また同番組は談志が企画して実現したものである。ヘアバンドやメガネを愛用し、自身のあごや頬をなでたりする癖、また「やだね~」などの口癖があるなどの個性的な振る舞いがあり、よくものまねされる対象となった。

 

談志さんの十八番として真っ先に挙がる噺が「芝浜」です。

談志さんの「芝浜」は落語史に残る傑作であり、談志さん自身こだわりを持って演じていました。

注目なのは、従来の落語からすると過剰とも思えるほどの「感情移入の凄さ」です。

登場人物に完全に入り込み、実際にそこにその人物がいて喋っているのではないかと思わせるほどの圧倒的な迫力があります。

特に2007年によみうりホールで演じた「芝浜」は、「伝説の名演」として落語界で語り継がれています。

「落語の神様が談志に乗り移って登場人物に台詞を喋らせた」といわれるほど圧倒的に凄い「芝浜」であったそうです。

「芝浜」は、落語通ではない人でも最も談志落語の「凄み」を感じやすい演目だと思います。

 

▼2007年よみうりホールで行われた「伝説の名演」の「芝浜」が収録されている作品

⚫談志CD大全 21世紀BOX

 

立川談志さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介! 立川談志さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介!

 

三代目 古今亭志ん朝

名前 三代目 古今亭志ん朝(さんだいめ ここんてんしんちょう)
生年月日 1938年3月10日/没年2001年
落語初心者が聴いてもわかりやすいのが特徴。戦後の東京落語家を代表する「落語四天王」の1人である。また「東の志ん朝、西の枝雀」と称されることもあった。「ビール」「焼きおにぎり」など数多くのCMに出演しており、高級ふりかけ「錦松梅」のCMのキャラクターとして知名度を獲得する。父は5代目古今亭志ん生。テレビ・映画にも数多く出演しフジテレビ「サンデー志ん朝」では司会をつとめる。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

 

「江戸前のダンディズム」「粋な江戸っ子噺家」などといわれる志ん朝さんは、とにかく粋で本格的な江戸っ子落語家であったといいます。

江戸言葉を自在に操る志ん朝さんの話芸を聴いていると、そこにリアルな江戸の情景がありありと浮かび上がってきます。

なぜそうしたものが身についていたのかは、確かなことはわかりません。ただ、やはり「明治に生まれた芸人の家庭で育つ(父は落語家・五代目 古今亭志ん生)」という、宿命的な生い立ちが志ん朝さんの芸人としてのベースにあるのではないかと思います。

並みの芸人のように10代の後半から20代で弟子入りするのと、その家庭で生まれ育つのでは芸人として、そして人としての”成分”が違ってくるのではないでしょうか。

志ん朝さんの十八番「芝浜」。志ん朝さんの気持ちのいい江戸弁によって、江戸に生きた夫婦の日常をリアルに描き出しています。

 

▼志ん朝さんの江戸っ子を堪能できる「芝浜」が収録されている作品

⚫落語名人会(14)[CD]

 

古今亭志ん朝さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介! 古今亭志ん朝さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介!

 

「芝浜」を聴く方法

 

「芝浜」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「芝浜」が聴けるサービスを紹介いたします。

 

audible

 

audibleでは「芝浜」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「芝浜」を聴くことができます。

Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「芝浜」の紹介でした。その他落語の人情噺の演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選をご紹介しております。

前ページでは「滑稽噺」をご紹介しましたが、落語はおもしろおかしい滑稽噺だけではありません。

夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」と呼ばれる演目が数多くあります。

そんな人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を3つご紹介します。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【人情噺編】

9 芝浜(しばはま)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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▼筆者おすすめ「芝浜」を鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬1「片棒」「芝浜」-「朝日名人会」ライヴシリーズ10(Amazon Music Unlimited)

 

10 子別れ

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。

上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

11 藪入り(やぶいり)

あらすじ

 

奉公(=住み込みで主人に仕えること)に出た息子の亀吉が、しばらくぶりに藪入り(年に二度の休暇)で帰って来る。

その前夜、父親はそわそわして寝つけない。

「あれも食べさせたいこれも食べさせたい」とうるさいのなんの。

 

 

まだ夜が明けないうちから、今度は息子と一緒に出かけたい場所を次々と挙げていき「落ち着け」と女房にたしなめられる。

そうしているうちにやっと夜が明ける。

父親が待ちきれない様子で家の前の掃除をしているところへ亀吉が帰って来る。

立派な挨拶をする息子に両親は感動。

 

 

息子を湯屋(=銭湯)へ送り出したあと、母親が亀吉の財布に大金が入っていることに気づく。

「ひょっとしたら店の金に手をつけたんじゃないか」と疑い、帰って来た亀吉を問い詰める。

口論となって父親は亀吉に手をあげ、母親はそれを制止し泣きながら問いただすと

「このごろペストが流行っているので、ネズミを捕まえて警察に持っていったら一匹十五円の懸賞に当たった。このお金は今日まで主人に預かってもらっていたけど、今日は藪入りだから持って帰って両親を喜ばせてやれと、主人が持たせてくれた」

というようなことを答える。

 

–ネタバレ–

 

両親はそれを聞いて安心する。

亀吉に父親は「これからも主人を大切にしなよ」と教える。そして

「これもやっぱりチュウ(忠とネズミの鳴き声をかけている)のおかげだ」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

息子が帰って来るのを心待ちにする両親の心情が伝わってくる、ほっこりした気持ちになる噺です。

うきうきが止まらず、とんちんかんな言動をする父親、それを温かく見守っている母親、立派に成長した息子、たがいに相手を思いやりながらも起こってしまう、気持ちのすれ違いが聞きどころです。

 

▼筆者おすすめ「藪入り」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平落語集 井戸の茶碗/藪入り(CD)

 

この第2章ではおすすめ古典落語についてお伝えしました。

次の章(第3章)からは実際に落語を鑑賞する方法についてお伝えします。落語が行われている「寄席」は飲食もオーケーであり気軽に入れるところなので、ふらっと足を運んでいただければと思っております。

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【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【滑稽噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選を紹介しています。

 

このページでは、ただただ笑えるおもしろい落語を3つ紹介。

落語といえばやっぱり、おもしろおかしい「滑稽噺」!

難しいことは考えずに、とにかく笑えることが落語の魅力です。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【滑稽噺編】

6 天狗裁き

あらすじ

 

家で寝ている八五郎は、笑ったりぶつぶつ言ったりしている。

それを見た女房が熊五郎を起こし「いったいどんな夢を見たんだい?」とたずねるが、熊五郎は「夢なんか見ていない」と言う。

 

 

嘘をつくなと問い詰めるが熊五郎は「見ていない」の一点張りで、ついには喧嘩になってしまう。

そこへ隣人が割って入り喧嘩をおさめる。しかし隣人もどんな夢なのか知りたくなり「女房に言えなくても、俺には言えるだろう」とたずねる。

しかし熊五郎は見ていないと言い、またもや喧嘩になるが今度は大家が来て仲裁をする。

 

女房と隣人の男を外へ出すと、大家が「親同然の大家になら言えるだろう」と迫る。

ここでも見ていないと答えると「だったら長屋から出ていけ」と無茶なことを言われ、困った熊五郎は奉行所(現在でいうところの裁判所)へ願い出る。

 

奉行の裁きにより長屋を出ていかなくてもよくなって熊五郎が喜んでいると、お奉行さまも「奉行になら喋れるだろう」と夢の話を聞きたがった。

「お奉行さまでも、見ていないものは喋れません」と答えると奉行の怒りを買って木に吊るされてしまう。

 

 

このまま死ぬのかと諦めかけたとき、一陣の風が吹いて熊五郎は飛ばされてしまう。

気がつけば山の中。

そして目の前には大天狗が立っていた。

 

 

–ネタバレ–

 

大天狗は八五郎を山奥へと連れて行くと「どんな夢だ。教えないと八つ裂きにする」と言われる。「うー、助けてくれー」と言う八号郎。

そこへ「ちょいとお前さん起きよ。どんな夢見てたんだい」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

見ていない夢のことでいろんな人から責められ、思わぬ事態に陥ってしまう熊五郎にはとても気の毒ですが、思わず笑ってしまいます。

天狗が出てくる不思議な噺ですがスピーディーな展開で飽きさせません。

そして最後のオチは秀逸だと思います!

 

【編集部コラム】実は続編がある?
「天狗裁き」は長編落語である「羽団扇」の前半部分の物語が独立した演目です。

そのため「羽団扇」では「天狗裁き」の続編のような噺を聴くことができます。「羽団扇」では、天狗に脅されていたところからなんとか脱出した後に、七福神と遭遇するという奇想天外な展開になっています。

 

▼筆者おすすめ「天狗裁き」が鑑賞できる作品

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7 粗忽長屋(そこつながや)

あらすじ

 

同じ長屋に住む、八五郎と熊五郎は兄弟のように仲がいい。

ある日、日課である浅草の観音様詣に来た八五郎はその帰りに道端の人だかりに気づく。人だかりに聞くところ、行き倒れだという。

死体を確認した八五郎は「こいつは今朝会った熊五郎だ」と言う。

 

 

しかし役人は「こいつは昨晩からここにいるから、お前が言ってるのとは別人だ」と説明するが、熊五郎は「当人は死んでるのを忘れてんだよ、当人をここへ連れて来るよ」などと言い残し、急いで長屋へ戻った。

 

八五郎から話を聞いた熊五郎は「そんなはずはない」と反論するが「お前は粗忽者(そそっかしい人)だから自分が死んだことに気づいてないんだ」などと言われ、納得してしまう。

自分の死体を引き取るために、熊五郎は八五郎と一緒に浅草観音へ向かうのだが・・・。

 

–ネタバレ–

 

死体を確認した後、死体が自分であると熊五郎は納得してしまう。

死骸を2人で持ち上げようとすると役人に、「(死骸は)お前さんじゃないんだから」と諭される。

「いいから遠慮するな、自分の死骸なんだから」と遠慮せずに死骸を抱いてしまうことを促す八五郎。

すると熊五郎が

「でも兄貴、なんだかわからなくなっちゃった。抱かれているのはたしかにおれだけれど、抱いてるおれは、一体どこのだれなんだろう」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「当人が自分の死体を引き取りに行く」という、あまりに不思議な噺ですが、八五郎と熊五郎のすっとぼけたやりとりが最高に面白い落語です。

粗忽者(そこつもの)とは「そそっかしい人」のことで、落語には「粗忽の〇〇」という演目がたくさんあります。

その粗忽シリーズの中でも個人的に一番好きなのが「粗忽長屋」です。

ぜひこの不思議でバカバカしい世界観を味わってください。

 

他の粗忽シリーズの例

⚫粗忽の釘

上方落語では「宿替え」として演じられる。江戸落語では「粗忽の釘」。そそっかしい男が引っ越しを行い、トラブルを起こす噺。

⚫粗忽の使者

原話は1701年に出版された「軽口百登瓢箪」に収録された話。「尻ひねり」とも呼ばれる演目。粗忽者の侍が使者として偉い人の屋敷に出向きトラブルを巻き起こす。

 

▼筆者おすすめ「粗忽長屋」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平 落語集「粗忽長屋」「干物箱」(CD)

 

8 代書屋

あらすじ

 

自分で字が書けない男が、代書屋(=本人の代わりに書類や手紙などの代筆を行う商売)のもとに履歴書を代わりに書いてくれとやって来る。

代書屋はさっそく仕事に取りかかるが、何を聞いてもトンチンカンな答えばかりで一向に前に進まない。

 

 

名前、生年月日、住所、何ひとつまともに答えることができない男に困り果てながらも、必死に履歴書を完成させようと代書屋は四苦八苦。

果たして履歴書は完成するのか・・・。

 

–ネタバレ–

 

これ以上聞いても意味がないと思った代書屋は、最後に「賞罰」を聞く。

罰がないかを確認するために聞いたが実は賞があると言う「大きな賞状もろて、新聞に写真入りで載った」と聞いて代書屋は驚く。

「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を八十六食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り・・・・・」

「そんなアホなこと書けるかいな」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

もとは上方落語ですが現在は東京の落語家も演じています。

昭和の初めに四代目・桂米團治が作った新作落語ですが、今では古典に近い演目となっており多くの落語家が演じています。

 

▼四代目・桂米團治

 

代書屋は何人かの客が出てくる噺ですが最後までやることは希で、ほとんどが一人目の客のくだりで噺を切ります。(上記ネタバレ部分は一人目の客のくだりまで紹介)

とにかく笑いどころ満載の落語ですっとんきょうな掛け合いは爆笑ものです。

 

▼筆者おすすめ「代書屋」が鑑賞できる作品

⚫柳家権太楼2「不動坊火焔」「代書屋」-「朝日名人会」ライヴシリーズ22(Amazon Music Unlimited)

 

このページでは滑稽噺を紹介してきました。落語には夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」があります。次のページでは人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を紹介します。

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)
 

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目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

Endless SHOCKのストーリー

Webon紹介目次著者
「Endless SHOCK(エンドレスショック)」は堂本光一さん主演の日本一チケットが取れないと言われているミュージカル。「フライング」「階段落ち」などの演目も素晴らしいですが、ストーリーの素晴らしさをもっと知っていただきたい。帝国劇場での鑑賞経験はございませんが、精一杯魅力をお伝えします。

「『Endless SHOCK』入門 ~堂本光一主演ミュージカル~」はこちらから!

著者:しあ

40代後半女性。Endless SHOCKは博多座にて多数鑑賞。ライブが大好きで今まで行ったライブは数百本。全部チケットの半券をとっているのでとても大切な想い出です。私の好きなアーティストの魅力を知っていただければ、と思います。

お問い合わせはこちらから

 

『Endless SHOCK』目次へ  (全14ページ)

 

Endless SHOCK(エンドレス ショック)は、テレビや雑誌などでは華やかなショーの部分が注目を集めますが、実際にはどんなストーリーなのかよく知らない方も多いのでは。

このページでは「Endless SHOCKのストーリー」について詳しくご紹介します。

 

出演者で変わる役名

 

ストーリーをご紹介する前に役名についてご説明いたします。

 

Endless SHOCKではライバル役の名前は、演じる方によって変わります。

ライバル役が屋良朝幸(やら ともゆき)さんだった場合は、名前が「ヤラ」に。

ライバル役が内博貴(うち ひろき)さんだった場合は、名前が「ウチ」になります。

 

本ページのストーリー紹介ではライバル役を「ウチ」とさせていただいております。

私は今までに内博貴さんバージョンを多く観ていて、内さんのライバル役が大好きなのでライバル役には内さんを想定しています。

ここでは出演者にこだわらず、あくまでもストーリーを知っていただければと思います。

 

▼内博貴氏

▼主な役名

役名
主人公 コウイチ
ライバル ウチ
劇場のオーナー オーナー
オーナーの娘 リカ

 

ストーリー

第1幕

 

ブロードウェイを目指すコウイチ率いるショーカンパニー。

 

ブロードウェイ
アメリカの舞台芸能の中心地。

<筆者補足>ショーカンパニー

ショーカンパニーは、日本語訳すると「劇団」などの意味があります。

「劇団」というと、一つのお芝居を最初から最後までやるイメージですが、光一たちのカンパニーは、ショー・レヴュー(演芸)などのイメージです。

ショー・レヴューはいくつもの演目を披露している感じで、劇中では「カンパニー」という言葉で通しているので、これを日本語で「劇団」というのはSHOCKファンとしては違和感があります。

「ショーカンパニー」を日本語で表現すると「劇団のようなもの」になるかと思います。

 

毎日オフブロードウェイ(=ニューヨーク・マンハッタンにある小さい劇場)の小劇場で華やかなショーを繰り広げます。

そんな中の休演日、みんなでブロードウェイへ遊びに。

そこで魅力的なパーカッショニスト(石川直)と出逢い、自分たちのショーに組み込めないかとコウイチ。

 

パーカッショニスト石川直
「パーカッショニスト」は打楽器奏者のこと。石川直氏は役で演じているだけではなく、自身もパーカッショニストである。

▼石川直氏

 

また、そこではコウイチとコウイチ率いるカンパニーを絶賛する新聞記事が。

オーナーは、ブロードウェイの大劇場「インペリアルガーデンシアター」からショーへの誘いがあることをみんなに明かします。

浮かれる仲間たち。

 

コウイチは「大劇場だからいいとは限らない、最高のショーを創るために必要な場所…俺はそこを目指すだけ。」と。

 

コウイチにライバル心を燃やし、メジャーになりたいウチにとっては大きなチャンス。

冷静に「周りが見えなくなったらおしまいだぞ。」と言うコウイチとウチは不穏な空気に…。

 

半年後、ブロードウェイのステージに立つコウイチ率いるカンパニー。

ショーを開けて半年も経つのに満員で大盛況。

そこへトラブルが…。

 

–以下ネタバレ的な内容を含む–

※読みたくない方は次のページ(ネタバレしたくない方用のページ)へ

 

公演中。

2幕の演目「ジャパネスク」まであと15分。

 

楽屋ではセットが舞台袖に引っ掛かるトラブルがあり、自分が出トチリ(=演劇中で出るのに失敗すること)したのはスタッフのせいだと怒り心頭のウチ。

「ステージは生き物だ、何かあってもそれに対処するもの。踊ってたって、歌ってたって、周りが見えてなきゃいいものは創れない。Show must go on 何があってもショーは続けなければならない」

と言うコウイチ。

 

ウチは、今までの鬱憤を爆発させコウイチと大喧嘩に。

 

「お前はもうステージに立つな!」とまで言われたウチは、2幕で使う刀を手に取り「Show must go onかよ」と吐き捨てるように言い楽屋を後にする。

 

2幕ジャパネスクでは、コウイチとウチの壮絶な殺陣のシーン。

 

▼殺陣のイメージ

 

本来はハッピーエンドで終わるはずのジャパネスク。

 

しかしコウイチがウチを追い詰めたところで、ウチが刀を落としてしまう。

機転を利かせて仲間がウチに予備の刀を持ってくる。

コウイチが受け取りウチに渡す瞬間、コウイチはそれが真剣(本当に切れる剣)だと気付く。

 

不敵な笑いを浮かべるウチ。

 

それを見たコウイチはセットに刀を突き刺し、ウチに「抜けーーーーー!!」と叫ぶ。パニックになったウチはその真剣を抜き、コウイチを刺してしまう。

 

血まみれのコウイチはセットの大階段から転がり落ちてしまう、そこで演目「ジャパネスク」の幕が下りる。

 

第2幕

 

事故から1年、コウイチは病院のベッドの上にいる。

 

ウチはショーが終わるといつもコウイチの病室を見に行っていた。

ウチはいつも同じ夢を見る。

夢の中では、コウイチが以前からやりたがっていたシェイクスピアが演じられていた。

「ハムレット」「リチャード3世」は現実の自分とリンク(どちらも「王位を狙って王を倒す」という内容が入っている物語)していて、ウチはいつも後悔と懺悔の想いに苦しめられていた。

 

シェイクスピア作品と自分(ウチ)がリンクするシーンは見所!次のページで解説! シェイクスピア作品と自分(ウチ)がリンクするシーンは見所!次のページで解説!
シェイクスピア
イギリスの劇作家。「ロミオとジュリエット」「ベニスの商人」など数多くの傑作を残す。「ハムレット」「リチャード3世」は共にシェイクスピアの作品。

 

–以下ネタバレ的な内容を含む–

※読みたくない方は次のページ(ネタバレしたくない方用のページ)へ

 

病院で「コウイチが亡くなった」と告げられるオーナーとリカ。

劇場へ戻ると、そこにはなぜか元気なコウイチの姿が…。

コウイチは入院していた際の記憶が無いという。

 

事故の後、カンパニーはオーナーの小劇場へ戻ったが、ウチは一人、インペリアルガーデンシアター(大劇場)でショーを続けている。

ウチを気にかけるコウイチは、リカ、仲間と共にウチのショーを観に。

 

ウチのショーに飛び入りしたコウイチにマスコミの取材が殺到。

ウチは一人歓喜の輪から外れている。

 

「コウイチのすごさは俺が一番わかってる。お前さえいなきゃ…なんで戻ってきたんだよ!」

 

そして「自分が予備の刀を真剣にすり替えた」と告白し、コウイチへの憧れ、嫉妬、報われないリカへの想いをぶちまける。

 

「どんなことがあってもショーを続けろ」と言っていたコウイチ、でもコウイチは立ち止まることも必要だったと気付く。

そして、コウイチは自分が病院で息を引き取っていたことを知り、自分にはもう残された時間がないと悟る。

コウイチとウチは和解し、もう一度一つになったカンパニー。

 

演目「夜の海」を演じた後に、コウイチは消えていきます。

 

コウイチは自分がいなくなることを知りながら、最後の瞬間まで命を燃やしショーに全てを捧げます。

 

この第1章ではEndles SHOCKの「歴史」「ストーリー」などの基礎知識についてお伝えしてきましたが、次の第2章からEndles SHOCKの数々の見どころについて解説いたします。

『Endless SHOCK』目次へ  (全14ページ)

 

 

目次著者

著者:しあ

40代後半女性。Endless SHOCKは博多座にて多数鑑賞。ライブが大好きで今まで行ったライブは数百本。全部チケットの半券をとっているのでとても大切な想い出です。私の好きなアーティストの魅力を知っていただければ、と思います。

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