おすすめヤクザ映画7選 ~東映実録映画から大ファンが厳選~

 

このページでは「おすすめヤクザ映画7選」を東映実録映画の中から厳選して紹介いたします。

東映実録映画は「東映(映画の会社)によって製作された実話をベースにしたヤクザ映画」のことです。

圧倒的なリアルなヤクザの世界が覗けるのが東映実録映画の魅力です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた世界観は、今の時代は規制によって製作するのは難しいと言えるでしょう。

ぜひ、そんなリアルなヤクザ映画の世界にどっぷり浸かってみてください!

※このページは東映実録映画の大ファンである國谷正明氏による『東映実録映画入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。

▼『東映実録映画入門』(全21ページ)

 

おすすめヤクザ映画7選!

① 仁義なき戦い

作品名 仁義なき戦い
公開 1973年1月13日
監督 深作欣二
脚本 笠原和夫
上映時間 99分
出演 菅原文太/松方弘樹/渡瀬恒彦/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫
暴力団の抗争をリアルに描いた本作は「現代ヤクザ映画の原点」とも称される。日本最古の映画雑誌「キネマ旬報」が選ぶ「70年代日本映画ベスト・テン」の第2位に選出される。シリーズは全5作品ある。

あらすじ】物語は敗戦直後の広島県呉市の闇市からはじまる。広能昌三は殺人を犯して刑務所に入ります。そこで土居組の若杉寛と義兄弟になり、広能は土居組と友好関係にあった山守組の一員になりヤクザの世界に足を踏み入れる。その後、市議会議員選を巡り土居組と山守組は対立関係になる。そして広能は土居組の組長の暗殺をすることに・・・。

 

「仁義なき戦い」は実際に起きたヤクザの抗争である「広島抗争」がモデルとなっている映画です。

 

 

「仁義なき戦い」は美能幸三氏(=ヤクザ。広島抗争の中心人物の一人)が獄中(ろうやの中)で綴った手記をベースにして映画化された作品です。

それまでのヤクザ映画というのは、時代劇の延長線上にあった任侠映画では侠客の生き様を美化して描くような作品でした。

それに対し「仁義なき戦い」では権謀術数の渦巻くヤクザの世界を社会の病巣として批判的に描くことで、ヤクザ映画に新境地を切り開きました。

 

物語の構成や人間関係が複雑化しており、一見しただけでは物語の全体像を把握しづらいという声も多いです。ただ、現実の人間関係に準じたその複雑怪奇な人間模様こそ「仁義なき戦い」の大きな魅力のひとつであるといえます。

 

② 実録・私設銀座警察

作品名 実録・私設銀座警察
公開 1973年7月4日
監督 佐藤純彌
脚本 神波史男、松田寛夫
出演 安藤昇、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、葉山良二、室田日出男、内田朝雄、待田京介、郷鍈治、藤浩子、中村英子、小林稔侍ほか

▼告知の映像

 

「実録・私設銀座警察」は「仁義なき戦い」シリーズをはるかに凌ぐ混沌とした内容であるため、観ていると思わず実録作品(実話を元にした作品)であることを忘れてしまうほどです。

「実録・私設銀座警察」は実録映画の例に漏れず、実在の人物をモデルにしたキャラクターを軸に物語が展開していきます。

しかし、実在の人物をモデルにとらない架空のキャラクターである「渡海菊夫」の怪物ぶりこそが、本作をカルト的名作に至らしめている要因であることは間違いありません。

本作は渡瀬恒彦演じる渡海が、外国人相手の娼婦(=売春を生業とする女性)に身をやつした妻の許(もと)を訪れるところから始まります。

妻が黒人の子を産んでいることを知った渡海は、激怒のあまりその乳児を二階から水たまりに投げ捨てると、半狂乱で我が子を助けようとする妻に暴行を加え、容赦なく殴り殺してしまいます。

苛烈な暴力シーンが珍しくない実録映画の世界でも、本作は全編を通して暴力描写が濃厚に描かれており、特に冒頭における暴力描写は群を抜いて衝撃的です。

本作は実録映画の枠を超えて評価されるべきカルト映画の傑作であるといえるでしょう。ヤクザ映画好きやカルト映画ファンはもちろん、B級ホラーマニアの方もきっと楽しめるのではないかと思います。

 

 

③ 仁義の墓場

公開 1975年2月15日
監督 深作欣二
脚本 鴨居達比古
出演 渡哲也、梅宮辰夫、田中邦衛、成田三樹夫、安藤昇、ハナ肇、室田日出男、山城新伍、曽根晴美、郷鍈治、多岐川裕美ほか

▼予告編

 

本作では茨城県水戸市出身のヤクザ・石川力夫氏の半生が「仁義なき戦い」シリーズに通ずる荒々しいドキュメントタッチで描かれています。

主人公・石川力夫の厭世的(えんせいてき:人生を儚く捉える精神的な傾向)な破滅的な生き様は他の実録映画の登場人物と比べても比類がなく、実在の人物に基づいているとは俄に信じがたいほどです。

監督である深作欣二氏と石川力夫氏には同じ茨城県水戸市の出身であるという共通点があり、本作が「ヤクザ映画の極北」と称される傑作に仕上がったことと全くの無関係だとは考えられません。

「仁義の墓場」が「仁義なき戦い」シリーズにも劣らないヤクザ映画の金字塔であることは疑う余地がありません。公開した1975年に発表されたキネマ旬報(日本でも最も歴史のある映画雑誌)オールタイム・ベスト100の日本映画篇では第38位にランクインしています。

ただ「仁義の墓場」が「仁義なき戦い」よりもはるかに陰鬱でアンモラルで、観る者を選ぶような内容であり万人受けするような作品ではないことを考えると、ランクインすること自体が驚異的だと言えるでしょう。

凄まじい勢いで転落の一途をたどっていく様子は「壮絶」のひとことで、エンディングまで息をつく暇もない高い密度で物語が展開していきます。

 

 

④ 実録外伝 大阪電撃作戦

作品名 実録外伝 大阪電撃作戦
公開 1976年1月31日
監督 中島貞夫
脚本 高田宏治
出演 松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、室田日出男、小林旭、成田三樹夫、伊吹吾郎、丹波哲郎、織本順吉、小松方正、目黒祐樹ほか
上映時間 92分

▼予告編

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」は三代目山口組と愚連隊系暴力団・明友会の抗争(通称:明友会事件)を題材に描いた実録映画です。

 

明友会事件とは

「明友会事件」とは、大阪を拠点に活動する愚連隊系暴力団「明友会」と「三代目山口組」との抗争事件を指す。

三代目山口組々長と中川組々長は、人気歌手の田端氏の労をねぎらうためにクラブを訪れる。そこに偶然居合わせていた明友会幹部の宋氏は、酔った勢いで歌手の田端氏に歌うことを強要し、仲裁に入った中川氏を殴ってしまう。それが事件の発端となり、山口組はおよそ2週間で明友会を壊滅させた。

明友会事件について以下で詳しく解説!

 

いくつか実録映画で明友会事件を描いた作品はありますが、実録映画の中では明友会事件の内実をもっとも詳しく描いている作品と言えます。

人間狩りの場面では凄惨な暴力描写が散見されますが、本作も実録映画の例に漏れず膨大な知識と取材を下敷きに組み立てられております。

掌に釘を打ちこんで磔(はりつけ)にするシーンや、ドラム缶にセメントを流し火炙りにするシーンをはじめ、これらの描写はいずれも実際のエピソードを基にしているそうです。

▼ドラム缶にセメントを流し火炙りするイメージ

 

じつに痛ましい裏話ですが、事実に基づいたリアリティこそ実録映画の大きな魅力のひとつであり、本作は実録映画のひとつの到達点といっても過言ではない高い完成度を誇っています。

 

 

⑤ 沖縄やくざ戦争

作品名 沖縄やくざ戦争
公開 1976年9月4日
監督 中島貞夫
脚本 高田宏治、神田史男
出演 松方弘樹、千葉真一、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、室田日出男、成田三樹夫、織本順吉、地井武男、新藤恵美、尾藤イサオ、三上寛ほか

▼予告編

 

本作は東映実録路線に連なる作品の中でもひときわ異彩を放っています。

それが沖縄という舞台の特異性に根ざしていることは言うまでもありませんが、実録映画らしくないロック調のBGMや、そして本作の主役である国頭正剛を演じる千葉真一氏の怪演も作品の方向性を決定づけている要因のひとつです。

縄張りを侵した舎弟分に対する制裁や、本土系暴力団に見せつけるような琉球空手の演舞も充分ドン引きするレベルです。(演舞自体よりも、劇中のあの状況でいきなり演舞をするというのがあまりに常識はずれかつ想定外の行動だと思いました。実際にご覧いただければ理解いただけるかと思います。)

また、本土系暴力団の進攻に怯える沖縄連合琉盛会上層部の面々の前で放った戦争を賛美する発言は、実録映画の歴史に残る迷言であるといえます。

千葉真一演じる国頭正剛は死に様も凄まじく、筆者は日頃から実録映画以外にもさまざまな映画を好んで鑑賞していますが、本作の国頭以上にインパクトのある死に様を他に知りません。

2位にダブルスコアをつけたぶっちぎりの1位です。

「仁義なき戦い」シリーズをはじめ、実録映画には随所にブラックユーモアが散りばめられているため、思わず笑ってしまうような場面も少なくないのですが、国頭の死に様はそんなレベルではありません。何回観ても腹を抱えて笑ってしまいます。

こればかりはとても言葉で説明することができませんので、ぜひその目で国頭の壮絶な最期をご覧になってください。

 

 

⑥ 日本の首領 三部作

<日本の首領シリーズ一作目>

作品名 やくざ戦争 日本の首領
公開 1977年1月22日
監督 中島貞夫
脚本 高田宏治
出演 佐分利信、鶴田浩二、松方弘樹、高橋悦史、西村晃、菅原文太、梅宮辰夫、千葉真一、成田三樹夫、織本順吉、渡瀬恒彦、小池朝雄、田中邦衛、金子信雄、内田朝雄、地井武男、小林稔侍ほか

▼予告編

 

「やくざ戦争 日本の首領」「日本の首領 野望篇」「日本の首領 完結篇」は三代目山口組々長・田岡一雄氏率いる山口組の全国制覇を題材にとった実録映画シリーズです。

本作の原作小説「日本の首領」の著者である作家・飯干晃一氏は「仁義なき戦い」の生みの親としても知られており、東映実録映画の誕生に計り知れない影響を与えました。

本シリーズは「和製ゴッドファーザー」をコンセプトに製作されました。

実録映画の先駆である「仁義なき戦い」が企画された際も、当時のプロデューサーである俊藤浩滋氏の念頭には映画「ゴッドファーザー」シリーズのイメージがあったそうです。

 

ゴッドファーザー

1972年に公開されたアメリカのマフィア映画。上映後は大ヒットし、当時の興行収入の記録をぬりかえる。マフィア映画の中で最も有名な作品と言っても過言ではない。

 

「仁義なき戦い」が「ゴッドファーザー」とはかけ離れたドキュメントタッチの作品であるのに対し「日本の首領」三部作はまさに和製ゴッドファーザーと呼ぶに相応しい壮大でドラマチックなシリーズに仕上がっています。

本家「ゴッドファーザー」と同様に、「日本の首領」三部作も1作目≧2作目>3作目の順で完成度が高いように思えます(あくまで筆者の私見です)が、いずれも甲乙つけがたい実録路線末期の名作です。

劇中には「ゴッドファーザー」のオマージュとなっている場面もあるので、未見の方は本家「ゴッドファーザー」三部作を先にご覧になることをおすすめします。

 

 

⑦ 北陸代理戦争

作品名 北陸代理戦争
公開 1977年2月26日
監督 深作欣二
脚本 高田宏治
出演 松方弘樹、ハナ肇、野川由美子、高橋洋子、地井武男、遠藤太津朗、織本順吉、千葉真一、成田三樹夫、西村晃、小林稔侍ほか

▼予告編

 

「北陸代理戦争」は福井県を舞台に、地元暴力団同士の争いと北陸進攻を目論む大組織との抗争事件を描いた実録映画です。実録路線を終焉に向かわせた「三国事件」の引き金となった作品としても知られています。

三国事件とは映画「北陸代理戦争」の主人公のモデルとなった川内氏が昭和52年4月13日に、行きつけの喫茶店で射殺された事件です。

映画「北陸代理戦争」がこの事件に影響を及ぼしたとされており、映画が現実の事件を引き起こしたとも受け取れる一連の出来事は当時の関係者に大きな衝撃を与えました。

本作の監督を務めた深作欣二氏は「北陸代理戦争」を最後に実録路線から離れることとなります。

この映画の題材となった「三国事件」についてはこちらで紹介!! この映画の題材となった「三国事件」についてはこちらで紹介!!

 

興業的には失敗だったかもしれませんが「北陸代理戦争」が「仁義なき戦い」にも劣らない実録映画の名作であることに疑問の余地はありません。

 

 

以上、「おすすめヤクザ映画7選」でした。

「東映実録映画入門」では東映実録映画の魅力、歴史、題材となった事件、出演俳優などがわかります!ぜひともご覧ください!

▼『東映実録映画入門』(全21ページ)

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「東映実録映画入門」目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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【芝浜】あらすじや見所など落語ファン歴10年による解説!

 

落語は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」滑稽噺と「心温まるような人情を描いた落語」である人情噺というジャンルに分けることができます。

人情噺の中でおすすめなのが「芝浜」です。

このページでは「芝浜」のあらすじや、どの落語家の「芝浜」を聴くのがおすすめかなどを徹底解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。また、このページの情報の一部は落語作家なかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』を参考にしております。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

「芝浜」とは

 

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

(解説:なかむら治彦)

 

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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実は落語がお芝居になることはずっと昔からあって、歌舞伎では『芝浜革財布(芝浜)』などの人気演目があります。

 

「芝浜」の誕生の経緯

▲初代三遊亭圓朝

 

「芝浜」を作ったのは「近代落語の祖」と称される初代三遊亭圓朝(1839-1900)だといわれています。

初代三笑亭可楽(さんしょうてい からく)が始めたとされる「三題噺」というものがあります。これはお客さんからお題を3つもらい、それを使った落語をその場で作って演じるというものです。

落語の名作「芝浜(しばはま)」は圓朝が三題噺で作った演目といわれています。(『笹飾り』『増上寺の鐘』『革財布』という3つのお題で作られたと言われています。

 

 

 

「芝浜」が十八番の落語家

七代目立川談志

名前 七代目 立川談志(ななだいめたてかわだんし)
生年月日 戸籍上は1936年1月2日(実際は1935年12月2日生まれ)/没年2011年11月21日
「自身が司会を務めるでラジオ番組でゲストを残して途中で帰る」「居眠りした客を追い出す」など破天荒な行動が目立ち、好き嫌いが分かれる落語家。独自の落語の型を持ち落語家としての評価は著しく高い。日本テレビ「笑点」の初代司会者を務める。また同番組は談志が企画して実現したものである。ヘアバンドやメガネを愛用し、自身のあごや頬をなでたりする癖、また「やだね~」などの口癖があるなどの個性的な振る舞いがあり、よくものまねされる対象となった。

 

談志さんの十八番として真っ先に挙がる噺が「芝浜」です。

談志さんの「芝浜」は落語史に残る傑作であり、談志さん自身こだわりを持って演じていました。

注目なのは、従来の落語からすると過剰とも思えるほどの「感情移入の凄さ」です。

登場人物に完全に入り込み、実際にそこにその人物がいて喋っているのではないかと思わせるほどの圧倒的な迫力があります。

特に2007年によみうりホールで演じた「芝浜」は、「伝説の名演」として落語界で語り継がれています。

「落語の神様が談志に乗り移って登場人物に台詞を喋らせた」といわれるほど圧倒的に凄い「芝浜」であったそうです。

「芝浜」は、落語通ではない人でも最も談志落語の「凄み」を感じやすい演目だと思います。

 

▼2007年よみうりホールで行われた「伝説の名演」の「芝浜」が収録されている作品

⚫談志CD大全 21世紀BOX

 

立川談志さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介! 立川談志さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介!

 

三代目 古今亭志ん朝

名前 三代目 古今亭志ん朝(さんだいめ ここんてんしんちょう)
生年月日 1938年3月10日/没年2001年
落語初心者が聴いてもわかりやすいのが特徴。戦後の東京落語家を代表する「落語四天王」の1人である。また「東の志ん朝、西の枝雀」と称されることもあった。「ビール」「焼きおにぎり」など数多くのCMに出演しており、高級ふりかけ「錦松梅」のCMのキャラクターとして知名度を獲得する。父は5代目古今亭志ん生。テレビ・映画にも数多く出演しフジテレビ「サンデー志ん朝」では司会をつとめる。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

 

「江戸前のダンディズム」「粋な江戸っ子噺家」などといわれる志ん朝さんは、とにかく粋で本格的な江戸っ子落語家であったといいます。

江戸言葉を自在に操る志ん朝さんの話芸を聴いていると、そこにリアルな江戸の情景がありありと浮かび上がってきます。

なぜそうしたものが身についていたのかは、確かなことはわかりません。ただ、やはり「明治に生まれた芸人の家庭で育つ(父は落語家・五代目 古今亭志ん生)」という、宿命的な生い立ちが志ん朝さんの芸人としてのベースにあるのではないかと思います。

並みの芸人のように10代の後半から20代で弟子入りするのと、その家庭で生まれ育つのでは芸人として、そして人としての”成分”が違ってくるのではないでしょうか。

志ん朝さんの十八番「芝浜」。志ん朝さんの気持ちのいい江戸弁によって、江戸に生きた夫婦の日常をリアルに描き出しています。

 

▼志ん朝さんの江戸っ子を堪能できる「芝浜」が収録されている作品

⚫落語名人会(14)[CD]

 

古今亭志ん朝さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介! 古今亭志ん朝さんについて詳しくは「落語初心者入門」にて紹介!

 

「芝浜」を聴く方法

 

「芝浜」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「芝浜」が聴けるサービスを紹介いたします。

 

audible

 

audibleでは「芝浜」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「芝浜」を聴くことができます。

Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「芝浜」の紹介でした。その他落語の人情噺の演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

落語を100倍楽しむ為の基礎知識 【職業・旅・お金】

Webon紹介目次著者
落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

落語を楽しむ為の基礎知識

 

伝統芸能の世界は「定番」の宝庫です。

「定番」という言葉には、「お決まり」とか「お馴染み」といったニュアンスも含まれます。

安定感が抜群で、長年親しまれ、斬新さは無い代わりに様式美を備えた物を「定番」と呼びます。日本古来の伝統芸能はいずれもそれに該当すると考えてよいでしょう。

そのうちの一つである古典落語には、現代では使わない古い言い回しや、昔そのままの呼称がよく出てきます。

例えば江戸の歓楽街の代名詞・吉原を、落語の登場人物たちは「なか」と呼びます。

一説には吉原一帯が堀で囲まれていて大門という出入口からしか入れず、「大門の中」が「なか」と略されたと言われますが、これなど解説が無ければ何のことかさっぱり分かりません。

古い言葉を古いまましゃべることは、普通に考えれば観客に優しい演出ではありません。しかし落語では、古い言葉をまじえながらも、会話の流れや状況描写によって言葉の前後を補い、意味を想像させます。

これは「想像のエンタテインメント」である落語ならではの強みでしょう。

逆に言えば、やたら説明を重ねることで崩れてしまう様式美が、落語という話芸にはあるということです。

 

このページでは、そんな江戸時代の情緒をストーリーで存分に感じる為の基礎知識と、それらの知識が出てくる落語演目の数々を、項目別に分けて紹介していきましょう。

 

武士と落語

 

江戸時代の落語に登場するお決まりの設定は、ちょんまげに着物姿の登場人物と、この時代特有の「士農工商」という身分制度です。

 

▼登場人物のイメージ

 

そして士農工商の一番上が武士階級です。

 

 

落語における武士の人間性は必ずしもステレオタイプではなく、個性に溢れています。

例えば

粗忽の使者』(そこつのししゃ)に登場する地武太治部右衛門(じぶた じぶえもん)は、よそのお屋敷に使者として出たものの、口上(話すこと)を忘れてしまう粗忽者(そこつもの:そそっかしい人)ですし、

松曳き』(まつひき)の殿様と家老は揃ってあわて者と来ています。

また『井戸の茶碗』では、浪人(仕事を失った武士)に身を落としながらも実直さは変わらない初老の武士が、その実直さのあまり騒動を大きくしてしまいます。

 

1.粗忽の使者

~あらすじ~

あるところに地武太治部右衛門という粗忽者(そそっかしい人)の侍がいた。この侍、殿様もそそっかしさが面白いと目をかけられていた。そんなある日殿様の親戚筋が地武太治部右衛門を寄こしてほしいと頼む・・・

~概要~

別題『尻ひねり』

▼視聴アプリ・サービス

audible spotify 落語のすゝめ

▼amazon/楽天で視聴(検索結果へ)

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2.松曳き

~あらすじ~

粗忽者しか住んでいない武家屋敷があった。ある日その屋敷の殿様が庭の松の木を移動させたいと言い出す。そこで植木屋を呼んでくるが・・・

~概要~

別題『粗忽大名』『主従の粗忽』

▼視聴アプリ・サービス

audible spotify 落語のすゝめ

▼amazon/楽天で視聴(検索結果へ)

amazonで探す  楽天で探す

 

3.井戸の茶碗

~あらすじ~

あるところに屑屋(廃品回収業者)の清兵衛という男がいた。街で商売をしていると上品な女性から声をかけられる。かけられたまま路地に入っていくとその女性の父親だという浪人(仕事を失った武士)が立っていた・・・

~概要~

別名『茶碗屋敷』。元の話は講談のものと言われる。

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また一方で落語の武士は、身分を笠に着て庶民にいばり散らす悪役にもなります。

たがや』では人混みの中を馬で無理やり通過しようとして町人と喧嘩になり、

巌流島』では狭い渡し舟の中でトラブルを起こして船頭や同乗者を困らせます。

このタイプの武士は、たいてい町人にやられてしまう結末をたどります。

 

4.たがや

~あらすじ~

ある花火大会の日。両国にある橋は人で大賑わいだった。そんな中を、急いだ侍が通ろうと人をかき分けて進んでいる。そこへたが屋(たが=桶にはめる竹の輪)も橋の反対から通ろうとした。すると・・・

~概要~

江戸時代から演じられていると言われる噺。

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5.巌流島

~あらすじ~

とある船着き場。町民でいっぱいの舟が出そうになるころ、一人の侍が飛び乗ってきた。「邪魔だ。川へ落ちそうなら落ちてしまえ」と悪態をついている中、船が出た・・・

~概要~

『岸柳島』(がんりゅうじま)とも書く。

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そうかと思うと、『柳田格之進』(やなぎだ かくのしん)に出てくる貧しい浪人(仕事を失った武士)・柳田格之進は、商家の番頭から大金を盗んだとの嫌疑を向けられる侮辱を受けながら、グッと抑える心の葛藤を見せます。

 

6.柳田格之進

~あらすじ~

とある武士「柳田格之進」は正直者だった。正直すぎるあまり仕事を失い、さらに妻を亡くし、娘と貧乏暮らしをするがそれでも正直で良い人柄は変わらない・・・

~概要~

古今亭志ん生・志ん朝 親子が得意としていた。

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どの武士がベストかは聴く人の好みで変わると思いますが、ストーリーの面白さで言えば『7.井戸の茶碗』のハッピーエンドな感じがおすすめでしょう。

真面目な武士の性格に困惑する屑屋(=紙くずなどを売買する商人)の立ち回りと、徐々にスケールアップしていく展開がこの物語の聴き所です。

 

珍しい仕事と落語

 

大名や武士は現代で言う政治家や公務員のような存在ですが、それ以外にも、古典落語には江戸時代ならではの多種多様な職種が登場します。

当時の空気を感じさせる職業としては、遊廓の花魁(おいらん)、たいこ持ち、習い事の稽古屋、呉服屋、質屋、大工、左官、髪結い、駕籠屋(かごや)、船頭、馬方、僧侶、相撲取り、等々まだまだあります。

いろいろな落語に出てくる長屋(江戸時代の集合住宅)のお婆さんがたいてい生業にしている糊屋(ご飯粒から洗濯用の糊を作って売る)もそうした仕事の一つでしょう。

同じく落語のメインキャラクターである泥棒は、現代の報道に従うと「無職」かもしれません。

中には泥棒以上に怪しい商売も出てきて、『あくび指南』の「あくびを教える師匠」とか、『睨み返し』の「借金取りを怖い顔で撃退する」なんて仕事、落語以外では考えられませんね。

 

7.あくび指南

~あらすじ~

八五郎は友人の熊五郎と道でばったり出会う。聞けば熊五郎は習い事に行く途中だと言う。一緒に来ないかと言われる八五郎だが熊五郎が今まで習い事で事件をさんざん起こしてきたことを考えると行く気になれない・・・

~概要~

別題『あくびの稽古』。

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8.睨み返し

~あらすじ~

とある大晦日。昔の大晦日は1年間の支払いの日だ。長屋に住む八五郎の元へツケを支払ってもらおうと薪屋が飛び込んできた。しかし支払う金がない・・・

~概要~

大晦日の噺で、寄席では年末に演じられることも多い。

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一方、江戸時代に無くてはならなかった職業に、担ぎの商人があります。

昔の小売業者のほとんどは店舗を持たず、天秤棒の前後に売り物の荷を下げて、売り声を挙げながら町内を担いで回るという移動販売を主流にしていました。

振り売りとか棒手振り(ぼてふり)とも呼ばれました。

 

 

担ぎの商人が登場する落語のうち、名作と言われる落語が『唐茄子屋政談』(とうなすや せいだん)です。

遊び人の若旦那が勘当され、心身ともボロボロになっていた所を親戚のおじさんに助けられ、そのおじさんの指導で唐茄子(かぼちゃ)を一生懸命売り歩いたことで、更生を認められて勘当が解かれるという話です。

商売のリアルな難しさを道楽者の若旦那が肌で感じるくだりは、きっと現代人でも共感できることでしょう。

 

9.唐茄子屋政談

~あらすじ~

とある道楽男が家族から勘当され、友人からも見放されてしまい自殺を図る。そこへ男の叔父が通りかかり思いとどまらせる。叔父はさらに食事まで振舞ってやり、男は「改心する。叔父の言う事は何でも聞く」と言う・・・

~概要~

別題『唐茄子屋』。唐茄子=かぼちゃ

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旅と落語

 

江戸時代が舞台の古典落語で描かれている生活様式の中で、特に現代との差が激しいジャンルと言えば、旅の様式と、お金の単位かもしれません。

当時の旅の様式は十返舎一九(じっぺんしゃ いっく)の『東海道中膝栗毛』などでも描かれているように、陸路の移動手段で徒歩か駕籠(かご)か馬ぐらいのシンプルなものでした。

 

東海道中膝栗毛

十返舎一九によって書かれた滑稽話集。主人公は弥次郎兵衛と喜多八で現代でも「弥次喜多」などの愛称でアニメや漫画のキャラクターなどとして登場する。

▼十返舎一九

 

水路(海路)は船があったとはいえ大半が荷物の輸送用でしたし、空路は当然ありません。

そんなシンプルな旅ですから、落語に登場する旅模様も極めてのんびりしていました。

中でも上方落語(関西の落語)の『三十石』は、京都の伏見から淀川を三十石船に乗って大阪にたどり着く、その行程に起きた事を淡々と紀行エッセイのように綴った内容です。

クライマックスに船頭が朗々と唄い上げる舟唄には、旅の情緒すら感じます。東京では落語家・三遊亭円生師匠(故人)らが十八番にして、『三十石』の叙情性を東京でも広めました。

 

10.三十石

~あらすじ~

京都から大阪に下る三十石船と船町の情景を、それぞれオムニバス調で描く・・・

~概要~

上方(関西)の落語演目。別題『三十石夢乃通路』。

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その他では、友達二人で歩く『二人旅』、馬が出てくる『三人旅』、旅先の宿屋が舞台となる『宿屋の仇討ち』(別題『宿屋仇』)などが有名な旅ネタです。

 

11.二人旅

~あらすじ~

二人で気ままに旅をしている。一人が腹が空いたのでご飯にしたいと言い出す。しかしもう一人はしたくないのか謎かけを始めて気をそらす・・・

~概要~

謎かけが沢山散りばめられた落語。

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12.三人旅

~あらすじ~

とある男がひょんなことからお金が儲かった。喜んでいると父親から「その金を貯めこもうってんなら江戸っ子として恥ずかしい。勘当するぞ」と脅された。どのように使おうか悩んでいると・・・

~概要~

長編落語。

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13.宿屋の仇討ち

~あらすじ~

とある侍が大阪の宿に泊まった。聞けば昨晩の宿ではいびきやいちゃいちゃする声でよく眠れなかったと言う。そして泊まった晩、隣で伊勢神宮のお参りから帰ってくる途中で泊っている喜六・清八・源兵衛が隣の部屋でどんちゃん騒ぎを始めてしまう・・・

~概要~

別題『宿屋仇』『日本橋宿屋仇』『庚申待(こうしんまち)』。いくつかバリエーションのある噺。

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お金と落語

 

そしてもう一つ、江戸時代のお金の単位につきましては、とてもややこしいので要点だけ説明します。

江戸時代のお金は金貨(両・分・朱)・銀貨(匁=もんめ)・銭貨(貫・文)の3種類の通貨が並行して利用されました。

金貨は主に位の高い武士、銀貨は主に位の低い武士と商家、銭貨は主に庶民が利用していて、相互の換金は町の両替屋が行いました。

落語ではよく一獲千金を狙うストーリーが多く出てきますが、そこで使われるのはたいてい金貨(両)です。

富くじが当たる『富久』も、高価なみかんを買う『千両みかん』も、登場人物の身分に関わらずすべて金貨です。恐らく昔は民間的にも「大金=金貨」だったのでしょう。

 

14.富久

~あらすじ~

ある時、幇間(ほうかん:お座敷などで場を盛り上げる芸人)が仕事を失ってしまいお金に困っていた。すると知人が家に訪ねてきた。その手には1枚の宝くじを持っていた。その宝くじをなけなしのお金で幇間が買う事に・・・

~概要~

初代 三遊亭圓朝が作ったと言われる演目。

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15.千両みかん

~あらすじ~

とある呉服屋の若旦那が重病で床に伏せった。医者曰く「胸につかえた何かを取り出さなければ治らない」と。そこで皆で問いただす事に。若旦那ついに「みかんが欲しい・・・」と言う・・・

~概要~

元の話は笑話本「鹿の子餅」の一幕。上方(関西)と江戸(東京)では演出が異なる。

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その一方では、庶民が主役の『時そば』はちゃんと一杯16文、つまり銭貨でした。

落語を楽しく聴くにあたってはそのへんの事情はあまり深く詮索しない方が気楽かもしれません。

 

16.時そば

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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お金の関わる落語としては、『宿屋の富』(別題『高津の富』)をおすすめしておきましょう。

主人公の男がなけなしの金で買った富くじが千両の大当たりで、それを知った時の演技と心の動揺が実に面白く描かれています。

 

17.宿屋の富

~あらすじ~

とある宿に一人の男がやってきた。この男、金がありすぎて困ってしまうと言っている。宿屋の主人は男の言う事をすっかり信じて「凄い人だなぁ」と感心。そして宿屋の主人は「お金があるなら副業でやっている宝くじでも買ってくれないか」と男に頼む・・・

~概要~

別題『高津の富(こうづのとみ)』。元々は上方(関西)の落語演目。

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ちなみに、明治になるとお金の単位は円・銭・厘に統一されます。もし「この落語の舞台は江戸か明治か」と悩んだ時は、お金の単位に注意して聴いてみてください。

 

今回紹介した落語を聴くベストシチュエーション

 

最後に、江戸情緒漂う定番の名作落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

江戸の情景を言葉だけで思い浮かべるのは、なかなか至難の業です。聴く側の想像力ももちろんですが、演者の方にもかなりの技量を要します。

従って、もしライブでそうした名演高座に遭遇できたとしたら、あなたは確率的にもかなりラッキーだったと考えてよいと思います。

そんな奇跡の高座に巡り合うまで通い続けるのは大変だ、という人には、かつて名人と称された落語家さんたちのCDを聴くことをおすすめします。

ここでおすすめに挙げた演目では、三遊亭円生(さんゆうてい えんしょう)師匠、古今亭志ん朝(ここんてい しんちょう)師匠、五代目 柳家小さん(やなぎや こさん)師匠(いずれも故人)などのCDが多数出ていますので、探して聴いてみてください。

 

▼三遊亭円生

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▼古今亭志ん朝

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▼五代目 柳家小さん

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※参考

大江戸ものしり図鑑』(花咲一男監修・主婦と生活社)

 

次のページでは落語でよく登場するキャラクターについて解説。知ればもっと落語を楽しめるはずです。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

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東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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『東映実録映画入門』目次へ  (全21ページ)

実録映画(東映実録映画)は、東映(映画の会社)によって製作された実話をベースにしたヤクザ映画のことです。

この章では実録映画のおすすめ作品7選を紹介・解説いたします。

このページで紹介する作品は「北陸代理戦争」です。

 

▼おすすめ実録映画7選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

北陸代理戦争とは

 

概要

作品名 北陸代理戦争
公開 1977年2月26日
監督 深作欣二
脚本 高田宏治
出演 松方弘樹、ハナ肇、野川由美子、高橋洋子、地井武男、遠藤太津朗、織本順吉、千葉真一、成田三樹夫、西村晃、小林稔侍ほか

▼予告編

 

「北陸代理戦争」は福井県を舞台に、地元暴力団同士の争いと北陸進攻を目論む大組織との抗争事件を描いた実録映画です。

「沖縄やくざ戦争」と同様に製作当時は進行形だった実際の出来事を題材にとっていたため、映画の舞台である福井県で上映されることはありませんでした。

また実録路線を終焉に向かわせた「三国事件」の引き金となった作品としても知られており「実録やくざ映画の極北」「実録路線のスワンソング」と評されています。

 

三国事件とは

三国事件とは映画「北陸代理戦争」の主人公のモデルとなった川内氏が昭和52年4月13日に、行きつけの喫茶店で射殺された事件です。

映画「北陸代理戦争」がこの事件に影響を及ぼしたとされており、映画が現実の事件を引き起こしたとも受け取れる一連の出来事は当時の関係者に大きな衝撃を与えました。

本作の監督を務めた深作欣二氏は「北陸代理戦争」を最後に実録路線から離れることとなります。

実録路線のスワンソング

ヨーロッパの伝承に「生涯鳴き声をあげない白鳥が死に際に美しい歌を歌うという」ものがあり、そこから転じて「スワンソング」には「遺作」といった意味合いがあります。

「北陸代理戦争」以降、急速に凋落していく実録映画と比較した上で、本作が実録路線らしさを備えた最後の実録映画という意味で「実話路線のスワンソング」と評されているものと推測できます。

 

この映画の題材となった「三国事件」についてはこちらのページで解説! この映画の題材となった「三国事件」についてはこちらのページで解説!

あらすじ

 

暴力団の富安組の若頭の川田登(役:松方弘樹)は、組長の安浦がの競艇場利権を譲渡するという約束を守らなかったことに怒り、安浦を雪の中に生き埋めにするなどのリンチを行う。

安浦は川田に太刀打ちできないと思い、弟分の万谷に相談する。万谷は仲介役として大阪浅田組の金井に相談する。金井をこれをきっかけに北陸の支配に乗り出そうとする・・・。

 

 

 

作品解説

最大の特徴

 

「三国事件」と絡めて語られることの多い本作ですが、映画の内容だけを抜き取っても他の実録映画とは一線を画す出色の出来を誇っています。

やくざ社会に生きる女性の姿を力強く描いている点こそ「北陸代理戦争」の最大の特徴です。

 

「仁義なき戦い 広島死闘篇」「仁義なき戦い 完結篇」でも若きヤクザ(両作とも演者は北大路欣也)と恋仲になる女性の姿を描いていましたが、どちらも極道社会における添え物にすぎず、物語に影響を及ぼすほどの位置を占めるには至りませんでした。

 

しかし、本作では暴力団同士の抗争と並行してひとりの男をめぐる姉妹の戦いに主眼を置くことによって新たなドラマを描き、実録路線に新機軸を打ち出ました。

ふたりの女性は劇中で仲井きく・隆士・信子の三姉弟として登場しますが、プロットの段階では信子ではなく信夫、すなわち男として登場する予定だったそうです。

 

 

信夫を信子に性転換させることでドラマ性をより強固にするという大胆な発想はこの映画の脚本家・高田氏ならではのものであり、この性転換は高田氏にとっても大きな分岐点のひとつだったのではないでしょうか。

 

本作の脚本家・高田宏治氏は、後に「鬼龍院花子の生涯」や「極道の妻たち」シリーズなどの作品をとおして極道社会に生きる女性の姿を力強く描いていますが、その萌芽(ほうが)が見て取れるという意味でも「北陸代理戦争」は重要な位置づけにある作品であると言えます。

 

▼鬼龍院花子の生涯(画像クリックで商品詳細へ)

▼極道の妻たち(画像クリックで商品詳細へ)

 

撮影中のトラブル

 

「三国事件」については第二章で述べたとおりですが、「北陸代理戦争」は撮影中にもさまざまなトラブルに見舞われ、幾度となく完成が危ぶまれた曰くつき(いわくつき)の作品です。

例えば、本作の予告編に出演している渡瀬恒彦氏が本編には1カットも登場しないのですが、これはテスト中に渡瀬氏が運転していたジープが雪に足を取られて横転し、渡瀬氏が下敷きになったという事故によるもので、重傷を負った渡瀬の代役として伊吹吾郎氏に白羽の矢が立てられました。

 

▼伊吹吾郎氏

 

しかし伊吹氏が代役に決まった時点では既に公開日が間近に迫っていたため、深作欣二監督と中島貞夫監督の2班に分かれて不眠不休の撮影が続けられます。

さらに高橋洋子(仲井信子役)氏が高熱でダウンするも27時間ぶっ通しの撮影に挑んでようやくクランプアップに至り、三日三晩不眠不休のポストプロダクション(編集・ダビングなどの仕上げ作業)の末、作品が完成したのはなんと公開日前日でした。

そもそも本作が「新仁義なき戦い」「新仁義なき戦い 組長の首」「新仁義なき戦い 組長最後の日」の続編として企画されました。

にも関わらず主人公を演じる予定だった菅原文太氏が急遽降板したために「新仁義なき戦い」の看板を下ろさざるを得ず、やむなくシリーズ外作品として製作に至ったという経緯があったことは第2章「三国事件」の項(このページは第3章)で述べたとおりです。

 

▼菅原文太

 

さまざまなトラブルを乗り越えて公開されたにもかかわらず「北陸代理戦争」の客入りは不調でした。

興業的には失敗だったかもしれませんが「北陸代理戦争」が「仁義なき戦い」にも劣らない実録映画の名作であることに疑問の余地はありません。

 

作品を観る方法

AmazonPrimeVideo(ストリーミング)
Hulu (2週間無料期間有り。月額933円税別で動画見放題)
U-NEXT(31日間無料のお試し期間有り。月額利用料1990円税別で見放題)
TSUTAYA TV (新規登録30日間0円。月額費933円税別で見放題)
DVD

 

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目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

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はじめに

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第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

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日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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実録映画(東映実録映画)は、東映(映画の会社)によって製作された実話をベースにしたヤクザ映画のことです。

この章では実録映画のおすすめ作品7選を紹介・解説いたします。

このページで紹介する作品は「実録外伝 大阪電撃作戦」です。

 

▼おすすめ実録映画7選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」とは

概要

作品名 実録外伝 大阪電撃作戦
公開 1976年1月31日
監督 中島貞夫
脚本 高田宏治
出演 松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、室田日出男、小林旭、成田三樹夫、伊吹吾郎、丹波哲郎、織本順吉、小松方正、目黒祐樹ほか
上映時間 92分

▼予告編

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」は三代目山口組と愚連隊系暴力団・明友会の抗争(通称:明友会事件)を題材に描いた実録映画です。

 

明友会事件とは
「明友会事件」とは、大阪を拠点に活動する愚連隊系暴力団「明友会」と「三代目山口組」との抗争事件を指す。

三代目山口組々長と中川組々長は、人気歌手の田端氏の労をねぎらうためにクラブを訪れる。そこに偶然居合わせていた明友会幹部の宋氏は、酔った勢いで歌手の田端氏に歌うことを強要し、仲裁に入った中川氏を殴ってしまう。

それが事件の発端となり、山口組はおよそ2週間で明友会を壊滅させた。

明友会事件について詳しくは第2章(ここは第3章)で解説!

 

明友会事件は山口組が大阪に侵攻するきっかけとなった出来事であるため「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」や「山口組外伝 九州進攻作戦」をはじめさまざまな実録映画の題材となっています。

 

▼「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」(画像クリックで商品詳細へ)予告編試聴可能

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その中でも「実録外伝 大阪電撃作戦」は、明友会事件を敗者である明友会の視点から描いているという点で、他の作品と一線を画しているといえます。

 

作品解説

明友会事件を最も詳しく描いている

 

前述したように、「実録外伝 大阪電撃作戦」は三代目山口組と愚連隊系暴力団・明友会の抗争(通称:明友会事件)を題材に描いた実録映画であり、明友会事件を敗者である明友会の視点から描いているという点で、本作は他の作品と一線を画しているといえます。

また、先に述べた明友会事件を同様に題材にしている映画「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」では「柳川組の活躍」と「ヤクザと在日」にまつわる問題に「山口組外伝 九州進攻作戦」では夜桜銀次こと平尾国人氏の生き様にスポットが当てられています。

しかし、本作では明友会事件そのものに主眼が置かれているため、既存の実録映画の中では明友会事件の内実をもっとも詳しく描いている作品と言えます。

 

豪華なキャスト陣

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」は豪華なキャスト陣を起用している点でも観逃せない作品です。

主人公の双竜会(モデル:明友会)組員を演じる松方弘樹。

▼松方弘樹

川田組(モデル:山口組)組長を丹波哲郎、川田組若頭を小林旭、大東組(モデル:柳川組)組長を成田三樹夫が演じている他、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、室田日出男、織本順吉ら東映のオールスターともいえる実力派俳優たちが多数出演しています。

 

 

さらに主演・松方弘樹の実弟である目黒祐樹が川田組の殺し屋役で出演しており、本作は松方・目黒兄弟の共演を見ることのできる数少ない作品のひとつです。

▼目黒祐樹

また、迫力のあるアクションに定評のある渡瀬恒彦は、本作でも走行中の自動車に引きずられるという危険な演技をスタントなしでこなしています。

 

▼渡瀬恒彦氏(銃を持っている男性)

 

監督/脚本家も豪華

 

監督である中島貞夫氏は本作の以前にも、元安藤組幹部の伝説的なヤクザ・花形敬氏の生き様を描いた「安藤組外伝 人斬り舎弟」や、実在の脱獄囚をモデルにした「脱獄広島殺人囚」、総会屋の実態をコミカルに描く「暴力金脈」など数多くの実録作品を手がけています。

また脚本家・高田宏治氏も「仁義なき戦い 完結篇」をはじめ、前出の「山口組外伝 九州進攻作戦」や、三代目山口組々長・田岡一雄氏の生き様を描いた「三代目襲名」といった実録映画を手がけた実力派です。

 

 

高田氏は本作以前にも「懲役太郎 まむしの兄弟」というアクションコメディ作品で中島監督とタッグを組んでいます。

▼中島監督と高田氏のタッグ作品「懲役太郎 まむしの兄弟」

本作では「仁義なき戦い」シリーズで知られる深作欣二監督と笠原和夫氏というコンビを強く意識して執筆に臨んだと自身の著書の中で語っています。

 

 

高田氏は本作以降も中島監督とたびたびタッグを組み、「まむしの兄弟」シリーズ続編の他、「沖縄やくざ戦争」や「日本の首領」三部作、「極道の妻たち」シリーズなど数多くの名作を世に送り出しました。

 

事実に基づいたリアリティある暴力描写

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」の冒頭では双竜会が大阪で権勢を誇る様子を描いていますが、川田組とトラブルを起こすと状況は一転し、川田組の総力を挙げた人間狩り(=命を狙った襲撃)によって窮地へと追い詰められていきます。

 

 

人間狩りの場面では凄惨な暴力描写が散見されますが、本作も実録映画の例に漏れず膨大な知識と取材を下敷きに組み立てられております。

掌に釘を打ちこんで磔(はりつけ)にするシーンや、ドラム缶にセメントを流し火炙りにするシーンをはじめ、これらの描写はいずれも実際のエピソードを基にしているそうです。

▼ドラム缶にセメントを流し火炙りするイメージ

 

じつに痛ましい裏話ですが、事実に基づいたリアリティこそ実録映画の大きな魅力のひとつであり、本作は実録映画のひとつの到達点といっても過言ではない高い完成度を誇っています。

 

作品を観る方法

AmazonPrimeVideo(ストリーミング)
Hulu (2週間無料期間有り。月額933円税別で動画見放題)
U-NEXT(31日間無料のお試し期間有り。月額利用料1990円税別で見放題)
DVD

 

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目次著者

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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