ドラマチックな落語!おすすめ演目14選

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

何かの折にたまたま聴いた落語にものすごく感銘を受けて、友達に「あの落語よかったー、感動したー」と吹聴したり、SNSやブログで感想を書いたりする人は結構います。

その際、笑いの多い落語はあまりその対象になりません。爆笑した落語を「よかったー」と絶賛する人より、感動的な落語の方がストレートに「よかったー」と絶賛できるようです。

どういうことかと言いますと、笑いは人それぞれ好みが違うため、可笑しさの感情を共有しづらい面があるのです。その点、感動の要素はほとんど個人差がありませんから、人と気持ちを共有しやすいわけです。

このページでは、心の機微や心理面が絡むいさかいなど、登場人物の内面描写に優れたドラマチックな落語の数々を項目別に紹介していきましょう。

 

親子・肉親の感動ドラマ演目

 

落語における感動のシチュエーションとしてまず筆頭に挙げたいのが、親子、兄弟姉妹、祖父祖母など、肉親同士の家族愛が描かれた作品です。

 

親子愛がテーマの落語で代表的なのが『子別れ』(別題『子は鎹』)でしょう。

離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

 

1.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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こうしたストレートなまでの親子愛を描いた落語は、古典・新作を問わずあります。

火事が好きで自ら町火消しの人足になった後継ぎ息子を勘当した父親が、近所で起きた火事をキッカケに、全身刺青だらけになった息子と再会する『火事息子』。

 

2.火事息子

~あらすじ~

とあるお店の若旦那は子供の頃から「火事」が好きだった。しかしそれのせいで父親から勘当されてしまう。そんな若旦那が大人になり消防の仕事に就いていたある日父親の店の近所で火事が起きる・・・

~概要~

江戸(東京)の落語演目。

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昔は年に二日しか無かった商家の奉公人の休日、しっかり成長して帰ってきた息子の姿に父親が涙する『藪入り』。

 

3.藪入り

~あらすじ~

とある店に奉公しに行っていた(働きに行っていた)息子の帰りを両親が待っている。父親は息子にご馳走を振舞ってやりたい。そこへ息子が帰ってくる。身長が伸びて立派に育った息子を見て両親は感激する・・・

~概要~

元々滑稽噺だった『お釜さま』という噺が改作された『鼠の懸賞』を変えて作られた噺。

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留置所に入るつもりで無銭飲食をした男が、優しい屋台のラーメン屋夫婦に気に入られ、次第にお互い親子同様の感情を抱く仲になるという『ラーメン屋』。

 

4.ラーメン屋

~あらすじ~

とある老夫婦がやるラーメン屋。そこへ男が入ってきてラーメンを食べる。食べ終えるころに男は「もう金がない。だから俺を無銭飲食で警察に連れて行ってくれ。牢屋の中は食べるものも寝る場所もある」と言う・・・

~概要~

「昭和の爆笑王」と呼ばれた柳家金語楼が、有崎勉のペンネームで書いた新作落語。

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両親が自殺して身寄りを無くした幼い姉弟を引き取る貧しい八百屋が登場する『人情八百屋』など、泣きの要素が強い演目が多めです。

 

5.人情八百屋

~あらすじ~

とある商人が商いをしていると母子がナスを買いに来る。聞けば夫が寝込んでいて生活が苦しいと。商人はその日の売上と弁当を渡す。その後もその母子を機にかけていた商人。ある日その母子が自殺したと耳にする・・・

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次に、兄弟を扱った落語として、『妾馬(めかうま)』と『鼠穴(ねずみあな)』を紹介しましょう。

『妾馬』は、妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向き、殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられるというストーリーで、『八五郎出世』という別題もあります。

八五郎が慣れない屋敷でオロオロする前半部分は笑いもたっぷりありますが、後半になると、荒っぽい八五郎が酔うにつれて母親の嘆きを吐露するなど、ホロリとさせられるような人情味のある展開が続きます。

 

6.妾馬

~あらすじ~

妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向く。殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられる・・・

~概要~

別題『八五郎出世』

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一方の『鼠穴』は『妾馬』とはまったく逆で、仲が悪い男兄弟の話。

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功したことで仲直りしたかに見えたものの、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走って…という、山あり谷ありの人生を描いた激しいストーリー。

中盤以降はさらにハラハラドキドキの要素が増して、一層引き込まれます。

 

7.鼠穴

~あらすじ~

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功した。仲直りをしかけたが、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走ってしまう・・・

~概要~

七代目 立川談志氏が得意とした演目。

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そしてもう一作、肉親もので紹介したいのが、祖父と孫のとある夏の情景を描いた新作落語『孫、帰る』です。

演じているのは数々の話題の新作落語を世に出した柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠ですが、この作品は喬太郎師匠ではなく落語作家・山崎雛子さんによる作品です。

喬太郎師匠の持ちネタの中でも特に泣きの要素が強い人間ドラマで、ライブで演じると客席からすすり泣く声があちこちから聞こえてくるほどです。

内容はここではこれ以上書けませんが、CDやDVDにも収録されていますので、是非一度聴いてみてください。

 

8.孫、帰る

~あらすじ~

とある男の子が夏休みに祖父の家に遊びに行く。祖父を探してみるとタンスの上で寝ている。猫がタンスの上で寝ていたので涼しいのかと思い、そこで寝ていたという・・・

~概要~

落語作家・山崎雛子が作った新作落語。

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夫婦の感動ドラマ演目

 

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。

こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

 

9.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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『芝浜』以外では、7歳年上の女房が働かない亭主に腹を立てつつ内心は愛しているという『厩火事(うまやかじ)』

亭主が女房に「もしおまえが死んだ後、私が再婚したら化けて出てこい」と告げる『三年目』などが有名です。

先に紹介した『子別れ』も、夫婦が題材の落語の一つです。

 

10.厩火事

~あらすじ~

理容師の亭主を持つ妻。亭主は遊んでばかりいるので口喧嘩が絶えない。妻はそんな亭主のことを仲人に相談しに行った。すると仲人は孔子の話をして亭主を試してみてはどうかと言う・・・

~概要~

別題『厩焼けたり』。「厩火事」は孔子の故事からついた演目名。

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11.三年目

~あらすじ~

とても仲のいい夫婦がいた。しかし妻が病弱で床に伏せってしまう。そこで妻は「私が死んだらあなたは再婚するのでしょうね」と言う。夫はそんなことはあり得ないとしながらも「もし再婚しそうになったら幽霊として出ておいで」と言う・・・

~概要~

上方(関西)では『茶漬幽霊(ちゃづけゆうれい)』と呼ばれる演目。

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さらにもう一作、寄席でよく演じられる夫婦ネタの短い落語『代り目』を加えましょう。

亭主が酔っ払って帰宅して女房をいろいろと困らせる、全編コメディタッチの演目なのですが、ラストで亭主が「こうして偉そうに言ってはいるけど、陰では『すまねえ』と手を合わせてるんだよ…」と涙ぐむ懺悔のシーンが感動的で、聴く人の心を鷲づかみにします。

寄席ではかなり頻繁にかかるネタですので、寄席で聴ける確率は高いでしょう。

 

12.代り目

~あらすじ~

とある亭主が酔っ払って帰ってくる。酔った亭主に困る妻。しかし亭主は「寝酒を出せ」とわがままな事を言う。妻が仕方なく酒の肴を買いに出ているうちに家の前を通りかかったうどん屋が酔った亭主につかまってしまう・・・

~概要~

『替り目』とも書かれる。五代目古今亭志ん生が人情味のある展開に改めたという。

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介!

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主従や師弟の感動ドラマ演目

 

今と昔を比べますと、上司と部下(主従)のあり方はかなり変わりました。現代は部下が上司に直接パワハラを宣告するケースもあり、立場がだいぶ対等に近づきつつあるようです。

しかし古典落語の舞台となる時代は、雇い主の使用人への命令は絶対でした。その分「よそからお預かりしている子だから」と親身になって一切合切の面倒を見る一面もありました。

血のつながっていない他人同士でありながら、総合的には今と比較にならないほど関係が密接なのでした。

 

 

そうした雇い主と使用人の関係を如実に表している落語が『百年目』です。

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていました。

しかしこれが店の主人にばれてしまい、眠れない夜を過ごしていた所へ、主人から呼び出されます。この時、主人が番頭を諭す説教の言葉が『百年目』の聴き所。

例え話あり、皮肉あり、しかし最終的には番頭を思う心が滲み出ていて、心が動かされる内容です。

 

13.百年目

~あらすじ~

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目と言われる。

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続いてもう一作、師弟の落語『浜野矩随(はまののりゆき)』を紹介しましょう。江戸中期に活躍した実在の職人・浜野矩随がモデルであり主役の落語です。

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)でしたが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまいます。

ある日、そんな矩随が一念発起する衝撃的な出来事があり、それを契機に矩随も名工と呼ばれるようになるという話です。

この噺は、ただの師弟ではなく親子の職人なのですね。近年テレビで二世タレントが苦労話をしているシーンをたまに見かけますが、いつの時代も二世は私たち一般人からは想像もつかない苦労を背負わされるようです。

 

14.浜野矩随

~あらすじ~

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)だったが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまう・・・

~概要~

この落語のモデル浜野矩随は実在した職人。

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肉親・夫婦・主従・師弟以外にも、様々な立場や職業の中の人間関係が落語になっていて、それぞれのジャンルに名作落語は存在します。

しかし残念ながら、とても全部は書き切れません。まずはここに挙げた落語を何本か聴いてみていただければと思います。

 

ベストシチュエーション

 

では最後に、これら感動系の落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

ここで取り上げた落語の多くは、「人情噺(にんじょうばなし)」に類型されます。寄席や落語会では、おもにトリ(一番最後の出番)に登場する、その興行の主役の落語家さんが演じるものばかりです。

ここでは落語家の誰々さんという個人のおすすめはありません。

トリの落語家さんが演じる、キャリアと技術を備えた一流の話芸を、寄席や落語会でじかに味わってみてください。

 

東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介! 東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介!

 

以上、泣けるドラマチック落語演目を紹介しました。

次のページでは落語が題材となったドラマ・映画・舞台を紹介します。観ればもっと落語を深く知る事ができるでしょう。

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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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たとえ落語を聴いた経験が無い人でも、好きなドラマの1本や2本は必ずあることでしょう。

そんな人は落語を「耳で感じて、頭の中で映像を想像するドラマ」と捉えてみてください。グッと親近感が出てくるはずです。

落語にもドラマと同様、いろいろなストーリーが存在します。

このページでは、男女の「恋愛」を扱った落語の数々を、いくつかの項目に分けて紹介してまいりましょう。

 

若い二人の恋模様が描かれた演目

 

古典落語の舞台となる江戸や明治の頃、男女の恋愛は今ほどオープンでなくて、恋する異性のことを考えて一人思い悩む若者も多かったようです。

その結果、ノイローゼ状態から鬱に陥り寝込んでしまうことを、昔は「恋わずらい」と呼びました。

落語で恋わずらいがストーリーの発端となる代表的なお話が『崇徳院』(すとくいん)です。

大店の若旦那が花見の名所で出会った娘に一目惚れして、その娘が短冊に百人一首の崇徳院の歌の上の句だけ書いて若旦那に渡すことから始まる、ドラマチックな内容です。

 

1.崇徳院

~概要~

元々は上方(関西)の落語。後に東京でも演じられるようになった。

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この他、恋わずらいが出てくる落語に『紺屋高尾』(こうやたかお)『幾代餅』(いくよもち)『胆潰し』『宇治の柴舟』などがあります。

 

2.紺屋高尾

~あらすじ~

とある紺屋(染物屋)の職人。26歳になっても遊び一つ知らず真面目に仕事をする好青年。しかしある日寝込んでしまう。親方が調べたところ「恋わずらい」だということがわかる。しかも相手は高尾太夫(遊廓の最高位の女性)だと言う・・・

~概要~

浪曲(三味線とともに語られる芸)でも演じられる演目。

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3.幾代餅

~あらすじと概要~

『紺屋高尾』との違いは、主人公の久蔵の勤め先とラストに開店する店の業種だけで、基本的には同じ内容の落語。『紺屋高尾』を演じる一門と『幾代餅』を演じる一門という具合に、落語家の系統によって分かれる。

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4.胆潰し

~あらすじ~

とある男が病気で伏せっている友人の家に見舞いに行く。聞けば「恋わずらい」だと言う。相手は呉服屋の娘・・・

~概要~

「肝をつぶす」とは大きく驚く、という意味。

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5.宇治の柴舟

~あらすじ~

とある男が病に伏せっている。薬も効かず、医者が言うには「胸に何かが詰まっている」と。気心知れた仲の友人が聞き出すとやはり「恋わずらい」。その相手は掛け軸に描かれている女だと言う・・・

~概要~

上方(関西)でよく演じられる演目。

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その他にこうした若い男女の恋愛がテーマの落語を探すと以下の3つの演目が有名です。

 

6.宮戸川

~あらすじ~

ある日、半七が将棋を友人と指していて遅くなってしまい家から閉め出しをくらう。そこへカルタを友人と遊んでいて同様に家から閉め出しをくらったお花とばったり出会う・・・

~概要~

宮戸川は現在の隅田川の浅草周辺の流域と言われる。別題『お花半七馴れ初め』『お花半七』。

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7.花見小僧

~あらすじ~

とある店の娘が年頃になったので店の主人が婿を迎えようとするが娘は一向に応じない。そんな時、店の者と娘ができている、という噂を聞く・・・

~概要~

『おせつ徳三郎』という噺の前半部分。

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8.お若伊之助

~あらすじ~

とあるおかみさんの美人な1人娘が一中節(いっちゅうぶし:浄瑠璃の一つ)を習いたいと言い出す。習う事になったのはいいが教えにくる者が伊之助という26歳の男。まだ18歳の娘がおかみさんは心配になる・・・

~概要~

別題『因果塚由来』。

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一方では、奉公に入ったばかりの娘めがけて商家の男連中が夜這いをたくらむ『引っ越しの夢』(別題『口入屋』)や、村一番のマドンナに男が夜這いを仕掛ける『お玉牛』(おたまうし)なんて落語演目もありますが、いずれも失敗に終わるのが落語らしい所です。

 

9.引っ越しの夢

~あらすじ~

とあるお店に口入屋(職業紹介所)から美女が女中として訪れる。今までお店は間違いがあってはいけないと美女を断っていたのだが番頭の差し金で美女が来るようにしておいたのだった・・・

~概要~

上方(関西)では『口入屋』(くちいれや)という演目名で呼ばれる。

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10.お玉牛

~あらすじ~

堀越村の男たちが集まって美女の女中、お玉のことを話している。そこへ乱暴者の源太がやってきて、今お玉に会って来たと言う・・・

~概要~

別題『堀越村のお玉牛(ほりこしむらのおたまうし)』『堀越村(ほりこしむら)』。

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夫婦を描いた落語

 

落語では若者の恋愛ドラマだけでなく、幅広い年代の恋愛模様が描かれています。

既に紹介した『宮戸川』が10代の若い恋愛ならば、

20代の婚礼の夜を描いたのが『たらちね』、

蜜月の空気感漂う若夫婦を描いたのが『目薬』、

臨月(妊娠後期)の女房が出てくるのが『町内の若い衆』、

倦怠期の夫婦が出てくるのが『堪忍袋』、

女房が亭主を尻に敷く熟年夫婦を描いたのが『鮑のし』…と続きます。

そしてさらに、お互い年を重ねた老夫婦が登場するのも、最初に紹介した『宮戸川』なのです。

若い二人を見ながら自分たちの若き日を思い出す場面では、笑いの中に人生の深さを感じられると思います。

 

11.たらちね

~あらすじ~

独り身の八五郎の元へ大家さんが縁談を持ちかける。聞けば器量良しの若い女だがいかんせん話し方が丁寧すぎて何を言っているか分からないらしい。いざ八五郎が会ってみて、挨拶をされたがちんぷんかんぷんで・・・

~概要~

『垂乳女』と書いて『たらちね』と読む。『たらちめ』とも。上方では『延陽伯』というタイトルで呼ばれる。

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12.目薬

~あらすじ~

ある職人が目の病になって仕事ができず食うに困る事に。そんなある日妻が薬屋に行って目薬を買ってくる。しかし説明書の字が読めず・・・

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13.町内の若い衆

~あらすじ~

とある職人の男が親方の家に行ったが親方はおらず、親方の妻だけがいる。親方の妻と話すがとても良い女性。職人は自分の妻と比べて情けなく感じてしまう・・・

~概要~

元々は1690年の笑話本にあった噺だが噺が原話から変わっていない珍しい落語演目とされている。

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14.堪忍袋

~あらすじ~

ある喧嘩の絶えない夫婦を見かねた大家さんが中国に伝わる故事を言い聞かせる。その故事では喧嘩をしそうになった男が「水がめ」に向かって叫びたい事を叫ぶ、というもの。そこで夫婦は嫌な事があると「袋」に向かって相手の悪いところを叫んだ。すると気持ちが爽快になる・・・

~概要~

喜劇脚本家の益田太郎冠者氏が作った新作落語。

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15.鮑のし

~あらすじ~

おめでたい男、甚兵衛(関西では喜六)がお腹を空かして帰り嫁さんに言うと「ご飯が食べたければお金を50銭借りてこい」と言われる。何とか借りて帰ると、その金で鯛を買い大家さんにプレゼントをして1円をお返しでもらってこい、と嫁さんに言われる。しかし甚兵衛が50銭で買えたのは鮑(アワビ)だけだった・・・

~概要~

別題『鮑貝(あわびがい)』『祝いのし』。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

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年代だけではありません。

酒に溺れる亭主を女房の尽力で更生させる『芝浜』

江戸時代、生活に困った夫婦が「蹴転(けころ)」という最下級の女郎屋を始める『お直し』

一度別れた夫婦が子供をキッカケによりを戻す『子別れ』(別題『子は鎹』)

など、様々なシチュエーションの夫婦愛を、落語では扱っているのです。

これらもおすすめですので一度聴いていただければと思います。

 

16.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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17.お直し

~あらすじ~

年をとった花魁と若い客引きが恋に落ちる。しかし遊郭で同業者の恋はご法度。そこで花魁は引退し二人は無事に夫婦生活を始める・・・

~概要~

元々あまり誰もやっていなかった演目だが五代目 古今亭志ん生(ここんてい しんしょう)が復活させた演目。

▼五代目 古今亭志ん生

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18.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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傾城(けいせい)の恋を描いた落語

※傾城(けいせい)・・・かつては美人のことをこう呼んだ。落語では花魁(おいらん)・遊女のこと。

 

落語で男女の関係がテーマとなるもう一つの舞台が、遊廓やお茶屋が並ぶ色街(いろまち)。今風に言うと歓楽街(かんらくがい)です。

呼び方は廓(くるわ)・遊里・遊び場・岡場所など演目によっていろいろです。

「傾城の恋はまことの恋ならで 金持ってこいが本の恋なり」

(訳:遊廓の”恋”は本当の”恋”ではなく、お金を持って”来い”が本当の意味である)

と狂歌にもあるように、本来は大人が疑似恋愛を楽しむ場所なのですが、色欲と金銭欲が渦巻く世界だけに、これまた様々な人間ドラマの溜まり場になっています。

 

こうした場が舞台の落語は「廓噺(くるわばなし)」と呼ばれ、名作も目白押しなのですが、その中から現代にも通じるドラマ性を含んだ演目ということで、先ほども名前の出た『紺屋高尾』を筆頭に、『たちきり』(別題『立ち切れ線香』)、『三枚起請』(さんまいきしょう)、『文違い』、『品川心中』の5作品をおすすめしておきましょう。

いずれも比較的演者の多いポピュラーな演目ですので、どんな恋愛が繰り広げられているか、試しに聴いてみてください。

 

 

19.たちきり

~あらすじ~

とある真面目な男が花街へ行く。そこにいた芸者に惚れてしまい、働いていたお店のお金にまで手を付けてしまう。困った親族や番頭たちがその芸者に会わせなくするよう企てる・・・

~概要~

別題『立ち切れ線香』『たちぎれ』など。元々上方(関西)の落語。

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20.三枚起請

~あらすじ~

とある遊び人の男が友人に、ある花魁(おいらん)から「遊女を辞めたら貴方と結婚する」という起請文(きしょうもん=誓約書)をもらったと自慢する。しかしその自慢された友人も、同じ花魁から同様の起請文をもらっていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の落語演目が江戸に持ち込まれた。

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21.文違い

~あらすじ~

とある女郎が「父親に20両貸してくれとせがまれて困っている」と客に金をねだる。しかしその客は20両も持ち合わせていない。すると他の客に「母親に20両貸してくれとせがまれて困っている」と金をねだる・・・

~概要~

江戸(東京)で多く演じられる演目。

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22.品川心中

~あらすじ~

品川で働くある女郎が金が無くて馬鹿にされるのを嫌がり死ぬことを決意する。しかし一人で死ぬのは嫌なのでなじみ客のうちのぼーっとしているある男を選び死のうとする・・・

~概要~

品川の遊廓が舞台の噺。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

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こんな恋愛シチュエーションも…

 

恋愛をテーマにした落語は、まだまだあります。とはいえ全部挙げていくといつまでたっても終わりませんので、ここではジャンルと演目名だけ列挙します。

名前だけでも覚えて、何かの折に聴いてみてください。

 

・【伴侶の死】がテーマの落語

『三年目』『短命』『樟脳玉』『反魂香』(別題『高尾』)など

・【愛人・妾】がテーマの落語

『三軒長屋』『星野屋』『権助提灯』『権助魚』など

・【ジェラシー】がテーマの落語

『夢の酒』『悋気の独楽』『悋気の火の玉』『汲み立て』など

・【浮気・間男】がテーマの落語

『庖丁』『紙入れ』『風呂敷』『つづら』『駒長』など

 

名作恋愛落語【新作】

 

ここまでにご紹介したのは、すべて江戸や明治が舞台の古典落語です。

 

現代が舞台の新作落語の場合、感動ドラマよりもコメディ色が強くなる傾向が強いため、昭和期に生まれた落語で恋愛ドラマ仕立ての作品はほとんど存在しませんでした。

しかし平成期に入り、落語界全体で新作の創作が盛んになりだしてからは、恋愛ドラマばりに叙情的で感動を招く落語が何本も生まれたのです。

 

平成期の新作落語創作

三遊亭円丈・春風亭昇太・柳家喬太郎・三遊亭白鳥・林家彦いち・立川志の輔・桂三枝(六代目桂文枝)・笑福亭仁智などにより新作落語が平成で多く作られ、ブームになった。現在もその下の世代も含めて新作落語の創作は盛んに行われている。

 

中でも柳家喬太郎師匠が作った『純情日記横浜篇』は、同じバイト先で働く女性をデートに誘えない男性の切ない恋愛模様が描かれた傑作です。

 

▼柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)

 

23.純情日記横浜篇

~あらすじ~

同じバイト先で働く女性をデートに誘えない男性の切ない恋愛模様・・・

~概要~

既に作者の喬太郎師匠から何人もの後輩落語家に口伝され、早くも古典化しつつある。

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同じく喬太郎師匠の、年老いた男が昔好きだったハワイ在住の女性に会いに行く『ハワイの雪』も、名作の誉れ高い感動ストーリーです。

 

24.ハワイの雪

~あらすじ~

年老いた男が昔好きだったハワイ在住の女性に会いに行く・・・

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ベストシチュエーション

 

最後に、恋愛ドラマの落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

恋愛にまつわる落語は、できれば等身大のストーリー楽しみたいものです。自分の年齢と近い登場人物が出てくる落語なら、より一層共感できるはずですから。

特に夫婦の落語の場合、ご自身の年代とリンクする落語から聴くことをお勧めします。もし結婚間もない二人がうっかり倦怠期夫婦の落語など聴いたりしたら、どんよりした気分になりかねません。

 

そしてもう一点。ドラマ性のあるしっとりとした内容の落語は、なるべく音響の整った会場でじっくり腰を据えて聴きたいものです。

具体的には東京で言えば有楽町の「よみうりホール」、池袋の「東京芸術劇場」、虎ノ門の「ニッショーホール」、小さい所では中野の「なかの芸能小劇場」とか、要は演劇舞台をやる会場ですね。他にも都内および近郊では、数多くのホールが落語公演に使用されています。

逆に音響が整っていない会場というのは、地方の体育館とか、文化会館の和室とか、飲食店など、本来演劇をやる場ではない場所のことです。

 

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ホールでの落語会は事前に演目のタイトルが発表されることが多いので、チケット販売サイトなどを検索すれば見つかる可能性が高いでしょう。できれば2枚購入して、落語デートに使ってみるとよいかもしれません。

 

▼チケット販売サイトの例

チケットぴあ

 

若い二人のデートならば演者さんは達者なベテラン落語家さんよりも、若手~中堅の落語家さんの若々しい声で聴いた方が、より共感できて強く印象に残る気がします。

もちろんベテラン落語家さんの話芸にもベテランならではの技術と妙味がありますけどね。

 

以上、恋愛が題材になっている落語を紹介しました。

次のページでは聴いているだけでハラハラドキドキする落語を紹介していきます。

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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。お問い合わせはこちらから

 

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第1章 落語の定番

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第2章 とにかく笑える落語演目集

落語と言えば「笑い」。でも笑える落語と言っても数は膨大で、さらにジャンルも様々。著者が厳選するあなたにピッタリの爆笑落語・滑稽噺を聴いてみましょう!

落語で笑おう!おすすめ演目29選 【爆笑編】

落語で笑おう!おすすめ演目26選 【あるある編】

 

第3章 色んなジャンルの落語演目集

落語は笑えるもの。でもそれだけではありません!デートで聴くのに良さそうな「恋愛」がテーマの落語やハラハラドキドキする落語、そして泣けるドラマチックな落語まで!おすすめ演目をご覧ください!

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第4章 落語をもっと楽しむ

ブームとなりつつある落語。落語がテーマになっている映画・ドラマ・舞台は数知れず。なんとあの宝塚歌劇団まで落語をテーマに演じているのです。

落語が題材になった映画・ドラマ・舞台

 

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選をご紹介しております。

前ページでは「滑稽噺」をご紹介しましたが、落語はおもしろおかしい滑稽噺だけではありません。

夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」と呼ばれる演目が数多くあります。

そんな人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を3つご紹介します。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【人情噺編】

9 芝浜(しばはま)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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▼筆者おすすめ「芝浜」を鑑賞できる作品

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10 子別れ

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。

上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

11 藪入り(やぶいり)

あらすじ

 

奉公(=住み込みで主人に仕えること)に出た息子の亀吉が、しばらくぶりに藪入り(年に二度の休暇)で帰って来る。

その前夜、父親はそわそわして寝つけない。

「あれも食べさせたいこれも食べさせたい」とうるさいのなんの。

 

 

まだ夜が明けないうちから、今度は息子と一緒に出かけたい場所を次々と挙げていき「落ち着け」と女房にたしなめられる。

そうしているうちにやっと夜が明ける。

父親が待ちきれない様子で家の前の掃除をしているところへ亀吉が帰って来る。

立派な挨拶をする息子に両親は感動。

 

 

息子を湯屋(=銭湯)へ送り出したあと、母親が亀吉の財布に大金が入っていることに気づく。

「ひょっとしたら店の金に手をつけたんじゃないか」と疑い、帰って来た亀吉を問い詰める。

口論となって父親は亀吉に手をあげ、母親はそれを制止し泣きながら問いただすと

「このごろペストが流行っているので、ネズミを捕まえて警察に持っていったら一匹十五円の懸賞に当たった。このお金は今日まで主人に預かってもらっていたけど、今日は藪入りだから持って帰って両親を喜ばせてやれと、主人が持たせてくれた」

というようなことを答える。

 

–ネタバレ–

 

両親はそれを聞いて安心する。

亀吉に父親は「これからも主人を大切にしなよ」と教える。そして

「これもやっぱりチュウ(忠とネズミの鳴き声をかけている)のおかげだ」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

息子が帰って来るのを心待ちにする両親の心情が伝わってくる、ほっこりした気持ちになる噺です。

うきうきが止まらず、とんちんかんな言動をする父親、それを温かく見守っている母親、立派に成長した息子、たがいに相手を思いやりながらも起こってしまう、気持ちのすれ違いが聞きどころです。

 

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⚫林家たい平落語集 井戸の茶碗/藪入り(CD)

 

この第2章ではおすすめ古典落語についてお伝えしました。

次の章(第3章)からは実際に落語を鑑賞する方法についてお伝えします。落語が行われている「寄席」は飲食もオーケーであり気軽に入れるところなので、ふらっと足を運んでいただければと思っております。

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著者:ミドケン

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