ドラマチックな落語!おすすめ演目14選

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

何かの折にたまたま聴いた落語にものすごく感銘を受けて、友達に「あの落語よかったー、感動したー」と吹聴したり、SNSやブログで感想を書いたりする人は結構います。

その際、笑いの多い落語はあまりその対象になりません。爆笑した落語を「よかったー」と絶賛する人より、感動的な落語の方がストレートに「よかったー」と絶賛できるようです。

どういうことかと言いますと、笑いは人それぞれ好みが違うため、可笑しさの感情を共有しづらい面があるのです。その点、感動の要素はほとんど個人差がありませんから、人と気持ちを共有しやすいわけです。

このページでは、心の機微や心理面が絡むいさかいなど、登場人物の内面描写に優れたドラマチックな落語の数々を項目別に紹介していきましょう。

 

親子・肉親の感動ドラマ演目

 

落語における感動のシチュエーションとしてまず筆頭に挙げたいのが、親子、兄弟姉妹、祖父祖母など、肉親同士の家族愛が描かれた作品です。

 

親子愛がテーマの落語で代表的なのが『子別れ』(別題『子は鎹』)でしょう。

離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

 

1.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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こうしたストレートなまでの親子愛を描いた落語は、古典・新作を問わずあります。

火事が好きで自ら町火消しの人足になった後継ぎ息子を勘当した父親が、近所で起きた火事をキッカケに、全身刺青だらけになった息子と再会する『火事息子』。

 

2.火事息子

~あらすじ~

とあるお店の若旦那は子供の頃から「火事」が好きだった。しかしそれのせいで父親から勘当されてしまう。そんな若旦那が大人になり消防の仕事に就いていたある日父親の店の近所で火事が起きる・・・

~概要~

江戸(東京)の落語演目。

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昔は年に二日しか無かった商家の奉公人の休日、しっかり成長して帰ってきた息子の姿に父親が涙する『藪入り』。

 

3.藪入り

~あらすじ~

とある店に奉公しに行っていた(働きに行っていた)息子の帰りを両親が待っている。父親は息子にご馳走を振舞ってやりたい。そこへ息子が帰ってくる。身長が伸びて立派に育った息子を見て両親は感激する・・・

~概要~

元々滑稽噺だった『お釜さま』という噺が改作された『鼠の懸賞』を変えて作られた噺。

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留置所に入るつもりで無銭飲食をした男が、優しい屋台のラーメン屋夫婦に気に入られ、次第にお互い親子同様の感情を抱く仲になるという『ラーメン屋』。

 

4.ラーメン屋

~あらすじ~

とある老夫婦がやるラーメン屋。そこへ男が入ってきてラーメンを食べる。食べ終えるころに男は「もう金がない。だから俺を無銭飲食で警察に連れて行ってくれ。牢屋の中は食べるものも寝る場所もある」と言う・・・

~概要~

「昭和の爆笑王」と呼ばれた柳家金語楼が、有崎勉のペンネームで書いた新作落語。

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両親が自殺して身寄りを無くした幼い姉弟を引き取る貧しい八百屋が登場する『人情八百屋』など、泣きの要素が強い演目が多めです。

 

5.人情八百屋

~あらすじ~

とある商人が商いをしていると母子がナスを買いに来る。聞けば夫が寝込んでいて生活が苦しいと。商人はその日の売上と弁当を渡す。その後もその母子を機にかけていた商人。ある日その母子が自殺したと耳にする・・・

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次に、兄弟を扱った落語として、『妾馬(めかうま)』と『鼠穴(ねずみあな)』を紹介しましょう。

『妾馬』は、妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向き、殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられるというストーリーで、『八五郎出世』という別題もあります。

八五郎が慣れない屋敷でオロオロする前半部分は笑いもたっぷりありますが、後半になると、荒っぽい八五郎が酔うにつれて母親の嘆きを吐露するなど、ホロリとさせられるような人情味のある展開が続きます。

 

6.妾馬

~あらすじ~

妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向く。殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられる・・・

~概要~

別題『八五郎出世』

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一方の『鼠穴』は『妾馬』とはまったく逆で、仲が悪い男兄弟の話。

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功したことで仲直りしたかに見えたものの、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走って…という、山あり谷ありの人生を描いた激しいストーリー。

中盤以降はさらにハラハラドキドキの要素が増して、一層引き込まれます。

 

7.鼠穴

~あらすじ~

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功した。仲直りをしかけたが、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走ってしまう・・・

~概要~

七代目 立川談志氏が得意とした演目。

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そしてもう一作、肉親もので紹介したいのが、祖父と孫のとある夏の情景を描いた新作落語『孫、帰る』です。

演じているのは数々の話題の新作落語を世に出した柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠ですが、この作品は喬太郎師匠ではなく落語作家・山崎雛子さんによる作品です。

喬太郎師匠の持ちネタの中でも特に泣きの要素が強い人間ドラマで、ライブで演じると客席からすすり泣く声があちこちから聞こえてくるほどです。

内容はここではこれ以上書けませんが、CDやDVDにも収録されていますので、是非一度聴いてみてください。

 

8.孫、帰る

~あらすじ~

とある男の子が夏休みに祖父の家に遊びに行く。祖父を探してみるとタンスの上で寝ている。猫がタンスの上で寝ていたので涼しいのかと思い、そこで寝ていたという・・・

~概要~

落語作家・山崎雛子が作った新作落語。

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夫婦の感動ドラマ演目

 

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。

こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

 

9.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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『芝浜』以外では、7歳年上の女房が働かない亭主に腹を立てつつ内心は愛しているという『厩火事(うまやかじ)』

亭主が女房に「もしおまえが死んだ後、私が再婚したら化けて出てこい」と告げる『三年目』などが有名です。

先に紹介した『子別れ』も、夫婦が題材の落語の一つです。

 

10.厩火事

~あらすじ~

理容師の亭主を持つ妻。亭主は遊んでばかりいるので口喧嘩が絶えない。妻はそんな亭主のことを仲人に相談しに行った。すると仲人は孔子の話をして亭主を試してみてはどうかと言う・・・

~概要~

別題『厩焼けたり』。「厩火事」は孔子の故事からついた演目名。

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11.三年目

~あらすじ~

とても仲のいい夫婦がいた。しかし妻が病弱で床に伏せってしまう。そこで妻は「私が死んだらあなたは再婚するのでしょうね」と言う。夫はそんなことはあり得ないとしながらも「もし再婚しそうになったら幽霊として出ておいで」と言う・・・

~概要~

上方(関西)では『茶漬幽霊(ちゃづけゆうれい)』と呼ばれる演目。

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さらにもう一作、寄席でよく演じられる夫婦ネタの短い落語『代り目』を加えましょう。

亭主が酔っ払って帰宅して女房をいろいろと困らせる、全編コメディタッチの演目なのですが、ラストで亭主が「こうして偉そうに言ってはいるけど、陰では『すまねえ』と手を合わせてるんだよ…」と涙ぐむ懺悔のシーンが感動的で、聴く人の心を鷲づかみにします。

寄席ではかなり頻繁にかかるネタですので、寄席で聴ける確率は高いでしょう。

 

12.代り目

~あらすじ~

とある亭主が酔っ払って帰ってくる。酔った亭主に困る妻。しかし亭主は「寝酒を出せ」とわがままな事を言う。妻が仕方なく酒の肴を買いに出ているうちに家の前を通りかかったうどん屋が酔った亭主につかまってしまう・・・

~概要~

『替り目』とも書かれる。五代目古今亭志ん生が人情味のある展開に改めたという。

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介!

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主従や師弟の感動ドラマ演目

 

今と昔を比べますと、上司と部下(主従)のあり方はかなり変わりました。現代は部下が上司に直接パワハラを宣告するケースもあり、立場がだいぶ対等に近づきつつあるようです。

しかし古典落語の舞台となる時代は、雇い主の使用人への命令は絶対でした。その分「よそからお預かりしている子だから」と親身になって一切合切の面倒を見る一面もありました。

血のつながっていない他人同士でありながら、総合的には今と比較にならないほど関係が密接なのでした。

 

 

そうした雇い主と使用人の関係を如実に表している落語が『百年目』です。

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていました。

しかしこれが店の主人にばれてしまい、眠れない夜を過ごしていた所へ、主人から呼び出されます。この時、主人が番頭を諭す説教の言葉が『百年目』の聴き所。

例え話あり、皮肉あり、しかし最終的には番頭を思う心が滲み出ていて、心が動かされる内容です。

 

13.百年目

~あらすじ~

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目と言われる。

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続いてもう一作、師弟の落語『浜野矩随(はまののりゆき)』を紹介しましょう。江戸中期に活躍した実在の職人・浜野矩随がモデルであり主役の落語です。

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)でしたが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまいます。

ある日、そんな矩随が一念発起する衝撃的な出来事があり、それを契機に矩随も名工と呼ばれるようになるという話です。

この噺は、ただの師弟ではなく親子の職人なのですね。近年テレビで二世タレントが苦労話をしているシーンをたまに見かけますが、いつの時代も二世は私たち一般人からは想像もつかない苦労を背負わされるようです。

 

14.浜野矩随

~あらすじ~

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)だったが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまう・・・

~概要~

この落語のモデル浜野矩随は実在した職人。

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肉親・夫婦・主従・師弟以外にも、様々な立場や職業の中の人間関係が落語になっていて、それぞれのジャンルに名作落語は存在します。

しかし残念ながら、とても全部は書き切れません。まずはここに挙げた落語を何本か聴いてみていただければと思います。

 

ベストシチュエーション

 

では最後に、これら感動系の落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

ここで取り上げた落語の多くは、「人情噺(にんじょうばなし)」に類型されます。寄席や落語会では、おもにトリ(一番最後の出番)に登場する、その興行の主役の落語家さんが演じるものばかりです。

ここでは落語家の誰々さんという個人のおすすめはありません。

トリの落語家さんが演じる、キャリアと技術を備えた一流の話芸を、寄席や落語会でじかに味わってみてください。

 

東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介! 東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介!

 

以上、泣けるドラマチック落語演目を紹介しました。

次のページでは落語が題材となったドラマ・映画・舞台を紹介します。観ればもっと落語を深く知る事ができるでしょう。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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「笑いとは感情の共有である」という分析があります。

そんな理屈っぽい表現をしなくても、今なら「あるあるネタ」と言えば伝わりますね。

落語には様々な笑いの要素がありますが、その中で最も生活感があって、ふと家族や友人の行動を頭に思い浮かべて笑ってしまうのが「あるある」の笑いです。

 

このページでは、数ある滑稽噺(こっけいばなし=笑いの要素が強い落語)の中から「あるある」の要素を含んだ落語の数々を紹介していきましょう。

落語の中に「あるある」を見つけて笑いたい人におすすめです。

 

お酒と食べ物の「あるある」が登場する落語

 

落語における「あるある」ネタの代表といえば、お酒や食べ物が出てくる演目でしょう。

美味しそうにお酒を飲んだり何かを食べたりする時のちょっとした仕草を、落語家さんは上手に取り入れて笑いを作り出します。

お酒の出てくる落語は数え切れないほどあって、以下に紹介する代表的な演目『親子酒』『一人酒盛』『猫の災難』『試し酒』などでは、いずれも次第に酔っ払ってゆく登場人物の演技が見せ場になっています。

呂律が回らず、視線も定まらず、しまいには言葉遣いまで変化していき…という、誰もが見たことのあるリアルな酔っ払いの姿を演じて、笑いを提供するのです。

 

1.親子酒

~あらすじ~

あるところに酒が大好きで、酒癖が悪い親子がいた。ある日息子に向かって父親が「二人で共に酒をやめよう」と申し出た。禁酒を始めた親子だったがある日、父が我慢できず酒を飲んでしまう・・・

~概要~

十代目桂文治が得意とした。

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2.一人酒盛

~あらすじ~

友達の熊五郎に呼ばれた留さん。熊五郎が言うには「いい酒をもらったが一人で飲むにはもったいない。留さんと一緒に飲みたいんだ。」と。いい気になった留さん。熊五郎が指示する準備をしてあげる。しかしいっこうに熊五郎は留さんに「飲め」と言ってこない・・・

~概要~

酒を飲もうと言った熊五郎が引っ越しをしたばかりという設定で演じる人もいる。

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3.猫の災難

~あらすじ~

隣人が猫のお見舞いにもらった鯛の頭と尻尾を持っている。それを見た男が「くれ」と言いもらった。男はこれを肴にして酒が欲しいな、と考えていたところへ兄貴が「酒でも飲まねえか」と訪ねてくる・・・

~概要~

江戸(東京)と上方(関西)でオチ(サゲ)が異なる。江戸では猫は実際には登場しない(猫のお見舞い、という隣人のセリフの中だけ)。

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4.試し酒

~あらすじ~

ある店の主人が下人(主人に仕えている人)を連れて他の店に良い酒を持ってきた。そこで「うちの下人は5升もの大量の酒が飲める」と言い放つ。すると「本当かい?じゃあ今本当かどうかここで飲んでみろ。飲めなかったらお前の負けだ」と賭けをすることになり下人は困ってしまう。なぜなら・・・

~概要~

落語の速記者(落語家の話す落語を記録する人)で研究家の今村信雄(いまむら のぶお)氏が昭和初期に作った新作落語で、原話は中国の小ばなし。現在では古典落語のような扱いになっている。

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お酒と同様、食べ物の出てくる落語も「あるある」の宝庫です。

食べる仕草が見せ場の落語演目を6つご紹介します。

 

5.うどん屋

~あらすじ~

とあるうどん屋の屋台に酔っ払いが近づいてくる。しかしこの酔っ払い、世間話ばかりでなかなかうどんを頼もうとしない・・・

~概要~

元々は上方(関西)で『風邪うどん』として演じられていたものが江戸(東京)でうどん屋として演じられるようになった。

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6.ぜんざい公社

~あらすじ~

とある男が「ぜんざい公社」という存在を知る。ぜんざいを食べる為にぜんざい公社に出向くが食べる前に書類の提出や健康診断を求められてなかなかぜんざいにありつけない・・・

~概要~

三代目 桂文三(かつら ぶんざ)師匠の「改良ぜんざい」が元となる新作落語。かつてタバコを売っていた公共企業体(国などが出資した企業)である「日本専売公社」をもじった演目。

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7.時そば

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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8.ふぐ鍋

~あらすじ~

とある男の家に調子のいい男が訪ねて来た。男は幇間にふぐ鍋を一緒に食べようと勧める。しかしふぐには毒があるのでビビッて二人とも食べられない。そこへ乞食が登場し、二人は毒見をさせようとするが・・・

~概要~

別題『ふぐ汁』。

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9.二番煎じ

~あらすじ~

とある冬、火の番(江戸時代に夜警などをしていた役職)が休みなので町の旦那たちが代わりに防火の夜回りをすることになった。しかし寒いので火の用心の木を懐の中で打ったりして適当に行っている。そして雑談が始まってしまいとうとう一人が酒を持ち出す・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目で後に江戸(東京)へ伝わった。

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10.初天神

~あらすじ~

とある男が参拝に行こうとすると妻に「息子も連れてって」と頼まれる。しぶしぶ連れていくことになるが「物をねだるなよ」と言ってある息子は天神で様々なものをねだる。うるさいので男は息子に飴を買ってやる・・・

~概要~

噺にはいくつかのバリエーションがある。息子の性格や団子が出てきたり出てこなかったり演じる落語家によって大きく異なる。

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11.饅頭怖い

~あらすじ~

街の男たちが集まって自分たちの「怖いもの」の話をしている。クモが怖い、お化けが怖い、などと言っているがその中で一人だけ「まんじゅうが怖い」と言う男がいた・・・

~概要~

広く世間に知られる人気の演目。若手の練習噺としても用いられるが、持ちネタにする名人落語家も多い。

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昔、昭和の名人・八代目桂文楽師匠が『明烏(あけがらす)』という落語の中で甘納豆を食べる仕草をすると、あまりにリアルで美味しそうだったため寄席の売店の甘納豆が完売になったという逸話があるそうです。

これなど究極の「あるある」かもしれません。

 

12.明烏(あけがらす)

~あらすじ~

道楽を全く知らない堅物の息子を心配した父親。知り合いの遊び人二人に息子を遊郭(女性が男性をもてなすお店)へ連れていってくれと頼む。堅物ゆえに遊郭を恐れる息子を二人が参拝だと騙してまんまと遊郭へ連れ込むが・・・

~概要~

八代目 桂文楽(かつら ぶんらく)の得意ネタとして有名。

▼八代目 桂文楽

By 朝日新聞社 – 『アサヒグラフ』 1949年1月12日号, パブリック・ドメイン, Link

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日常生活の「あるある」が登場する落語

 

飲食に限らず、私たちの日常生活のすべてを笑いの対象にするのが落語です。

「日常生活のあるある」というのは、つまり市井(しせい:人が集まっているところ)のどこにでもある光景を描写した落語という意味で、言い換えればノンジャンルということでもあります。

「これぞ落語」というポピュラーでスタンダードな演目が多いと思いますので、落語を基礎中の基礎から知っていきたい人にはおすすめでしょう。

 

13.小言念仏

~あらすじ~

主人公の老人が仏前で念仏を唱える。その念仏の合間に「小言」を挟む。ついには妻に念仏の合間に頼み事をしだす・・・

~概要~

ストーリーがあるわけではなく様々な念仏の様子を演じる演目。落語家は扇子で台や床を叩き、木魚(もくぎょ:念仏の際に叩く木製の道具)に見立てながら演じる。

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14.強情灸

~あらすじ~

ある男が唸っている。聞けば今しがた「かなり熱いお灸を据える」と有名な店でお灸を据えてきてもらったらしい。でもその男によれば我慢したとのこと。さらにみんなからスゴイと言われて有頂天になったと言う・・・

~概要~

元々は上方(関西)の「やいと丁稚」という演目から江戸に伝わった噺。

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上記2つの演目を聴いていただくと「落語では些細な事柄さえ笑いにする」という事がわかると思います。

以下では日常の風景のあるあるを笑いに変えている落語を6つ紹介します。

 

15.動物園

~あらすじ~

朝が弱くて力仕事もできない非力な男がいて、仕事が続かず困っていた。そこへその男にぴったりな仕事が舞い込む。朝も遅くていい、人との関わりもない、力仕事もない仕事。喜んで飛びついたがその仕事は・・・

~概要~

古典落語。別題『動物園の虎』『虎の見世物』『ライオン』『ライオンの見世物』。元々は海外で広く伝わるジョークで日本人でなくとも楽しめるので落語家が外国で口演したりすることもある演目。

【著者談】『動物園』はここがポイント!

この落語では虎が檻の中をうろうろする様子を両腕だけで表現する仕草があり、客席からは「動物園の虎の動きにそっくり!」と賞賛の拍手が起きます。

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16.相撲場風景

~あらすじ~

とある相撲部屋。その日の相撲場は観客で満員。賑わった相撲場だが観客は隣の人の握り飯を食べてしまったり、寝ていたり・・・

~概要~

上方(関西)の落語。元々『子ほり角力』という演目の前半部分が独立した演目。別題『角力場風景』。

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17.夜店風景

~あらすじ~

とある縁日。夜店がたくさん出ている。その中に「お化け屋敷」という見世物小屋があり、若い男女が一緒に入る。そんなお化け屋敷に入ってもらおうとする客引きも大変で・・・

~概要~

この噺の後半部分が『がまの油』という演目。

※『がまの油』は前のページで紹介!

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18.浮世風呂

~あらすじ~

銭湯の中の人間模様。女湯と男湯では話す時間も内容も異なる・・・

~概要~

元々は「浮世風呂」という滑稽本(可笑しい噺を書いた本)が落語になった。

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19.くやみ

~あらすじ~

ボーッとした男が、世話になった旦那が亡くなったと聞いて告別式にやって来るが、そこへやたらと両棒ののろけ話が好きな男が現れて・・・

~概要~

昔のお弔い(葬式・告別式)の風景を描いた落語。

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20.三十石

~あらすじ~

京都から大阪に下る三十石船と船町の情景を、それぞれオムニバス調で描く・・・

~概要~

上方(関西)の落語演目。別題『三十石夢乃通路』。

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人間関係の「あるある」が登場する落語

 

落語のソフトな笑いが日常の行動や風景を描いて「あるある」を見つけることだとすれば、登場人物がぶつかり合って生まれる心理の描写に対して「そんなことあるよねー」と共感して笑うのは落語のハードな笑いと呼べるかもしれません。

 

【コラム】ソフトな笑いとハードな笑い

日常生活のちょっとした「あるある」というのは、脳内にある自分の過去の見聞・行動記憶の確認で、それらは表層記憶(つまりソフト)にあたります。

対して人間関係の「あるある」というのは、喜怒哀楽の感情が絡みます。脳のより根幹に近い心情的な記憶(つまりハード部分)を思い出し、「この感情、あるある」と共感して湧き出る笑いです。

以前さまぁ~ず(お笑いコンビ)が持ちネタにしていた「悲しいダジャレ」のネタの一つで、

「死んだあの人の形見の椅子に、すわっていーっすか?」

というのがありました。

「椅子」と「いーっす」のダジャレ部分が表層記憶の確認で「ソフト」、これに「死んだあの人の形見の」が付くことで頭に浮かぶ世界がガラリと変わる、これがすなわち心情の確認で「ハード」ということです。

本文ではこうした理屈は省いて、「人間関係のあるある」とごく簡単に表現しました。

人間ドラマが好きな人や、ドキュメンタリー番組が好きな人などは、笑いよりもそういった人間の機微にスポットを当てて進行する筋立ての落語を導入部にしますと、はまるかもしれません。

 

人間関係の「あるある」を楽しめる落語演目を6つ紹介します。

 

21.笠碁

~あらすじ~

とある囲碁好きな二人。ある日囲碁の勝負をしようとするが片方が「今日は『待った(=相手に一度やり直してもらう事)』なしだ」と言う。相手も「わかった。なしだ」と言って勝負をするのだがすぐに片方が「今の手、戻してくれねえか」と言い出してしまい、挙句喧嘩になってしまう・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目だったのが江戸(東京)に伝えられた。笑える要素もあるが人情要素も強い噺。

【著者談】『笠碁』はここがポイント!

幼馴染みが下手の横好き同士で囲碁をしている最中、「待った」をキッカケに細かい言い合いが始まって喧嘩別れするものの、最後はやはり幼馴染みらしい解決手段を見つけるお話です。おじさんしか出てこないのにストーリーがドラマチックで、聴き終えた後とてもいい気持ちになれます。

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22.締め込み

~あらすじ~

とある家に泥棒が入り込む。衣服を泥棒が風呂敷に詰めていると表から主人が帰ってくる。泥棒は慌てて床下に隠れた。主人が風呂敷に包まれた妻の衣服を見て「あいつは不倫をしようと服を包んでいた」と勘違い。妻が帰ってきて風呂敷を見て「あの人は不倫をしようと私の服を相手に渡そうとしていた」と勘違い・・・

~概要~

上方(関西)と江戸(東京)で後半部分のあらすじが異なる。上方では『盗人の仲裁』という演目名で演じられる。

【著者談】『締め込み』はここがポイント!

「夫婦喧嘩って他愛もないことから始まって、こういう発展の仕方をするよねー」という喧嘩あるあるです。

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23.堪忍袋

~あらすじ~

ある喧嘩の絶えない夫婦を見かねた大家さんが中国に伝わる故事を言い聞かせる。その故事では喧嘩をしそうになった男が「水がめ」に向かって叫びたい事を叫ぶ、というもの。そこで夫婦は嫌な事があると「袋」に向かって相手の悪いところを叫んだ。すると気持ちが爽快になる・・・

~概要~

喜劇脚本家の益田太郎冠者氏が作った新作落語。

【著者談】『堪忍袋』はここがポイント!

この演目も喧嘩あるあるなのですが、中で登場するストレス解決策が現代でも通用しそうな内容です。ただし突然やりっ放しの状態で落語が終わるため、聴き終えた時の気持ちは不安感に満ち、『笠碁』とは正反対です。

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24.意地くらべ

~あらすじ~

とある強情者が地主に金を借りに行く。なかなか地主は首を縦に振らないがとにかく強情者なのでそこを動かない。地主が金を借りたい理由を尋ねると「とある強情者から金を借りた」と強情者は言う。「『都合のいい時に返してくれ』と言われたが、俺は今日までに返したい」。地主は結局金を貸す。強情者が以前金を貸してくれた金を返しに行くと「お前はまだ都合が良くないだろう」と断られてしまう・・・

~概要~

劇作家の岡鬼太郎氏が作った新作落語。

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25.京の茶漬け

~あらすじ~

京都では客に帰ってほしい時「茶漬けでもどうですか」と言う、という話をある男が聞きつける。そこで実際に言われたら食べられるのではないかと企み、ある家に長居しようとする・・・

~概要~

上方(関西)落語の演目。

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26.長短

~あらすじ~

気の長い男と気の短い男がいる。二人は仲良しだが、お互い極端すぎる・・・

~概要~

元々は中国の話で、それが改作された古典落語。

【著者談】『長短』はここがポイント!

この落語演目は、短気な男(動作が極端に速い)と気の長い男(動作が極端にのろい)の二人がやりとりするだけの内容なのですが、その中に仕草の「あるある」と人間の機微の「あるある」が存分に盛り込まれた、楽しい落語です。

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あるある系落語を聴くベストシチュエーション

 

最後に、「あるある」系落語を聴くにあたっての、ベストシチュエーションをお教えしましょう。

やはり「あるある」に付き物の仕草をじっくり堪能するためにも、まずはDVDで高座映像を見てみることがオススメです。

 

高座

落語を演じる場所の事を指す。客席よりも一段高くなっている事から「高座」と呼ばれている。

 

演者では、仕草の名手と言われた五代目 柳家小さん(やなぎや こさん)師匠(故人)がオススメで、得意ネタの『うどん屋』『試し酒』『猫の災難』はいずれも絶品です。

また、小さん門下の落語家さんは仕草が上手な人が多いと定評です。

 

▼五代目 柳家小さん

小さん門下の落語家さんの例

柳家小三治(やなぎや こさんじ)師匠、柳亭市馬(りゅうてい いちば)師匠、柳家さん喬(やなぎや さんきょう)師匠、孫弟子の柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠、入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ)師匠など。

 

上方(関西)では、日本舞踊が得意だった三代目 桂春団治(かつら はるだんじ)師匠(故人)の仕草がきれいでした。

 

▼三代目 桂春団治(左)

 

六代目 笑福亭松鶴(しょうふくてい しょかく)師匠(故人)のお酒の落語も絶品でしたが、残念ながら映像が少ししか残っていません。

 

▼六代目 笑福亭松鶴(右)

 

名人の映像で落語を知った後は、ライブの落語に出掛けて自分なりの「仕草名人」を探してみるのもいいかもしれませんね。

 

以上、とにかく笑える落語【あるある編】でした。

次のページから第3章。第3章では笑える落語以外の様々なジャンルの落語をご紹介していきます。まずは恋愛を題材にした落語を紹介していきます。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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