ドラマチックな落語!おすすめ演目14選

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

何かの折にたまたま聴いた落語にものすごく感銘を受けて、友達に「あの落語よかったー、感動したー」と吹聴したり、SNSやブログで感想を書いたりする人は結構います。

その際、笑いの多い落語はあまりその対象になりません。爆笑した落語を「よかったー」と絶賛する人より、感動的な落語の方がストレートに「よかったー」と絶賛できるようです。

どういうことかと言いますと、笑いは人それぞれ好みが違うため、可笑しさの感情を共有しづらい面があるのです。その点、感動の要素はほとんど個人差がありませんから、人と気持ちを共有しやすいわけです。

このページでは、心の機微や心理面が絡むいさかいなど、登場人物の内面描写に優れたドラマチックな落語の数々を項目別に紹介していきましょう。

 

親子・肉親の感動ドラマ演目

 

落語における感動のシチュエーションとしてまず筆頭に挙げたいのが、親子、兄弟姉妹、祖父祖母など、肉親同士の家族愛が描かれた作品です。

 

親子愛がテーマの落語で代表的なのが『子別れ』(別題『子は鎹』)でしょう。

離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

 

1.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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こうしたストレートなまでの親子愛を描いた落語は、古典・新作を問わずあります。

火事が好きで自ら町火消しの人足になった後継ぎ息子を勘当した父親が、近所で起きた火事をキッカケに、全身刺青だらけになった息子と再会する『火事息子』。

 

2.火事息子

~あらすじ~

とあるお店の若旦那は子供の頃から「火事」が好きだった。しかしそれのせいで父親から勘当されてしまう。そんな若旦那が大人になり消防の仕事に就いていたある日父親の店の近所で火事が起きる・・・

~概要~

江戸(東京)の落語演目。

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昔は年に二日しか無かった商家の奉公人の休日、しっかり成長して帰ってきた息子の姿に父親が涙する『藪入り』。

 

3.藪入り

~あらすじ~

とある店に奉公しに行っていた(働きに行っていた)息子の帰りを両親が待っている。父親は息子にご馳走を振舞ってやりたい。そこへ息子が帰ってくる。身長が伸びて立派に育った息子を見て両親は感激する・・・

~概要~

元々滑稽噺だった『お釜さま』という噺が改作された『鼠の懸賞』を変えて作られた噺。

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留置所に入るつもりで無銭飲食をした男が、優しい屋台のラーメン屋夫婦に気に入られ、次第にお互い親子同様の感情を抱く仲になるという『ラーメン屋』。

 

4.ラーメン屋

~あらすじ~

とある老夫婦がやるラーメン屋。そこへ男が入ってきてラーメンを食べる。食べ終えるころに男は「もう金がない。だから俺を無銭飲食で警察に連れて行ってくれ。牢屋の中は食べるものも寝る場所もある」と言う・・・

~概要~

「昭和の爆笑王」と呼ばれた柳家金語楼が、有崎勉のペンネームで書いた新作落語。

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両親が自殺して身寄りを無くした幼い姉弟を引き取る貧しい八百屋が登場する『人情八百屋』など、泣きの要素が強い演目が多めです。

 

5.人情八百屋

~あらすじ~

とある商人が商いをしていると母子がナスを買いに来る。聞けば夫が寝込んでいて生活が苦しいと。商人はその日の売上と弁当を渡す。その後もその母子を機にかけていた商人。ある日その母子が自殺したと耳にする・・・

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次に、兄弟を扱った落語として、『妾馬(めかうま)』と『鼠穴(ねずみあな)』を紹介しましょう。

『妾馬』は、妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向き、殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられるというストーリーで、『八五郎出世』という別題もあります。

八五郎が慣れない屋敷でオロオロする前半部分は笑いもたっぷりありますが、後半になると、荒っぽい八五郎が酔うにつれて母親の嘆きを吐露するなど、ホロリとさせられるような人情味のある展開が続きます。

 

6.妾馬

~あらすじ~

妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向く。殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられる・・・

~概要~

別題『八五郎出世』

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一方の『鼠穴』は『妾馬』とはまったく逆で、仲が悪い男兄弟の話。

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功したことで仲直りしたかに見えたものの、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走って…という、山あり谷ありの人生を描いた激しいストーリー。

中盤以降はさらにハラハラドキドキの要素が増して、一層引き込まれます。

 

7.鼠穴

~あらすじ~

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功した。仲直りをしかけたが、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走ってしまう・・・

~概要~

七代目 立川談志氏が得意とした演目。

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そしてもう一作、肉親もので紹介したいのが、祖父と孫のとある夏の情景を描いた新作落語『孫、帰る』です。

演じているのは数々の話題の新作落語を世に出した柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠ですが、この作品は喬太郎師匠ではなく落語作家・山崎雛子さんによる作品です。

喬太郎師匠の持ちネタの中でも特に泣きの要素が強い人間ドラマで、ライブで演じると客席からすすり泣く声があちこちから聞こえてくるほどです。

内容はここではこれ以上書けませんが、CDやDVDにも収録されていますので、是非一度聴いてみてください。

 

8.孫、帰る

~あらすじ~

とある男の子が夏休みに祖父の家に遊びに行く。祖父を探してみるとタンスの上で寝ている。猫がタンスの上で寝ていたので涼しいのかと思い、そこで寝ていたという・・・

~概要~

落語作家・山崎雛子が作った新作落語。

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夫婦の感動ドラマ演目

 

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。

こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

 

9.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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『芝浜』以外では、7歳年上の女房が働かない亭主に腹を立てつつ内心は愛しているという『厩火事(うまやかじ)』

亭主が女房に「もしおまえが死んだ後、私が再婚したら化けて出てこい」と告げる『三年目』などが有名です。

先に紹介した『子別れ』も、夫婦が題材の落語の一つです。

 

10.厩火事

~あらすじ~

理容師の亭主を持つ妻。亭主は遊んでばかりいるので口喧嘩が絶えない。妻はそんな亭主のことを仲人に相談しに行った。すると仲人は孔子の話をして亭主を試してみてはどうかと言う・・・

~概要~

別題『厩焼けたり』。「厩火事」は孔子の故事からついた演目名。

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11.三年目

~あらすじ~

とても仲のいい夫婦がいた。しかし妻が病弱で床に伏せってしまう。そこで妻は「私が死んだらあなたは再婚するのでしょうね」と言う。夫はそんなことはあり得ないとしながらも「もし再婚しそうになったら幽霊として出ておいで」と言う・・・

~概要~

上方(関西)では『茶漬幽霊(ちゃづけゆうれい)』と呼ばれる演目。

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さらにもう一作、寄席でよく演じられる夫婦ネタの短い落語『代り目』を加えましょう。

亭主が酔っ払って帰宅して女房をいろいろと困らせる、全編コメディタッチの演目なのですが、ラストで亭主が「こうして偉そうに言ってはいるけど、陰では『すまねえ』と手を合わせてるんだよ…」と涙ぐむ懺悔のシーンが感動的で、聴く人の心を鷲づかみにします。

寄席ではかなり頻繁にかかるネタですので、寄席で聴ける確率は高いでしょう。

 

12.代り目

~あらすじ~

とある亭主が酔っ払って帰ってくる。酔った亭主に困る妻。しかし亭主は「寝酒を出せ」とわがままな事を言う。妻が仕方なく酒の肴を買いに出ているうちに家の前を通りかかったうどん屋が酔った亭主につかまってしまう・・・

~概要~

『替り目』とも書かれる。五代目古今亭志ん生が人情味のある展開に改めたという。

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介!

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主従や師弟の感動ドラマ演目

 

今と昔を比べますと、上司と部下(主従)のあり方はかなり変わりました。現代は部下が上司に直接パワハラを宣告するケースもあり、立場がだいぶ対等に近づきつつあるようです。

しかし古典落語の舞台となる時代は、雇い主の使用人への命令は絶対でした。その分「よそからお預かりしている子だから」と親身になって一切合切の面倒を見る一面もありました。

血のつながっていない他人同士でありながら、総合的には今と比較にならないほど関係が密接なのでした。

 

 

そうした雇い主と使用人の関係を如実に表している落語が『百年目』です。

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていました。

しかしこれが店の主人にばれてしまい、眠れない夜を過ごしていた所へ、主人から呼び出されます。この時、主人が番頭を諭す説教の言葉が『百年目』の聴き所。

例え話あり、皮肉あり、しかし最終的には番頭を思う心が滲み出ていて、心が動かされる内容です。

 

13.百年目

~あらすじ~

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目と言われる。

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続いてもう一作、師弟の落語『浜野矩随(はまののりゆき)』を紹介しましょう。江戸中期に活躍した実在の職人・浜野矩随がモデルであり主役の落語です。

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)でしたが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまいます。

ある日、そんな矩随が一念発起する衝撃的な出来事があり、それを契機に矩随も名工と呼ばれるようになるという話です。

この噺は、ただの師弟ではなく親子の職人なのですね。近年テレビで二世タレントが苦労話をしているシーンをたまに見かけますが、いつの時代も二世は私たち一般人からは想像もつかない苦労を背負わされるようです。

 

14.浜野矩随

~あらすじ~

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)だったが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまう・・・

~概要~

この落語のモデル浜野矩随は実在した職人。

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肉親・夫婦・主従・師弟以外にも、様々な立場や職業の中の人間関係が落語になっていて、それぞれのジャンルに名作落語は存在します。

しかし残念ながら、とても全部は書き切れません。まずはここに挙げた落語を何本か聴いてみていただければと思います。

 

ベストシチュエーション

 

では最後に、これら感動系の落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

ここで取り上げた落語の多くは、「人情噺(にんじょうばなし)」に類型されます。寄席や落語会では、おもにトリ(一番最後の出番)に登場する、その興行の主役の落語家さんが演じるものばかりです。

ここでは落語家の誰々さんという個人のおすすめはありません。

トリの落語家さんが演じる、キャリアと技術を備えた一流の話芸を、寄席や落語会でじかに味わってみてください。

 

東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介! 東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介!

 

以上、泣けるドラマチック落語演目を紹介しました。

次のページでは落語が題材となったドラマ・映画・舞台を紹介します。観ればもっと落語を深く知る事ができるでしょう。

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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語が題材になったドラマ・映画・舞台

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本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語が題材になった作品

 

2005年にTBSで放送されたドラマ『タイガー&ドラゴン』は、新しい時代の落語ファン層を開拓したと言っても過言ではありません。

宮藤官九郎さんの脚本、長瀬智也さんと岡田准一さんのW主演など、若年層にアピールする顔触れを揃えた上、落語界のイメージを塗り替えるような奇抜なストーリーが、それまで落語と縁の無かった視聴者と従来の落語ファンの両方で話題になったのでした。

 

タイガー&ドラゴン

笑いを忘れてしまったヤクザ(長瀬智也)がある日、落語家(西田敏行)の高座に感動し落語を習う、というストーリー。そんな中、かつて天才と言われ現在廃業してしまっている落語家(岡田准一)と出会う。

 

振り返れば、21世紀に入った当初の落語界は、新世代の若手(春風亭昇太師匠・柳家喬太郎師匠・林家たい平師匠・立川談春師匠 など)がライブシーンで人気を集め始めた一方で、看板クラスの大御所(古今亭志ん朝師匠(2001年没)・五代目 柳家小さん師匠(2002年没)など)が次々と他界し、残った人たちが変革の岐路に立たされていた時期でした。

 

そのタイミングに合わせたように放送開始した『タイガー&ドラゴン』が呼び水となって、ちょっと前までマニアの領域と捉えられていた落語がマスコミで急速に脚光を浴びだしたのです。

そして2005年以降、映画・ドラマ・演劇・テレビ番組企画・漫画などでの落語関連作品数は急増。

それに伴う落語ファン層の拡大は、寄席・落語会への動員増加やCD・DVD・関連出版物の売り上げ増など、落語界に好影響を及ぼす現象へとつながったのでした。

こうして増えた新規の落語ファンは、きっと寄席で落語を聴いて、「あっ、この落語、あのドラマで見たことがある!」と思ったでしょう。

つまり新しいファンの中では、落語でなくドラマの方が「定番」なわけです。そんな人には「是非本当の落語の方も好きになってね!」と願いたい所です。

前置きが長くなりましたが、ここでは過去に映画やドラマなどになった落語の数々をまとめておさらいしてゆきます。

 

落語が題材になった映画4選

 

始めに、ストーリーやモチーフに落語が使われた主な映画を紹介しましょう。

 

1 幕末太陽傳

発表年 1957年
主演 フランキー堺
描かれる落語 『居残り佐平次』『品川心中』など
あらすじ とある遊廓で豪遊した佐平次。しかしお金が無いと若い衆に打ち明ける。そこで佐平次は「居残り」と称して長居する事にする・・・
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最初は川島雄三監督の『幕末太陽傳』(1957年)。

日本映画史上でも名作の一つに数えられるこの作品で描かれるのは、名作落語『居残り佐平次』にも登場する、病を抱えながらも品川遊廓の中で自由に生きる男・佐平次です。

本作ではそれ以外にも『品川心中』や『お見立て』など数々の落語の名シーンが織り込まれており、落語ファンにとってはたまらない作品です。

 

2 の・ようなもの

発表年 1981年
主演 伊藤克信
描かれる落語 『黄金餅』『居酒屋』など
あらすじ とある東京下町に住む落語家が23歳の誕生日にソープランドへ行く。そこで出会った相手の女性と独特な関係になる・・・
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その24年後の1981年には、森田芳光監督がデビュー作『の・ようなもの』を発表しました。

落語界で生活する若手落語家の青春群像劇で、当時の若い落語ファン層に大きな影響を与えました。

劇中では『黄金餅』の道中付け(長い道のりを歩く行程をテンポよく語るくだり)を元にした、足立区堀切~浅草を歩く名場面があります。ちなみに『の・ようなもの』というタイトルは、『居酒屋』で小僧がお品書きを説明する口上「つゆ・はしら・たら・こぶ・あんこうのようなもの…」から取ったものです。

 

3 の・ようなもの のようなもの

発表年 2015年
主演 松山ケンイチ
描かれる落語 『二十四孝』『出目金』
あらすじ 舞台は東京。30歳でサラリーマンを辞めて落語家になった主人公。しかし落語の腕前はさっぱりで、師匠にもダメ出しされてばかり。そんな日々を過ごしているある時、師匠にどこかへ行ってしまった兄弟子を探してこいと言われる・・・
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『の・ようなもの』で助監督を務めた杉山泰一監督が、2011年に他界した森田監督の跡を受けて製作したのが、続編『の・ようなもの のようなもの』(2015年)です。

本作の劇中では、前作にも登場した『二十四孝』や新作『出目金』などが効果的に使用されます。

 

4 しゃべれども しゃべれども

発表年 2007年
主演 国分太一
描かれる落語 『茶の湯』『火焔太鼓』など
あらすじ 主人公は東京の下町に住み古典落語を愛する、二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。落語家として伸び悩んでいた彼のもとに「落語を習いたい」「話し方を教えてもらいたい」という3人がやって来る・・・
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そして2007年には、佐藤多佳子さんの原作小説もヒットした『しゃべれども しゃべれども』が平山秀幸監督によって映画化され、多くの映画賞を受賞する好評を得ました。

若手落語家の等身大の生活ぶりが清々しく描かれた本作の中では『茶の湯』『火焔太鼓』などを演じるシーンが登場します。

また『タイガー&ドラゴン』の長瀬さんと同じTOKIOの国分太一さんが主演したことでも話題になりました。

 

 

以上の4作品は落語映画としていずれも評価が高く、未見の人にはおすすめの作品ばかりです。

紹介した落語がどのように演じられるかにも注目しつつ、是非ご覧ください。

その他にも、桂文枝(かつら ぶんし)師匠の『ゴルフ夜明け前』(松林宗恵監督・1987年)や立川志の輔(たてかわ しのすけ)師匠の『歓喜の歌』(松岡錠司監督・2008年)などのように、新作落語をそのまま原作として映画化した作品もあります。

 

▼ゴルフ夜明け前

▼歓喜の歌

 

また、2002年に製作され、世界の数々の短編アニメ映画賞を獲得した山村浩二監督の『頭山』も、同題の落語が原作の隠れた名作です。

 

▼頭山

 

落語が題材のドラマ4選

 

次に、落語が題材として使われたドラマです。

連続物のドラマは1シリーズ内に登場する落語の数も多いので、ここでは特にフィーチャーされた演目に重点を置いて紹介します。

 

1 昭和元禄落語心中

発表年 2018年
主演 岡田将生
描かれる落語 『野ざらし』『死神』など
あらすじ 弟子を取らない事で有名な落語の名人とその周りの人物の人間模様が描かれた物語
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まずは、近年最も幅広い支持を得た落語ドラマ『昭和元禄落語心中』から。

原作の雲田はるこさんの漫画も、2010年雑誌連載開始の時点で既に注目されていましたが、2016年および2017年のアニメ放映、さらに2018年NHK総合でのドラマ放送が開始して、評価が頂点に達しました。

漫画は連載中からいくつもの漫画賞を受賞、2019年の「第14回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では、有楽亭八雲役の岡田将生さんが主演男優賞、有楽亭助六役の山崎育三郎さんが助演男優賞をそれぞれ受賞と、ストーリーも演技も優れた作品であったことを立証しました。

ドラマ版『昭和元禄落語心中』でとりわけ印象的に描かれた落語は、助六から娘の小夏に伝承された『野ざらし』と、八雲が燃える寄席の中で鬼気迫る形相で演じた『死神』でした。

劇中では他にも『寿限無』『たちきり』『品川心中』『錦の袈裟』などいろいろ落語のシーンがありましたが、『野ざらし』と『死神』が演じられる2つのシーンは、ハイクオリティなドラマに相応しい好演でした。

 

『昭和元禄落語心中』に限らず、NHK総合は近年、落語と関わりの深いドラマをたびたび放映しています。

朝の連続テレビ小説では2017年の『わろてんか』と2007年の『ちりとてちん』、そして2019年の大河ドラマ『いだてん』ではビートたけしさん扮する古今亭志ん生が毎回登場してドラマの案内役を担当しています。

 

2 わろてんか

発表年 2017年
主演 葵わかな
描かれる落語 『時うどん』『崇徳院』など
あらすじ 芸能事務所・吉本興業がモデルとなった物語。多くの漫才師や落語家が登場する。
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『わろてんか』の劇中では『時うどん』『崇徳院』『死神』の3席が、出演俳優の本職さながらの演技でたっぷり演じられました。

 

3 ちりとてちん

発表年 2007年
主演 貫地谷しほり
描かれる落語 『愛宕山』など
あらすじ 無口で地味な主人公が大阪へ行き、落語家と出会う。そこから落語の道を進んでいく物語。
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一方『ちりとてちん』では、毎週1本ペースでいろいろな落語が寸劇調で紹介された他、大看板・徒然亭草若の『愛宕山』がドラマのキーワードとしてたびたび登場。

そして弟子の女流落語家・徒然亭若狭が『愛宕山』を演じて高座を引退するというラストでした。

 

4 いだてん

発表年 2019年
主演 中村勘九郎 他
描かれる落語 『富久』『付き馬』など
あらすじ 1959年の東京。東京オリンピックの前年の日本が描かれ、古今亭志ん生の若い頃も描かれる。
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『いだてん』は『タイガー&ドラゴン』と同じ宮藤官九郎さんの脚本で、開始3ヵ月の間に『富久』『付き馬』『鰍沢』『芝浜』『たらちね』などの落語が演じられました。

もっともドラマの主人公はあくまでオリンピック関係者の金栗四三と田畑政治ですから、今後果たして落語はどれくらい脚光を浴びるのでしょう?

※「いだてん」は2019年4月現在、NHKにて放映中

 

落語が題材の舞台

 

続いて、落語が題材になっている舞台の紹介です。

実は落語がお芝居になることはずっと昔からあって、歌舞伎では『芝浜革財布(芝浜)』や『文七元結』など人気演目もあります。

また相撲を扱った落語『幸助餅』は、大阪の松竹新喜劇で古くから上演されています。

 

1 宝塚歌劇団「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」

発表年 2018年
主演 宝塚歌劇団
描かれる落語 『地獄八景亡者戯』『朝友』『死ぬなら今』
あらすじ 大阪の若旦那がある日目覚めるとそこは「あの世」。「この世」「あの世」を行き来しながら描かれる物語。
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チケットぴあ

 

近年の落語ブームの影響か、2018年にはなんとあの宝塚歌劇団でも、落語がモチーフの舞台公演を行いました。タイトルは「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」。

死後の世界を舞台にした落語『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』『朝友』『死ぬなら今』の3演目を元にした愛と冒険の物語という内容でした。

 

2 うわの空・藤志郎一座「TOKYOてやんでぃ」

発表年 2000年
主演 西村晋弥 他
描かれる落語 『悲しみにてやんでぃ』
あらすじ 落語家の「前座」の青年の物語。
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新作落語では、春風亭昇太師匠が若手時代に作った青春落語『悲しみにてやんでぃ』が「うわの空・藤志郎一座」によって2000年に舞台化、たびたび再演されました。

それだけではなく、2013年には神田裕司監督によって映画にもなっています(映画化に際しタイトルを『TOKYOてやんでぃ』と改題)。

 

それ以外にも、大劇場の商業演劇からライブシアターの小劇団まで、原作が落語という舞台はいろいろあります。

出演者の数や舞台装置は真逆ですが、どこか相性がよいのかもしれません。

 

作品をより楽しむ為に

 

最後に、映画やドラマになった落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

まず問題になるのは、映画やドラマに感動した後に確認として落語を聴くべきか、あるいは予習として落語を聴いておくべきか、ということでしょう。

厳密に考えれば、予習した方が落語のディテールが分かって舞台の楽しみは倍増するでしょう。ただエンタメ作品を楽しむにあたっては、あまり頭にいろいろ詰め込むよりも、まずは何も仕入れず手ぶらで観覧する方がよい気がします。

そうしてお芝居を存分に楽しんだ後、CDやネット動画で題材になった落語を確認するという手順が妥当かもしれません。

その方がお芝居も落語も両方楽しめるはずです。できれば、落語を聴いた後、もう一度お芝居を見返して復習するというのがベストでしょう。

 

※このページの参考
不完全版落語芸能人リスト(なかむら記念館 落語別館)
なかむら治彦note【落語好きの諸般の事情】#07 玉石混交?落語映画問題
同・#10 2005年以降の「落語映画」問題・増補改訂版

 

以上、なかむら氏による『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』でした!

是非落語を聴いて、落語にハマっていただければと思います!また、興味がある方は寄席を観に行きましょう!このWebonをお読みいただいた方は必ず楽しめるはずです!!

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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ミルクグラスが登場する映画

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ミルクグラスは1950年頃のアメリカで誕生したヴィンテージ食器です。ミルクグラスはヴィンテージなのに丈夫でリーズナブル!ハイセンスで可愛くどんな料理にも合わすことができる「日常で使えるヴィンテージ食器」なのです!

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30代後半女性。10代の頃からミルクグラスの情報を収集。20代後半から購入しはじめ収集歴は10年程度。現在は定期的に専門店に通い流通をチェックしている。

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ミルクグラスがオシャレな小物として登場している作品はいくつかあります。ミルクグラスが好きな者としては、ミルクグラスを発見するだけでもとても楽しいです。

以下では、ミルクグラスが登場する映画やドラマを紹介します。

 

【コラム】マニアのミルクグラスの楽しみ方!

ミルクグラスが好き方は映画などで自然とミルクグラスを探してしまいます。私はミルクグラスオタクですので、映画のストーリーやセリフなどそっちのけで探して見てしまいます。

オタクではなくビギナー寄りの読者様に楽しんでいただきたいと思うのは、「古き良きアメリカの雰囲気に馴染んでいるところ」「ポップなカラー」「男性にも女性にも可愛らしく使える雰囲気」です。映画ではキッチンや食卓などミルクグラスが流通していた時代を再現していますので、良い使用例だなと思います。

食器単体で見るよりも使用例があったほうがより良さが伝わるかと思いますので、映画で使用されているところをぜひ見て頂きたいと思っています。

 

8月のメモワール

公開 1994年11月4日(日本)
製作国 アメリカ合衆国
上映時間 126分
監督 ジョン・アヴネット
キャスト イライジャ・ウッド
ケビン・コスナー

 

『8月のメモワール』はケビン・コスナーが主演の戦争をテーマにしたヒューマンドラマ。

 

▼ケビン・コスナー


By Georges Biard, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

この中でダイナー(レストラン)にいるケビン・コスナーが使用しているカップがファイヤーキングのジェダイ、エキストラヘビーマグです。

 

▼ファイヤーキング ジェダイ エキストラヘビーマグ(画像クリックで楽天へ)

 

エキストラヘビーマグはレストランウェアとして、つまり業務用食器として作られたものですから、ダイナーのシーンに登場するのはごく自然な演出と言えます。

 

▼ストリーミングで鑑賞する

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落語が題材の映画・ドラマ3選 【自宅で落語鑑賞②】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)

 

落語の楽しみ方は、落語そのものを観る・聴くだけではありません。

映画や小説など、落語を題材にした作品を観たり読んだりすることで落語の世界に触れるというのも、落語の楽しみ方のひとつです。

このページでは落語を題材にしたおすすめのエンタメ作品を紹介するので、ぜひ手に取ってみてください!

以下で紹介する作品は古典落語の知識が一切なくても楽しめる作品となっております。

 

おすすめの落語を題材にした作品3選

1 しゃべれどもしゃべれども

タイトル しゃべれども しゃべれども
公開年月 2007年5月26日
上映時間 109分
監督/脚本 平山秀幸/奥寺佐渡子
出演 国分太一/香里奈/松重豊/森永悠希/八千草薫/伊東四朗/など

「しゃべれどもしゃべれども」は佐藤多佳子さんの同名小説が原作。

 

▼小説「しゃべれどもしゃべれども」(画像クリックで商品詳細へ)

TOKIOの国分太一さん主演で映画化され、2007年に公開されて話題になりました。

 

あらすじ

 

主人公は東京の下町に住み古典落語を愛する、二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。

 

▼写真右が国分太一、写真左は十河五月役の香里奈

 

落語家として伸び悩んでいた彼のもとに「落語を習いたい」「話し方を教えてもらいたい」という3人がやって来る。

口下手で無愛想な・十河五月(香里奈)、勝気ゆえにクラスになじめず大阪から引っ越してきた少年・村林優(森永悠希)、コワモテの元プロ野球選手・湯河原太一(松重豊)。

▼湯河原太一役の松重豊

 

クセのある生徒ばかりで顔を合わせると3人は言い争いが絶えず、肝心の落語も一向に覚えられない。

落語指南がうまくいかないうえに、片思いしていた女性が結婚することを知ってショックを受ける主人公三つ葉。

 

そこで「自分は落語が好きだ」と再認識した三つ葉は、師匠の十八番である古典落語の演目「火焔太鼓(かえんだいこ)」への挑戦を決意する。

徐々に落語を話せるようになっていく生徒たちと、「火焔太鼓」の成功(=上手く喋りきるのはもちろんですが、師匠の真似事ではなく、自分ならではの「火焔太鼓」を演じるということ)を目指す三つ葉。果たしてそれぞれの思いは伝わるのか・・・。

 

みどころ

 

まさに落語の登場人物のような、一癖も二癖もある人たちの奮闘が、心にグッとくる感動をもたらします。

 

落語好きから見た国分太一さんの落語

 

当ページで紹介する作品の中で、最もプロの落語家に近い落語を演じている俳優が国分さんだと思います。正直、その上手さに驚きました。

笑わせてやろうという気負いがなく、その張りのある声と端正な語り口が光る「火焔太鼓」は思わず聴き入ってしまいます。

前半の下手に演じる落語と、クライマックスの「火焔太鼓」のレベルの落差に注目です。最後の「火焔太鼓」は圧巻の一言です。

 

 

2 ねぼけ

(引用元:http://neboke.info/)

タイトル ねぼけ
公開年月 2015年9月5日
上映時間 111分
監督・脚本 壱岐紀仁
出演 友部康志/村上真希/入船亭扇遊/大竹佳那/秋山勇次/など

▲予告編

 

「ねぼけ」は、クラウドファンディングの成功によって完成した映画です。

2017年にモントリオール世界映画祭で絶賛され、現地でアンコール上映を果たすほど話題となった映画です。

 

あらすじ

 

酒や女にうつつを抜かす、うだつのあがらない落語家・三語郎(友部康志)。

落語に本気になれず、自堕落な日々を送る三五郎は、当然稼ぎもない。

 

健気に三五郎を支える恋人の真海は三五郎との結婚を願っているが、二人の気持ちはすれ違うばかりでうまくいかない。

師匠である点雲も心配して叱咤激励するが三語郎には届かず、逃げまくったあげくに弟分の彼女にまで手を出してしまう。

 

何もかも思い通りにいかないことに苛立ちを募らせた三五郎は真海に当たってしまい、あまりのショックに真海は三語郎の前から忽然と姿を消してしまう。

失って初めて真海の存在の大切さに気づき、覚悟を決めて彼女の故郷へ向かう。

 

そして三五郎は神話の伝わる海辺で真海の秘められた過去を初めて知ることになる・・・。

 

みどころ

 

観ていて三語楼のあまりのダメ人間ぶりに腹が立ったのですが、その姿がどこか自分と重なり胸が締めつけられました。

人間は誰もがダメな部分を抱えながら必死で生きていて、周りの人に迷惑をかけてしまってどうしようもないんだけれど「それはそれで良し」という優しい落語の世界観に癒される作品。

「ねぼけ」は師匠役の入船亭扇遊さんの落語が見せ場なので、主役の友部さんによる落語の見せ場は特にありません。

ただ友部さんの愛嬌のあるしぐさや表情は抜群で、滑稽噺をやらせたらプロの落語家も顔負けの落語を披露するのではないかと思いました。

 

3 タイガー&ドラゴン

タイトル タイガー&ドラゴン
放送時間 金曜日22:00~22:54
放送期間 2005年4月15日~6月24日(全11回)
脚本 宮藤官九郎
出演 長瀬智也/岡田准一/西田敏行/銀粉蝶/安部サダヨ/など

 ※以上は2005年に放映された連続ドラマの詳細

 

『タイガー&ドラゴン』は、TOKIOの長瀬智也さんとV6の岡田准一さん主演のテレビドラマで、脚本はクドカンこと宮藤官九郎さんが担当。

ヤクザ兼落語家の男と元天才落語家の男。超個性的な2人を中心に展開する人情コメディの傑作です。

 

あらすじ

 

ヤクザの山崎虎児(長瀬智也)は子供の頃に両親が借金苦で自殺したことで「笑い」を忘れてしまった。

 

▼写真左、山崎虎児役の長瀬智也。写真右、谷中竜二役の岡田准一

 

ある日虎児は、浅草で落語家・林屋亭どん兵衛(西田敏行)の高座を偶然聴いて感動し、弟子入りを志願する。

 

▼林屋亭どん兵衛役の西田敏行

 

虎児が所属する組の組長から400万円の借金をしていたどん兵衛は虎児が落語の演目をひとつ習得するごとに10万円の授業料をもらい、それを「返済金」として虎児に支払うという奇妙な契約を交わす。

 

 

落語家とヤクザという二足のわらじを履く生活を始めた虎児だが、とにかく笑いの才能がなくてどうにもならない。

 

そんなとき、かつて落語の天才と呼ばれたどん兵衛の次男・谷中竜二(岡田准一)と出会う。

竜二はとある事件がきっかけで落語家を廃業し、今は裏原宿で売れない洋服店「ドラゴンソーダ」を経営しているが落語の腕は衰えていない・・・。

 

みどころ

 

どん兵衛が寄席の高座で演じる落語の演目と、リアルの話がうまくリンクするという構成が実に秀逸で落語のおもしろさとドラマとしてのおもしろさの両方を味わえる作品です。

落語をモチーフにした作品の中では、個人的には『タイガー&ドラゴン』が一番おすすめの作品です!

タイガー&ドラゴンは古典落語を好きになれる内容だと思います!

 

落語好きから見た長瀬智也さんと岡田准一さんの落語

 

岡田さんの落語は普通ですが、長瀬さんの落語はヤクザという役柄もありますが迫力が圧倒的です。長瀬さんならではの「眼ヂカラ」で、登場人物それぞれにパワーが宿り、子供を演じても女性を演じても、長瀬さんの独特の男らしさが反映されているところが非常に興味深くて面白いです。

決して器用な落語ではありませんが、落語界に生きる人々が実にイキイキと描写されているところは必見だと思います。プロの落語家でもなかなかこの迫力は出せないのではないでしょうか。

 

 

この第3章では落語の鑑賞方法についてお伝えしてきました。寄席で生の醍醐味を感じていただきたいですが、まずは気軽に自宅で楽しんでみてはどうでしょうか。

次のページから第4章です。第4章では落語の名人を紹介します。

落語は同じ演目でも演じ手によって全く違うものに見えます。ぜひ、お気に入りの名人の方を見つけてみてください。

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【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

4つの楽しみから理解するブラジル人の性格

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ブラジルに行ったことはありますか?ブラジルと言えばサッカー・サンバ・カーニバル…でもそれだけじゃもちろんありません!

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著者:パパガイオ

ブラジルの酸いも甘いも知り尽くしている在住歴17年の女性。日本で知り合った日系ブラジル人の主人と子供3人で、ブラジルライフを満喫中です!特にトロピカルフルーツや自由な感じがお気に入り。どんなかな?とちょっとでも気になったらぜひ覗いてみてください。面白い発見があるかもしれませんよ?

 

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4の楽しみから理解するブラジル人の事

 

ブラジル人は日本人ほど働くことを美徳だとは思っていません。

「できれば責任の軽い仕事をして時間が来たら帰りたい」

そう思っている人が多いようです。

定職について最低給料をもらうより、より少ないが日雇いの仕事を数回して生活保護を受けていたいという人もたくさんいます。

もちろん中には仕事熱心な人もいて、そういう人はやはり出世もするし給料もたくさんもらいますが休暇を主張することだけは忘れません。

残業も極力しないよう、効率的に仕事を進める事を重視します。ブラジル人にとって、やはり楽しみは仕事の他にあります。

ここでは、その「楽しみ」について紹介する事でブラジル人を理解していただきます。

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