落語が題材になったドラマ・映画・舞台

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語が題材になった作品

 

2005年にTBSで放送されたドラマ『タイガー&ドラゴン』は、新しい時代の落語ファン層を開拓したと言っても過言ではありません。

宮藤官九郎さんの脚本、長瀬智也さんと岡田准一さんのW主演など、若年層にアピールする顔触れを揃えた上、落語界のイメージを塗り替えるような奇抜なストーリーが、それまで落語と縁の無かった視聴者と従来の落語ファンの両方で話題になったのでした。

 

タイガー&ドラゴン

笑いを忘れてしまったヤクザ(長瀬智也)がある日、落語家(西田敏行)の高座に感動し落語を習う、というストーリー。そんな中、かつて天才と言われ現在廃業してしまっている落語家(岡田准一)と出会う。

 

振り返れば、21世紀に入った当初の落語界は、新世代の若手(春風亭昇太師匠・柳家喬太郎師匠・林家たい平師匠・立川談春師匠 など)がライブシーンで人気を集め始めた一方で、看板クラスの大御所(古今亭志ん朝師匠(2001年没)・五代目 柳家小さん師匠(2002年没)など)が次々と他界し、残った人たちが変革の岐路に立たされていた時期でした。

 

そのタイミングに合わせたように放送開始した『タイガー&ドラゴン』が呼び水となって、ちょっと前までマニアの領域と捉えられていた落語がマスコミで急速に脚光を浴びだしたのです。

そして2005年以降、映画・ドラマ・演劇・テレビ番組企画・漫画などでの落語関連作品数は急増。

それに伴う落語ファン層の拡大は、寄席・落語会への動員増加やCD・DVD・関連出版物の売り上げ増など、落語界に好影響を及ぼす現象へとつながったのでした。

こうして増えた新規の落語ファンは、きっと寄席で落語を聴いて、「あっ、この落語、あのドラマで見たことがある!」と思ったでしょう。

つまり新しいファンの中では、落語でなくドラマの方が「定番」なわけです。そんな人には「是非本当の落語の方も好きになってね!」と願いたい所です。

前置きが長くなりましたが、ここでは過去に映画やドラマなどになった落語の数々をまとめておさらいしてゆきます。

 

落語が題材になった映画4選

 

始めに、ストーリーやモチーフに落語が使われた主な映画を紹介しましょう。

 

1 幕末太陽傳

発表年 1957年
主演 フランキー堺
描かれる落語 『居残り佐平次』『品川心中』など
あらすじ とある遊廓で豪遊した佐平次。しかしお金が無いと若い衆に打ち明ける。そこで佐平次は「居残り」と称して長居する事にする・・・
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最初は川島雄三監督の『幕末太陽傳』(1957年)。

日本映画史上でも名作の一つに数えられるこの作品で描かれるのは、名作落語『居残り佐平次』にも登場する、病を抱えながらも品川遊廓の中で自由に生きる男・佐平次です。

本作ではそれ以外にも『品川心中』や『お見立て』など数々の落語の名シーンが織り込まれており、落語ファンにとってはたまらない作品です。

 

2 の・ようなもの

発表年 1981年
主演 伊藤克信
描かれる落語 『黄金餅』『居酒屋』など
あらすじ とある東京下町に住む落語家が23歳の誕生日にソープランドへ行く。そこで出会った相手の女性と独特な関係になる・・・
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その24年後の1981年には、森田芳光監督がデビュー作『の・ようなもの』を発表しました。

落語界で生活する若手落語家の青春群像劇で、当時の若い落語ファン層に大きな影響を与えました。

劇中では『黄金餅』の道中付け(長い道のりを歩く行程をテンポよく語るくだり)を元にした、足立区堀切~浅草を歩く名場面があります。ちなみに『の・ようなもの』というタイトルは、『居酒屋』で小僧がお品書きを説明する口上「つゆ・はしら・たら・こぶ・あんこうのようなもの…」から取ったものです。

 

3 の・ようなもの のようなもの

発表年 2015年
主演 松山ケンイチ
描かれる落語 『二十四孝』『出目金』
あらすじ 舞台は東京。30歳でサラリーマンを辞めて落語家になった主人公。しかし落語の腕前はさっぱりで、師匠にもダメ出しされてばかり。そんな日々を過ごしているある時、師匠にどこかへ行ってしまった兄弟子を探してこいと言われる・・・
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『の・ようなもの』で助監督を務めた杉山泰一監督が、2011年に他界した森田監督の跡を受けて製作したのが、続編『の・ようなもの のようなもの』(2015年)です。

本作の劇中では、前作にも登場した『二十四孝』や新作『出目金』などが効果的に使用されます。

 

4 しゃべれども しゃべれども

発表年 2007年
主演 国分太一
描かれる落語 『茶の湯』『火焔太鼓』など
あらすじ 主人公は東京の下町に住み古典落語を愛する、二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。落語家として伸び悩んでいた彼のもとに「落語を習いたい」「話し方を教えてもらいたい」という3人がやって来る・・・
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そして2007年には、佐藤多佳子さんの原作小説もヒットした『しゃべれども しゃべれども』が平山秀幸監督によって映画化され、多くの映画賞を受賞する好評を得ました。

若手落語家の等身大の生活ぶりが清々しく描かれた本作の中では『茶の湯』『火焔太鼓』などを演じるシーンが登場します。

また『タイガー&ドラゴン』の長瀬さんと同じTOKIOの国分太一さんが主演したことでも話題になりました。

 

 

以上の4作品は落語映画としていずれも評価が高く、未見の人にはおすすめの作品ばかりです。

紹介した落語がどのように演じられるかにも注目しつつ、是非ご覧ください。

その他にも、桂文枝(かつら ぶんし)師匠の『ゴルフ夜明け前』(松林宗恵監督・1987年)や立川志の輔(たてかわ しのすけ)師匠の『歓喜の歌』(松岡錠司監督・2008年)などのように、新作落語をそのまま原作として映画化した作品もあります。

 

▼ゴルフ夜明け前

▼歓喜の歌

 

また、2002年に製作され、世界の数々の短編アニメ映画賞を獲得した山村浩二監督の『頭山』も、同題の落語が原作の隠れた名作です。

 

▼頭山

 

落語が題材のドラマ4選

 

次に、落語が題材として使われたドラマです。

連続物のドラマは1シリーズ内に登場する落語の数も多いので、ここでは特にフィーチャーされた演目に重点を置いて紹介します。

 

1 昭和元禄落語心中

発表年 2018年
主演 岡田将生
描かれる落語 『野ざらし』『死神』など
あらすじ 弟子を取らない事で有名な落語の名人とその周りの人物の人間模様が描かれた物語
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まずは、近年最も幅広い支持を得た落語ドラマ『昭和元禄落語心中』から。

原作の雲田はるこさんの漫画も、2010年雑誌連載開始の時点で既に注目されていましたが、2016年および2017年のアニメ放映、さらに2018年NHK総合でのドラマ放送が開始して、評価が頂点に達しました。

漫画は連載中からいくつもの漫画賞を受賞、2019年の「第14回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では、有楽亭八雲役の岡田将生さんが主演男優賞、有楽亭助六役の山崎育三郎さんが助演男優賞をそれぞれ受賞と、ストーリーも演技も優れた作品であったことを立証しました。

ドラマ版『昭和元禄落語心中』でとりわけ印象的に描かれた落語は、助六から娘の小夏に伝承された『野ざらし』と、八雲が燃える寄席の中で鬼気迫る形相で演じた『死神』でした。

劇中では他にも『寿限無』『たちきり』『品川心中』『錦の袈裟』などいろいろ落語のシーンがありましたが、『野ざらし』と『死神』が演じられる2つのシーンは、ハイクオリティなドラマに相応しい好演でした。

 

『昭和元禄落語心中』に限らず、NHK総合は近年、落語と関わりの深いドラマをたびたび放映しています。

朝の連続テレビ小説では2017年の『わろてんか』と2007年の『ちりとてちん』、そして2019年の大河ドラマ『いだてん』ではビートたけしさん扮する古今亭志ん生が毎回登場してドラマの案内役を担当しています。

 

2 わろてんか

発表年 2017年
主演 葵わかな
描かれる落語 『時うどん』『崇徳院』など
あらすじ 芸能事務所・吉本興業がモデルとなった物語。多くの漫才師や落語家が登場する。
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『わろてんか』の劇中では『時うどん』『崇徳院』『死神』の3席が、出演俳優の本職さながらの演技でたっぷり演じられました。

 

3 ちりとてちん

発表年 2007年
主演 貫地谷しほり
描かれる落語 『愛宕山』など
あらすじ 無口で地味な主人公が大阪へ行き、落語家と出会う。そこから落語の道を進んでいく物語。
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一方『ちりとてちん』では、毎週1本ペースでいろいろな落語が寸劇調で紹介された他、大看板・徒然亭草若の『愛宕山』がドラマのキーワードとしてたびたび登場。

そして弟子の女流落語家・徒然亭若狭が『愛宕山』を演じて高座を引退するというラストでした。

 

4 いだてん

発表年 2019年
主演 中村勘九郎 他
描かれる落語 『富久』『付き馬』など
あらすじ 1959年の東京。東京オリンピックの前年の日本が描かれ、古今亭志ん生の若い頃も描かれる。
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『いだてん』は『タイガー&ドラゴン』と同じ宮藤官九郎さんの脚本で、開始3ヵ月の間に『富久』『付き馬』『鰍沢』『芝浜』『たらちね』などの落語が演じられました。

もっともドラマの主人公はあくまでオリンピック関係者の金栗四三と田畑政治ですから、今後果たして落語はどれくらい脚光を浴びるのでしょう?

※「いだてん」は2019年4月現在、NHKにて放映中

 

落語が題材の舞台

 

続いて、落語が題材になっている舞台の紹介です。

実は落語がお芝居になることはずっと昔からあって、歌舞伎では『芝浜革財布(芝浜)』や『文七元結』など人気演目もあります。

また相撲を扱った落語『幸助餅』は、大阪の松竹新喜劇で古くから上演されています。

 

1 宝塚歌劇団「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」

発表年 2018年
主演 宝塚歌劇団
描かれる落語 『地獄八景亡者戯』『朝友』『死ぬなら今』
あらすじ 大阪の若旦那がある日目覚めるとそこは「あの世」。「この世」「あの世」を行き来しながら描かれる物語。
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チケットぴあ

 

近年の落語ブームの影響か、2018年にはなんとあの宝塚歌劇団でも、落語がモチーフの舞台公演を行いました。タイトルは「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」。

死後の世界を舞台にした落語『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』『朝友』『死ぬなら今』の3演目を元にした愛と冒険の物語という内容でした。

 

2 うわの空・藤志郎一座「TOKYOてやんでぃ」

発表年 2000年
主演 西村晋弥 他
描かれる落語 『悲しみにてやんでぃ』
あらすじ 落語家の「前座」の青年の物語。
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新作落語では、春風亭昇太師匠が若手時代に作った青春落語『悲しみにてやんでぃ』が「うわの空・藤志郎一座」によって2000年に舞台化、たびたび再演されました。

それだけではなく、2013年には神田裕司監督によって映画にもなっています(映画化に際しタイトルを『TOKYOてやんでぃ』と改題)。

 

それ以外にも、大劇場の商業演劇からライブシアターの小劇団まで、原作が落語という舞台はいろいろあります。

出演者の数や舞台装置は真逆ですが、どこか相性がよいのかもしれません。

 

作品をより楽しむ為に

 

最後に、映画やドラマになった落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

まず問題になるのは、映画やドラマに感動した後に確認として落語を聴くべきか、あるいは予習として落語を聴いておくべきか、ということでしょう。

厳密に考えれば、予習した方が落語のディテールが分かって舞台の楽しみは倍増するでしょう。ただエンタメ作品を楽しむにあたっては、あまり頭にいろいろ詰め込むよりも、まずは何も仕入れず手ぶらで観覧する方がよい気がします。

そうしてお芝居を存分に楽しんだ後、CDやネット動画で題材になった落語を確認するという手順が妥当かもしれません。

その方がお芝居も落語も両方楽しめるはずです。できれば、落語を聴いた後、もう一度お芝居を見返して復習するというのがベストでしょう。

 

※このページの参考
不完全版落語芸能人リスト(なかむら記念館 落語別館)
なかむら治彦note【落語好きの諸般の事情】#07 玉石混交?落語映画問題
同・#10 2005年以降の「落語映画」問題・増補改訂版

 

以上、なかむら氏による『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』でした!

是非落語を聴いて、落語にハマっていただければと思います!また、興味がある方は寄席を観に行きましょう!このWebonをお読みいただいた方は必ず楽しめるはずです!!

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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