落語初心者入門はこちらから!
著者:ミドケン
落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから
『落語初心者入門』目次へ (全23ページ)
落語家の階級
落語家には階級があります。
階級は「見習い」「前座」「二つ目」「真打ち」という順に昇進していきます。
このページでは、弟子入りからどのようの真打ちに昇進していくかを追っていき、階級ごとの役割などをお伝えいたします。
昇進の仕方
弟子入りする
落語家になるには特別な資格や試験などは必要ありません。
門戸は誰にでも開かれていますが、長い修行の期間があり落語家として精進を続けていく必要があります。
落語家になる道は、真打の落語家に弟子入りするところから始まります。
憧れている落語家、あるいは「この師匠は優しそうだから」など人によって師匠選びの基準は違いますが、まずは弟子入りしたい師匠を決めます。
(ちなみに上方(関西)の場合は階級制度がありません。そのため、上方ではある程度のベテランの師匠に弟子入りすることになります。)
そして、師匠の家を訪ねたり寄席の楽屋口で出待ちをするなどして、師匠に直接志願するのが一般的な弟子入り方法です。
家を訪ねた場合、その師匠の弟子に追い返されてしまうこともありますし、新しい弟子が入ることによって兄弟子は自分の仕事が減るので歓迎してくれる場合もあります。
弟子入り志願も「タイミングが大事」ということですね。
人によっては知り合いに紹介してもらう、というパターンもあります。
大学の落研(落語研究会)出身者であれば、すでに落語家として活躍している先輩に頼んで師匠を紹介してもらえることもあります。
見習い
晴れて弟子入りが許されたら落語家としての修行生活が始まります。
まずは「見習い」からスタートします。
入門して数ヶ月~1年くらいの間、師匠の家に通いながら掃除や洗濯などの家事をしたり、師匠のかばん持ちをしたりします。そうしてようやく前座になることができるのです。
昔は師匠の家に住み込んで修行をする「内弟子」が主流でしたが、今は住宅事情の違いなどもあって、「通い弟子」がほとんどです。
見習いのうちはまだ舞台に立つことはできません。
階級 | 見習い |
舞台に立つ頻度 | なし |
昇進期間 | 数ヶ月~1年 |
やること | 師匠の家に通いながら、掃除・洗濯などの家事、師匠のかばん持ちなど。 |
前座
落語家には大きく分けて「前座」「二ツ目」「真打」という三段階の階級制度があります。
見習い期間を経て前座になると、寄席の楽屋に入るようになります。楽屋というのは会場内にある演者のための控室のことです。
通い弟子は朝早くから師匠の家に行き、掃除や炊事などをこなしてから寄席へ出勤します。
寄席での前座の果たす役割は大きく、やることがたくさんあります。下記に一部記載しますが、数え上げればキリがありません。
▼前座がやること
前座は毎日、師匠の家と寄席を行き来しながら落語漬けの日々を送り、落語を体に染み込ませるという修行期間なのです。
入門して数ヶ月すると前座として初高座に上がる(初めて舞台で落語を演じる)ことが多いですが、その判断は師匠次第なので「必ず数ヶ月で初高座に上がれる」というわけではありません。
ちなみに、前座は高座にあがって落語を披露できますがその頻度は人によって違います。また、前座の落語は一般的な寄席で見ることができます。
階級 | 前座 |
舞台に立つ頻度 | たまに~毎日 |
昇進期間 | 3~5年 |
やること | ・履き物の整理と管理、電話番、お茶出し、鳴り物の演奏、座ぶとん・メクリを返すなど。
・前座は毎日、師匠の家と寄席を行き来しながら、落語漬けの日々を送り、落語を体に染み込ませるという修行期間。 |
二ツ目
二ツ目になると、着物は前座時代の着流しではなく、自前の紋付き袴で高座に上がれるようになります。
▼着流し
▼紋付き袴
師匠の家や楽屋での雑用からも解放されますが、今度は自分で高座(寄席の舞台)の仕事を探す必要があります。
仲間と一緒に勉強会を開いたりしながら、先輩や寄席の支配人、テレビやラジオのプロデューサーから声をかけてもらえるように研鑽することが二ツ目の修行です。
芸を磨くだけでなく、自分の主催する落語会にお客さんを呼んだり、企業やお店などから仕事をもらう努力も必要です。
二ツ目は毎日楽屋へ行く必要がなくなるため、高座に上がる数も減ってしまいます。そのため、しっかりと噺の稽古をしなければライバルとの差は開く一方となります。
二ツ目の在留期間は10年~13年で、業界の事情によっては15年以上かかる場合もあるため、二ツ目の人数は決して少なくはありません。
しかし、ひとつの公演に二ツ目の枠をたくさん取ることはできないので、寄席への出演は狭き門となってしまうのです。
この二ツ目時代に怠けてしまって、落語家としてダメになっていく人もいます。
様々な苦労と努力を積み重ねながら芸の修行に励み、高座数をこなしながら己を鍛えていくのが二ツ目時代なのです。
この時期にどれだけ芸を磨きあげ、どんな方向性をつかむかで、真打以降の落語家人生に大きく影響するのです。
階級 | 二ツ目 |
舞台に立つ頻度 | たまに~毎日 |
昇進期間 | 10~13年 |
やること | ・自分で仕事を探す。
・仲間と一緒に勉強会を開いたりしながら、先輩や寄席の支配人、テレビやラジオのプロデューサーから声をかけてもらえるように研鑽する。 |
▼現在二つ目の立川吉笑さんのインタビュー映像
真打
真打とは、寄席の最後の出番(トリ)に出演できる資格を与えられた落語家です。
落語家の目標のひとつは真打になることですが、「ここからがスタート」と考える人がほとんどです。
現在、落語界には、落語家が所属する団体(協会)が5つありますが、真打への昇進は各団体の理事会で決定します。
最初は明治時代に設立された落語協会だけでしたが「金銭問題」「人間関係上のこと」「落語界の改革のため」など、いろいろな理由によって分裂や統合を繰り返して今のような状態になっています。
各団体はそれぞれ独自に興行を打ったり、二ツ目や真打の昇進の決定などを行っています。
真打の昇進は大体は芸歴の順番で決まりますが、二ツ目の年数が浅くても抜擢されて真打になる人もいます。
昔と違って大学卒業後に落語界に入門するケースが多くなっているので、四十歳前後に真打になる人も珍しくありません。
真打になって初めて「師匠」と呼ばれるようになり弟子を取ることも許されます。
真打になると落語家の晴れ舞台といえる「真打披露興行」(=新たに真打ちに昇進した落語家を披露するための公演)を行います。
「真打は名実ともに一人前の落語家である」と言えるかもしれませんが、実際には師匠として歩き始めたばかりなのです。
ここから先は肩書きが変わることもないので、ひたすら落語家として芸の道を追求していく無限の出世街道になります。
そのまま「名人」と呼ばれる落語家になれればよいのですか、真打に昇進したことで安心、あるいは慢心して、その後はパッとしない落語家が大半、というのが現状のようです。
階級 | 真打 |
舞台に立つ頻度 | 一概に言えませんが、売れっ子であればほぼ毎日 |
昇進期間 | 肩書きが変わることはない |
やること | ひたすら落語家として芸の道を追求 |
次のページでは古典落語と新作落語の違いについてお伝えします。古典落語と新作落語の魅力の違いを知れば、落語の楽しみ方が広がるでしょう。
『落語初心者入門』目次へ (全23ページ)
【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】
著者:ミドケン
落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから