寄席の基礎知識 【寄席の鑑賞方法①】

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)

 

落語には様々な鑑賞方法があると思いますが、その中でも生で落語を鑑賞することができる「寄席」はおすすめです。

この第3章では寄席の鑑賞方法について3ページにわたって解説しております。【基礎知識】【東京のおすすめスポット】【おすすめ落語家】について知れば、実際に足を運びたくなることでしょう。

 

寄席とは

 

寄席(よせ)とは、落語や講談などの演芸を魅せるための劇場のことを言います。また、基本的には「寄席」とは小屋そのものを指しますが、興行自体を指すこともあります。

 

開催日

 

基本的に寄席は毎日やっています

昼と夜の2部制が基本で、「昼の部」は正午前から始まり、「夜の部」は午後5時前くらいから始まることが多いです。

ほとんどの寄席が入れ替え制ではないので、ずっと中にいて一日中たっぷり落語を楽しむことができます。

 

 

お正月は通常より多くの演者が出る「顔見せ興行」というのがあり、そのときは一日三部構成になることがあります。

落語を聴ける場所は、地域寄席やホール落語(「~会館」や「~ホール」など、通常は演芸を上演しない場所でやる落語)など、寄席以外にもあり、居酒屋や蕎麦屋、小学校などでやることもあります。

 

プログラム内容


▲プログラム

 

寄席のプログラムは、上席(毎月1日~10日)、中席(毎月11日~20日)、下席(毎月21日~30日)で内容が変わります。

初めて行くときは、好きな落語家や知っている落語家が出演するときに行くのが良いでしょう。

誰がどの演目をやるかについては、残念ながら事前に知ることはできません。

他の落語家と演目がかぶらないように、出番を待っている間にネタを決めるからです。

 

チケットの買い方

 

寄席のチケットは基本的に予約・前売りはなく、当日券(自由席)だけです。

寄席の入り口には木戸(券売所)があり、ここで木戸銭(入場料)を支払ってから寄席に入ります。

 

【編集者コラム】なぜ入場料を「木戸銭」と言う?
寄席の入り口のことを木戸と言います。その木戸をくぐって入場することから「木戸銭」と呼ばれる、と言われています

 

特別興行でない限り、木戸銭は2500円~3000円程度が相場です。

この金額で一日中楽しめると考えたら安いものですね!

 

 

寄席で会場に入るまでの流れ
①まずは木戸(入り口)でチケットを買います。

②入り口でチケットを渡す。半券とプログラムをもらい入場することができます。

③席は基本的には自由席 。好きな席に座りましょう。

 

マナー

 

マナーと言っても特別なことは何もありません。

普通に席に座って観るだけです。もちろん携帯電話の電源を切ったり、本番中は私語をしないなど最低限のマナーは守らなければいけませんが。

基本的に客席の出入りも自由ですが、他の方の観劇の邪魔にならないように、ひとつの演目が終わった直後(演芸と演芸の間)にするようにしましょう。

もちろん寄席にドレスコードなんてものはないので服装は自由です。

ただ「着物割引」などをやっている寄席もあるので、慣れてきたらチャレンジしてみるのも良いかもしれませんね。

 

【Webon編集部男性の声】飲食OKの演芸場

コンサートや舞台に足を運ぶと、飲食が禁止されているところが多いでしょう。しかし、演芸場によっては、飲食がOKな場合もあるのです。私も友人と浅草演芸ホールに足を運んだ際に、お酒とを飲みながら落語を満喫しました。

そのまま聴いても落語は面白いですが、ほろ酔いで観る落語はまた違う贅沢な楽しみがあります。飲食は自由とはいえ、音を立てすぎると周囲の迷惑になってしまうので、おつまみは「乾き物」がおすすめです。

途中で甘い物が欲しい時もありますので「グミ」も噛んだ時に音が鳴らないので重宝します。

 

落語以外も楽しめる

 

寄席に出演する芸人は落語家だけではありません。

色物(いろもの)と呼ばれる、漫才や漫談、コント、マジック、紙切り、腹話術など、いろいろなジャンルの芸人が登場するので、とってもお得です。

まさに寄席は「芸の博覧会」と言えますね。

 

 

親子で楽しめる「親子寄席」

 

寄席はさまざまな年代の方が集まるところです。子供を連れた家族もよく見かけます。

ただし、あまり小さなお子さんだと途中で泣き出したり騒いだりして、他のお客さんの迷惑になることもあるので注意が必要です。

そもそも未就学児は基本的に寄席に入場できません

地域寄席や行政が主催する公演などでは、親子で本物の落語を楽しめる「親子寄席」が催されることもあるので、そのような機会を利用して子供と一緒に落語を楽しんでみるのも良いでしょう。

 

以上、寄席の鑑賞方法でした。

寄席に入るハードルが高くないことが伝わったのではないかと思います。次のページでは「都内おすすめ落語スポット」を紹介します。お酒を飲みながら落語を観られる場所があるなど、知れば知るほど実際に足を運びたくなるかと思います。

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)
 

【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

東京のおすすめ落語スポット7選 【寄席の鑑賞方法②】

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)

 

落語の一番の醍醐味は、寄席などでプロの落語家の高座(落語の公演)を観ることです。

この第3章では【基礎知識】【東京のおすすめスポット】【おすすめ落語家】と3ページにわたって寄席の鑑賞方法をお伝えしております。

このページでは東京都内のおすすめ落語スポットを紹介しますので、ぜひ足を運んで生の落語を楽しんでみてください!

 

落語定席

 

1年365日、毎日落語を聴くことができる演芸場のことを「落語定席(らくごじょうせき)」と言います。

東京には定席が4つしかありません。

以下に東京の4つの定席である「浅草演芸ホール」「鈴本演芸場」「新宿末廣亭」「池袋演芸場」を紹介します。

演芸場ごとに演目や出演する演者の違いは、ほとんどありません。

私は明確な使い分けは特になく、その時の気分であったりその演芸場の近くに行ったついでに行く、といった感じです。

 

【編集部コラム】ほろ酔いで見る落語
以下で紹介する定席は全て飲食オーケーです。また「浅草演芸ホール」「鈴本演芸場」に関してはアルコールを飲みながら落語を観ることができます。アルコールを飲みながら、ほろ酔い状態で落語を観て笑っている瞬間は著しく幸福度が高いです。おつまみには音が出て迷惑にならないように「乾き物」がおすすめです。

 

浅草演芸ホール

 

東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年に「浅草フランス座」を増築してつくられた演芸場です。

東京にある寄席の中で国内外の観光客が最もたくさん訪れ、活気のある寄席で連日賑わっています。

売店では、弁当や飲み物、お菓子などを販売しており飲食しながら落語を楽しむこともできます。(お酒を飲むのもOKです)

浅草演芸ホールや落語芸術協会のオリジナルグッズや、人気番組『笑点』のグッズも販売しているので、記念にそれらのグッズを買ってみるのも楽しいと思います。

 

また、浅草園芸ホールは初心者におすすめの演芸場です。

浅草という場所柄、最も古き良き演芸場の雰囲気を味わうことができます。街全体も楽しい雰囲気ですので初心者の方も気軽に足を運びやすいと思います。

 

詳細(料金・時間・場所)
演芸場 浅草演芸ホール
料金 大人:2800円(3000円)
学生:2300円(2500円)
子供(4歳以上):1500円(1500円)
※()は特別興行の価格。また、団体割引もございます。以下の料金は夜割18:00~、19:00~
大人:2300円、1800円
学生:1800円、1500円
子供:1300円、1300円
公演時間 昼の部:11時40分~16時30分
夜の部:16時40分~21時00分
定休日 年中無休
公式ホームーページ http://www.asakusaengei.com/ticket/#ticket1
電話番号 03-3841-6545
所在地 ・東京都台東区浅草1-43-12 (六区ブロードウエイ 商店街中央)
・浅草駅から徒歩5分
飲食 可能(アルコールもOK)

 

鈴本演芸場


photo by User:Kentin  CC 表示-継承 3.0

 

鈴本演芸場は、東京の落語定席で最も歴史のある演芸場で、母体となった「軍談席本牧亭」という講釈場が誕生したのが安政4年(1857)です。

開席160年以上という伝統ある演芸場は独自の雰囲気を醸し出しており、そこで聴く落語は何とも言えない極上の味わいがあります。

 

詳細(料金・時間・場所)
演芸場 鈴本演芸場
料金 一般:2800円
学生:2500円(中学生以上、24歳まで・要学生証提示)
子供:1500円(未就学児はご入場不可、小学生のみ)
公演時間 昼の部:12時開場、12時30分開演~16時30分終演
夜の部:17時開場、17時30分開演~20時40分終演
※昼夜完全入替制
定休日 12月29日~31日
公式ホームページ http://www.rakugo.or.jp/annai.html
電話番号 03-3834-5906
所在地 ・東京都台東区上野2-7-12
・JR御徒町駅北口より徒歩5分/JR上野不忍口より徒歩10分
飲食 可能(アルコールもOK)

 

新宿末廣亭

 

居酒屋やバーが軒を連ねる新宿三丁目に佇む江戸情緒たっぷりの建築物。それが新宿末廣亭です。

1897年に創業した「堀江亭」を1910年に浪曲師・末広亭清風が買い取って「末廣亭」と改名したのが始まりです。

当時は明治通りに面した繁華街にありましたが戦争で焼失し、昭和21年に現在の場所に再建されました。末廣亭は現存する最古の木造建築の寄席でもあります。

 

毎週土曜の夜に開催されている若手の落語家による「深夜寄席」も人気です。通常の興行の木戸銭(入場料)は3,000円ですが、こちらは1,000円という手ごろな価格で落語を楽しむことができます。

仕事帰りにふらりと訪れてみるのも良し、寄席が終わったあとに飲みに行くのも良し。いろいろな楽しみ方ができる演芸場です。友達と行くにはおすすめです。

 

詳細(料金・時間・場所)
演芸場 新宿末広亭(新宿末廣亭)
料金 一般:3000円
シニア(65歳~):2700円
学生:2500円
小学生:2200円
友の会会員:2500円
平日一般三十名以上:2700円
公演時間 昼の部:12:00~16:30
夜の部:17:00~21:00
入場可能時間:11:00~19:45
定休日 12月30日、31日
公式ホームページ http://www.suehirotei.com/guide.html
電話番号 03-3351-2974
所在地 ・東京都新宿区新宿3丁目6
・地下鉄丸ノ内線・新宿線新宿三丁目駅より徒歩1分
飲食 可能(アルコールNG)

 

池袋演芸場

 

1951年創業の池袋演芸場。1990年から改築による約3年の休業を挟んで、1993年から再開。

会場が地下に移されたことによって唯一地下にある定席になりました。

また、全て桟敷席(ざじきせき:一段高く作られた板の間の席)でしたが、改装により椅子席に生まれ変わりました。

池袋演芸場は他の定席と比べて木戸銭の安さが特徴です。

 

▼料金比較表(特別料金や割引き除く)

演芸場 料金
池袋演芸場 一般:2500円
学生:2000円
子供:1500円
浅草演芸ホール 大人:2800円
学生:2300円
子供:1500円
鈴本演芸場 一般:2800円
学生:2500円
子供:1500円
新宿末広亭 一般:3000円
学生:2500円
小学生:2200円

 

また、浴衣&着物割引、学生服割引、シルバー割引などの各種割引もあります。

演者の持ち時間が長いことも池袋演芸場の大きな特徴です。出演者を絞ることでひとりひとりの持ち時間を長く設定しているそうです。

好きな落語家の噺をたっぷり聴きたいという人にはぴったりの寄席です。

 

詳細(料金・時間・場所)
演芸場 池袋演芸場
料金 ●1日~20日
一般:2500円
学生:2000円
子供:1500円
<特別割引>
○浴衣&着物割引:2000円
○学生服割引(中学生・高校生対象):1500円
○シルバー割引:65歳以上2000円(証明書提示)
○親子割引:子供料金が1000円になる。●21日~30日
・昼の部
一般/学生:2000円
子供:1500円
・夜の部
日毎に料金が変わる
○親子割引:子供料金が1000円になる
公演時間 ・上席(1日~10日)
昼の部:12時開場/12時30分開演
夜の部:17時開演/終演20時30分
※特別興行を除き、昼夜入替えなし
・中席(11日~20日)
昼の部:12時開場/12時30分開演
夜の部:17時開演/終演20時30分
※特別興行を除き、昼夜入替えなし
・下席(21日~30日)
昼の部:13時30分開場/14時開演
夜の部:17時30分開場/18時開演/20時30分終演
※昼夜入替えあり
定休日 12月29日~31日
公式ホームページ http://www.ike-en.com/index2.html
電話番号 03-3971-4545
所在地 ・JR池袋駅西口から徒歩3分
飲食 可能(アルコールNG)

 

筆者に聴きました!演芸場の疑問

デートで寄席を使うのはあり?

 

Q. デートで寄席を使うのはありでしょうか?また、もし行くとしたら付き合う前の方がおすすめでしょうか?

A. デートで寄席はありだと思います。タイミングも付き合う前でも後でもかまいません。

ただ気をつけたいのが「演目や演者によって初心者にはわかりにくい場合がある」ということです。

対処法の1つとしては林家たい平(はやしや たいへい)さんや柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)さんなど、初心者にもわかりやすい落語をやっている人の独演会(落語会)に行くという手があります。

 

▼林家たい平さん

▼柳家喬太郎さん

 

もう1つの対処法はある程度演目の知識を頭に入れてから行くという楽しみ方です。

あるいは古典落語ではなく「新作落語」を演じる落語家の落語会に行くのもありです。新作落語ならコントを観ている感で知識なしで楽しめ、とてもわかりやすいです。

特に落語初心者同士のカップルであれば新作落語を観に行くのはおすすめです。

 

おすすめの席は?

 

Q. それぞれの演芸場でおすすめの席位置はありますでしょうか?また、前・真ん中・後ろで違いはあるのでしょうか?前の方の席だと笑わなかったら落語家さんからいじられそうな気がするのですが・・・。

A. それぞれの演芸場のおすすめの席位置というのはありませんが、共通しているのは、前のほうの席であればより落語家の息遣いを感じられるのでおすすめです。

細かい表情も見やすいです。ただ前の席だといじられる可能性はありますので、それが嫌な人は避けたほうがいいでしょう(ほとんどいじられることはないですが)。

笑う笑わないというのは個人の自由なので、どの席であっても違いはありません。

 

初心者におすすめの落語スポット3選

 

仕事帰りや用事のついでにふらっと立ち寄りやすいおすすめの落語スポットを紹介します。

 

1 らくごカフェ

 

古本街として有名な神田神保町にある、神田古書センターの5階に位置するのが「らくごカフェ」です。

日中はカフェとして営業していますが、夜は落語会が開催されています。

出演者はベテランから若手落語家まで多彩。

客席が約50席と小じんまりした作りなので、落語家との距離が近く、その臨場感がクセになりますよ!

 

名称 らくごカフェ
料金 ・1200円~2500円程度(落語のチケット)
・コーヒー500円
時間 ・月曜~土曜日の11時~18時はカフェタイム
定休日 ホームページ要確認
公式ホームページ https://rakugocafe.exblog.jp/
問い合わせ メール:rakugocafe@hotmail.co.jp
電話:03-6268-9818
所在地 ・東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター 5F
・都営三田線・都営新宿線・半蔵門線神保町駅A6出口より徒歩1分

 

2 渋谷らくご


(引用元:渋谷らくご公式ホームページ

 

「渋谷らくご」は、渋谷区にある映画館・ユーロスペース内にあるライブホールの「ユーロライブ」で開催されている落語会です。

初心者でも気軽に立ち寄れる落語会を目指し、お笑い芸人のサンキュータツオさんを運営者として起用して、2014年11月にスタートしました。

渋谷という場所柄もあり、客層は女子率が高いので、女性でも気軽に落語を観に行ける落語新スポットです。

 

名称 渋谷らくご
料金 1000円~2500円程度
時間 要確認
定休日 要確認
公式ホームページ http://eurolive.jp/shibuya-rakugo/
電話番号 0120-240-540
所在地 ・渋谷区円山町1-5 KINOHAUS
・渋谷駅より徒歩約10分

 

3 そらまち亭


(引用:そらまち亭公式ホームページ

 

スカイツリーのお膝元・東京ソラマチの7階にある、美味しい料理と楽しい落語が楽しめる居酒屋です。

店内に設置された高座で、ねぎし三平堂(初代・林家三平が遺した品々を展示している資料館)プロデュースの落語や漫才などの演芸を楽しむことができます。

どの席からも演芸が観られるようにテレビモニターが設置されているので、お酒や料理と一緒に、まるでスポーツバーのように演芸を楽しめます。

 

名称 そらまち亭
料金 1000円~5000円
時間 営業時間/11:00-23:00
寄席スケジュール/18:30~(約30分間)
定休日 年中無休
公式ホームページ http://solamachitei.jp/
電話番号 03-5809-7047
所在地 ・東京都墨田区押上1-1-2 東京スカイツリータウン ソラマチ7F
・東武スカイツリーライン とうきょうスカイツリー駅すぐ

 

以上、東京都内の落語が365日観られる寄席と初心者おすすめスポットでした。

次のページではおすすめの落語家を紹介します。どの落語家さんを観るか迷った時に是非、参考にしてみてください。

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)
 

【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

落語の歴史

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

 

 

落語について理解を深めることで、より落語を楽しむことができるようになるでしょう。

このページでは「落語の歴史」について解説してまいります。

 

年表

 

時代 出来事
戦国時代(1467-1591) 御伽衆
元和9年(1623) 『醒睡笑』
元禄期(1688-1704) 寄席の原型「辻噺」
寛政期(1789-1801) 寄席の誕生
文化・文政期(1804-1830) 落語ブーム
天保期(1831-1845) 天保の改革で人気下火
安政期(1854-1860) 水野忠邦失脚、再び人気
江戸時代末期(1853-1869) 「近代落語の祖」が活躍
大正時代初期~中期(1912-1922) SPレコードで人気
大正12年(1923年) 関東大震災で寄席消失
大正14年(1925年) ラジオ開局
昭和16年(1941年) 太平洋戦争、53演目禁止
昭和26年(1951年) 放送法成立、ラジオテレビで落語

 

落語の歴史

始まりは戦国時代

 

戦国時代には、面白い話や芸をして笑わせる「御伽衆(おとぎしゅう)」と呼ばれる人たちがいました。

 

御伽衆は戦国大名に仕えていましたが豊臣秀吉も多くの御伽衆を抱えていました。その中のひとり安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)という僧侶は、秀吉の前でおもしろおかしいオチのついた話を披露して喜ばれていました。

 

豊臣秀吉
1537年-1598年。戦国時代から安土桃山時代の武将。天下統一を果たした。

 

文人、茶人としても知られている策伝は幼少の頃から聞き覚えた約1000話の笑い話を集めた『醒睡笑(せいすいしょう)』という書物を書きました。

収められている話は落語の元となったものも多くあり、こうしたことから策伝は「落語の祖」と呼ばれています。

 

▼「醒睡笑 全訳注」江戸時代の初期に編纂された「醒睡笑」ですが、現代語訳と解説付きで読むことができます。

 

落語家・寄席の起源

 

元禄期(1688年~1704年)になると有料で滑稽話を聞かせる人たちが、江戸や大坂、京という都市に登場します。

彼らはお寺や神社の境内、街頭などの人が集まる場所に席を設けて、料金を取っておもしろおかしい話を披露する「辻噺(つじばなし)」を行っていました。

この辻噺は寄席の原型でありそれを行う人たちが落語家の始まりといわれています。

 

寄席の誕生

 

寛政期(1781年~1801年)になると、寄席が誕生します。

それまでの話をする会といえば、いろいろな場所を借りながら不定期で開催をしていました。寄席の誕生により特定の場所で入場料を取るという現在の寄席のような形態になりました。

 

▼寄席のイメージ

 

本格的な商売となると演者側には客を飽きさせないよう演目に工夫をこらすことが求められるようになります。その結果、より芸が磨かれた落語家が次々と現れ、落語のレベルは上がり寄席も拡大していきました。

 

隆盛と衰退

 

文化・文政期(1804年〜1830年)には、芝居噺や怪談話、音曲噺なども始まり、江戸では落語ブームが起こり、隆盛を極めます。

 

音曲噺
噺の途中に三味線などのの伴奏が入り、演者の唄や演奏者による唄が入り噺が進む落語。「稽古屋」「植木のお化け」などの演目がある。

▼稽古屋を聴く(mp3、ストリーミング)

 

ところが、老中・水野忠邦による「天保の改革」が始まってしまいます。

 

▼水野忠邦(老中=幕府の政治を行う役職)

 

質素倹約(しっそけんやく)を推奨し庶民の娯楽も厳しく制限したこの改革によって、文政(1804~1830)末期には120軒以上あったといわれる寄席が15軒ほどになってしまい、落語人気も下火になっていきます。

 

しかし町人や大名達から激しい反対に遭い忠邦は失脚。落語は再び人気を得て、安政期(1854年〜1860年)には寄席の数も約170軒に達します。

 

落語を変えた三遊亭圓朝

 

幕末になると、「近代落語の祖」といわれる初代三遊亭圓朝が活躍します。

 

▼初代三遊亭圓朝

 

圓朝は三味線や太鼓などを使う歌舞伎を真似た「芝居噺」で人気となりましたが、明治時代になると政府は寄席での演劇などの行為を禁止します。

圓朝は道具を使う噺を弟子に譲り、現在のような「扇子1本を使う喋り」を中心とした「素噺(すばなし)」というスタイルを確立しそれまでの落語の常識を変えてしまいました。

徐々にこの「素噺」が主流となり鳴り物を使った「芝居噺」は廃れてゆくことになります。

 

戦争の影響

 

大正時代はレコードの発達により、SP盤(SPレコード)で人気を得る落語家も現れ始めます。

 

▼SP盤


photo by:MASA CC 表示-継承 3.0

 

しかし大正12年の関東大震災で多くの落語家が犠牲となり、寄席も焼失したため、しばらくは興行が行われていませんでした。

大正14年にラジオ局が開局し、落語の放送が始まるとラジオを聴いて落語に興味を持った人が寄席にも足を運ぶようになり、落語に再び注目が集まるようになります。

 

 

昭和になると太平洋戦争(昭和16年)が勃発し、落語界にも大きな打撃を与えます。

遊廓(ゆうかく)などをテーマにした廓噺(くるわばなし)など時局にそぐわないと判断された53もの演目が禁止となってしまうのです。

 

廓噺(くるわばなし)の補足
遊郭(ゆうかく:男性に性的なサービスを行う遊女が集められた区画)をテーマにし、有名な作品に「明烏」がある。

 

放送法が成立

 

昭和26年(1951年)に放送法が成立します。

この放送法成立によって、それまではNHKが中心となって進められていたテレビ放送でしたが民間放送の設置が認められました。

それにより愛知県の中部日本放送(現CBCラジオ)や日本テレビなどが放送を開始し、ラジオとテレビによる落語の新時代が幕を開けます。

 

ラジオをつければ落語が流れるといった状況になり、寄席の数も増えて落語界は活況を呈します。

やがてテレビの時代となり、初代林家三平や7代目立川談志などタレント的な落語家も現れるようになります。

 

初代林家三平
1922年生まれの落語家、1966年~1972年に起きた演芸ブーム(テレビ番組を中心としたお笑いブーム)の火付け役かつ中心的存在。「昭和の爆笑王」として知られる。
7代目立川談志
1936年生まれの落語家。国民的人気番組「笑点」の企画者であり初代司会者。

立川談志について詳しい解説は第4章にて!(現在は第1章)

 

そんな落語家たちの人気もあって寄席も賑わい、それ以降の落語ブームはテレビによって生まれるようになるのです。

 

落語がどのように始まり発展していったのか、お分かりいただけたでしょうか。

何度も危機を乗り越え、その時代を代表する落語家たちによって発展し、今日の落語に繋がっているのです。

酸いも甘いも嚙み分けた歴史ある芸能だからこそ、時代を問わず多くの人々を魅了するのだと思います。

 

次のページでは「落語家の階級」についてお伝えします。落語家がどのように昇進していくかを知ると落語家さんの見え方が変わり、より落語が楽しめるかと思います。

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)
 

【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから