おすすめフィルム・ノワール傑作5選

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

 

このページから第4章。第4章からは小説以外で見る事ができるノワール作品について紹介していきます。

第1章で述べているように、ノワール文学(ノワール小説)を原作に犯罪映画である「フィルム・ノワール」が作られているなど、フィルム・ノワールとノワール文学は切っても離せない関係にあります。

それは現代においても変わりなく、およそ70年もの長きにわたりノワール文学を原作に数えきれないほどのフィルム・ノワールが製作されてきました。

 

フィルム・ノワール

フィルム・ノワールは犯罪映画の一群を指す用語第1章で紹介したダシール・ハメットの同名小説を原作とした映画「マルタの鷹(The Maltese Falcon)」などがその先駆けとされる。

 

このページでは、ノワール文学(小説)を原作とするフィルム・ノワールの傑作を、例によって著者の独断と偏見で選出し、みなさんにご紹介していきます。

 

1 「現金に体を張れ」スタンリー・キューブリック監督(1956年)

【原作:逃走と死と / ライオネル・ホワイト(Clean Break / Lionel White)】

▼原作「逃走と死と」

 

本作「現金に体を張れ」は、当時のアメリカを代表する犯罪小説家ライオネル・ホワイトの小説「逃走と死と」を、ジム・トンプスンが脚本化したフィルム・ノワールです。

 

ジム・トンプスン

1906-1977。暗黒小説の巨匠として高い評価を得る。他にスタンリー・キューブリック監督の『突撃』の脚本も手がけている。

 

現金強奪計画の顛末(てんまつ)を時系列を入れ替えて明かしていくその手法は、当時の映画としては斬新なものでした。ホワイト、トンプスン、キューブリックという類い稀なる三つの才能が生みだした、映画史に残る名作です。

 

▼著者おすすめフィルム・ノワールを観る

 

2 「」ジャック・ベッケル監督(1960年)

【原作:穴 / ジョゼ・ジョヴァンニ(Le Trou / Jose Giavanni)】

 

本作「穴」は、著者の実体験を下敷きにした脱獄映画。

著者が獄中で書いた処女小説を原作としています。無駄のない筋書きを無駄のない演出で魅せる本作の緊迫感には凄まじいものがあり、脱獄を題材としたすべての映画の最高峰に君臨する不朽の名作です。

また、主要人物のひとりに実際の脱獄犯を起用することで、作品に圧倒的なリアリティと緊張感をもたらすことに成功しています。

 

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3 「組織」ジョン・フリン監督(1973年)

【原作:犯罪組織 / リチャード・スターク(The Outfit / Richard Stark)】

▼原作:犯罪組織

▼原作著者:リチャード・スターク

by I, Dinkley CC 表示-継承 3.0

 

本作「組織」は、兄を殺された男がかつての相棒とともに犯罪組織に復讐する様を描いたフィルム・ノワールで、<悪党パーカー>シリーズの三作目を原作としています。

 

『悪党パーカー』シリーズについて

『悪党パーカー』シリーズはリチャード・スターク(本名:ドナルド・E・ウェストレイク)の代表作。現在シリーズの中から20作品が翻訳されて刊行されている。

 

また、著者自身が脚本を務めているため、「殺しの分け前/ポイントブランク」「汚れた七人」「スレイグラウンド」「ペイバック」「PARKER/パーカー」といった同シリーズの小説を原作とする映画と比較して、原作小説の雰囲気をもっとも忠実に再現している作品であるといえます。

 

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4 「L.A.大捜査線/狼たちの街」ウィリアム・フリードキン監督(1985年)

【原作:LA捜査線 / ジェラルド・ペティヴィッチ(To Live and Die in L.A. / Gerald Petievich)】

▼原作:LA捜査線

 

本作「L.A.大捜査線」は、手段を選ばない非合法な捜査で偽札作りの犯人を追い詰めていく財務省特別調査員の姿を描いたアクション映画です。

厳密にいうとフィルム・ノワールではないのですが、原作が素晴らしいノワール小説であるということで、こちらにご紹介させていただきます。

映画化をするにあたり著者と監督が共同で脚本を大きくアレンジしましたが、原作小説と映画版どちらも甲乙つけがたい素晴らしい出来となっていますので、原作も併せて読んでいただくことを強くおすすめします。

 

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5 「大菩薩峠」岡本喜八監督(1966年)

【原作:大菩薩峠 / 中里介山】

▼原作:大菩薩峠

 

本作「大菩薩峠」は、1913年から1941年にわたって連載された未完の大作「大菩薩峠」を原作とした時代劇映画です。

大衆小説の先駆と評される原作小説は、決してノワール文学に分類されるものではありませんが、剣の強さのみを求める主人公「机竜之介」のアンチ・ヒーロー的な造形は、後のノワール作品に通ずるものがあります。

 

大衆小説とは

「芸術性」よりもストーリーなどの「娯楽性」を重視した小説の総称。

 

また、仲代達也演じる机竜之介の狂気が全編にわたって溢れる本作は頽廃的(たいはいてき:気風などがくずれて不健全である様)な空気を色濃く纏っており、フィルム・ノワールの名作と呼ぶに相応しい作品です。

 

▼著者おすすめフィルム・ノワールを観る

 

以上、著者がおすすめするフィルム・ノワール5選でした。次のページではノワール要素を見ることができるコミックについて紹介していきます。

 



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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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ノワール小説おすすめ傑作20選 【一般市民編】

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を

警察編】【裏社会編】【一般市民編】【探偵編

「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。

このページでは、法の番人でもアウトローでも探偵でもない、平凡に生きる一般市民を主人公に据えたノワール作品をご紹介しています。

 

11 転落の道標(ケント・ハリントン)

タイトル(原題) 転落の道標(Dark Ride)
著者 ケント・ハリントン(Kent Harrington)
発表年 2001年
著者出身国 アメリカ

※発表年は以下、基本日本語訳初版

 

アメリカの人気ミステリ作家マイクル・コナリー(Michael Connelly)が本作「転落の道標」を「ジム・トンプスンをクエンティン・タランティーノ的に解釈した作品」と評したことからもわかるように、本書はトンプスンの系譜に連なるきわめて優れたノワール作品です。

 

ジム・トンプスン

1906-1977。暗黒小説の巨匠として高い評価を得る。スタンリー・キューブリック監督の『突撃』の脚本も手がけている。

クエンティン・タランティーノ

監督二作目『パルプ・フィクション』でパルム・ドール(最優秀作品賞)米アカデミー賞脚本賞も受賞。「暴力シーンの多用」「意味のない会話が長々と続く」「自身の好きな作品へのオマージュ」などが作品・演出の特徴。

by Gage Skidmore CC 表示-継承 3.0

 

本作の翌年に発表された著者の第二長編「死者の日(Dia de los Muertos)」も併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 カリフォルニアの地方都市で、市長として長年権勢を誇った父親を持つジミーは、自らも大学時代はスポーツの花形選手であり、輝かしい将来を確実視されていた。

しかし父親亡きあと、今は保険代理店のしがない外交員として冴えない日々を過ごしている。

ジミーの鬱積のはけ口は、代理店経営者の妻イヴとの、覚醒剤を伴ったSMセックスだった。

やがてイヴに殺人をそそのかされたジミーは、後戻りできない暗黒の道を突き進んでいく。

人間の持つ悪の部分を容赦なく突き詰めて描いたノワール小説の傑作。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

12 キスしたいのはおまえだけ(マキシム・ジャクボヴスキー)

タイトル(原題) キスしたいのはおまえだけ(It’s You that I Want to Kiss)
著者 マキシム・ジャクボヴスキー(Maxim Jakubowski)
発表年 2002年
著者出身国 アメリカ

 

本作「キスしたいのはおまえだけ」は、ミステリ評論家・アンソロジスト(詩人)・映画評論家としても知られる著者の、邦訳されている唯一の長編小説です(2018年時点)。

仄暗い(ほろぐらい)エロティシズムが全編をとおして色濃く漂っており、「エロティック・ノワール」と呼ぶに相応しいただれた雰囲気を醸しています。

また、英国在住の作家13人がロンドンを舞台に書き下ろした犯罪小説を収めたアンソロジー(詩撰)「ロンドン・ノワール(London Noir)」に、著者の短編作品「チャリング・クロス街71-73(71-73 Charing Cross Road)」が収録されていますので、そちらも併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

▼ロンドン・ノワール

 

以下、「Book」データベースより引用。

 辛い過去を背負ったジェイク、売春婦に身をやつしたアン。二人が巡り会ったのは悪魔の所業なのか?

組織のブツを横領したアンのせいで、ジェイクは逃走劇の道連れに。

“組織”の執拗な追跡、不貞を繰り返すアンに対する嫉妬、そして絶望。苦しい現実から逃れるように互いを貪りあう二人は知っていた、破滅が彼らを待ち受けていることを…。

アメリカを全力疾走する恋人たちの姿をダイナミックに描いた愛と絶望の物語。

“エロティック・スリラーの帝王”による待望の長編、ついに刊行。

 

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13 上司と娼婦を殺したぼくの場合(ジェイソン・スター)

タイトル(原題) 上司と娼婦を殺したぼくの場合(Cold Caller)
著者 ジェイソン・スター(Jason Starr)
発表年 1999年
著者出身国 アメリカ

 

本作「上司と娼婦を殺したぼくの場合」は、ニューヨークで働くごく普通の会社員を主人公に据えたノワール作品です。

著者の実体験が少なからず反映されているようで、都会に生きる社会人の悲哀を自虐気味に描いています。

当Webon第2章の「アメリカのノワール文学と代表的作家」のページ(現在第3章)でもご紹介しましたアメリカの犯罪小説家エドワード・バンカー(Edward Bunker)も、本書を

「タフでクールでエレガント……会社社会を舞台にした必読の犯罪小説!」

と絶賛しています。

▼エドワード・バンカー

 

2002年の文庫化にあたり「あんな上司は死ねばいい」と改題されました。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 ニューヨークの広告代理店の副部長職を追われ、アルバイトの電話営業をはじめて2年、ビル・モスの会社人生はすこしずつくるいはじめていた。

「ちょっと!すみませんけど」―たいていの日だったらなにも言わなかっただろうが、その朝の彼は違った。

出勤時の地下鉄で車両の奥に移動しようとした時にかけたちょっとした言葉と身振りを痴漢に間違われ、ついには同乗していた男に強烈な拳を見舞われることに。

そんな誰にでも起こりうる出来事が、彼の人生を破綻へと導いていく。

懲りないビジネスマンのリストラ・ミステリー。

 

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14 斧(ドナルド・E・ウェストレイク)

タイトル(原題) 斧(The Ax)
著者 ドナルド・E・ウェストレイク(Donald Edwin Westlake)
発表年 1997年
著者出身国 アメリカ

 

本作「斧」は、会社を解雇された男が再就職のために悪事に手を染めていく様を描いた犯罪小説で、ウェストレイクらしい一筋縄ではいかない筆致(ひっち:文章などの書きぶり)で読者に恐怖と黒い笑いを催させます。

 

ドナルド・E・ウェストレイク

ミステリ界の巨匠。生き生きとした文体とセリフが特徴。ペンネームはリチャード・スターク他、複数。

by I, Dinkley CC 表示-継承 3.0

 

パルプ・マガジン系のノワールが好きな方には手放しでおすすめできる傑作です。

 

パルプ・マガジン

1900~1950年頃にアメリカで広く流通していた大衆娯楽雑誌の総称。粗悪なパルプ紙を使用していたことからそう呼ばれた。
ハードボイルドだけでなくホラーやSFなど、さまざまなジャンル小説の発展を大きく促した。代表的なものに、ウィアード・テイルズ、アメイジング・ストーリーズ、ダイム・ディテクティヴなどがある

 

以下、「Book」データベースより引用。

 わたしは今、人を殺そうとしている。再就職のライバルとなる元同業者6人を皆殺しにする。

この苦境を脱する手は他にないのだ―

リストラで失職したビジネスマンが打った乾坤一擲の大博打は、やがて彼の中の“殺人者”を目覚めさせてゆく。ハイスミスやトンプスンに比肩する戦慄のノワール。

ミステリの名匠の新たなる代表作。

 

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15 殺人の代償(ハリイ・ホイッティントン)

タイトル(原題) 殺人の代償(Web of Murder)
著者 ハリイ・ホイッティントン(Harry Whittington)
発表年 2003年
著者出身国 アメリカ

 

ハリイ・ホイッティントンは猛烈な多作ぶりで知られ、12もの名義を使い分けながら200以上の作品を遺しました。

1958年に出版された本作「殺人の代償」は、当時の犯罪小説の魅力を凝縮したような優れたノワール作品です。

※2003年は日本語訳初版

ペーパーバック(ソフトカバー)の発展に大きく寄与したとして、アメリカのみならずフランスでも高い人気を誇っている著者ですが、日本語に翻訳されている作品は本書ただ一冊(2018年時点)であり、他作品の翻訳が待たれます。

 

以下、「Book」データベースより引用。

妻の資産のおかげで、弁護士として地位を築いたチャーリーだが、冷淡な妻が次第に重荷になっていた。

しかし、秘書ローラとはげしい恋に落ち、人生の軌道は狂いだす。

妻との別れ話はもつれ、ついにチャーリーは殺人を決意。緻密で巧妙な計画を進める彼を、驚くべき事態が襲う!

その瞬間、みずから作りあげた殺人計画が、自分を縛る罠と化した―

ひりひりするスリルと、予想外の結末へ一気に突き進むサスペンス。

「ペイパーバックの王者」と称される著者の傑作犯罪小説登場。

 

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次のページではおすすめノワール小説「探偵編」をご紹介。

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ノワール小説おすすめ傑作20選 【探偵編】

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を

警察編】【裏社会編】【一般市民編】【探偵編

「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。

このページでは、ハードボイルド小説の代名詞ともいうべき探偵稼業に従事する人物を主人公に据えたノワール作品をご紹介しています。

 

16 チェシャ・ムーン(ロバート・フェリーニョ)

タイトル(原題) チェシャ・ムーン(Cheshire Moon)
著者 ロバート・フェリーニョ(Robert Ferrigno)
発表年 1993年
著者出身国 アメリカ

※以下同様、基本的に発表年は日本語訳初版

 

本作「チェシャ・ムーン」は、1990年代のLA(ロサンゼルス)を舞台に、ピューリッツァー賞候補にも選ばれた元新聞記者クィンと日系の女性カメラマン「ジェン・タカムラ」が友人を殺した犯人を追う姿を描いたハードボイルド小説です。

エルモア・レナード(Elmore John Leonard Jr.)を思わせる魅力的な人物造形と軽妙な会話劇が、本書をハードボイルドとして非凡な作品へと押し上げています。

 

エルモア・レナードアメリカを代表する犯罪作家。男臭さを感じられる表現や饒舌な語り口は多くの読者に愛されていると言われる。

▼エルモア・レナード

by Peabody Awards – FlickrPeabodys_CM_0382 CC BY 2.0

 

シリーズ続編「ダンスは死の招き(Dead Man’s Dance)」も併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

▼ダンスは死の招き

 

以下、「Book」データベースより引用。

 『ニューヨーク・タイムズ』をはじめ全米各紙誌絶讃の、鬼才の問題作。不吉な猫の口の形の月の下で奇怪な事件が続く。

探訪記者クィンとワサビ色の眼をした女性カメラマン=ジェン・タカムラの友人アンディーの死体が空港脇の車の中で発見され、往年ハリウッド・スターの身辺に“謎”が。

傑作ハードボイルド。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

17 快楽通りの悪魔(デイヴィッド・フルマー)

タイトル(原題) 快楽通りの悪魔(Chasing the Devil’s Tail)
著者 デイヴィッド・フルマー(David Fulmer)
発表年 2004年
著者出身国 アメリカ

 

本作「快楽通りの悪魔」は、20世紀初頭ニューオーリンズの赤線地帯「ストーリーヴィル」を舞台に、白い肌の下に黒人の血が流れる警官あがりの私立探偵「ヴァレンティン・サンシール」が連続殺人事件の犯人を追う様を描いた作品です。

 

赤線地帯

売春が公認された地区。ストーリーヴィルは1897年から1917から米国のニューオーリンズに設置されていた。

 

実在のジャズ・ミュージシャンが登場するなど音楽に関する描写も多く、ミステリファンのみならず音楽ファンにもおすすめの一冊です。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 人種差別さめやらぬ1907年のニューオーリンズ。

外見は白人ながら黒人の血を引く異端の私立探偵ヴァレンティンは、娼婦ばかりを狙った猟奇殺人事件に巻き込まれる。

現場には黒い薔薇が遺され、被害者全員が死の直前に彼の親友のコルネット奏者バディと会っていた…。

複雑に絡み合うプロットと渇いたノスタルジーで、アメリカ私立探偵作家クラブ賞に輝いた、歴史ノワールの逸品。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

18 悪徳の街(フランク・レナード)

タイトル(原題) 悪徳の街(Box100)
著者 フランク・レナード(Frank Leonard)
発表年
著者出身国

 

本作「悪徳の街」は、セミプロ野球選手やスポーツ記者など、数えきれないほどの職を転々とした末に探偵稼業に流れ着いた「ロス・フランクリン」という主人公が、卑しき街に巣くう巨悪を追う様を描いた社会派のハードボイルド小説です。

 

ハードボイルド小説について詳しくは第1章で!(現在第3章)

 

長らくニューヨーク市でソーシャルワーカーを務めた著者ならではの視点で、1970年代のニューヨークの福祉制度の歪みに鋭く迫っています。

 

以下、カバー袖より引用。

 ロス・フランクリンの27番目の職業は探偵稼業だった。ニューヨーク市調査局ボックス100課の特別調査員である。

ボックス100課は、市政に関する市民の苦情受けつけ窓口である。

大半は「隣室の女のひとり言がうるさい」とか、「アパートにゴキブリがいっぱいいるから何とかしてほしい」といった類のものである。

だが中には、「生活保護を受けている隣りの女が、扶助料切手をなくしたとごまかし、再交付を受けている」といった犯罪の匂いのするものもある。

ロス・フランクリンの初仕事が、この小切手詐欺事件の調査だった。調査に取り掛かった彼は、やがて貧困の街に巣くう非情な悪の正体を知る――。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

19 マザーレス・ブルックリン(ジョナサン・レセム)

タイトル(原題) マザーレス・ブルックリン(Motherless Brooklyn)
著者 ジョナサン・レセム(Jonathan Lethem)
発表年 2000年
著者出身国 アメリカ

 

本作「マザーレス・ブルックリン」は、トゥーレット症候群(チック症)を患う若き探偵ライオネル・エスログが、探偵事務所のボスを殺した犯人に復讐するべく、仲間たちとともに犯人を追跡する様を描いた作品。

言葉遊びに満ちた異様ともいえる文体が、本書を唯一無二の個性的な作品へと昇華させています。

 

邦訳版が出版された2000年時点で既にエドワード・ノートン製作/主演による映画化が決定していましたが、長い製作期間を経て2019年に公開を予定しています(2018年時点)。

 

以下、Googleブックスより引用

 フランク・ミナは、ぼくらの兄貴で、父で、恩人で、ボスだった。孤児院暮らしのぼくらを雇い、稼がせ、成長させ、大人にしてくれた。

そんなミナが、ゴミ箱のなかで血にまみれ…

無免許探偵のぼくらは、殺されたミナのため、奥さんのため、仕事のため、ぼくらのため、町へ出る!

言葉の魔術師の異名を取る著者が魅力を全開させた、超個性脈ハードボイルド。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

20 殺しの匂う街( マーク・サヴェージ)

タイトル(原題) 殺しの匂う街(Scratch)
著者 マーク・サヴェージ(Marc Savage)
発表年 2000年
著者出身国 アメリカ

 

本作「殺しの匂う街」は、ニューヨークはクイーンズで探偵稼業を営む私立探偵レイ・ソマーの生きざまを描いたハードボイルド小説です。

1990年代に書かれたとは思えない古典的で筋金入りのハードボイルドを味わうことができます。

また、本作に登場するマフィアのドン「ジョー・スコセージ」を主人公に据えたスピンオフ作品も発表されていますが、残念ながら未だ邦訳は予定されていません(2018年時点)。

 

以下、「Book」データベースより引用。

駐車場で車を修理していた男は、いきなり立ちあがると、ショットガンをかまえた。そして、私立探偵レイ・ソマーの目のまえで、親友の息子サリーに銃弾を浴びせかけた。

無残な最期をとげたサリーは、大学を卒業したばかりで、父親のあとを継いで弁護士になろうとしていた。そんな前途有望な若者が、なぜ殺されなければならないのか?

怒りに燃えたソマーは、自分で犯人をつかまえようと独自の調査にのりだした。

サリーの車で発見されたコカインは、何を意味しているのか?殺される直前にサリーがもちこんできた娘の失踪事件は、今回の殺人事件と関係があるのか?そして、娘の行方は?

娘の姿を捜査し求めて街にくりだしたソマーは、路地裏で何者かに襲われ、意識をうしなった。

そして、気がついてみると、そばには死体が…。

退廃と暴力の街ニューヨークで生まれ育った男が、死と隣りあわせの調査に執念を燃やす本格ハードボイルド。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

以上、おすすめノワール小説でした!次のページから第4章です。第4章では映画など他メディアに潜んでいるノワール要素をご紹介。ノワール小説が好きな方や興味がある方はきっと面白いでしょう!

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著者:國谷正明

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ノワール小説おすすめ傑作20選 【裏社会編】

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第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を

警察編】【裏社会編】【一般市民編】【探偵編

「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。

このページでは、ギャングや殺人鬼、ギャンブラーや犯罪常習者といったアウトローを主人公に据えたノワール作品をご紹介しています。

 

6 暗黒街のハリー(ジェイク・アーノット)

タイトル(原題) 暗黒街のハリー (The Long Firm)
著者 ジェイク・アーノット(Jake Arnott)
発表年 2001年
著者出身国 イギリス

 

本作「暗黒街のハリー」は、ゲイで拷問好きのギャング『ハリー・スタークス』の生きざまを、彼を取り巻く複数の人物の視点から描いた連作短編集ともいうべき一冊です。

主人公ハリーを含め、登場するキャラクターの多くが実在する人物をモデルにしているなど、ギャング好きには堪らない工夫が盛りこまれています。

また、「1960年代の裏社会」という使い古された題材を用いつつも、章ごとに文体をがらりと変える多重人格的な手法で目新しさを演出することにも成功しており、あらゆるノワールファンに強くアピールする魅力を備えています。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 英国がまだ戦争の痛手から立ち直れず、不景気と不安が社会を覆っていた1960年代。ロンドンの裏社会でのしあがった一人のギャングがいた。

「拷問好き」と綽名され、詐欺、麻薬密売、ポルノ販売、買収、脅迫、さらには殺人にいたるまで、悪いことならなんでもこなし、いまやかのクレイ兄弟と覇を競うまでになった男、ハリー・スタークス。

だが、手下たちにも見えにくい意外な顔を、ハリーはまた持ちあわせていた。オペラを聞き、チャーチルを尊敬し、有名人には弱く、愛した青年たちや母親には優しい。

その真の姿を知る者はどこにもいない。

度胸と奸知と暴力を武器に、次々と敵を消し、金を掻き集め、やがて時代が彼を必要としなくなるまで、ハリーは暗黒街を駆け抜けていく…

激動の時代を背景に、一人のギャングが、いままさに伝説となってゆく。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

7 男の争い(オーギュスト・ル・ブルトン)

タイトル(原題) 男の争い (Du Rififi chez les Hommes)
著者 オーギュスト・ル・ブルトン(Auguste Le Breton)
発表年 1955年
著者出身国 フランス

 

本作「男の争い」は、フランスの暗黒街に生きる男たちの血みどろの争いと仁義を描いたロマン・ノワールの古典的な名作で、著者のブルトン自身も暗黒街の一員であったことが知られています。

フランスを代表する犯罪小説家のひとりに数えられるブルトンですが、日本語に翻訳されている作品は本書に加え、

同名映画の原作でもある「シシリアン(Le Clan des Siciliens)」、

▼シシリアン(映画版)

フランスの暗黒街に君臨した或る男の生涯に迫るノンフィクション「無法の群れ フランス暗黒街の回想(Les Pégriots)」

▼無法の群れ フランス暗黒街の回想

のわずか三作(2018年時点)であり、他作品の翻訳が期待されます。

 

ロマン・ノワール1950年代に入ると、フランス国内からもハードボイルド小説に影響を受けた暴力的な犯罪小説を執筆する作家たちが現れるようになります。フランスの伝統的なミステリの系譜にありながら、英米のハードボイルド小説に強い影響を受けた一連の作品は、ロマン・ノワールと称されました。詳しくは第1章で!(現在第3章)

 

 以下、「Book」データベースより引用。

 強盗の罪で服役したトニーは、五年の刑を終え、病を得てパリの街へ舞い戻った。旧友のジョーとともに計画していた大規模な宝石店強盗のためだ。

思わしくない体調をごまかしつつ、深夜の店に押し入ったトニーたちは、首尾よく二億五千万フランもの宝石を手にした。

だが、ふとしたことから彼らの犯行だと嗅ぎつけた凶悪なギャングのソラ三兄弟が、猟犬のように獲物の横取りを狙う。

凄惨な拷問、容赦ない暴行、襲撃、そして反撃―争奪戦が最高潮に達したとき、ついに敵は卑劣な手を!

巨匠ジュールズ・ダッシン監督が映画化した名品、ついに登場。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

8 絢爛たる屍(ポピー・Z・ブライト)

タイトル(原題) 絢爛たる屍 (Exquisite Corpse)
著者 ポピー・Z・ブライト(Poppy Z. Brite)
発表年 2003年
著者出身国 アメリカ

 

文春文庫の「スプラッタパンク・ホラーシリーズ」にラインナップされていることからもわかるように、本作「絢爛たる屍 」は犯罪小説というよりも残虐なホラー小説に近い感触を纏っています。

 

スプラッタパンク・ホラー生生しい殺害シーンなどグロテスクな描写が多くあるホラー映画。

 

しかし、倒錯した愛欲と狂おしい暴力衝動を真正面から描ききった本書は、ノワール文学としての要素を多分に内包しています。

また、文庫の裏表紙において著者を女流作家として紹介していますが、ポピー・Z・ブライトという名義はビリー・マーティン(Billy Martin)という男性の筆名であることがわかっています。

 

以下、文庫裏表紙より引用。

脱獄した連続殺人鬼。ひそかに凄惨な殺人を繰り返す富豪の青年。

生きた者を愛せぬ二人の男が傷心の美青年と出会ったとき、爛れた地獄が口を開けた……。

倒錯性愛と頽廃の美を描く異能の女流作家ブライトの耽美的にして残虐な傑作。

エキゾティックな妖都ニューオーリンズの闇の底、狂気と背徳の愛が甘い腐臭を発して蠕動する。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

9 ドライブ(ジェイムズ・サリス)

タイトル(原題) ドライブ (Drive)
著者 ジェイムズ・サリス(James Sallis)
発表年 2005年
著者出身国 アメリカ

 

本作「ドライブ」は、スタント・ドライバーの傍ら、卓越した運転技術を買われて逃走車輌の運転稼業に手を染めた男の生きざまを描いた犯罪小説で、2012年の映画化にあたり「ドライヴ」と表記を改めました。

 

▼ドライヴ(映画版)

 

ミステリ界の巨匠ドナルド・E・ウェストレイク(Donald Edwin Westlake)の別名義のひとつであり「悪党パーカーシリーズ」で知られるリチャード・スターク(Richard Stark)を彷彿とさせる簡潔でスピーディーな文体が、本書の魅力の大きな要因となっています。

 

ドナルド・E・ウェストレイク(1933-2008)
ペンネームはリチャード・スターク他、複数ある。アメリカの小説家で犯罪小説など100冊以上を執筆。

▼ドナルド・E・ウェストレイク

by I, Dinkley CC 表示-継承 3.0

 

以下、「Book」データベースより引用。

親、師、友、恋人、愛する者はみな死んだ―すべてを失った男、ドライバー。

映画のスタント・ドライバーだった彼は、やがて、強盗の逃走車輛の運転手という裏の仕事に手を染める。

罪を犯すことにも慣れてきた頃、突如、強盗グループ内で仲間割れが生じた。命からがら逃げだした彼は、この裏切りの黒幕を探るべく車を駆るが…。

車とともに死地へと赴く青年の波瀾万丈の生きざまを描き出した衝撃のクライム・ノヴェル。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

10 ネヴァダの犬たち(ジョン・リドリー)

タイトル(原題) ネヴァダの犬たち(Stray Dogs)
著者 ジョン・リドリー(John Ridley)
発表年 1997年
著者出身国 アメリカ

▼著者:ジョン・リドリー

by Vontaub CC 表示-継承 3.0

 

本作「ネヴァダの犬たち」は、映画やテレビ番組の監督、脚本家としてハリウッドで活躍するジョン・リドリーの処女長編小説です。

1950年代のパルプ・マガジンの香り漂う古典的なノワール小説で、著者は本書の他にも

「愛はいかがわしく(Love is Racket)」

「地獄じゃどいつもタバコを喫う(Everybody Smokes in Hell)」

といった優れたノワール作品を執筆していますので、そちらも併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

パルプ・マガジン1900~1950年頃にアメリカで広く流通していた大衆娯楽雑誌の総称。粗悪なパルプ紙を使用していたことからそう呼ばれた。ハードボイルドだけでなくホラーやSFなど、さまざまなジャンル小説の発展を大きく促した。代表的なものに、ウィアード・テイルズ、アメイジング・ストーリーズ、ダイム・ディテクティヴなどがある

 

以下、「Book」データベースより引用。

多額の借金をギャングに返すため、ギャンブラーのジョンは大金を抱え、愛車マスタングでネヴァダ砂漠を疾走していた。だが、突然車が故障した。

修理のため彼は、ちっぽけな町に立ち寄るが、強盗事件に巻き込まれて大事な金を失ってしまう。

金を返す時間が迫る中、彼は美貌の女とその夫の危険な関係の渦中に引きずりこまれていくが。

鮮烈なタッチで描くパルプ・ノワール。

オリヴァー・ストーン監督映画『Uターン』の原作。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

▼本作「ネヴァダの犬たち」の映画版

 

次のページでは「一般市民」が主人公のおすすめノワール小説を紹介していきます。

『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 



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目次著者

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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ノワール小説おすすめ傑作20選 【警察編】

Webon紹介目次著者
ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

このページから第3章です。第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を

警察編】【裏社会編】【一般市民編】【探偵編

「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。

有名どころからマイナーな作品まで、筆者の独断と偏見で選出しておりますので、中には入手困難なものもあるかもしれませんが、みなさんの素敵な読書体験の手助けとなれば幸いです。

 

このページでは、警察官や保安官といった法の番人を主人公に据えたノワール作品をご紹介します。

 

1 自殺の丘 (ジェイムズ・エルロイ)

タイトル(原題) 自殺の丘(Suicide Hill)
著者 ジェイムズ・エルロイ(James Ellroy)
発表年 1986年
著者出身国 アメリカ合衆国

 

本作「自殺の丘」は「血まみれの月(Blood on the Moon)」「ホプキンズの夜(Because the Night)」に続く、ロイド・ホプキンズ三部作の最終章にあたります。

ロス市警強盗殺人課の部長刑事ロイド・ホプキンズを主人公に据えたこのシリーズでは、すべてを失いながらも狂気じみた執念で犯人を追い詰めていくホプキンズの姿が生々しい筆致で描かれています。

ストーリー上の繋がりが強いので、一作目から順に読んでいただくことをおすすめします。

 

▼ロイド・ホプキンズ シリーズ

発表年 タイトル
1作目 1983年 「血まみれの月」

2作目 1984年 「ホプキンズの夜」

3作目 1986年 「自殺の丘」

 

以下、「Book」データベースより引用。

ロス市内で3人組による銀行強盗事件が続けざまに起きた。

犯人は各銀行を入念に下調べし、不倫進行中の支店長に狙いをつけると、その愛人を人質にとるという手口だった…。

停職処分中のロス市警部長刑事ロイド・ホプキンズは上司に呼ばれ、処分がとけると同時にこの強盗事件の担当を命じられた。ただし、職場はFBIロサンジェルス支部銀行強盗課への出向だった。

調査を開始したホプキンズは、犯人たちに“知性”を嗅ぎ取った。

と同時に彼はこの一件が自分の最後の仕事になると思っていた。市警の上層部が彼を切りたがっていたのだ。そして、市警内の宿敵である上司との最終的対決も予感していた。

『血まみれの月』『ホプキンズの夜』に続くホプキンズ・シリーズ第3弾。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

2 血と暴力の国 (コーマック・マッカーシー)

タイトル(原題) 血と暴力の国(No Country for Old Man)
著者 コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)
発表年 2005年
著者出身国 アメリカ合衆国

 

本作「血と暴力の国」は、全米批評家協会賞や全米図書館賞、ピューリッツァー賞を受賞するなど、現代のアメリカ文学界を代表する作家として名高いコーマック・マッカーシーが著した犯罪小説です。

純文学(娯楽性よりも芸術性に重きを置いた文芸のジャンル)系の作家というイメージが強いマッカーシーですが、本書の他にも「チャイルド・オブ・ゴッド(Child of God)」や「ブラッド・メリディアン(Blood Meridian)」といった作品において、人間の暗部を容赦なく描ききっています。

 

▼チャイルド・オブ・ゴッド

▼ブラッド・メリディアン

 

本作は、老保安官「ベル」ベトナム帰還兵「モス」冷酷な殺人者「シュガー」という三人の登場人物の視点で進行しますが、老保安官ベルが実質的な主人公であると解釈し、こちらのページにてご紹介させていただきます。

 

以下、「Book」データベースより引用。

ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、撃たれた車両と男たちを発見する。麻薬密売人の銃撃戦があったのだ。

車には莫大な現金が残されていた。モスは覚悟を迫られる。

金を持ち出せば、すべてが変わるだろう…モスを追って、危険な殺人者が動きだす。

彼のあとには無残な死体が転がる。この非情な殺戮を追う老保安官ベル。

突然の血と暴力に染まるフロンティアに、ベルは、そしてモスは、何を見るのか―

“国境三部作”以来の沈黙を破り、新ピューリッツァー賞作家が放つ、鮮烈な犯罪小説。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

3 鬼警部アイアンサイド (ジム・トンプスン)

タイトル(原題) 鬼警部アイアンサイド(Ironside)
著者 ジム・トンプスン(Jim Thompson)
発表年 1967年
著者出身国 アメリカ合衆国

 

本作「鬼警部アイアンサイド」は、1967年から1975年にかけてアメリカで放映されていた刑事ドラマ「鬼警部アイアンサイド」のノヴェライズ(映画やドラマなどを小説化すること)です。

テレビドラマの設定に準拠しながらも、ジム・トンプスンらしい要素が随所に現れており、ノワール色は薄いながらもトンプスンファンには堪らない警察小説となっています。

 

ジム・トンプスン

1906-1977。暗黒小説の巨匠として高い評価を得る。スタンリー・キューブリック監督の『突撃』の脚本も手がけている。

 

以下、「Book」データベースより引用。

何者かが放った一発の銃弾がサンフランシスコ市警察の敏腕刑事ロバート・アイアンサイドから下半身の自由を奪ってしまった。

だがその手腕を見込んだ警察は、彼を顧問として迎え、手足となる三人の部下を与える。車椅子を駆り、卑劣な犯罪との闘いの日々は続く…

謎めいた脅迫事件、有力者の息子が起こした轢き逃げ事件、そしてアイアンサイドの部下マークが関わる傷害致死事件。

鬼警部を窮地に追いこむ事件の連続、その背後でほくそ笑む黒幕とは?人気TVシリーズをもとにノワールの巨匠が書き下ろしたオリジナル・ストーリー、ついに登場。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

4 タルタロスの審問官(フランク・ティリエ)

タイトル(原題) タルタロスの審問官(Train D’enfer pour Ange Rouge)
著者 フランク・ティリエ(Franck Thilliez)
発表年 2007年
著者出身国 フランス

 

「タルタロスの審問官」はフランス人作家フランク・ティリエによるミステリ小説です。

トマス・ハリス(William Thomas Harris III)が著したサイコ・サスペンスの名作「羊たちの沈黙(The Silence of the Lamb)」を彷彿とさせる残酷な描写が強く目を引きますが、一方で古き良きロマン・ノワールの香りも色濃く漂っています。

 

羊たちの沈黙

精神科医ハンニバル・レクターという猟奇的な殺人を犯していく物語。殺害した人の臓器・肉を食べることから「人食いハンニバル」とも呼ばれる。

 

続編となる「七匹の蛾が鳴く(Deuils de miel)」も併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

▼七匹の蛾が鳴く

 

以下、「Book」データベースより引用。

パリ警視庁警視シャルコの妻が誘拐された。シャルコは必死に愛する妻の行方を追うが、杳として知れない。

そんなとき、ある女性の惨殺死体が発見される。ロープで緊縛された上、皮膚をフックにかけて宙づりにされ、さらには眼球をくりぬかれた見るも無惨な死体。

そして明くる日、捜査の担当となったシャルコの元に、「気に入ってくれたかい?」と題されたメールが届き…。

ノワールの新星が描く、奈落よりも深い闇の世界。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

5 フィルス(アーヴィン・ウェルシュ)

タイトル(原題) フィルス(Filth)
著者 アーヴィン・ウェルシュ(Irvine Welsh)
発表年 1998年
著者出身国 イギリス

 

本作は、映画と原作小説がともに大ヒットを記録した処女作「トレインスポッティング(Trainspotting)」の著者アーヴィン・ウェルシュによる三作目の長編にあたります。

 

処女作 「トレインスポッティング」

第2作目長編 「マラボゥストーク」

 

実験的な作風で文学界に衝撃を与え続けてきたウェルシュの作品の中でも、本書は特に下劣で実験的な作品であるといえます。

ノワールはおろか警察小説の枠に収まらない前衛的な小説であるため、読み手を大きく選びますが、ノワール文学の可能性を力づくで押し広げた問題作として、無視することのできない一冊です。

 

以下、「Book」データベースより引用。

人生はゲーム、勝者はただひとり、それはおれ。

哲学的サナダムシを腹に宿した無敵のスコットランド人刑事ブルース・ロバートソンは、警部補に昇進するため、同僚刑事たちを陥れる裏工作に余念がない。

そこに殺人事件が発生するが、捜査は難航。果たして真犯人の正体は。

ロバートソンは昇進レースを勝ち抜き、妻子を取り戻せるのか。凍てつく十二月のエディンバラを舞台に繰り広げられる、前代未聞の極悪警察ミステリー。

鬼才アーヴィン・ウェルシュの代表作にして、英国で55万部突破の大ベストセラー。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

次のページでは著者がおすすめする「裏社会」がテーマになったノワール小説をご紹介していきます。

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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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映画ドラマの使用例・海外で活躍するバンド 【邦楽ロックの評価】

Webon紹介目次著者
邦楽ロックが大好きな筆者が邦楽ロックの基礎知識やおすすめのバンドなどを解説!

邦楽ロック入門 ~近年注目のおすすめバンドを聴こう~はこちらから!

著者:寺井まさき

めまぐるしい人生を駆け抜けられたのは「邦楽ロック」に救われてから。その魅力を一人でも多くの人に伝えたい。あなたなりの感じ方で邦楽ロックを楽しみ、好きになってもらえたら嬉しいです!お問い合わせはこちらから

 

『邦楽ロック入門』目次へ  (全12ページ)

 

この章(第1章)では「邦楽ロックの基礎知識」について4ページにわたって解説しております。

このページでは、日本や海外から邦楽ロックがどのように評価されているのかを紹介します!

 

日本での評価

 

邦楽ロックの日本の浸透度はとても高いです。

邦楽ロックは日常の様々なシーンで利用され、生活に浸透しています。その浸透度の高さが、日本における邦楽ロックの評価の高さと言えると思います。

 

映画・ドラマでの使用例

 

邦楽ロックの楽曲は多くのドラマや映画の主題歌に使われてます。

2016年放送された話題になった『逃げる恥だ役に立つ』では星野源が歌う『恋』という曲が主題歌として利用されました。

 

▼星野源『恋』のMV

 

エンディングで出演者が曲に合わせて踊る姿が「かわいい」という評判でした。私も動画サイトでガッキーのダンスを当時は飽きるほど繰り返し視聴していました!

そんな評判もあって『恋』は瞬く間に市民権を得て、その年の紅白歌合戦に歌われるほどの一大ブームとなりました。

 

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邦楽ロックで使用される代表的な楽器

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邦楽ロックが大好きな筆者が邦楽ロックの基礎知識やおすすめのバンドなどを解説!

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著者:寺井まさき

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この章では邦楽ロックの基礎知識について4ページにわたってお伝えしております。このページでは邦楽ロックの楽器についてお伝えします

邦楽ロックは主に「ギター」「ベース」「ドラム」といった楽器で構成されます。簡単にわかりやすく各楽器の役割を紹介したいと思います。

 

邦楽ロックの主な楽器と役割

1 ギター

 

まずは、邦楽ロックの主な楽器の代表的な存在「ギター」から紹介いたします。

ギターの主な役割はコード(ド・ミ・ソなど複数の音が同時に鳴るハーモニーのこと)を弾くことです。

弦が通常6本あるので最大で6つの音を同時に鳴らすことができます。ドラムとベースが作り上げる音を土台に、ギターによってバンドの音楽に色を与える役割を担っています。

 

▼ギターの音

▼ギターが目立つ曲のイメージ

 

【編集部メモ】
日本のロックシーンを牽引しているギタリストと言えば「HI-STANDARD」の横山健が挙げられるでしょう。「カッコいい」を体現しているような曲の数々は今も世代を越えて支持されております。

 

2 ベース

 

ベースの主な役割は、「ギターには出せない低い音を出すこと」でバンドの演奏に厚みを出します。ベースがないとスカスカ感のある演奏となってしまいます。

ギターが一度に複数の音を鳴らすのに対して、ベースは単音(ひとつの音)のみを鳴らします。

 

▼ベースの音

▼ベースの音(ベンベンと低音で鳴り響いているのがベースです)

music by 魔王魂

 

【編集部メモ】
日本でNO1のベーシストと呼び声が高いのがRIZEのkenkenです。Dragon Ashなどにも参加しており、その演奏を聴けば地味なベースのイメージは一新されることでしょう。

 

3 ドラム

 

ドラムはライブなどでは一番後ろにセットされ、客席からは見にくい位置で演奏するため一見すると地味に思われがちな楽器です。

しかし「指揮者」や「土台」と表現されるほど重要な役割を担っています。

バンドの演奏の「スピード」や「曲のノリ」は、ドラムによって決定されます。ドラムのリズムの安定がなければ演奏全体が崩れてしまいます。

 

▼ドラムの音

 

【編集部メモ】
ドラムが凄いと言われる有名なロックバンドと言えば「凛として時雨」です。2008年に発売された 「Telecastic fake show」を聴けば、初心者の方でも思わず「ドラムうますぎ・・・」と絶句してしまうことでしょう。

 

以上3つが邦楽ロックで演奏される代表的な楽器となります。

まとめると、「ドラム」が曲として不可欠なビートやリズムを生み出し、「ベース」が重みや厚みを加え安定感を出し、それに「ギター」が音階というをつけることで音楽として成立するわけです。

 

必ずしも3つが必要ではない

 

その他にも、現代の邦楽ロックは様々な楽器が用いられています。

ピアノ、シンセサイザー、キーボード、サックス、トランペットなどなど。

この楽器が入ってたら「邦楽ロックじゃない!」なんてことはありません。

 

また使う楽器は3つとも限らないのです。3つではなくてもよいという例を1つ紹介します。

 

日食なつこの『水流のロック』という曲です。

 

 

この曲は数年前に、テレビ朝日の音楽番組「関ジャム~完全燃SHOW」で紹介されて話題になり、YouTubeの視聴回数が100万回を超えました。

この曲はピアノとドラムだけ(おそらくベースなども入っていますが、ここでは言及しません)で演奏されています。

 

番組の中では、

「ピアノでギターとベースの役割を同時にこなしている。それだけではどうしてもリズムやビートを刻むことができないため、最低限の楽器としてドラムが使用されている。現代の音楽シーンは音を追加するという足し算の考え方であるが、この曲は無駄な音や楽器を引いていく引き算の考え方が応用されている」

と紹介されていました。

 

当時この曲をはじめて聴いた時、私は衝撃を受けました。

2つの楽器のみで、こんなかっこいい曲が作れるのかと。

私は音楽の専門的な知識を持ち合わせている訳ではありません。ただ、この曲の「引き算」という考え方がとても新鮮で、「音楽は自由なんだな」と思いました。

 

現在邦楽ロックで用いられる楽器はたくさんあります。しかしどの楽器を使うかは自由なのです。

そんな当たり前だけどなかなか気付けない、とても重要なことをこの曲は教えてくれました。

 

このページでは邦楽ロックに用いられる楽器についてご紹介いたしました。次のページでは、邦楽ロックの歴史をお伝えします。

わかりやすく簡単に説明しましすので、歴史を知ってより邦楽ロックを好きになっていただければと思います。

『邦楽ロック入門』目次へ  (全12ページ)

 

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その他国々のノワール文学と代表的作家

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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その他国々のノワール文学

 

フランスの「セリ・ノワール」叢書(そうしょ・シリーズという意味)でアメリカ・イギリスのハードボイルド小説が紹介され、フランスのミステリファンの心を掴むなど、英国の作家たちがノワール文学に与えた影響は非常に大きなものでした。

セリ・ノワールが与えた影響については第1章で解説しておりますのでご参照ください。(現在第2章)

 

セリ・ノワールとは
1945年に初めて刊行された英米のハードボイルド小説専門の叢書(そうしょ・シリーズという意味)。第一弾はピーター・チェイニー「この男危険につき(This Man Is Dangerous)」など。

 

まずはそんなノワール文学の原点の一つとなった国とも言えるイギリスの代表的ノワール作家をご紹介します。

 

イギリス

ジェイムズ・ハドリー・チェイス(James Hadley Chase)

 

ジェイムズ・ハドリー・チェイス(James Hadley Chase)は、1906年生まれのノワール作家です。

彼は18歳のとき書店で勤務したことを皮切りに書籍の取次や販売員・出版社など本に携わる仕事をこなす中で、アメリカのギャング小説の需要が多いことに着目しました。

アメリカの俗語辞典と裏社会の参考書を片手に、本業の傍らでなんと六週間という短期間で処女作「ミス・ブランディッシの蘭(No Orchids for Miss Blandish)」を書き上げました。

 

 

▼ミス・ブランディッシの蘭(画像クリックで書籍詳細へ)

 

同書は1939年に刊行されると、英国内のみならず世界中で好評を博し、瞬く間にベストセラーとなっています。

その後も、続編となる「蘭の肉体(The Flesh of Orchid)」をはじめ、「悪女イヴ(Eve)」「世界をおれのポケットに(The World in My Pocket)」など、優れた作品を数多く送り出しています。

 

▼世界をおれのポケットに(画像クリックで書籍詳細へ)

 

テッド・ルイス(Ted Lewis)

 

テッド・ルイス(Ted Lewis)は、1940年生まれのノワール作家です。

英語教師に美術や執筆など創作分野の才能を見出された彼は、両親の反対を押し切って美術学校に進学します。

卒業後は広告業界を経てテレビ番組や映画のアニメーション技術者に転じ、1965年に処女作「All the Way Home and All Night Through(未邦訳)」を上梓。

 

 

その後も「ゲット・カーター(Jack’s Return Home)」「Boldt(未邦訳)」「GBH(未邦訳)」など、ジェイムズ・ハドリー・チェイス(先述)の系譜に連なる優れたノワール作品を次々と発表し、英国を代表するノワール作家としての名声を欲しいままにしました。

 

▼ゲット・カーター(画像クリックで書籍詳細へ)

 

また、彼の代表作である「ゲット・カーター」は三度にわたって映画化されています。

1971年にマイク・ホッジスが監督を務めた「狙撃者(Get Carter)」というゲットカーター映画版は、イギリス映画雑誌で「イギリス映画オールタイムベスト」という特集に選出されるなど、非常に高い評価を得ています。

 

▼狙撃者(画像クリックでDVD詳細へ)

 

以上がノワール文学に影響を与えたイギリスの代表的なノワール文学作家です。

アメリカからイギリス、フランスを経由して円熟に至ったノワール文学は、その後世界中に伝播しました。以下では様々な国の代表的なノワール文学作家をご紹介していきます。

 

キューバ

ホセ・ラトゥール(José Latour)

 

ホセ・ラトゥール(José Latour)は、1940年、キューバに生まれました。

幼少時から熱心なミステリ読者だった彼は、キューバ財務省にアナリストとして務める傍ら、小説の執筆に取り掛かります。

1982年、処女作「Preludio a la Noche(未邦訳)」でデビュー。

 

 

1997年に発表された「追放者(Outcast)」以降、第一言語であるスペイン語は用いず、英語で執筆をするようになります。

 

▼追放者(画像クリックで書籍詳細へ)

 

同作は優れたミステリ小説に贈られる、エドガー賞(MWA賞)とアンソニー賞をダブル受賞するという快挙を成し遂げています。

 

続く「ハバナ・ミッドナイト(The Fool)」でも高い評価を受け、キューバン・ノワールの存在を世界中に知らしめました。

 

▼ハバナ・ミッドナイト(画像クリックで書籍詳細へ)

 

南アフリカ共和国

ロジャー・スミス(Roger Smith)

 

ロジャー・スミス(Roger Smith)は、1960年、南アフリカ共和国に生まれました。

ヨハネスブルグで育った彼は、テレビ番組や映画のプロデューサー、監督、脚本家として活躍した後、2009年、処女作「血のケープタウン(Mixed Blood)」を上梓。

 

▼血のケープタウン(画像クリックで書籍詳細へ)

 

世界最悪の犯罪都市と呼ばれるケープタウンを舞台に繰り広げられる逃げ場のない暴力を描いた同作は、ドイツ犯罪小説賞を受賞しました。

 

ドイツ犯罪小説賞
1985年に設立されたミステリ愛好団体「ボーフム・ミステリ・アーカイブ」が主催するドイツ語圏のミステリ小説賞。ドイツ・ミステリ大賞やDKP賞とも呼ばれる。

 

続く二作目「はいつくばって慈悲を乞え(Wake Up Dead)」では、前作と同じケープタウンを舞台に、より容赦のない狂気じみた暴力を生々しく描いています。

 

▼はいつくばって慈悲を乞え(画像クリックで書籍詳細へ)

 

ドイツ

テア・ドルン(Thea Dorn)

▲テア・ドルン by Superbass  CC 表示-継承 3.0

 

テア・ドルン(Thea Dorn)は、1970年にドイツに生まれました。

ベルリンで哲学と声楽を学んだ後、彼女は大学で哲学科の教鞭を取ります。

1994年、同大学を舞台にしたミステリ小説「Berliner Aufklärung(未邦訳)」でデビューし、レイモンド・チャンドラー協会が創設したマーロウ賞を受賞。

※レイモンドチャンドラーはノワール文学の誕生に寄与した作家。詳しくは第1章で。(現在第2章)

 

 

1999年に発表された第三長編「殺戮の女神(Die Hirnkönigin)」ではドイツ・ミステリ大賞(先述)を受賞するなど、ドイツのミステリ界を代表する女流作家として高い評価を受けています。

 

▼殺戮の女神(画像クリックで書籍詳細へ)

 

2000年にはハノーファーの劇場の劇作家として契約を結び、また2003年にはテレビ番組のホストを務めるなど、小説家の枠に留まらない幅広い活躍をみせています。

 

次のページからは第3章。第3章では著者おすすめのノワール小説をご紹介。世界中のノワール作品から選んでいるのでノワール小説を読んでみたい方は必読です。次のページでは「警察」が主題のノワール小説をご紹介。

『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 



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目次著者

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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日本のノワール文学と代表的作家

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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日本のノワール文学

 

日本のノワールもまたフランス同様、アメリカのハードボイルド小説が邦訳されたことをきっかけに発展しました。

 

アメリカのハードボイルド小説が世界に広まっていった経緯は第1章で解説!(現在第2章)

 

日本ノワールに影響を与えた作家

結城昌治(ゆうき しょうじ)

 

日本ハードボイルドの第一人者ともいえる人物が、結城昌治(ゆうき しょうじ)です。

結城昌治(本名:田村幸雄)は、1927年生まれのミステリ作家です。

彼は早稲田大学法律科を卒業後、東京地方検察庁に就職。事務官を務めますが、就職後まもなく肺結核を患い、数年にわたって療養生活を余儀なくされます。

入院中に執筆した小説が「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の短編コンテストに入選。その後、東京地方検察庁を退職し、ミステリ小説家としての道を歩んでいきます。

 

エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン
1941年にアメリカで創刊したミステリ小説誌。フランス・オーストラリア・日本などでも各国版の「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」が発売された。

▼復刻 エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈No.1‐3〉

 

「ゴメスの名はゴメス」「夜の終わる時」「暗い落日」など傑作ハードボイルド小説を数多く執筆し、1970年に上梓した短編集「軍旗はためく下に」で直木賞を受賞しました。

同作は深作欣二監督によって映画化されており、戦争映画の名作として根強い人気を誇っています。

 

深作欣二
映画監督・脚本家。千葉真一の初主演作品となる『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』で監督デビューした。代表作に「仁義なき戦い」シリーズ・「バトルロワイアル」など。

▼深作欣二氏

▼ゴメスの名はゴメス(画像クリックで書籍詳細へ)

▼夜の終わる時(画像クリックで書籍詳細へ)

▼暗い落日(画像クリックで書籍詳細へ)

▼小説「軍旗はためく下に」(画像クリックで書籍詳細へ)

▼映画「軍旗はためく下に」(画像クリックで作品詳細へ)

 

梁石日(ヤン・ソギル 通名:梁川正雄)

 

梁石日(ヤン・ソギル 通名:梁川正雄)は、1936年生まれのノワール作家です。

在日朝鮮人二世として大阪に生まれた彼は、定時制高校在学中に挑戦文学者/詩人の金時鐘(キム・シジョン)に出会い、詩の世界に没頭します。

その後、事業の失敗を機に大阪を出奔(しゅっぽん)し、仙台へ移り住んだのち、上京してタクシードライバーとして勤務。

スナックで酒を飲みながら語っていたタクシー客とのやりとりが、偶然その場に居合わせた出版編集者の目に留まり、1981年に編集者の勧めで執筆した「タクシー狂躁曲」でデビュー。

 

 

その後も、「夜の河を渡れ」「夜を賭けて」「カオス」など上質なノワール作品を数多く執筆しています。

山本周五郎賞にも選ばれた彼の代表作「血と骨」は、ビートたけし主演で映画化し、大きな話題を呼びました。

 

山本周五郎賞
新潮社の開催する文学賞。2018年受賞作は「ゲームの王国」(著:小川哲)。2018年の選考委員に石田衣良など。

▼夜の河を渡れ(画像クリックで書籍詳細へ)

▼夜を賭けて(画像クリックで書籍詳細へ)

▼カオス(画像クリックで書籍詳細へ)

▼小説「血と骨」(画像クリックで書籍詳細へ)

▼映画「血と骨」(画像クリックでDVD詳細へ)

 

溝口敦(みぞぐち あつし)

 

溝口敦(みぞぐち あつし)は、1942年生まれのジャーナリスト/作家です。

早稲田大学経済学部を卒業後、雑誌編集者や広告代理店勤務を経て、フリーランスのジャーナリストとして活躍。

日本における組織犯罪問題の第一人者として、20代半ばからおよそ半世紀以上にわたって暴力団を取材し続けています。

 

 

ジャーナリストとして数多くのノンフィクション作品を上梓している他、「民暴の帝王」「武闘の帝王」「修羅の帝王」「錬金の帝王」など、長年の取材活動に裏打ちされた臨場感溢れるノワール小説の執筆を手掛けています。

 

▼民暴の帝王(画像クリックで書籍詳細へ)

▼武闘の帝王(画像クリックで書籍詳細へ)

▼修羅の帝王(画像クリックで書籍詳細へ)

▼錬金の帝王(画像クリックで書籍詳細へ)

 

小川勝己(おがわ かつみ)

 

小川勝己(おがわ かつみ)は、1965年生まれのミステリ作家です。2000年、「葬列」で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。

 

横溝正史ミステリ大賞
株式会社KADOKAWA主催・テレビ東京協賛により行われている新人文学賞。探偵小説作家の横溝正史にちなんでミステリ作家を発掘するために開催された。2017年大賞は受賞者該当なし。

 

▼葬列(画像クリックで書籍詳細へ)

 

3、4歳の頃には既に物語を書いていたと語っており、影響を受けた作家としてジム・トンプスンと横溝正史の名を挙げています。

 

ジム・トンプスン
1906-1977。暗黒小説の巨匠として高い評価を得る。スタンリー・キューブリック監督の『突撃』の脚本も手がけている。

ジム・トンプスンは第3章で紹介!(現在第2章) ジム・トンプスンは第3章で紹介!(現在第2章)
横溝正史
推理小説家。「金田一耕助」主役の探偵小説シリーズ(八つ墓村 (角川文庫)など)で有名。

▼横溝正史

 

また、へヴィメタルのファンであることを公言しており、二作目の長編小説「彼岸の奴隷」において日本のへヴィメタルバンド『DEAD END』のヴォーカリストMorrie氏のソロ作の楽曲からタイトルを引用しているだけでなく、作中の重要な場面でも歌詞を引用するなど、激しい傾倒ぶりを示しています。

 

▼彼岸の奴隷(画像クリックで書籍詳細へ)

▼バンド「DEAD END」のヴォーカリスト「Morrie」氏

 

ジム・トンプスンやジェイムズ・エルロイがみせた狂気の模倣ともいうべき「彼岸の奴隷」は、日本ノワール史に残る傑作のひとつといえます。

 

ジェイムズ・エルロイ
(1948-)アメリカの小説家。ロス市警強盗殺人課の部長刑事「ロイド・ホプキンズ」を主人公に据えたこのシリーズで有名。

▼ジェイムズ・エルロイ

by Amadalvarez CC 表示-継承 4.0

ジェイムズ・エルロイは第3章で紹介!(現在第2章) ジェイムズ・エルロイは第3章で紹介!(現在第2章)

 

 

中村文則(なかむら ふみのり)

by CurryTime7-24 CC 表示-継承 3.0

 

また芥川賞や大江健三郎賞を受賞し、誰もが認める実力派作家である中村文則(なかむら ふみのり)が、ノワール文学の分野に貢献した作家に贈られるデイヴィッド・グーディス賞を2014年に日本人として初めて受賞するという快挙を成し遂げています。

 

▼中村文則の代表作「教団X」(画像クリックで書籍詳細へ)

デイヴィッド・グーディス賞
アメリカの文学賞。優れた犯罪小説家に贈られる。中村文則はノワール小説に貢献したとして贈られた。

 

次のページでは各国のノワール文学の特徴と代表的作家を紹介。様々な国のノワール小説に触れればきっとノワール小説をより楽しむことができるはずです。

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目次著者

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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フランスのノワール文学と代表的作家

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

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北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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フランスのノワール文学

 

英米のハードボイルド文学が「セリ・ノワール」叢書(そうしょ・シリーズという意味)としてフランスのミステリファンに紹介されると、それらの作品に影響を受けた国内の作家たちの手によって、ロマン・ノワールは独自の文化へと昇華していきました。(この時代の詳細は第1章のこちらのページで解説しております。)

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