千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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「東映実録映画」とは「東映で製作された実話を元にしたヤクザ映画」です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた作品は、現在では再現不可能と言えるでしょう。

東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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『東映実録映画入門』目次へ  (全21ページ)
実録映画(東映実録映画)は東映によって実話をベースに製作されたヤクザ映画のことです。

本章では圧倒的な存在感で実録映画を彩る偉大で魅力的な俳優6人について解説していきます。

それぞれのページでは実録映画における出演作品リストを付記しておりますので、お気に入りの俳優を見つけたという方は、そこから新たな作品を発掘していくのも面白いかもしれません。

このページでは、名優・千葉真一氏の魅力についてご紹介していきます。

 

▼実録映画の魅力的な俳優6選!それぞれのページで詳しく紹介!

①【菅原文太
②【松方弘樹
③【渡瀬恒彦
④【成田三樹夫
⑤【千葉真一
⑥【安藤昇

 

千葉真一とは


photo by Christian Razukas,; cropped by JaqenImage:Sonny chiba.jpg; originally from Sonny Chiba at the Hawaii Int’l Film Festival CC 表示-継承 2.0

 

名前 千葉真一(ちば しんいち)
生年月日 1939年1月22日
出身地 福岡県福岡市博多区
日本のアクション俳優のパイオニア的存在。TBSのドラマ「キイハンター」(1986年)に出演し、走る車でセスナを追い、窓からセスナの翼に飛び移るシーンなどの危険なアクションシーンが話題となり、人気俳優となる。主演を務めた「激突!殺人剣」が全米で公開されヒットし、Sonny Chiba (サニーちば)として知られようになる。1991年には映画「エイセス」でハリウッドデビュー。2003年に出演した映画「キル・ビルvol.1」が世界的にヒットする。

 

千葉真一氏は1939年1月22日生まれのマルチタレントです。俳優の他に空手家、音楽家などさまざまな顔をもち、ハリウッドでもSonny Chibaという名で高い知名度を誇っています。

クエンティン・タランティーノ監督は千葉真一氏の熱心なファンとして知られております。

 

▼クエンティン・タランティーノ氏


photo by Gage Skidmore CC 表示-継承 3.0

 

タランティーノ氏が脚本を務めた映画「トゥルー・ロマンス」では主人公の部屋に千葉氏の主演作である「東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯」と「カミカゼ野郎 真昼の決斗」のポスターが貼られています。

▼映画「トゥルー・ロマンス」(画像クリックで商品詳細へ)

 

また、主人公が同じく千葉真一氏の主演映画「激突! 殺人拳」の三本立て上映会に足を運ぶシーンがあるなど、露骨なまでの千葉真一愛が画面に溢れています。

▼激突!殺人拳(画像クリックで商品詳細へ)

 

千葉真氏一はタランティーノ監督の代表作のひとつ「キル・ビル」で出演と剣術指導をおこなっており、長い歴史をもつ映画賞であるサターン賞の助演男優賞にノミネートされました。

▼キル・ビルvol.1(画像クリックで商品詳細へ)

サターン賞
1972年設立。映画・テレビドラマなどのサイエンスフィクション・ファンタジー・ホラーの優秀作品に送られる賞。過去に受賞した作品はディズニー映画「アラジン」、「ベイブ」「ロード・オブ・ザ・リング」など

 

また、千葉真一氏はアクション俳優・スタントマンの養成機関であるJAC=ジャパンアクションクラブ(現:ジャパンアクションエンタープライズ)の設立者としても知られており、同団体は真田広之氏をはじめ堤真一、伊原剛志、志穂美悦子、大葉健二など錚錚たるメンバーを輩出しています。

 

▼㈱ジャパンアクションエンタープライズ公式HP

(出典:http://www.japanactionenterprise.com/

▼真田広之氏


photo by Keith McDuffee from Northborough, MA, USAFlickr Uploaded by stemoc CC 表示 2.0

 

また、俳優・矢吹二朗氏は千葉真一氏の実弟であり「沖縄やくざ戦争」「やくざ戦争 日本の首領」「北陸代理戦争」「日本の仁義」などの作品で共演を果たしています。

 

アクションスターとしての千葉真一の魅力については別Webon「カンフー映画入門」で詳しく解説! アクションスターとしての千葉真一の魅力については別Webon「カンフー映画入門」で詳しく解説!

 

魅力

「仁義なき戦い 広島死闘篇」

 

「仁義なき戦い 広島死闘篇」の大友勝利に代表されるように、千葉真一氏は実録映画において一貫して型破りな武闘派ヤクザを演じています。

▼「仁義なき戦い 広島死闘篇」(画像クリックで商品詳細へ)

第3章「仁義なき戦い」の項でも触れていますが、大友勝利は「仁義なき戦い」五部作の中でも12を争う人気キャラクターのひとりであり、ここで千葉真一氏はこれまでのイメージを180度転換させる印象的な演技を披露しました。

 

 

ブロマイドの売上トップを誇るアイドルだった千葉真一が「せんずりかいて仁義で首くくっとれ言うんか」「言うなりゃ、あれらはおめこの汁で飯食うとるんで」という下品な台詞を吐き捨て、無造作に股間を掻き毟る姿が当時の観客に大きな衝撃を与えたことは想像に難くありません。

▼千葉真一のブロマイド

 

「仁義なき戦い」における千葉真一氏の魅力を一言で言うとすれば、やはりこれまでの千葉真一氏のイメージをぶち壊す型破りなキャラクターを演じ切った思い切りの良さだと思います。

 

大友勝利はその後「仁義なき戦い 完結篇」で再登場を果たし、主要キャラとして劇中で重要な役割を演じていますが、千葉真一氏が前出の主演映画「激突! 殺人拳」の撮影を予定していたことから、出演は叶わず、完結篇では宍戸錠氏が晩年の大友勝利を演じる運びとなりました。

▼宍戸錠氏

宍戸錠氏の狂気じみた演技も充分に魅力的でしたが、齢を重ねてさらに凶暴さを増した大友勝利を演じる千葉真一氏の姿を見られなかったことは未だに残念で仕方ありません。

 

「沖縄やくざ戦争」

 

そして「仁義なき戦い 広島死闘篇」の大友勝利以上にブッ飛んだ千葉真一氏の勇姿を目にすることのできる作品が「沖縄やくざ戦争」です。

▼「沖縄やくざ戦争」(画像クリックで商品詳細へ)

大友勝利が表面上で武闘派を装っていながらも根は小心者でしたが「沖縄やくざ戦争」で千葉真一氏が演じた国頭正剛は心の底から好戦的なイカレたヤクザです。

恐らくは「仁義の墓場」の石立力夫「実録 私設銀座警察」の渡会菊夫と並ぶ実録映画界屈指のサイコ野郎なのではないでしょうか。

 

▼「仁義の墓場」「実録 私設銀座警察」は前章で解説しています。

 

石立力夫と渡会菊夫が重度のポン中であるのに対し、国頭正剛が素面であることを考慮すると、やはり国頭正剛がナンバーワンかもしれません。

なお、千葉真一は「沖縄やくざ戦争」で京都市民映画祭の主演男優賞を受賞しています。

 

<編集部コラム>千葉真一を違う角度からも知る

このWebonというメディアは「好きなものを○○ファンが語る」というコンセプトで作られています。その為色々な人物や物を異なる視点から見る事ができる、という楽しみ方があります。

今回紹介されている千葉真一氏は当Webon「東映実録映画入門」だけでなく「カンフー映画入門」でもアクション俳優として紹介されています。

このページを読んだ後に他の著者が書く千葉真一を知ると、違う角度からの千葉真一氏を知る事ができて面白いでしょう。

 

千葉真一出演・実録映画一覧

 

▼作品タイトルクリックで視聴ページ(AmazonPrimeVideo、一部DVD)へ

公開年 作品タイトル 役名
1973年 東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯 和田達也(主演)
1973年 仁義なき戦い 広島死闘篇 大友勝利
1975年 新仁義なき戦い 組長の首 バーテンダー(カメオ出演)
1976年 沖縄やくざ戦争 国頭正剛(主演)
1977年 やくざ戦争 日本の首領 迫田常吉
1977年 北陸代理戦争 金井八郎
1977年 日本の仁義 小暮勝次
1978年 沖縄10年戦争 伊波朝勇

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次のページでは実録映画を彩る魅力的な俳優であり、元暴力団組長という異色の経歴を持つ安藤昇についてご紹介いたします。

 

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目次著者

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」などのコンテンツ作成も手掛ける。
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ノワール小説おすすめ傑作20選 【一般市民編】

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を

警察編】【裏社会編】【一般市民編】【探偵編

「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。

このページでは、法の番人でもアウトローでも探偵でもない、平凡に生きる一般市民を主人公に据えたノワール作品をご紹介しています。

 

11 転落の道標(ケント・ハリントン)

タイトル(原題) 転落の道標(Dark Ride)
著者 ケント・ハリントン(Kent Harrington)
発表年 2001年
著者出身国 アメリカ

※発表年は以下、基本日本語訳初版

 

アメリカの人気ミステリ作家マイクル・コナリー(Michael Connelly)が本作「転落の道標」を「ジム・トンプスンをクエンティン・タランティーノ的に解釈した作品」と評したことからもわかるように、本書はトンプスンの系譜に連なるきわめて優れたノワール作品です。

 

ジム・トンプスン

1906-1977。暗黒小説の巨匠として高い評価を得る。スタンリー・キューブリック監督の『突撃』の脚本も手がけている。

クエンティン・タランティーノ

監督二作目『パルプ・フィクション』でパルム・ドール(最優秀作品賞)米アカデミー賞脚本賞も受賞。「暴力シーンの多用」「意味のない会話が長々と続く」「自身の好きな作品へのオマージュ」などが作品・演出の特徴。

by Gage Skidmore CC 表示-継承 3.0

 

本作の翌年に発表された著者の第二長編「死者の日(Dia de los Muertos)」も併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 カリフォルニアの地方都市で、市長として長年権勢を誇った父親を持つジミーは、自らも大学時代はスポーツの花形選手であり、輝かしい将来を確実視されていた。

しかし父親亡きあと、今は保険代理店のしがない外交員として冴えない日々を過ごしている。

ジミーの鬱積のはけ口は、代理店経営者の妻イヴとの、覚醒剤を伴ったSMセックスだった。

やがてイヴに殺人をそそのかされたジミーは、後戻りできない暗黒の道を突き進んでいく。

人間の持つ悪の部分を容赦なく突き詰めて描いたノワール小説の傑作。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

12 キスしたいのはおまえだけ(マキシム・ジャクボヴスキー)

タイトル(原題) キスしたいのはおまえだけ(It’s You that I Want to Kiss)
著者 マキシム・ジャクボヴスキー(Maxim Jakubowski)
発表年 2002年
著者出身国 アメリカ

 

本作「キスしたいのはおまえだけ」は、ミステリ評論家・アンソロジスト(詩人)・映画評論家としても知られる著者の、邦訳されている唯一の長編小説です(2018年時点)。

仄暗い(ほろぐらい)エロティシズムが全編をとおして色濃く漂っており、「エロティック・ノワール」と呼ぶに相応しいただれた雰囲気を醸しています。

また、英国在住の作家13人がロンドンを舞台に書き下ろした犯罪小説を収めたアンソロジー(詩撰)「ロンドン・ノワール(London Noir)」に、著者の短編作品「チャリング・クロス街71-73(71-73 Charing Cross Road)」が収録されていますので、そちらも併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

▼ロンドン・ノワール

 

以下、「Book」データベースより引用。

 辛い過去を背負ったジェイク、売春婦に身をやつしたアン。二人が巡り会ったのは悪魔の所業なのか?

組織のブツを横領したアンのせいで、ジェイクは逃走劇の道連れに。

“組織”の執拗な追跡、不貞を繰り返すアンに対する嫉妬、そして絶望。苦しい現実から逃れるように互いを貪りあう二人は知っていた、破滅が彼らを待ち受けていることを…。

アメリカを全力疾走する恋人たちの姿をダイナミックに描いた愛と絶望の物語。

“エロティック・スリラーの帝王”による待望の長編、ついに刊行。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

13 上司と娼婦を殺したぼくの場合(ジェイソン・スター)

タイトル(原題) 上司と娼婦を殺したぼくの場合(Cold Caller)
著者 ジェイソン・スター(Jason Starr)
発表年 1999年
著者出身国 アメリカ

 

本作「上司と娼婦を殺したぼくの場合」は、ニューヨークで働くごく普通の会社員を主人公に据えたノワール作品です。

著者の実体験が少なからず反映されているようで、都会に生きる社会人の悲哀を自虐気味に描いています。

当Webon第2章の「アメリカのノワール文学と代表的作家」のページ(現在第3章)でもご紹介しましたアメリカの犯罪小説家エドワード・バンカー(Edward Bunker)も、本書を

「タフでクールでエレガント……会社社会を舞台にした必読の犯罪小説!」

と絶賛しています。

▼エドワード・バンカー

 

2002年の文庫化にあたり「あんな上司は死ねばいい」と改題されました。

 

以下、「Book」データベースより引用。

 ニューヨークの広告代理店の副部長職を追われ、アルバイトの電話営業をはじめて2年、ビル・モスの会社人生はすこしずつくるいはじめていた。

「ちょっと!すみませんけど」―たいていの日だったらなにも言わなかっただろうが、その朝の彼は違った。

出勤時の地下鉄で車両の奥に移動しようとした時にかけたちょっとした言葉と身振りを痴漢に間違われ、ついには同乗していた男に強烈な拳を見舞われることに。

そんな誰にでも起こりうる出来事が、彼の人生を破綻へと導いていく。

懲りないビジネスマンのリストラ・ミステリー。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

14 斧(ドナルド・E・ウェストレイク)

タイトル(原題) 斧(The Ax)
著者 ドナルド・E・ウェストレイク(Donald Edwin Westlake)
発表年 1997年
著者出身国 アメリカ

 

本作「斧」は、会社を解雇された男が再就職のために悪事に手を染めていく様を描いた犯罪小説で、ウェストレイクらしい一筋縄ではいかない筆致(ひっち:文章などの書きぶり)で読者に恐怖と黒い笑いを催させます。

 

ドナルド・E・ウェストレイク

ミステリ界の巨匠。生き生きとした文体とセリフが特徴。ペンネームはリチャード・スターク他、複数。

by I, Dinkley CC 表示-継承 3.0

 

パルプ・マガジン系のノワールが好きな方には手放しでおすすめできる傑作です。

 

パルプ・マガジン

1900~1950年頃にアメリカで広く流通していた大衆娯楽雑誌の総称。粗悪なパルプ紙を使用していたことからそう呼ばれた。
ハードボイルドだけでなくホラーやSFなど、さまざまなジャンル小説の発展を大きく促した。代表的なものに、ウィアード・テイルズ、アメイジング・ストーリーズ、ダイム・ディテクティヴなどがある

 

以下、「Book」データベースより引用。

 わたしは今、人を殺そうとしている。再就職のライバルとなる元同業者6人を皆殺しにする。

この苦境を脱する手は他にないのだ―

リストラで失職したビジネスマンが打った乾坤一擲の大博打は、やがて彼の中の“殺人者”を目覚めさせてゆく。ハイスミスやトンプスンに比肩する戦慄のノワール。

ミステリの名匠の新たなる代表作。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

15 殺人の代償(ハリイ・ホイッティントン)

タイトル(原題) 殺人の代償(Web of Murder)
著者 ハリイ・ホイッティントン(Harry Whittington)
発表年 2003年
著者出身国 アメリカ

 

ハリイ・ホイッティントンは猛烈な多作ぶりで知られ、12もの名義を使い分けながら200以上の作品を遺しました。

1958年に出版された本作「殺人の代償」は、当時の犯罪小説の魅力を凝縮したような優れたノワール作品です。

※2003年は日本語訳初版

ペーパーバック(ソフトカバー)の発展に大きく寄与したとして、アメリカのみならずフランスでも高い人気を誇っている著者ですが、日本語に翻訳されている作品は本書ただ一冊(2018年時点)であり、他作品の翻訳が待たれます。

 

以下、「Book」データベースより引用。

妻の資産のおかげで、弁護士として地位を築いたチャーリーだが、冷淡な妻が次第に重荷になっていた。

しかし、秘書ローラとはげしい恋に落ち、人生の軌道は狂いだす。

妻との別れ話はもつれ、ついにチャーリーは殺人を決意。緻密で巧妙な計画を進める彼を、驚くべき事態が襲う!

その瞬間、みずから作りあげた殺人計画が、自分を縛る罠と化した―

ひりひりするスリルと、予想外の結末へ一気に突き進むサスペンス。

「ペイパーバックの王者」と称される著者の傑作犯罪小説登場。

 

▼著者おすすめノワール小説を読む

 

次のページではおすすめノワール小説「探偵編」をご紹介。

『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 



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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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アメリカのノワール文学と代表的作家

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

 

アメリカのノワール文学

 

第1章では、ノワール文学がどのようにして生まれ、発展し、現在に至ったのかということを駆け足ながらみなさんにご紹介して参りました。

 

ノワール文学の発展
ノワール文学はハードボイルド小説を発端にしてアメリカからフランスへ文化が広まり、ベトナム戦争などの大きな出来事を通して現在の形になっていった。詳しくは当Webon「第1章 ノワール文学とは」を参照。

 

ジャンルを問わず「文学」とはその土地の文化的な背景を色濃く反映するものであるため、同じ題材をとって描かれたものであっても、その時代や地域によってまったく異なる味わいを醸(かも)します。

本章(第2章)では、各国のノワール作家の経歴と彼らの代表作を簡単にご紹介しながら、その国におけるノワール文学(ノワール小説)の特色を概観していきます。

 

第1章で述べたように、ノワール文学は1920年代にアメリカで発表されたアーネスト・ヘミングウェイ、ダシール・ハメットらの著作をその源流とします。

彼らの作品は数多くのフォロワーを生み、ハードボイルドというジャンルが開拓されました。

 

▼アーネスト・ヘミングウェイ

▼ダシール・ハメットの代表作「血の収穫」

 

ノワール文学(ノワール小説)の起源とも言えるアメリカの代表的作家を見ていきましょう。

 

アメリカノワールの代表的作家

ウィリアム・P・マッギヴァーン(Willian Peter McGivern)

 

ウィリアム・P・マッギヴァーン(Willian Peter McGivern)は、1918年生まれのハードボイルド作家です。

イギリスの大学に在学中、第二次世界大戦に参戦し、復員後は警察担当として新聞記者を務める傍ら小説の執筆を続けます。

 

 

1948年に長編小説「囁く死体(But Death Runs Faster)」でデビューした後、年に一作のペースで「最後の審判(Heaven Ran Fast)」「虚栄の女(Very Cold for May)」といったハードボイルド小説を発表。

 

▼虚栄の女(画像クリックで書籍詳細へ)

 

続く1951年に発表された「殺人のためのバッジ(Shield for Murder)」は、悪徳警官小説の先駆としてアメリカのミステリ界に大きな衝撃を与えました。

その後も、「ビッグ・ヒート(The Big Heat)」「悪徳警官(Rogue Cop)」といった悪徳警官小説を次々と発表し、戦後を代表するハードボイルド作家としての地位を固めます。

 

▼ビッグ・ヒート(画像クリックで書籍詳細へ)

▼悪徳警官(画像クリックで書籍詳細へ)

 

権力構造の腐敗を鋭く抉(えぐ)る彼の視点は、後のノワール文学に大きな影響を与えました。

 

 

チャールズ・ウィルフォード(Charles Ray Willeford)

 

チャールズ・ウィルフォード(Charles Ray Willeford)は、1919年生まれのノワール作家です。

幼くして孤児となった彼は、16歳から36歳までの20年間を軍人として過ごし、さまざまな軍功を立てます。

1953年に「High Priest of California(未邦訳)」でデビューした後、1955年、彼の代表作のひとつにも数えられるノワールの傑作「拾った女(Pick-Up)」を発表。

 

▼拾った女(画像クリックで書籍詳細へ)

 

その後も精力的に執筆を続けましたが、陽の目を浴びることはありませんでした。

しかし、1984年に発表された「マイアミ・ブルース(Miami Blues)」に始まる「ホウク・モウズリー」シリーズ(刑事であるホウク・モウズリーが活躍する小説シリーズ)が翻訳されると、ウィルフォードは本国のみならず日本でも高い支持を得ます。

 

▼マイアミ・ブルース(画像クリックで書籍詳細へ)

 

1993年に発表された「危険なやつら(The Shark-Infested Custard)」は、アメリカのノワール文学を代表する名作として、後進の作家に強い影響を与えています。

 

▼危険なやつら(画像クリックで書籍詳細へ)

 

また、ウィルフォードはアメリカを代表する犯罪作家であるエルモア・レナード(Elmore John Leonard Jr.)から「誰もウィルフォード以上の犯罪小説を書けない」と、最高の賛辞を送られています。

 

▼エルモア・レナード

by Peabody Awards – FlickrPeabodys_CM_0382 CC BY 2.0

 

 

エドワード・バンカー(Edward Bunker)

 

エドワード・バンカー(Edward Bunker)は、1933年生まれの犯罪小説家・俳優です。

彼が4歳のときに父親のアルコール中毒が原因で両親が離婚すると、経済的な理由から養護施設に預けられます。

その後、非行を繰り返しながら養護施設を転々とし、ついには少年院に送致(そうち:送り届けられること)。

16歳で少年院を出所した彼は、窃盗や麻薬の密売、銀行強盗などに手を染め、プロの犯罪者として生きるようになります。

 

 

人生の大半を刑務所の中で過ごしながらも、生来の読書家であったバンカーは、獄中で小説の執筆に着手します。

そして1973年、自伝的犯罪小説「ストレートタイム(No Beast So Fierce)」が刊行されます。

 

▼ストレートタイム(画像クリックで書籍詳細へ)

 

その後も、

 

「アニマル・ファクトリー(The Animal Factory)」

「リトル・ボーイ・ブルー(Little Boy Blue)」

「ドッグ・イート・ドッグ(Dog Eat Dog)」

 

など、自身の経験を活かしたリアリティ溢れる犯罪小説を次々と発表し、犯罪小説家としての地位を確立しました。

また、エディー・バンカー名義で俳優としてさまざまな作品に出演しており、バンカーの熱心な読者であったクエンティン・タランティーノのオファーによって、彼のデビュー作「レザボア・ドッグス」にMr.ブルー役で出演しています。

 

▼レザボア・ドッグス(画像クリックで作品詳細へ)

クエンティン・タランティーノ
アメリカの映画監督。代表作に「キル・ビル」など。

監督二作目『パルプ・フィクション』でパルム・ドール(最優秀作品賞)と米アカデミー賞脚本賞を受賞。「暴力シーンの多用」「意味のない会話が長々と続く」「自身の好きな作品へのオマージュ」などが作品・演出の特徴。

▼クエンティン・タランティーノ

by Gage Skidmore CC 表示-継承 3.0

 

 

アンドリュー・ヴァクス(Andrew Henry Vachss)

 

アンドリュー・ヴァクス(Andrew Henry Vachss)は、1942年生まれの弁護士・ノワール作家です。

青少年犯罪と幼児虐待専門の弁護士として活動する傍ら、数多くの著作を執筆しました。

彼は幼児虐待が人類・神・自然の規律を冒涜するばかりでなく、すべての悪の根源になりうる、全世界的に重大な疫病であると語っています。

また、自分のメッセージをできるかぎり広い範囲の人々に伝える手段としてミステリ作家になったとも語っており、その言葉のとおり、彼の小説には児童虐待というテーマが常に濃い影を落としています。

 

 

1985年に発表された「フラッド(Flood)」に始まる「アウトロー探偵バーク」シリーズでは、ニューヨークの裏社会の実態が生々しく描かれており、世界中のミステリファンに大きな衝撃を与えました。

 

▼フラッド(画像クリックで書籍詳細へ)

 

また、彼の数少ないノン・シリーズ作品(シリーズ化されていない作品)である「凶手(Shella)」も、ノワール文学の名作として高い支持を受けています。

 

凶手(画像クリックで書籍詳細へ)

 

以上、このページではアメリカのノワール文学と代表的なノワール小説作家をご紹介しました。次のページではフランスのノワール文学と代表的なノワール小説作家をご紹介していきます。

『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 



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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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