國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから
第1章 ノワール文学とは
第2章 各国のノワール文学
第3章 ノワール小説傑作選
第4章 ポップカルチャーに潜むノワール
『ノワール文学入門』目次へ (全16ページ)
第3章ではノワール文学(ノワール小説)に興味を持ったという方に向けて4ページに渡りおすすめ作品を
と「主人公の職業別」に分類してご紹介していきます。
このページでは、ギャングや殺人鬼、ギャンブラーや犯罪常習者といったアウトローを主人公に据えたノワール作品をご紹介しています。
目次
6 暗黒街のハリー(ジェイク・アーノット)
タイトル(原題) | 暗黒街のハリー (The Long Firm) |
著者 | ジェイク・アーノット(Jake Arnott) |
発表年 | 2001年 |
著者出身国 | イギリス |
本作「暗黒街のハリー」は、ゲイで拷問好きのギャング『ハリー・スタークス』の生きざまを、彼を取り巻く複数の人物の視点から描いた連作短編集ともいうべき一冊です。
主人公ハリーを含め、登場するキャラクターの多くが実在する人物をモデルにしているなど、ギャング好きには堪らない工夫が盛りこまれています。
また、「1960年代の裏社会」という使い古された題材を用いつつも、章ごとに文体をがらりと変える多重人格的な手法で目新しさを演出することにも成功しており、あらゆるノワールファンに強くアピールする魅力を備えています。
以下、「Book」データベースより引用。
英国がまだ戦争の痛手から立ち直れず、不景気と不安が社会を覆っていた1960年代。ロンドンの裏社会でのしあがった一人のギャングがいた。
「拷問好き」と綽名され、詐欺、麻薬密売、ポルノ販売、買収、脅迫、さらには殺人にいたるまで、悪いことならなんでもこなし、いまやかのクレイ兄弟と覇を競うまでになった男、ハリー・スタークス。
だが、手下たちにも見えにくい意外な顔を、ハリーはまた持ちあわせていた。オペラを聞き、チャーチルを尊敬し、有名人には弱く、愛した青年たちや母親には優しい。
その真の姿を知る者はどこにもいない。
度胸と奸知と暴力を武器に、次々と敵を消し、金を掻き集め、やがて時代が彼を必要としなくなるまで、ハリーは暗黒街を駆け抜けていく…
激動の時代を背景に、一人のギャングが、いままさに伝説となってゆく。
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7 男の争い(オーギュスト・ル・ブルトン)
タイトル(原題) | 男の争い (Du Rififi chez les Hommes) |
著者 | オーギュスト・ル・ブルトン(Auguste Le Breton) |
発表年 | 1955年 |
著者出身国 | フランス |
本作「男の争い」は、フランスの暗黒街に生きる男たちの血みどろの争いと仁義を描いたロマン・ノワールの古典的な名作で、著者のブルトン自身も暗黒街の一員であったことが知られています。
フランスを代表する犯罪小説家のひとりに数えられるブルトンですが、日本語に翻訳されている作品は本書に加え、
同名映画の原作でもある「シシリアン(Le Clan des Siciliens)」、
▼シシリアン(映画版)
フランスの暗黒街に君臨した或る男の生涯に迫るノンフィクション「無法の群れ フランス暗黒街の回想(Les Pégriots)」
▼無法の群れ フランス暗黒街の回想
のわずか三作(2018年時点)であり、他作品の翻訳が期待されます。
ロマン・ノワール1950年代に入ると、フランス国内からもハードボイルド小説に影響を受けた暴力的な犯罪小説を執筆する作家たちが現れるようになります。フランスの伝統的なミステリの系譜にありながら、英米のハードボイルド小説に強い影響を受けた一連の作品は、ロマン・ノワールと称されました。詳しくは第1章で!(現在第3章)
以下、「Book」データベースより引用。
強盗の罪で服役したトニーは、五年の刑を終え、病を得てパリの街へ舞い戻った。旧友のジョーとともに計画していた大規模な宝石店強盗のためだ。
思わしくない体調をごまかしつつ、深夜の店に押し入ったトニーたちは、首尾よく二億五千万フランもの宝石を手にした。
だが、ふとしたことから彼らの犯行だと嗅ぎつけた凶悪なギャングのソラ三兄弟が、猟犬のように獲物の横取りを狙う。
凄惨な拷問、容赦ない暴行、襲撃、そして反撃―争奪戦が最高潮に達したとき、ついに敵は卑劣な手を!
巨匠ジュールズ・ダッシン監督が映画化した名品、ついに登場。
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8 絢爛たる屍(ポピー・Z・ブライト)
タイトル(原題) | 絢爛たる屍 (Exquisite Corpse) |
著者 | ポピー・Z・ブライト(Poppy Z. Brite) |
発表年 | 2003年 |
著者出身国 | アメリカ |
文春文庫の「スプラッタパンク・ホラーシリーズ」にラインナップされていることからもわかるように、本作「絢爛たる屍 」は犯罪小説というよりも残虐なホラー小説に近い感触を纏っています。
スプラッタパンク・ホラー生生しい殺害シーンなどグロテスクな描写が多くあるホラー映画。
しかし、倒錯した愛欲と狂おしい暴力衝動を真正面から描ききった本書は、ノワール文学としての要素を多分に内包しています。
また、文庫の裏表紙において著者を女流作家として紹介していますが、ポピー・Z・ブライトという名義はビリー・マーティン(Billy Martin)という男性の筆名であることがわかっています。
以下、文庫裏表紙より引用。
脱獄した連続殺人鬼。ひそかに凄惨な殺人を繰り返す富豪の青年。
スポンサーリンク生きた者を愛せぬ二人の男が傷心の美青年と出会ったとき、爛れた地獄が口を開けた……。
倒錯性愛と頽廃の美を描く異能の女流作家ブライトの耽美的にして残虐な傑作。
エキゾティックな妖都ニューオーリンズの闇の底、狂気と背徳の愛が甘い腐臭を発して蠕動する。
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9 ドライブ(ジェイムズ・サリス)
タイトル(原題) | ドライブ (Drive) |
著者 | ジェイムズ・サリス(James Sallis) |
発表年 | 2005年 |
著者出身国 | アメリカ |
本作「ドライブ」は、スタント・ドライバーの傍ら、卓越した運転技術を買われて逃走車輌の運転稼業に手を染めた男の生きざまを描いた犯罪小説で、2012年の映画化にあたり「ドライヴ」と表記を改めました。
▼ドライヴ(映画版)
ミステリ界の巨匠ドナルド・E・ウェストレイク(Donald Edwin Westlake)の別名義のひとつであり「悪党パーカーシリーズ」で知られるリチャード・スターク(Richard Stark)を彷彿とさせる簡潔でスピーディーな文体が、本書の魅力の大きな要因となっています。
▼ドナルド・E・ウェストレイク
by I, Dinkley CC 表示-継承 3.0
以下、「Book」データベースより引用。
親、師、友、恋人、愛する者はみな死んだ―すべてを失った男、ドライバー。
映画のスタント・ドライバーだった彼は、やがて、強盗の逃走車輛の運転手という裏の仕事に手を染める。
罪を犯すことにも慣れてきた頃、突如、強盗グループ内で仲間割れが生じた。命からがら逃げだした彼は、この裏切りの黒幕を探るべく車を駆るが…。
車とともに死地へと赴く青年の波瀾万丈の生きざまを描き出した衝撃のクライム・ノヴェル。
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10 ネヴァダの犬たち(ジョン・リドリー)
タイトル(原題) | ネヴァダの犬たち(Stray Dogs) |
著者 | ジョン・リドリー(John Ridley) |
発表年 | 1997年 |
著者出身国 | アメリカ |
▼著者:ジョン・リドリー
by CC 表示-継承 3.0
本作「ネヴァダの犬たち」は、映画やテレビ番組の監督、脚本家としてハリウッドで活躍するジョン・リドリーの処女長編小説です。
1950年代のパルプ・マガジンの香り漂う古典的なノワール小説で、著者は本書の他にも
「愛はいかがわしく(Love is Racket)」
「地獄じゃどいつもタバコを喫う(Everybody Smokes in Hell)」
といった優れたノワール作品を執筆していますので、そちらも併せて読んでいただくことをおすすめします。
パルプ・マガジン1900~1950年頃にアメリカで広く流通していた大衆娯楽雑誌の総称。粗悪なパルプ紙を使用していたことからそう呼ばれた。ハードボイルドだけでなくホラーやSFなど、さまざまなジャンル小説の発展を大きく促した。代表的なものに、ウィアード・テイルズ、アメイジング・ストーリーズ、ダイム・ディテクティヴなどがある
以下、「Book」データベースより引用。
多額の借金をギャングに返すため、ギャンブラーのジョンは大金を抱え、愛車マスタングでネヴァダ砂漠を疾走していた。だが、突然車が故障した。
修理のため彼は、ちっぽけな町に立ち寄るが、強盗事件に巻き込まれて大事な金を失ってしまう。
金を返す時間が迫る中、彼は美貌の女とその夫の危険な関係の渦中に引きずりこまれていくが。
鮮烈なタッチで描くパルプ・ノワール。
オリヴァー・ストーン監督映画『Uターン』の原作。
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▼本作「ネヴァダの犬たち」の映画版
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