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著者:ミドケン
落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから
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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選をご紹介しております。
前ページでは「滑稽噺」をご紹介しましたが、落語はおもしろおかしい滑稽噺だけではありません。
夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」と呼ばれる演目が数多くあります。
そんな人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を3つご紹介します。
初心者におすすめ古典落語11選 【人情噺編】
9 芝浜(しばはま)
あらすじ
腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。
いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。
渋々出かける勝五郎。
しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。
時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。
家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。
翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。
探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。
自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。
もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。
そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。
「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」
「でも、あのときおめえは夢だと・・・」
女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。
–ネタバレ–
女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。
女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。
女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。
上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。
女房が「どうしたの?」と伺うと
「よそう、また夢になるといけねえ」と答える
–ネタバレ終わり–
みどころ
人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。
勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。
笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。
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10 子別れ
あらすじ
腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。
熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。
ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。
その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。
熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。
そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。
亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。
熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。
家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。
ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。
怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。
翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。
親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。
そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。
–ネタバレ–
ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。
「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。
「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」
すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」
–ネタバレ終わり–
みどころ
この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。
上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。
大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。
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11 藪入り(やぶいり)
あらすじ
奉公(=住み込みで主人に仕えること)に出た息子の亀吉が、しばらくぶりに藪入り(年に二度の休暇)で帰って来る。
その前夜、父親はそわそわして寝つけない。
「あれも食べさせたいこれも食べさせたい」とうるさいのなんの。
まだ夜が明けないうちから、今度は息子と一緒に出かけたい場所を次々と挙げていき「落ち着け」と女房にたしなめられる。
そうしているうちにやっと夜が明ける。
父親が待ちきれない様子で家の前の掃除をしているところへ亀吉が帰って来る。
立派な挨拶をする息子に両親は感動。
息子を湯屋(=銭湯)へ送り出したあと、母親が亀吉の財布に大金が入っていることに気づく。
「ひょっとしたら店の金に手をつけたんじゃないか」と疑い、帰って来た亀吉を問い詰める。
口論となって父親は亀吉に手をあげ、母親はそれを制止し泣きながら問いただすと
「このごろペストが流行っているので、ネズミを捕まえて警察に持っていったら一匹十五円の懸賞に当たった。このお金は今日まで主人に預かってもらっていたけど、今日は藪入りだから持って帰って両親を喜ばせてやれと、主人が持たせてくれた」
というようなことを答える。
–ネタバレ–
両親はそれを聞いて安心する。
亀吉に父親は「これからも主人を大切にしなよ」と教える。そして
「これもやっぱりチュウ(忠とネズミの鳴き声をかけている)のおかげだ」
と言う。
–ネタバレ終わり–
みどころ
息子が帰って来るのを心待ちにする両親の心情が伝わってくる、ほっこりした気持ちになる噺です。
うきうきが止まらず、とんちんかんな言動をする父親、それを温かく見守っている母親、立派に成長した息子、たがいに相手を思いやりながらも起こってしまう、気持ちのすれ違いが聞きどころです。
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この第2章ではおすすめ古典落語についてお伝えしました。
次の章(第3章)からは実際に落語を鑑賞する方法についてお伝えします。落語が行われている「寄席」は飲食もオーケーであり気軽に入れるところなので、ふらっと足を運んでいただければと思っております。
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