『とにかくわかりやすい!落語入門! 〜古典落語の楽しみ方〜』を出版しました!

株式会社NOTE-Xが運営するサイトWebonのコンテンツ『落語初心者入門(著:ミドケン)』がこの度、電子書籍になりました!

落語オタクのミドケン氏が解説する『とにかくわかりやすい!落語入門! 〜古典落語の楽しみ方〜』。

内容は落語初心者のために、落語の基礎知識・歴史・古典落語と新作落語の違い・上方落語と江戸落語の違い・おすすめの演目を解説!落語を聴くならまず読んでみてください!何倍も落語を楽しめるはずです!!

書籍概要

タイトル:とにかくわかりやすい!落語入門! 〜古典落語の楽しみ方〜

著:ミドケン

編集:Webon編集部

出版:株式会社NOTE-X

購入 or 読み放題はこちらから!(Amazonへ)

書籍紹介

落語を聴きたい!けど落語の楽しみ方がわからない…そんなあなたへ送る「落語入門」の決定版!

古典落語とは?噺家さんってどんな職業?おすすめの演目は?…などなど、初心者の方の知りたいに答えます!

誰でも理解できるよう丁寧な解説と、随所に挿入された図解で、読めばきっと落語を何倍も楽しめるようになるでしょう!

目次

はじめに

想像力で広がる物語

古典落語のすすめ

第1章 基礎知識

落語初心者のための基礎知識

落語の歴史

落語家の階級

古典落語と新作落語の違い

江戸落語と上方落語の違い

第2章 おすすめ古典落語

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【定番編】

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【滑稽噺編】

初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

おわりに(編集部後記)

記事作成、ライター紹介承ります

株式会社NOTE-X(ノーテックス)では、多くの大手出版社様やWebメディア様から記事作成、ライター紹介のご依頼をいただいております。良いライターを探している、編集リソースが足りない、SEO対策をしたい、などのご要望がございましたらぜひ編集プロダクションNOTE-X(ノーテックス)にご相談ください!

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【火焔太鼓】のあらすじは?おすすめ落語家をファン歴10年が紹介!

 

このページでは落語の演目である「火焔太鼓」について紹介します。

あらすじだけではなく「火焔太鼓」を十八番とする落語家や、火焔太鼓が演じられた映像作品まで紹介いたします。

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

火焔太鼓(かえんだいこ)とは

 

五代目 古今亭志ん生(ここんてい しんしょう)が膨らませて新たに作ったとも言われる古典落語の演目です。

 

あらすじ

 

商売下手の道具屋甚兵衛がある日古い太鼓を仕入れてくる。

しっかり者の妻から「どうせ売れない」と嫌味を言われるが、一人の侍が買いたいと申し出てくる。

侍は赤井御門守という大名に仕えており、赤井がその太鼓を気に入ったと言っていたから、その太鼓を屋敷に持って来いと伝える。

 

喜ぶ甚兵衛に対して妻は、こんな汚い太鼓持っていった松の木に縛られてしまうのではないかと言う。

妻の言葉に心配を募らせながらも、甚兵衛はお屋敷に太鼓を持参する。

結果的に殿様はその太鼓をえらく気に入る。

汚い太鼓は「火焔太鼓」といい国宝級の品であったらしく、300両の値がつく。

甚兵衛は興奮しながら家に帰り300両で売れたと女房に報告する。

最初は信じない妻だったが、彼女の前に小判を積み上げると、本当に300両で売れたと知り甚兵衛を褒める。

興奮した2人は次に仕入れるものを相談し、やはり音が出るものがいいとなる。

「半鐘を買ってくる」という甚兵衛に対して女房は言う。

「半鐘はいけないよ、おジャンになるから」

※おジャンは「フイにする」の意味。半鐘を鳴らした時の「ジャン」という音にかかっている。

(著:Webon編集部)

火焔太鼓を十八番とする落語家


▲古今亭志ん生さん

 

火焔太鼓を得意とする落語家は古今亭志ん生さんです。

戦後の東京落語界を代表する落語家の1人に数えられる。プロ野球選手の王貞治や長嶋茂雄と並ぶほどの人気があったと言われている。

芸風は「天衣無縫(てんいむほう:技巧のあとがなく自然で美しいこと。天真爛漫の意)」と称される。

 

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で詳しく紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で詳しく紹介!

 

戦後東京落語界の中では持ちネタの多さでも知られる志ん生さん。

「抜け雀」「二階ぞめき」「居残り佐平次」など十八番を挙げればキリがありませんが、中でも「火焔太鼓」は「志ん生の火焔太鼓か、火焔太鼓の志ん生か」といわれるほど、志ん生さんならではの絶品の一席です。

「火焔太鼓」では、女房に怒られたり呆れられたりする甚兵衛さんですが、女房に対するすっとぼけた返しが絶妙に面白いです。

打っても響かず、飄々としてつかみどころのない人物を演(や)らせたら志ん生さんの右に出るものはいません。その人物像を特に楽しめるのが「火焔太鼓」です。

▼筆者オススメ!『古今亭志ん生 名演大全集 1[CD]』

 

「火焔太鼓」が演じられる映像作品・映画

しゃべれどもしゃべれども

タイトル しゃべれども しゃべれども
公開年月 2007年5月26日
上映時間 109分
監督/脚本 平山秀幸/奥寺佐渡子
出演 国分太一/香里奈/松重豊/森永悠希/八千草薫/伊東四朗/など

「しゃべれどもしゃべれども」は佐藤多佳子さんの同名小説が原作。

▼小説「しゃべれどもしゃべれども」(画像クリックで商品詳細へ)

TOKIOの国分太一さん主演で映画化され、2007年に公開されて話題になりました。この作品では国分太一さんが「火焔太鼓」を演じています。

 

あらすじ

 

主人公は東京の下町に住み古典落語を愛する、二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。

落語家として伸び悩んでいた彼のもとに「落語を習いたい」「話し方を教えてもらいたい」という3人がやって来る。

口下手で無愛想な・十河五月(香里奈)、勝気ゆえにクラスになじめず大阪から引っ越してきた少年・村林優(森永悠希)、コワモテの元プロ野球選手・湯河原太一(松重豊)。

▼湯河原太一役の松重豊

クセのある生徒ばかりで顔を合わせると3人は言い争いが絶えず、肝心の落語も一向に覚えられない。

落語指南がうまくいかないうえに、片思いしていた女性が結婚することを知ってショックを受ける主人公三つ葉。

そこで「自分は落語が好きだ」と再認識した三つ葉は、師匠の十八番である古典落語の演目「火焔太鼓(かえんだいこ)」への挑戦を決意する。

徐々に落語を話せるようになっていく生徒たちと、「火焔太鼓」の成功(=上手く喋りきるのはもちろんですが、師匠の真似事ではなく、自分ならではの「火焔太鼓」を演じるということ)を目指す三つ葉。果たしてそれぞれの思いは伝わるのか・・・。

 

落語好きから見た国分太一さんの「火焔太鼓」はどうなのか?

 

国分さんの落語の上手さには正直驚きました。

笑わせてやろうという気負いがなく、その張りのある声と端正な語り口が光る「火焔太鼓」は思わず聴き入ってしまいます。

前半の下手に演じる落語と、クライマックスの「火焔太鼓」のレベルの落差に注目です。最後の「火焔太鼓」は圧巻の一言です。

 

 

「火焔太鼓」を聴く方法

 

「火焔太鼓」を聴くには、以下のおすすめCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「火焔太鼓」が聴けるサービスを紹介いたします。

▼筆者オススメ!『古今亭志ん生 名演大全集 1[CD]』

audible

 

audibleでは「火焔太鼓」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「火焔太鼓」を聴くことができます。

Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「火焔太鼓」の紹介でした。

他の演目にも興味がございましたら『読んで楽しい落語の演目と知識』がおすすめです。『読んで楽しい落語の演目と知識』ではあらゆる落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

【子別れ】あらすじや見所など落語ファン歴10年による解説!

 

落語は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」滑稽噺と「心温まるような人情を描いた落語」である人情噺というジャンルに分けることができます。

人情噺の中でおすすめなのが「子別れ」です。

このページでは「子別れ」のあらすじや、どの落語家の「子別れ」を聴くのがおすすめかなどを徹底解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。また、このページの情報の一部は落語作家なかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』を参考にしております。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

子別れとは

 

『子別れ』(別題『子は鎹』『強飯の女郎買い)は離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

(解説:なかむら治彦)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

「子別れ」を聴く方法

 

「子別れ」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「子別れ」が聴けるサービスを紹介いたします。

 

audible

 

audibleでは「子別れ」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「子別れ」を聴くことができます。

Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「子別れ」の紹介でした。その他落語の人情噺の演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

【まんじゅうこわい】あらすじや見所など落語ファン歴10年による解説!

 

落語の演目(お話)は上演回数の少ない珍しい古典落語を含めると、およそ500種類ほどと考えられています。

その中でも代表的な演目のひとつとして挙げられるのが「まんじゅうこわい」です。噺の中に出てくる「ここらで一杯お茶が怖い」は有名なフレーズです。

このページでは落語の「まんじゅうこわい」のあらすじやみどころ、どの落語家のまんじゅうこわいがおすすめかなどを解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。また、このページの情報の一部はなかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』を参考にしております。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

 

まんじゅうこわいとは

 

「まんじゅうこわい」は落語の演目の1つ。

広く世間に知られる人気の演目です。若手の練習噺としても用いられるますが、持ちネタにする名人落語家も多いです。「饅頭こわい」「饅頭怖い」と表記されることもあります。

 

あらすじ

 

町内の若い男たちが集まって嫌いなものや怖いものについて話をしている。

ずっと黙っている辰さんに、どんなものが怖いかと聞いたら

「こわいものなんかない」

と答える。

 

腹が立った男たちが本当にないのかとしつこく聞くと、辰さんは「まんじゅうが怖い」と打ち明ける。

それを聞いた男たちは「ちょいといたずらをしてやろう」と計略を練る。

辰さんを脅かしてやろうと菓子屋から大量に饅頭(まんじゅう)を買ってきて、まんじゅう攻めにするが・・・。

 

 

–ネタバレ–

 

饅頭と聞いただけで震えだす辰さんは、布団をかぶって寝てしまう。

男たちは辰さんを怖がらせようと「気付け薬だよ」と言って枕もとに大量の饅頭を置く。

男たちが辰さんを見てみると「まんじゅうが怖い」と言いながら辰さんは饅頭を食べている。

してやられた男たちは辰さんに問う「オイ!食うのをやめろ!本当は何が怖いんだ!?」

「ここらで渋いお茶が一番怖い」と辰さんは答える。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

自分を酷い目に遭わそうとしていることを知ってか知らずかわかりませんが、まんまと連中を騙してしまう辰さんの頭の良さに思わず感心してしまいます。

小学校に呼ばれた落語家さんが子供たちの前で演じることも多い、万人を楽しませる秀逸な落語です。

 

「タイガー&ドラゴン」でTOKIO長瀬が演じている

 

「タイガー&ドラゴン」は宮藤官九郎さんが脚本を手掛け、2005年にTBSで放送されて、それまで落語と縁のなかった視聴者と従来の落語ファンの両方で話題になった作品です。

「タイガー&ドラゴン」の主人公のTOKIO長瀬智也さんはヤクザ兼落語家という役。長瀬さんはドラマの中で「まんじゅうこわい」を演じています。

長瀬さんはヤクザという役柄もありますが、落語の迫力が圧倒的です。長瀬さんならではの「眼ヂカラ」で、登場人物それぞれにパワーが宿り、長瀬さんの独特の男らしさが反映されているところが非常に興味深くて面白いポイントです。

 

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▼落語が題材の作品については以下のページで解説!

 

おすすめ落語家

 

「まんじゅうこわい」を聴くなら桂文珍さんがおすすめです。

桂文珍さんは、1980年代以降「ニューウェーブ落語」と称したパフォーマンスがヒットしテレビ17本のレギュラーを持つようになりました。

独演会のチケットは入手困難と言われています。そんな文珍さんの「まんじゅうこわい」を是非お聴きくださいませ。

 

▼桂文珍(15)「宿替え」/「饅頭こわい」-「朝日名人会」ライヴシリーズ28 Live

 

「まんじゅうこわい」を聴く方法

 

「まんじゅうこわい」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

audibleという朗読配信サービスで「まんじゅうこわい」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

以上「まんじゅうこわい」の紹介でした。その他落語の定番演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

 

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

 

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

ドラマチックな落語!おすすめ演目14選

Webon紹介目次著者
落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

何かの折にたまたま聴いた落語にものすごく感銘を受けて、友達に「あの落語よかったー、感動したー」と吹聴したり、SNSやブログで感想を書いたりする人は結構います。

その際、笑いの多い落語はあまりその対象になりません。爆笑した落語を「よかったー」と絶賛する人より、感動的な落語の方がストレートに「よかったー」と絶賛できるようです。

どういうことかと言いますと、笑いは人それぞれ好みが違うため、可笑しさの感情を共有しづらい面があるのです。その点、感動の要素はほとんど個人差がありませんから、人と気持ちを共有しやすいわけです。

このページでは、心の機微や心理面が絡むいさかいなど、登場人物の内面描写に優れたドラマチックな落語の数々を項目別に紹介していきましょう。

 

親子・肉親の感動ドラマ演目

 

落語における感動のシチュエーションとしてまず筆頭に挙げたいのが、親子、兄弟姉妹、祖父祖母など、肉親同士の家族愛が描かれた作品です。

 

親子愛がテーマの落語で代表的なのが『子別れ』(別題『子は鎹』)でしょう。

離縁して父母が離れ離れになった子供とその父親が偶然再会し、その子供の橋渡しによって夫婦が再会し、よりを戻すというストーリーです。

父と子、母と子、それぞれの間に互いを思う心が別れた後も強く残っている描写が劇的です。

このストーリーの前段として、父親が葬式の帰りに吉原へ出かけるくだりと、それが原因で夫婦喧嘩になり母親が子供を連れて家を出るくだりの落語があります。前者は『子別れ・上』(別題『強飯=こわめしの女郎買い』)、後者は『子別れ・中』、さらに前述した部分は『子別れ・下』と通常は呼ばれています。

 

1.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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こうしたストレートなまでの親子愛を描いた落語は、古典・新作を問わずあります。

火事が好きで自ら町火消しの人足になった後継ぎ息子を勘当した父親が、近所で起きた火事をキッカケに、全身刺青だらけになった息子と再会する『火事息子』。

 

2.火事息子

~あらすじ~

とあるお店の若旦那は子供の頃から「火事」が好きだった。しかしそれのせいで父親から勘当されてしまう。そんな若旦那が大人になり消防の仕事に就いていたある日父親の店の近所で火事が起きる・・・

~概要~

江戸(東京)の落語演目。

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昔は年に二日しか無かった商家の奉公人の休日、しっかり成長して帰ってきた息子の姿に父親が涙する『藪入り』。

 

3.藪入り

~あらすじ~

とある店に奉公しに行っていた(働きに行っていた)息子の帰りを両親が待っている。父親は息子にご馳走を振舞ってやりたい。そこへ息子が帰ってくる。身長が伸びて立派に育った息子を見て両親は感激する・・・

~概要~

元々滑稽噺だった『お釜さま』という噺が改作された『鼠の懸賞』を変えて作られた噺。

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留置所に入るつもりで無銭飲食をした男が、優しい屋台のラーメン屋夫婦に気に入られ、次第にお互い親子同様の感情を抱く仲になるという『ラーメン屋』。

 

4.ラーメン屋

~あらすじ~

とある老夫婦がやるラーメン屋。そこへ男が入ってきてラーメンを食べる。食べ終えるころに男は「もう金がない。だから俺を無銭飲食で警察に連れて行ってくれ。牢屋の中は食べるものも寝る場所もある」と言う・・・

~概要~

「昭和の爆笑王」と呼ばれた柳家金語楼が、有崎勉のペンネームで書いた新作落語。

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両親が自殺して身寄りを無くした幼い姉弟を引き取る貧しい八百屋が登場する『人情八百屋』など、泣きの要素が強い演目が多めです。

 

5.人情八百屋

~あらすじ~

とある商人が商いをしていると母子がナスを買いに来る。聞けば夫が寝込んでいて生活が苦しいと。商人はその日の売上と弁当を渡す。その後もその母子を機にかけていた商人。ある日その母子が自殺したと耳にする・・・

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次に、兄弟を扱った落語として、『妾馬(めかうま)』と『鼠穴(ねずみあな)』を紹介しましょう。

『妾馬』は、妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向き、殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられるというストーリーで、『八五郎出世』という別題もあります。

八五郎が慣れない屋敷でオロオロする前半部分は笑いもたっぷりありますが、後半になると、荒っぽい八五郎が酔うにつれて母親の嘆きを吐露するなど、ホロリとさせられるような人情味のある展開が続きます。

 

6.妾馬

~あらすじ~

妹のお鶴が大名の側室になった長屋の八五郎が、妹の男子出生を祝いに屋敷へ挨拶に出向く。殿様と酒を酌み交わすうちに気に入られて家来に取り立てられる・・・

~概要~

別題『八五郎出世』

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一方の『鼠穴』は『妾馬』とはまったく逆で、仲が悪い男兄弟の話。

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功したことで仲直りしたかに見えたものの、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走って…という、山あり谷ありの人生を描いた激しいストーリー。

中盤以降はさらにハラハラドキドキの要素が増して、一層引き込まれます。

 

7.鼠穴

~あらすじ~

江戸で成功した兄を追って弟が金を借りに来たが突き放され、意地を見せて成功した。仲直りをしかけたが、弟の店が火事で焼けてしまったことで再び兄弟仲に亀裂が走ってしまう・・・

~概要~

七代目 立川談志氏が得意とした演目。

▼七代目 立川談志

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そしてもう一作、肉親もので紹介したいのが、祖父と孫のとある夏の情景を描いた新作落語『孫、帰る』です。

演じているのは数々の話題の新作落語を世に出した柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)師匠ですが、この作品は喬太郎師匠ではなく落語作家・山崎雛子さんによる作品です。

喬太郎師匠の持ちネタの中でも特に泣きの要素が強い人間ドラマで、ライブで演じると客席からすすり泣く声があちこちから聞こえてくるほどです。

内容はここではこれ以上書けませんが、CDやDVDにも収録されていますので、是非一度聴いてみてください。

 

8.孫、帰る

~あらすじ~

とある男の子が夏休みに祖父の家に遊びに行く。祖父を探してみるとタンスの上で寝ている。猫がタンスの上で寝ていたので涼しいのかと思い、そこで寝ていたという・・・

~概要~

落語作家・山崎雛子が作った新作落語。

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夫婦の感動ドラマ演目

 

夫婦愛がテーマの落語として最も有名なのが、暮れによく高座にかかる『芝浜』でしょう。

酒好きで仕事をしない魚屋の亭主を女房がなだめすかして市場に行かせると、亭主が大金の入った財布を拾って帰宅。

こんな大金があると仕事をしないから…と、女房は「財布は夢だった」と亭主に思い込ませて働かせ、三年後の大晦日に一部始終を告白するという話。

登場人物は亭主と女房の二人だけですが、演者によってはディテールをみっちり描写して40分以上かけた迫真の高座を繰り広げます。

 

9.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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『芝浜』以外では、7歳年上の女房が働かない亭主に腹を立てつつ内心は愛しているという『厩火事(うまやかじ)』

亭主が女房に「もしおまえが死んだ後、私が再婚したら化けて出てこい」と告げる『三年目』などが有名です。

先に紹介した『子別れ』も、夫婦が題材の落語の一つです。

 

10.厩火事

~あらすじ~

理容師の亭主を持つ妻。亭主は遊んでばかりいるので口喧嘩が絶えない。妻はそんな亭主のことを仲人に相談しに行った。すると仲人は孔子の話をして亭主を試してみてはどうかと言う・・・

~概要~

別題『厩焼けたり』。「厩火事」は孔子の故事からついた演目名。

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11.三年目

~あらすじ~

とても仲のいい夫婦がいた。しかし妻が病弱で床に伏せってしまう。そこで妻は「私が死んだらあなたは再婚するのでしょうね」と言う。夫はそんなことはあり得ないとしながらも「もし再婚しそうになったら幽霊として出ておいで」と言う・・・

~概要~

上方(関西)では『茶漬幽霊(ちゃづけゆうれい)』と呼ばれる演目。

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さらにもう一作、寄席でよく演じられる夫婦ネタの短い落語『代り目』を加えましょう。

亭主が酔っ払って帰宅して女房をいろいろと困らせる、全編コメディタッチの演目なのですが、ラストで亭主が「こうして偉そうに言ってはいるけど、陰では『すまねえ』と手を合わせてるんだよ…」と涙ぐむ懺悔のシーンが感動的で、聴く人の心を鷲づかみにします。

寄席ではかなり頻繁にかかるネタですので、寄席で聴ける確率は高いでしょう。

 

12.代り目

~あらすじ~

とある亭主が酔っ払って帰ってくる。酔った亭主に困る妻。しかし亭主は「寝酒を出せ」とわがままな事を言う。妻が仕方なく酒の肴を買いに出ているうちに家の前を通りかかったうどん屋が酔った亭主につかまってしまう・・・

~概要~

『替り目』とも書かれる。五代目古今亭志ん生が人情味のある展開に改めたという。

五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介! 五代目 古今亭志ん生は「落語初心者入門」で紹介!

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主従や師弟の感動ドラマ演目

 

今と昔を比べますと、上司と部下(主従)のあり方はかなり変わりました。現代は部下が上司に直接パワハラを宣告するケースもあり、立場がだいぶ対等に近づきつつあるようです。

しかし古典落語の舞台となる時代は、雇い主の使用人への命令は絶対でした。その分「よそからお預かりしている子だから」と親身になって一切合切の面倒を見る一面もありました。

血のつながっていない他人同士でありながら、総合的には今と比較にならないほど関係が密接なのでした。

 

 

そうした雇い主と使用人の関係を如実に表している落語が『百年目』です。

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていました。

しかしこれが店の主人にばれてしまい、眠れない夜を過ごしていた所へ、主人から呼び出されます。この時、主人が番頭を諭す説教の言葉が『百年目』の聴き所。

例え話あり、皮肉あり、しかし最終的には番頭を思う心が滲み出ていて、心が動かされる内容です。

 

13.百年目

~あらすじ~

主人公である大店の番頭は、今で言う中間管理職。仕事に対して厳しく、目下の使用人に嫌われていますが、実は内緒で売り上げをごまかして芸者遊びをしていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の演目と言われる。

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続いてもう一作、師弟の落語『浜野矩随(はまののりゆき)』を紹介しましょう。江戸中期に活躍した実在の職人・浜野矩随がモデルであり主役の落語です。

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)でしたが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまいます。

ある日、そんな矩随が一念発起する衝撃的な出来事があり、それを契機に矩随も名工と呼ばれるようになるという話です。

この噺は、ただの師弟ではなく親子の職人なのですね。近年テレビで二世タレントが苦労話をしているシーンをたまに見かけますが、いつの時代も二世は私たち一般人からは想像もつかない苦労を背負わされるようです。

 

14.浜野矩随

~あらすじ~

名人と呼ばれた父の跡を継いで腰元彫り(刀に付ける装飾品)の二代目職人になった矩随(のりゆき)だったが、腕前がまるで上達せず、父の代からの常連にも見限られてしまう・・・

~概要~

この落語のモデル浜野矩随は実在した職人。

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肉親・夫婦・主従・師弟以外にも、様々な立場や職業の中の人間関係が落語になっていて、それぞれのジャンルに名作落語は存在します。

しかし残念ながら、とても全部は書き切れません。まずはここに挙げた落語を何本か聴いてみていただければと思います。

 

ベストシチュエーション

 

では最後に、これら感動系の落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

ここで取り上げた落語の多くは、「人情噺(にんじょうばなし)」に類型されます。寄席や落語会では、おもにトリ(一番最後の出番)に登場する、その興行の主役の落語家さんが演じるものばかりです。

ここでは落語家の誰々さんという個人のおすすめはありません。

トリの落語家さんが演じる、キャリアと技術を備えた一流の話芸を、寄席や落語会でじかに味わってみてください。

 

東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介! 東京で寄席が鑑賞できるスポットは「落語初心者入門」で紹介!

 

以上、泣けるドラマチック落語演目を紹介しました。

次のページでは落語が題材となったドラマ・映画・舞台を紹介します。観ればもっと落語を深く知る事ができるでしょう。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語が題材になったドラマ・映画・舞台

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

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本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語が題材になった作品

 

2005年にTBSで放送されたドラマ『タイガー&ドラゴン』は、新しい時代の落語ファン層を開拓したと言っても過言ではありません。

宮藤官九郎さんの脚本、長瀬智也さんと岡田准一さんのW主演など、若年層にアピールする顔触れを揃えた上、落語界のイメージを塗り替えるような奇抜なストーリーが、それまで落語と縁の無かった視聴者と従来の落語ファンの両方で話題になったのでした。

 

タイガー&ドラゴン

笑いを忘れてしまったヤクザ(長瀬智也)がある日、落語家(西田敏行)の高座に感動し落語を習う、というストーリー。そんな中、かつて天才と言われ現在廃業してしまっている落語家(岡田准一)と出会う。

 

振り返れば、21世紀に入った当初の落語界は、新世代の若手(春風亭昇太師匠・柳家喬太郎師匠・林家たい平師匠・立川談春師匠 など)がライブシーンで人気を集め始めた一方で、看板クラスの大御所(古今亭志ん朝師匠(2001年没)・五代目 柳家小さん師匠(2002年没)など)が次々と他界し、残った人たちが変革の岐路に立たされていた時期でした。

 

そのタイミングに合わせたように放送開始した『タイガー&ドラゴン』が呼び水となって、ちょっと前までマニアの領域と捉えられていた落語がマスコミで急速に脚光を浴びだしたのです。

そして2005年以降、映画・ドラマ・演劇・テレビ番組企画・漫画などでの落語関連作品数は急増。

それに伴う落語ファン層の拡大は、寄席・落語会への動員増加やCD・DVD・関連出版物の売り上げ増など、落語界に好影響を及ぼす現象へとつながったのでした。

こうして増えた新規の落語ファンは、きっと寄席で落語を聴いて、「あっ、この落語、あのドラマで見たことがある!」と思ったでしょう。

つまり新しいファンの中では、落語でなくドラマの方が「定番」なわけです。そんな人には「是非本当の落語の方も好きになってね!」と願いたい所です。

前置きが長くなりましたが、ここでは過去に映画やドラマなどになった落語の数々をまとめておさらいしてゆきます。

 

落語が題材になった映画4選

 

始めに、ストーリーやモチーフに落語が使われた主な映画を紹介しましょう。

 

1 幕末太陽傳

発表年 1957年
主演 フランキー堺
描かれる落語 『居残り佐平次』『品川心中』など
あらすじ とある遊廓で豪遊した佐平次。しかしお金が無いと若い衆に打ち明ける。そこで佐平次は「居残り」と称して長居する事にする・・・
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最初は川島雄三監督の『幕末太陽傳』(1957年)。

日本映画史上でも名作の一つに数えられるこの作品で描かれるのは、名作落語『居残り佐平次』にも登場する、病を抱えながらも品川遊廓の中で自由に生きる男・佐平次です。

本作ではそれ以外にも『品川心中』や『お見立て』など数々の落語の名シーンが織り込まれており、落語ファンにとってはたまらない作品です。

 

2 の・ようなもの

発表年 1981年
主演 伊藤克信
描かれる落語 『黄金餅』『居酒屋』など
あらすじ とある東京下町に住む落語家が23歳の誕生日にソープランドへ行く。そこで出会った相手の女性と独特な関係になる・・・
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その24年後の1981年には、森田芳光監督がデビュー作『の・ようなもの』を発表しました。

落語界で生活する若手落語家の青春群像劇で、当時の若い落語ファン層に大きな影響を与えました。

劇中では『黄金餅』の道中付け(長い道のりを歩く行程をテンポよく語るくだり)を元にした、足立区堀切~浅草を歩く名場面があります。ちなみに『の・ようなもの』というタイトルは、『居酒屋』で小僧がお品書きを説明する口上「つゆ・はしら・たら・こぶ・あんこうのようなもの…」から取ったものです。

 

3 の・ようなもの のようなもの

発表年 2015年
主演 松山ケンイチ
描かれる落語 『二十四孝』『出目金』
あらすじ 舞台は東京。30歳でサラリーマンを辞めて落語家になった主人公。しかし落語の腕前はさっぱりで、師匠にもダメ出しされてばかり。そんな日々を過ごしているある時、師匠にどこかへ行ってしまった兄弟子を探してこいと言われる・・・
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『の・ようなもの』で助監督を務めた杉山泰一監督が、2011年に他界した森田監督の跡を受けて製作したのが、続編『の・ようなもの のようなもの』(2015年)です。

本作の劇中では、前作にも登場した『二十四孝』や新作『出目金』などが効果的に使用されます。

 

4 しゃべれども しゃべれども

発表年 2007年
主演 国分太一
描かれる落語 『茶の湯』『火焔太鼓』など
あらすじ 主人公は東京の下町に住み古典落語を愛する、二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)。落語家として伸び悩んでいた彼のもとに「落語を習いたい」「話し方を教えてもらいたい」という3人がやって来る・・・
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そして2007年には、佐藤多佳子さんの原作小説もヒットした『しゃべれども しゃべれども』が平山秀幸監督によって映画化され、多くの映画賞を受賞する好評を得ました。

若手落語家の等身大の生活ぶりが清々しく描かれた本作の中では『茶の湯』『火焔太鼓』などを演じるシーンが登場します。

また『タイガー&ドラゴン』の長瀬さんと同じTOKIOの国分太一さんが主演したことでも話題になりました。

 

 

以上の4作品は落語映画としていずれも評価が高く、未見の人にはおすすめの作品ばかりです。

紹介した落語がどのように演じられるかにも注目しつつ、是非ご覧ください。

その他にも、桂文枝(かつら ぶんし)師匠の『ゴルフ夜明け前』(松林宗恵監督・1987年)や立川志の輔(たてかわ しのすけ)師匠の『歓喜の歌』(松岡錠司監督・2008年)などのように、新作落語をそのまま原作として映画化した作品もあります。

 

▼ゴルフ夜明け前

▼歓喜の歌

 

また、2002年に製作され、世界の数々の短編アニメ映画賞を獲得した山村浩二監督の『頭山』も、同題の落語が原作の隠れた名作です。

 

▼頭山

 

落語が題材のドラマ4選

 

次に、落語が題材として使われたドラマです。

連続物のドラマは1シリーズ内に登場する落語の数も多いので、ここでは特にフィーチャーされた演目に重点を置いて紹介します。

 

1 昭和元禄落語心中

発表年 2018年
主演 岡田将生
描かれる落語 『野ざらし』『死神』など
あらすじ 弟子を取らない事で有名な落語の名人とその周りの人物の人間模様が描かれた物語
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まずは、近年最も幅広い支持を得た落語ドラマ『昭和元禄落語心中』から。

原作の雲田はるこさんの漫画も、2010年雑誌連載開始の時点で既に注目されていましたが、2016年および2017年のアニメ放映、さらに2018年NHK総合でのドラマ放送が開始して、評価が頂点に達しました。

漫画は連載中からいくつもの漫画賞を受賞、2019年の「第14回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では、有楽亭八雲役の岡田将生さんが主演男優賞、有楽亭助六役の山崎育三郎さんが助演男優賞をそれぞれ受賞と、ストーリーも演技も優れた作品であったことを立証しました。

ドラマ版『昭和元禄落語心中』でとりわけ印象的に描かれた落語は、助六から娘の小夏に伝承された『野ざらし』と、八雲が燃える寄席の中で鬼気迫る形相で演じた『死神』でした。

劇中では他にも『寿限無』『たちきり』『品川心中』『錦の袈裟』などいろいろ落語のシーンがありましたが、『野ざらし』と『死神』が演じられる2つのシーンは、ハイクオリティなドラマに相応しい好演でした。

 

『昭和元禄落語心中』に限らず、NHK総合は近年、落語と関わりの深いドラマをたびたび放映しています。

朝の連続テレビ小説では2017年の『わろてんか』と2007年の『ちりとてちん』、そして2019年の大河ドラマ『いだてん』ではビートたけしさん扮する古今亭志ん生が毎回登場してドラマの案内役を担当しています。

 

2 わろてんか

発表年 2017年
主演 葵わかな
描かれる落語 『時うどん』『崇徳院』など
あらすじ 芸能事務所・吉本興業がモデルとなった物語。多くの漫才師や落語家が登場する。
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『わろてんか』の劇中では『時うどん』『崇徳院』『死神』の3席が、出演俳優の本職さながらの演技でたっぷり演じられました。

 

3 ちりとてちん

発表年 2007年
主演 貫地谷しほり
描かれる落語 『愛宕山』など
あらすじ 無口で地味な主人公が大阪へ行き、落語家と出会う。そこから落語の道を進んでいく物語。
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一方『ちりとてちん』では、毎週1本ペースでいろいろな落語が寸劇調で紹介された他、大看板・徒然亭草若の『愛宕山』がドラマのキーワードとしてたびたび登場。

そして弟子の女流落語家・徒然亭若狭が『愛宕山』を演じて高座を引退するというラストでした。

 

4 いだてん

発表年 2019年
主演 中村勘九郎 他
描かれる落語 『富久』『付き馬』など
あらすじ 1959年の東京。東京オリンピックの前年の日本が描かれ、古今亭志ん生の若い頃も描かれる。
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『いだてん』は『タイガー&ドラゴン』と同じ宮藤官九郎さんの脚本で、開始3ヵ月の間に『富久』『付き馬』『鰍沢』『芝浜』『たらちね』などの落語が演じられました。

もっともドラマの主人公はあくまでオリンピック関係者の金栗四三と田畑政治ですから、今後果たして落語はどれくらい脚光を浴びるのでしょう?

※「いだてん」は2019年4月現在、NHKにて放映中

 

落語が題材の舞台

 

続いて、落語が題材になっている舞台の紹介です。

実は落語がお芝居になることはずっと昔からあって、歌舞伎では『芝浜革財布(芝浜)』や『文七元結』など人気演目もあります。

また相撲を扱った落語『幸助餅』は、大阪の松竹新喜劇で古くから上演されています。

 

1 宝塚歌劇団「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」

発表年 2018年
主演 宝塚歌劇団
描かれる落語 『地獄八景亡者戯』『朝友』『死ぬなら今』
あらすじ 大阪の若旦那がある日目覚めるとそこは「あの世」。「この世」「あの世」を行き来しながら描かれる物語。
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チケットぴあ

 

近年の落語ブームの影響か、2018年にはなんとあの宝塚歌劇団でも、落語がモチーフの舞台公演を行いました。タイトルは「RAKUGO MUSICAL ANOTHER WORLD」。

死後の世界を舞台にした落語『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』『朝友』『死ぬなら今』の3演目を元にした愛と冒険の物語という内容でした。

 

2 うわの空・藤志郎一座「TOKYOてやんでぃ」

発表年 2000年
主演 西村晋弥 他
描かれる落語 『悲しみにてやんでぃ』
あらすじ 落語家の「前座」の青年の物語。
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新作落語では、春風亭昇太師匠が若手時代に作った青春落語『悲しみにてやんでぃ』が「うわの空・藤志郎一座」によって2000年に舞台化、たびたび再演されました。

それだけではなく、2013年には神田裕司監督によって映画にもなっています(映画化に際しタイトルを『TOKYOてやんでぃ』と改題)。

 

それ以外にも、大劇場の商業演劇からライブシアターの小劇団まで、原作が落語という舞台はいろいろあります。

出演者の数や舞台装置は真逆ですが、どこか相性がよいのかもしれません。

 

作品をより楽しむ為に

 

最後に、映画やドラマになった落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

まず問題になるのは、映画やドラマに感動した後に確認として落語を聴くべきか、あるいは予習として落語を聴いておくべきか、ということでしょう。

厳密に考えれば、予習した方が落語のディテールが分かって舞台の楽しみは倍増するでしょう。ただエンタメ作品を楽しむにあたっては、あまり頭にいろいろ詰め込むよりも、まずは何も仕入れず手ぶらで観覧する方がよい気がします。

そうしてお芝居を存分に楽しんだ後、CDやネット動画で題材になった落語を確認するという手順が妥当かもしれません。

その方がお芝居も落語も両方楽しめるはずです。できれば、落語を聴いた後、もう一度お芝居を見返して復習するというのがベストでしょう。

 

※このページの参考
不完全版落語芸能人リスト(なかむら記念館 落語別館)
なかむら治彦note【落語好きの諸般の事情】#07 玉石混交?落語映画問題
同・#10 2005年以降の「落語映画」問題・増補改訂版

 

以上、なかむら氏による『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』でした!

是非落語を聴いて、落語にハマっていただければと思います!また、興味がある方は寄席を観に行きましょう!このWebonをお読みいただいた方は必ず楽しめるはずです!!

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語を楽しむ為の基礎知識

 

伝統芸能の世界は「定番」の宝庫です。

「定番」という言葉には、「お決まり」とか「お馴染み」といったニュアンスも含まれます。

安定感が抜群で、長年親しまれ、斬新さは無い代わりに様式美を備えた物を「定番」と呼びます。日本古来の伝統芸能はいずれもそれに該当すると考えてよいでしょう。

そのうちの一つである古典落語には、現代では使わない古い言い回しや、昔そのままの呼称がよく出てきます。

例えば江戸の歓楽街の代名詞・吉原を、落語の登場人物たちは「なか」と呼びます。

一説には吉原一帯が堀で囲まれていて大門という出入口からしか入れず、「大門の中」が「なか」と略されたと言われますが、これなど解説が無ければ何のことかさっぱり分かりません。

古い言葉を古いまましゃべることは、普通に考えれば観客に優しい演出ではありません。しかし落語では、古い言葉をまじえながらも、会話の流れや状況描写によって言葉の前後を補い、意味を想像させます。

これは「想像のエンタテインメント」である落語ならではの強みでしょう。

逆に言えば、やたら説明を重ねることで崩れてしまう様式美が、落語という話芸にはあるということです。

 

このページでは、そんな江戸時代の情緒をストーリーで存分に感じる為の基礎知識と、それらの知識が出てくる落語演目の数々を、項目別に分けて紹介していきましょう。

 

武士と落語

 

江戸時代の落語に登場するお決まりの設定は、ちょんまげに着物姿の登場人物と、この時代特有の「士農工商」という身分制度です。

 

▼登場人物のイメージ

 

そして士農工商の一番上が武士階級です。

 

 

落語における武士の人間性は必ずしもステレオタイプではなく、個性に溢れています。

例えば

粗忽の使者』(そこつのししゃ)に登場する地武太治部右衛門(じぶた じぶえもん)は、よそのお屋敷に使者として出たものの、口上(話すこと)を忘れてしまう粗忽者(そこつもの:そそっかしい人)ですし、

松曳き』(まつひき)の殿様と家老は揃ってあわて者と来ています。

また『井戸の茶碗』では、浪人(仕事を失った武士)に身を落としながらも実直さは変わらない初老の武士が、その実直さのあまり騒動を大きくしてしまいます。

 

1.粗忽の使者

~あらすじ~

あるところに地武太治部右衛門という粗忽者(そそっかしい人)の侍がいた。この侍、殿様もそそっかしさが面白いと目をかけられていた。そんなある日殿様の親戚筋が地武太治部右衛門を寄こしてほしいと頼む・・・

~概要~

別題『尻ひねり』

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2.松曳き

~あらすじ~

粗忽者しか住んでいない武家屋敷があった。ある日その屋敷の殿様が庭の松の木を移動させたいと言い出す。そこで植木屋を呼んでくるが・・・

~概要~

別題『粗忽大名』『主従の粗忽』

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3.井戸の茶碗

~あらすじ~

あるところに屑屋(廃品回収業者)の清兵衛という男がいた。街で商売をしていると上品な女性から声をかけられる。かけられたまま路地に入っていくとその女性の父親だという浪人(仕事を失った武士)が立っていた・・・

~概要~

別名『茶碗屋敷』。元の話は講談のものと言われる。

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また一方で落語の武士は、身分を笠に着て庶民にいばり散らす悪役にもなります。

たがや』では人混みの中を馬で無理やり通過しようとして町人と喧嘩になり、

巌流島』では狭い渡し舟の中でトラブルを起こして船頭や同乗者を困らせます。

このタイプの武士は、たいてい町人にやられてしまう結末をたどります。

 

4.たがや

~あらすじ~

ある花火大会の日。両国にある橋は人で大賑わいだった。そんな中を、急いだ侍が通ろうと人をかき分けて進んでいる。そこへたが屋(たが=桶にはめる竹の輪)も橋の反対から通ろうとした。すると・・・

~概要~

江戸時代から演じられていると言われる噺。

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5.巌流島

~あらすじ~

とある船着き場。町民でいっぱいの舟が出そうになるころ、一人の侍が飛び乗ってきた。「邪魔だ。川へ落ちそうなら落ちてしまえ」と悪態をついている中、船が出た・・・

~概要~

『岸柳島』(がんりゅうじま)とも書く。

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そうかと思うと、『柳田格之進』(やなぎだ かくのしん)に出てくる貧しい浪人(仕事を失った武士)・柳田格之進は、商家の番頭から大金を盗んだとの嫌疑を向けられる侮辱を受けながら、グッと抑える心の葛藤を見せます。

 

6.柳田格之進

~あらすじ~

とある武士「柳田格之進」は正直者だった。正直すぎるあまり仕事を失い、さらに妻を亡くし、娘と貧乏暮らしをするがそれでも正直で良い人柄は変わらない・・・

~概要~

古今亭志ん生・志ん朝 親子が得意としていた。

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どの武士がベストかは聴く人の好みで変わると思いますが、ストーリーの面白さで言えば『7.井戸の茶碗』のハッピーエンドな感じがおすすめでしょう。

真面目な武士の性格に困惑する屑屋(=紙くずなどを売買する商人)の立ち回りと、徐々にスケールアップしていく展開がこの物語の聴き所です。

 

珍しい仕事と落語

 

大名や武士は現代で言う政治家や公務員のような存在ですが、それ以外にも、古典落語には江戸時代ならではの多種多様な職種が登場します。

当時の空気を感じさせる職業としては、遊廓の花魁(おいらん)、たいこ持ち、習い事の稽古屋、呉服屋、質屋、大工、左官、髪結い、駕籠屋(かごや)、船頭、馬方、僧侶、相撲取り、等々まだまだあります。

いろいろな落語に出てくる長屋(江戸時代の集合住宅)のお婆さんがたいてい生業にしている糊屋(ご飯粒から洗濯用の糊を作って売る)もそうした仕事の一つでしょう。

同じく落語のメインキャラクターである泥棒は、現代の報道に従うと「無職」かもしれません。

中には泥棒以上に怪しい商売も出てきて、『あくび指南』の「あくびを教える師匠」とか、『睨み返し』の「借金取りを怖い顔で撃退する」なんて仕事、落語以外では考えられませんね。

 

7.あくび指南

~あらすじ~

八五郎は友人の熊五郎と道でばったり出会う。聞けば熊五郎は習い事に行く途中だと言う。一緒に来ないかと言われる八五郎だが熊五郎が今まで習い事で事件をさんざん起こしてきたことを考えると行く気になれない・・・

~概要~

別題『あくびの稽古』。

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8.睨み返し

~あらすじ~

とある大晦日。昔の大晦日は1年間の支払いの日だ。長屋に住む八五郎の元へツケを支払ってもらおうと薪屋が飛び込んできた。しかし支払う金がない・・・

~概要~

大晦日の噺で、寄席では年末に演じられることも多い。

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一方、江戸時代に無くてはならなかった職業に、担ぎの商人があります。

昔の小売業者のほとんどは店舗を持たず、天秤棒の前後に売り物の荷を下げて、売り声を挙げながら町内を担いで回るという移動販売を主流にしていました。

振り売りとか棒手振り(ぼてふり)とも呼ばれました。

 

 

担ぎの商人が登場する落語のうち、名作と言われる落語が『唐茄子屋政談』(とうなすや せいだん)です。

遊び人の若旦那が勘当され、心身ともボロボロになっていた所を親戚のおじさんに助けられ、そのおじさんの指導で唐茄子(かぼちゃ)を一生懸命売り歩いたことで、更生を認められて勘当が解かれるという話です。

商売のリアルな難しさを道楽者の若旦那が肌で感じるくだりは、きっと現代人でも共感できることでしょう。

 

9.唐茄子屋政談

~あらすじ~

とある道楽男が家族から勘当され、友人からも見放されてしまい自殺を図る。そこへ男の叔父が通りかかり思いとどまらせる。叔父はさらに食事まで振舞ってやり、男は「改心する。叔父の言う事は何でも聞く」と言う・・・

~概要~

別題『唐茄子屋』。唐茄子=かぼちゃ

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旅と落語

 

江戸時代が舞台の古典落語で描かれている生活様式の中で、特に現代との差が激しいジャンルと言えば、旅の様式と、お金の単位かもしれません。

当時の旅の様式は十返舎一九(じっぺんしゃ いっく)の『東海道中膝栗毛』などでも描かれているように、陸路の移動手段で徒歩か駕籠(かご)か馬ぐらいのシンプルなものでした。

 

東海道中膝栗毛

十返舎一九によって書かれた滑稽話集。主人公は弥次郎兵衛と喜多八で現代でも「弥次喜多」などの愛称でアニメや漫画のキャラクターなどとして登場する。

▼十返舎一九

 

水路(海路)は船があったとはいえ大半が荷物の輸送用でしたし、空路は当然ありません。

そんなシンプルな旅ですから、落語に登場する旅模様も極めてのんびりしていました。

中でも上方落語(関西の落語)の『三十石』は、京都の伏見から淀川を三十石船に乗って大阪にたどり着く、その行程に起きた事を淡々と紀行エッセイのように綴った内容です。

クライマックスに船頭が朗々と唄い上げる舟唄には、旅の情緒すら感じます。東京では落語家・三遊亭円生師匠(故人)らが十八番にして、『三十石』の叙情性を東京でも広めました。

 

10.三十石

~あらすじ~

京都から大阪に下る三十石船と船町の情景を、それぞれオムニバス調で描く・・・

~概要~

上方(関西)の落語演目。別題『三十石夢乃通路』。

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その他では、友達二人で歩く『二人旅』、馬が出てくる『三人旅』、旅先の宿屋が舞台となる『宿屋の仇討ち』(別題『宿屋仇』)などが有名な旅ネタです。

 

11.二人旅

~あらすじ~

二人で気ままに旅をしている。一人が腹が空いたのでご飯にしたいと言い出す。しかしもう一人はしたくないのか謎かけを始めて気をそらす・・・

~概要~

謎かけが沢山散りばめられた落語。

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12.三人旅

~あらすじ~

とある男がひょんなことからお金が儲かった。喜んでいると父親から「その金を貯めこもうってんなら江戸っ子として恥ずかしい。勘当するぞ」と脅された。どのように使おうか悩んでいると・・・

~概要~

長編落語。

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13.宿屋の仇討ち

~あらすじ~

とある侍が大阪の宿に泊まった。聞けば昨晩の宿ではいびきやいちゃいちゃする声でよく眠れなかったと言う。そして泊まった晩、隣で伊勢神宮のお参りから帰ってくる途中で泊っている喜六・清八・源兵衛が隣の部屋でどんちゃん騒ぎを始めてしまう・・・

~概要~

別題『宿屋仇』『日本橋宿屋仇』『庚申待(こうしんまち)』。いくつかバリエーションのある噺。

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お金と落語

 

そしてもう一つ、江戸時代のお金の単位につきましては、とてもややこしいので要点だけ説明します。

江戸時代のお金は金貨(両・分・朱)・銀貨(匁=もんめ)・銭貨(貫・文)の3種類の通貨が並行して利用されました。

金貨は主に位の高い武士、銀貨は主に位の低い武士と商家、銭貨は主に庶民が利用していて、相互の換金は町の両替屋が行いました。

落語ではよく一獲千金を狙うストーリーが多く出てきますが、そこで使われるのはたいてい金貨(両)です。

富くじが当たる『富久』も、高価なみかんを買う『千両みかん』も、登場人物の身分に関わらずすべて金貨です。恐らく昔は民間的にも「大金=金貨」だったのでしょう。

 

14.富久

~あらすじ~

ある時、幇間(ほうかん:お座敷などで場を盛り上げる芸人)が仕事を失ってしまいお金に困っていた。すると知人が家に訪ねてきた。その手には1枚の宝くじを持っていた。その宝くじをなけなしのお金で幇間が買う事に・・・

~概要~

初代 三遊亭圓朝が作ったと言われる演目。

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15.千両みかん

~あらすじ~

とある呉服屋の若旦那が重病で床に伏せった。医者曰く「胸につかえた何かを取り出さなければ治らない」と。そこで皆で問いただす事に。若旦那ついに「みかんが欲しい・・・」と言う・・・

~概要~

元の話は笑話本「鹿の子餅」の一幕。上方(関西)と江戸(東京)では演出が異なる。

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その一方では、庶民が主役の『時そば』はちゃんと一杯16文、つまり銭貨でした。

落語を楽しく聴くにあたってはそのへんの事情はあまり深く詮索しない方が気楽かもしれません。

 

16.時そば

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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お金の関わる落語としては、『宿屋の富』(別題『高津の富』)をおすすめしておきましょう。

主人公の男がなけなしの金で買った富くじが千両の大当たりで、それを知った時の演技と心の動揺が実に面白く描かれています。

 

17.宿屋の富

~あらすじ~

とある宿に一人の男がやってきた。この男、金がありすぎて困ってしまうと言っている。宿屋の主人は男の言う事をすっかり信じて「凄い人だなぁ」と感心。そして宿屋の主人は「お金があるなら副業でやっている宝くじでも買ってくれないか」と男に頼む・・・

~概要~

別題『高津の富(こうづのとみ)』。元々は上方(関西)の落語演目。

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ちなみに、明治になるとお金の単位は円・銭・厘に統一されます。もし「この落語の舞台は江戸か明治か」と悩んだ時は、お金の単位に注意して聴いてみてください。

 

今回紹介した落語を聴くベストシチュエーション

 

最後に、江戸情緒漂う定番の名作落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

江戸の情景を言葉だけで思い浮かべるのは、なかなか至難の業です。聴く側の想像力ももちろんですが、演者の方にもかなりの技量を要します。

従って、もしライブでそうした名演高座に遭遇できたとしたら、あなたは確率的にもかなりラッキーだったと考えてよいと思います。

そんな奇跡の高座に巡り合うまで通い続けるのは大変だ、という人には、かつて名人と称された落語家さんたちのCDを聴くことをおすすめします。

ここでおすすめに挙げた演目では、三遊亭円生(さんゆうてい えんしょう)師匠、古今亭志ん朝(ここんてい しんちょう)師匠、五代目 柳家小さん(やなぎや こさん)師匠(いずれも故人)などのCDが多数出ていますので、探して聴いてみてください。

 

▼三遊亭円生

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▼古今亭志ん朝

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▼五代目 柳家小さん

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※参考

大江戸ものしり図鑑』(花咲一男監修・主婦と生活社)

 

次のページでは落語でよく登場するキャラクターについて解説。知ればもっと落語を楽しめるはずです。

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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エンタメ業界には「定番」と称される作品が必ずあります。

映画の「寅さん」や歌舞伎の「忠臣蔵」のように、長年贔屓にしているファンにとっては常識中の常識で、かつビギナーに対しては教科書の1ページ目のような存在のもの。それが「定番」です。

 

▼寅さん(男はつらいよ)

▼忠臣蔵

 

では落語で「定番」と呼ばれる演目となりますと、どうでしょう。

寅さんや忠臣蔵のような、全世代が知っている演目は、果たしてどれくらいあるでしょうか?

落語の場合、超が付くほど有名なタイトルは残念ながら限られます。100人が100人とも知っている落語となりますと、それこそ五本の指に収まる程度かもしれません。

そこで、ここではちょっとだけ解釈を変えて、一般的によく知られる演目に加え、「実はこの落語は定番ギャグになっていた」という演目や、あの定番演芸番組にまつわる演目など、多角的な「定番」を紹介してみたいと思います。

まずは「定番」とされる超有名な落語演目を5つご紹介します。

 

超有名な定番落語5選

 

まずは、落語に詳しくない人でもタイトルぐらいはご存知な有名落語から。

 

1.寿限無

 

一番メジャーな落語と言えば『寿限無(じゅげむ)』でしょう。

子供が生まれてお寺の住職にいろいろな名前を提案してもらった父親が、子供の健康を思う余り、その提案を全部もらってめちゃくちゃ長い名前を作り上げてしまうという、お馴染みの話です。

 

~あらすじ~

あるお家に子供が生まれた。子供にめでたい名前を付けてもらおうと住職に依頼をする。いくつも名前の案を出してもらったが、父親が全てをつなげて名前にしてしまう・・・

~概要~

昔上方(関西)では『長名』という演目名で演じられた。子供がつけられる名前は落語家によって異なる事もある。よく用いられる例は以下の通り。

「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ」

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NHK-Eテレの幼児向け番組『にほんごであそぼ』で番組開始時からフィーチャーされ、落語を知らない子供たちの間にも『寿限無』は知れ渡りました。

 

▼NHK-Eテレ『にほんごであそぼ』

(出典:http://www.nhk.or.jp/kids/program/nihongo.html)

 

寄席では昔から、入門したての前座さんが発声と滑舌の稽古を兼ねてよく演じます。構成も分かりやすいですし、長すぎる名前を繰り返すことで生じる可笑しみは全世代共通だと思います。

まだ全編ちゃんと聴いたことが無いという人は、一度聴いてみてはいかがでしょうか。

 

2.饅頭怖い

 

一方、落語の台詞が独立して有名フレーズになるパターンもあります。

友達が怖い物を言い合う落語『饅頭怖い』のオチに出てくる台詞「ここらで一杯お茶が怖い」は、聴き覚えのある人も多いでしょう。

これは饅頭が大好物の男が「俺は饅頭が怖い」と嘘をつき、友達がイタズラ心で饅頭を持ち寄ってみるとそれをペロリとたいらげてしまった、その直後に口にする言葉です。

 

~あらすじ~

街の男たちが集まって自分たちの「怖いもの」の話をしている。クモが怖い、お化けが怖い、などと言っているがその中で一人だけ「まんじゅうが怖い」と言う男がいた・・・

~概要~

広く世間に知られる人気の演目。若手の練習噺としても用いられるが、持ちネタにする名人落語家も多い。

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3.時そば

 

『時そば』の「今、何時(なんどき)だい?」も有名フレーズです。

江戸時代、ある男が一杯16文のそばを食べて支払う際、わざわざ細かい銭を1枚ずつ「ひ、ふぅ、みぃ…」と払っていく途中で「今、何時だい?」とそば屋に訊ねて1文ごまかすという話からこの演目は作られていて、落語の後半ではそれを真似た男がことごとく失敗するギャグ満載の展開になります。

 

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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4.目黒のさんま

 

同じく江戸時代、殿様が目黒で人生初の焼きたてのさんまを食べて感激し、「さんまは目黒に限る」と言い切る落語が『目黒のさんま』です。

この落語が元となって、1990年代からは毎年9月にJR目黒駅周辺など数箇所で「目黒のさんま祭り」というイベントが催されています。

お馴染みの落語が町おこしイベントにまで派生した例です。

 

~あらすじ~

とある殿様が目黒へ出かけた際、家来が弁当を忘れてしまった。殿様一同、空腹で歩いているといい匂いがしてくる。「なんだこの匂いは?」と問う殿様に家来は「『さんま』という魚ですが、殿様が食べるような魚ではありません。庶民の魚です。」と答えるが、今はそのような事を言っている時ではないとさんまを殿様は食す。するとあまりの美味しさに殿様は感動する・・・

~概要~

演目に出てくる「目黒」は現在の目黒区であるという説と他の場所であるという説がある。

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5.芝浜

 

JRと言えばもう一つ。2018年にJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」の名前が決定した際、一般公募で3位になった名前が古典落語の名作として名高い『芝浜』でした。江戸の昔、芝の一帯はまだ海浜でした。

もし「芝浜」の名前に決定していたら、目黒のようなイベントが始まっていたかもしれません。

 

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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あのギャグフレーズは落語だった?

 

テレビで有名な芸能人のギャグの中にも、出典が落語だったものがあります。何かというと、志村けんさんが「変なおじさん」のコントのオチに使う「だっふんだ」です。

 

▼志村けん

 

あのフレーズは元々、関西の爆笑王と呼ばれた桂枝雀(かつら しじゃく)師匠(故人)が演じた『ちしゃ医者』という演目の中で、医者の先生が貫録を示すためにちょっと偉そうに「だっふんだぁー」と誇張した咳払いをする声から来ています。

 

▼桂枝雀

 

枝雀師匠のファンだった志村さんが、コントの中で同じような咳払いをして真似ていましたが、それが時を経て独立したギャグフレーズに変化したのでした。

ちなみに「ちしゃ」というのはレタスの和名(萵苣)で、『ちしゃ医者』は田舎の頼りないお医者さんとその門弟の話です。

 

6.ちしゃ医者

~あらすじ~

ある時、村人が藪医者の元へ急患がいるから来てくれとやってくる。藪医者だからとその医者を手伝っている男が言うが村人は「もう死にそうだから」と診に来てもらおうとする。そこで駕籠(カゴ:医者が乗って往診に行く為のもの)を村人と手伝いの男に担がせるが途中で急患が死に村人は帰ってしまう・・・

~概要~

別題『駕籠医者』。上方(関西)の落語。

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「だっふんだ」以外にも、一時期志村さんがコント番組で多用していた「すびばせんね」(お詫びする時の「すみませんね」が酔っ払って発音不明瞭になった言葉)とか、「頭沸くねー」(嬉しさで頭の中が混乱した時の言葉)も、枝雀師匠が落語高座の中で使用していたフレーズでした。

1999年に枝雀師匠が他界された時は多くのファンが悲しみましたが、今もフレーズが残っているのは、ファンとしてはどこか嬉しいものです。

ちなみに「すびばせんね」は枝雀師匠の『首提灯』など酔っ払いの出てくる落語、「頭沸くねー」は同じく『船弁慶』という演目の中に出てきます。興味のある人はCDやDVDで確認してみてください。

 

7.首提灯

~あらすじ~

ある男が煮売屋(居酒屋)で飲み食いした後、細かい金が無かったため、表の露店で日本刀を購入して、その釣り銭で払いを済ませる。その後、試し切りをしたくなった男は、自宅の玄関をわざと開け放って泥棒を誘い込み・・・

~概要~

江戸(東京)と上方(関西)では導入部分が異なる噺。

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8.船弁慶

~あらすじ~

ある日喜六が留守番をしていると友人の清八が訪ねてきて芸者遊びをしに行こうと言う。喜六は妻にいつも内緒で遊びに出かけていた事やいつも驕られてばかりいたので芸者から「弁慶」と呼ばれている事を気にするが、結局また遊びに行くことにする・・・

~概要~

元々は能の演目だった。

※喜六と清八は落語の主要キャラクター。こちらのページで解説しています。

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「笑点」オープニングに登場する落語

 

1966年にスタートした日本テレビの国民的演芸番組「笑点」は、たとえ落語に興味の無い人でも必ず一度は見たことがあるでしょう。

 

 

その「笑点」の看板コーナーが大喜利です。

大喜利とは本来、寄席興行の中で行われる特別企画のことでした。

その日の出演者が揃って登場して、踊りを踊ったり、茶番(ちゃばん)と呼ばれるお芝居をしたりすることが大喜利であって、お馴染み回答者と司会者の問答形式もその一種でした。

その「笑点」のオープニングアニメで、出演者たちはそれぞれ何をしているんだろう?と思っている人も多いのではないでしょうか。

実はあれも、全部落語のワンシーンなのです。

 

林家木久扇(はやしや きくおう)師匠は『昭和芸能史』という木久扇師匠自身が創作した漫談で、昭和の名優・片岡千恵蔵のスタイルを木久扇師匠が真似ています。

 

引用:笑点(http://www.ntv.co.jp/sho-ten/) ©Nippon Television Network Corporation

▼林家木久扇

▼片岡千恵蔵

 

三遊亭好楽(さんゆうてい こうらく)師匠は『王子の狐』。好楽師匠が女性に化ける狐の役になっています。

 

▼三遊亭好楽(右)

 

三遊亭小遊三師匠は『強情灸』。江戸っ子が山盛りのお灸の熱さを我慢している場面です。

 

▼三遊亭小遊三

 

三遊亭円楽師匠は『秘伝書』。博学の円楽師匠が豆知識満載の本を売っています。

 

▼三遊亭円楽

 

春風亭昇太師匠は先ほど紹介した『寿限無』。登場人物の子供になりきっています。

 

▼春風亭昇太

 

林家たい平師匠は『二十四孝』。孝行息子が母親に「鯉を食べたい」と言われ、自分の体温で池の氷を解かしている場面です。

 

▼林家たい平

 

林家三平師匠はやはり先ほど紹介した『時そば』。失敗する方の客でしょうか?

 

▼林家三平

 

そして山田隆夫さんは『藪入り』。大店の小僧さんの衣装が似合いますね。

 

▼山田隆夫

 

この他にも、『元犬』『鰻屋』『しわいや』『笠碁』『鼠穴』『居酒屋』のワンシーンが盛り込まれています。

ちょっとした所に落語ネタをはさんで、少しでも落語に親しみを持つキッカケにしてほしいというスタッフの心遣いを感じます。どんな内容の落語か興味が沸いた人は、是非一度試しに聴いてみてください。

 

寄席で笑点メンバーに会う

 

では最後に、これら有名落語を聴きたい場合はどうすればいいのかを説明します。

「笑点」のオープニングアニメに出てくる落語も含めて、ここで紹介した落語はいずれも寄席や落語会で頻繁に演じられる落語ばかりですので、まずは寄席観覧がおすすめです。

では、寄席で「笑点」メンバーを見たい場合にはどうすればいいのか?

まず基本情報として覚えておきたいのは、「笑点」メンバーはそれぞれ所属団体が異なるため、全員が同じ寄席興行に並ぶ機会は基本的には無いということです。

木久扇師匠・たい平師匠・三平師匠は『落語協会』

小遊三師匠・昇太師匠は『落語芸術協会』

好楽師匠・円楽師匠は『五代目円楽一門会』

にそれぞれ所属しています。(団体は全部で5つあり、その他に『落語立川流』と『上方落語協会』があります)

 

落語家の団体はなぜ5つもある?

最初は明治時代に設立された落語協会だけでしたが「金銭問題」「人間関係上のこと」「落語界の改革のため」など、いろいろな理由によって分裂や統合を繰り返して今のような状態になっています。

各団体はそれぞれ独自に興行を打ったり、二ツ目や真打の昇進の決定などを行っています。

※落語初心者入門 第1章「落語家の階級」より引用

 

このうち都内の寄席に出演するのは落語協会と落語芸術協会で、10日交代で興行を受け持っています。

円楽一門会は独自に活動していますが、円楽師匠は落語芸術協会の客員もしているため興行に参加することもあります。また、寄席の特別興行などではごくたまにメンバーの中の2~3人が並ぶこともあります。

それぞれの寄席や所属団体のサイト(円楽一門会は公式サイトが無いため他の2団体)などで出演情報をチェックして、メンバーの生の落語を聴きにお出掛けください。

 

▼メンバーの所属団体と公式サイト

メンバー 所属団体 公式サイト
木久扇師匠
たい平師匠
三平師匠
落語協会 http://rakugo-kyokai.jp/
小遊三師匠
昇太師匠
落語芸術協会 https://www.geikyo.com/
好楽師匠
円楽師匠
五代目円楽一門会 なし

 

次のページでは落語を楽しむ為に知っておくといい基礎知識を有名落語演目と共にご紹介。知識とともに落語を聴いてみていただければと思います。

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語の味わい方の一つに、純粋にストーリーの展開だけを楽しむ方法があります。

形式は読み聞かせや朗読と似ていますが、落語では、しゃべりながら顔を左右に振ってキャラクターを演じ分けたり(この動作を「上下(かみしも)を振る」と言います)、少しだけ仕草を加えたりして、ちょっとだけ演技も加えます。

朗読と一人芝居の中間といった所でしょうか。

 

 

演者の口から大量に発し続けられる言葉と、ほんの少しの演技をもとに情景を思い浮かべて、ストーリー展開に一喜一憂するというスタイルは、エンタテインメントの少なかった江戸時代に庶民が娯楽を求めて寄席に集った頃から続く、落語本来の楽しみ方なのでしょう。

このページでは数ある落語の中から、短編小説のような卓越したストーリーを持つ、ハラハラドキドキ系の落語をいくつかの項目に分けて紹介してまいりましょう。

 

おすすめ怪談噺

 

ハラハラドキドキ系落語の中で最もお馴染みなのは、怪談噺(かいだんばなし)です。

最近はテレビや市民ホールなどで一年中「怖い話」を聴けるようになりましたが、昔はもっぱら夏の寄席の風物詩でした。また歌舞伎や講談の方でも怪談は不動の人気ジャンルです。

「近代落語の始祖」と呼ばれた三遊亭円朝(さんゆうてい えんちょう)が、江戸末期から明治初期にかけて『牡丹燈籠(ぼたんどうろう)』を始めとする数々の長編怪談噺を発表したのが、落語における怪談噺のスタートです。

この時誕生した円朝の怪談は、現代でも多くの落語家さんに語り継がれています。

 

「近代落語の始祖」三遊亭円朝

円朝は三味線や太鼓などを使う歌舞伎を真似た「芝居噺(しばいばなし)」で人気となりましたが、明治時代になると政府により寄席での演劇などの行為は禁止になりました。

そこで円朝は道具を使う噺を弟子に譲り、現在のような「扇子1本を使う喋り」を中心とした「素噺(すばなし)」というスタイルを確立しそれまでの落語の常識を変えてしまいました。この素噺が現在の落語の元になっているので三遊亭円朝は「近代落語の祖」と呼ばれています。

▼初代 三遊亭円朝

 

その円朝作品の一つが、金に困った男と死神が出会う落語『死神』(海外作品の翻案によるアレンジ)です。

ロウソクを人の寿命に例えた不気味なクライマックスと、男のロウソクが消えるラストシーンの余韻が恐ろしさを際立たせています。

 

1.牡丹燈籠

~あらすじ~

とある内気な美男子がいた。家から出ず本ばかり読んでいたがある日、知り合いの誘いで「美人を見に行こう」と誘われある家に訪れる。そこでとても美人なお露と出会う。すると二人はお互いに一目ぼれ。「また会いに来てくれなければ死んでしまう」とお露に言われた美男子・・・

~概要~

「四谷怪談」「皿屋敷」と並び日本の三大怪談として知られる。長編の噺とそれらを短くまとめた短編噺がある。

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2.死神

~あらすじ~

あるところに失敗が続いてお金が尽きてしまい自殺をしようとしている男がいた。そこへ自らを「死神」と称する老人が現れる・・・

~概要~

初代 三遊亭圓朝がグリム童話を翻訳して作られた噺と言われる。

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幽霊や妖怪が出てくる落語はとても種類が多く、すべては紹介しきれません。

中にはコミカルな演目もありますが、『死神』に匹敵する「和製ホラー」の代表的演目として、『もう半分』『一眼国』『仔猫』『藁人形』などをお勧めしておきます。

 

3.もう半分

~あらすじ~

とある夫婦が営むお酒を飲めるお店に老人が毎日訪れる。毎日その老人は1合の半分を注文し、飲み干すと「もう半分」と言って1合の半分を注文して飲む・・・

~概要~

初代 三遊亭圓朝作の怪談噺。

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4.一眼国

~あらすじ~

諸国を歩いて巡っている男がある日香具師(屋台のテキや)の家に泊まった。その香具師は珍しい人間を捕まえて見世物小屋を開こうと思っていたので旅の道中で珍しい人間を見なかったか、と聞く・・・

~概要~

江戸(東京)の落語。

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5.仔猫

~あらすじ~

顔があまり良くないお鍋という女中が船場(大阪の商業地区)に働きに来る。顔は悪いが仕事はできるし、良い人だとお店で人気者になる。しかしある日誰かが「お鍋には怪しいところがある」と言い出す・・・

~概要~

桂枝雀の持ちネタとしても有名。

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6.藁人形

~あらすじ~

ある娘がぐれて家を飛び出す。男と駆け落ちするが、しばらくして故郷に帰ると両親は死んでいた。どうしようもなく、女郎になり苦しい日々を過ごす・・・

~概要~

オチ(サゲ)は諺から来ている。

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江戸の裁判劇を描いた演目

 

ハラハラドキドキ系の落語で、怪談噺と同じくらい現代人にも馴染みのあるものと言えば、奉行所が舞台の「お裁き物」と呼ばれる落語でしょう。

奉行所の造作や様式は、テレビの時代劇などで時々登場しますからご存知の人も多いと思います。

 

 

ストーリーの方も、事件に巻き込まれた被害者が奉行所に訴え出て、人情味のあるお奉行様に白黒をつけてもらうという、明快で分かりやすい展開です。

聴き終えた後も爽快感が得られるため、落語初心者でハラハラドキドキしたい人にはうってつけです。

代表的演目には、『三方一両損』『帯久(おびきゅう)』『大工調べ』『小間物屋政談』『鹿政談』『てれすこ』『五貫裁き』(別題『一文惜しみ』)等々あります。

この中でお勧めの落語を選ぶならば、面白さでは大岡越前の有名な逸話が登場する『三方一両損』、ハラハラドキドキ度では勧善懲悪のモデルパターンのような『帯久』が一聴の価値ありです。

 

7.三方一両損

~あらすじ~

とある左官職人が金の入った財布を拾う。財布には持ち主が分かるものが入っており財布を返しに行くが元の持ち主は江戸っ子で「一度は無くなったと思ったもの。受け取れない」と言う。しかし拾った左官職人も江戸っ子、「俺も受け取れない」として奉行所の裁判沙汰になる・・・

~概要~

奉行の大岡越前が登場する。

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8.帯久

~あらすじ~

ある呉服屋の主人、とても温厚な人柄に加えてお店も繁盛していた。それとは対照的に近くの呉服屋の主人、性格に難がありお店も流行っていなかった。そんな時はやっていなお店の主人が流行っているお店の主人にお金を借りに行く・・・

~概要~

大岡越前が裁く「大岡政談」と呼ばれる演目の一つ。

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他にも、お裁きによる事件解決シーンは出てきませんが、『佐々木政談』(別題『佐々木裁き』)『天狗裁き』『次の御用日』『松山鏡』などの演目にもお白洲(江戸時代に奉行所が置かれた場所)の場面が登場します。

それほどかつては「お裁き物」がポピュラーなジャンルだったのです。

ちなみに、タイトルに「政談」または「裁き」と付くのがお裁き物の目安ですが、『唐茄子屋政談』は現在お白洲のシーン(奉行所のシーン)がカットされていますのであらかじめご注意を。

 

9.佐々木政談

~あらすじ~

名奉行として知られる佐々木信濃守が民衆の生活を見ようと街を歩いていた。すると子供達が奉行ごっこをしている。しかもそのうちの1人が佐々木信濃守を名乗って遊んでいる・・・

~概要~

佐々木信濃守は1850年頃に活躍した奉行。上方(関西)で演じられる時にはオチ(サゲ)が変わる。

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10.天狗裁き

~あらすじ~

ある日寝ていた八五郎は妻に起こされる。妻に「どんな夢を見ていたんだい?」と問われるが「夢など見ていない」と言う。そこから喧嘩になってしまう・・・

~概要~

元々上方(関西)の演目。途中まで『羽団扇』という演目と展開が同じ。

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11.次の御用日

~あらすじ~

とあるお店の丁稚(使用人)が食事をしていると主人の娘のお供で出かけてほしいと頼まれる。しぶしぶ食事を中断しお供をして歩いていると前から大男が歩いてくる・・・

~概要~

別題『しゃっくり政談』『しゃっくり裁判』。

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12.松山鏡

~あらすじ~

両親が死んでから18年間墓参りを欠かしたことが無い男・正助がお上の目にとまって褒美をもらえることになった。しかし欲の無い正助は何もいらない、父親の顔を一目でいいから見るだけでいい、と言う・・・

~概要~

元の話は、古代インドの説話集から。

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13.唐茄子屋政談

~あらすじ~

とある道楽男が家族から勘当され、友人からも見放されてしまい自殺を図る。そこへ男の叔父が通りかかり思いとどまらせる。叔父はさらに食事まで振舞ってやり、男は「改心する。叔父の言う事は何でも聞く」と言う・・・

~概要~

別題『唐茄子屋』。唐茄子=かぼちゃ

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おすすめサスペンス演目

 

古典落語というと「長屋で会話するだけのノンキな話でしょ?」と先入観で考える人がいるかもしれませんが、どうしてどうして。

そのまま映画のプロット(ストーリー)に使えそうなサスペンス味を帯びた落語だってあるのです。

もっとも落語には映像がありませんから、スケールが大きくなるかどうかは聴く人の想像力次第なのですが。

そんなサスペンス落語には、アクション・犯罪・ホラーなど、いくつかのバリエーションがあります。

 

アクションものでは、豪雪の中を火縄銃で狙われながら逃走する途中、崖から激流に転落するクライマックスが大迫力の『鰍沢』(かじかざわ)

たいこ持ちが金欲しさに番傘をパラシュート代わりにして飛び降り、さらに崖の下からとある方法を使って瞬時に戻る大技を見せる『愛宕山』(あたごやま)

鷺(さぎ)の群れと一緒に大阪上空を飛び回り、四天王寺の屋根から降りられなくなって大騒動になる『鷺とり』(さぎとり)

田舎の医者が山中で大蛇に呑まれる『夏の医者』などが有名です。

ちなみに『鰍沢』は前述の三遊亭円朝が考案した作品です。

 

14.鰍沢

~あらすじ~

とある旅人が大雪に見舞われてしまいある一軒の家へたどり着く。そこには美人な女性がいて酒を振舞われる。聞けば女性は元々遊廓の出身で主人は漁師だと言う・・・

~概要~

成立には諸説ある。元々は江戸(東京)で演じられていた演目。

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15.愛宕山

~あらすじ~

とある二人の幇間(ほうかん:お座敷などで場を盛り上げる芸人)がいた。主人がある日ピクニックに行こうと言い、舞妓などと一緒に愛宕山(あたごやま)まで出かけた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の落語。

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16.鷺とり

~あらすじ~

ご隠居さんが働かない道楽男へ説教をしようとしている。しかし仕事のことを聞いてもはぐらかしてばかり・・・

~概要~

別題『雁釣り』(かりつり)『雁とり』。後半の展開が異なる演目に『商売根問』というものがある。

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17.夏の医者

~あらすじ~

とある農夫が夏の暑い日に倒れてしまう。困った農夫の息子がお見舞いに来ていた叔父に医者の場所を聞く。医者は山を越えた隣の村にいるという・・・

~概要~

上方(関西)で完成して江戸(東京)に持ち込まれた演目。

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犯罪サスペンスものでは、主人公の平兵衛が誤って殺害してしまった村の庄屋の亡骸を使って、証拠隠滅と金稼ぎをしてしまう『算段の平兵衛』

吉原で遊んだ男が店の付き馬(代金の取立人)をまこうとして知恵を絞る『付き馬』が代表例です。

 

18.算段の平兵衛

~あらすじ~

とある村の年老いた男がお花という妾を囲っていた。しかし妻にバレてしまい別れる事に。そこでお花のことを思って「算段の平兵衛」と呼ばれる人間関係の仲裁などを生業にしている男へ嫁がせる・・・

~概要~

3代目 桂米朝が復刻した演目。

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19.付き馬

~あらすじ~

とある男が吉原の前に立っている。吉原で働く男性従業員が見かけて声をかけたところ「この店に貸した金を集金に来たのだが明日まで待ってくれと言われてしまって困っている」と言う・・・

~概要~

別題『付け馬(つけうま)』『早桶屋(はやおけや)』

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そしてホラーサスペンスものでは、ばくち打ちの男に飼われた猫が、殺された主人の復讐をする『猫定』

ひょんなことから肩に武蔵坊弁慶の人面疽(じんめんそ)ができた男が、次第に弁慶に体の自由を奪われてゆく『こぶ弁慶』などがあります。

ここに挙げたものは、どれを取っても聴き応えたっぷりの名作落語ばかりですが、個人的には、サスペンスの中に笑いが随所に盛り込まれた『16.鷺とり』がおすすめです。

 

20.猫定

~あらすじ~

とある魚屋。しかし大の博打好きだった。ある日居酒屋で一杯やっていると2階で音がする。博打でも行われているのかと店主に聞くと「泥棒猫がいるので縛って転がしている」と言う・・・

~概要~

舞台は東京の噺。

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21.こぶ弁慶

~あらすじ~

伊勢神宮のお参りから帰った喜六と清八が大阪へ帰る途中に宿へ泊る事になった。そこの宿で番頭をからかったりしながらもお酒を飲んでいると突然「化け物が出た」と飛び込んできた男がいた・・・

~概要~

別題『大津の宿瘤弁慶』。喜六と清八は上方(関西)落語の主要キャラクター

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おすすめドンデン返し演目

 

さてお次は、先ほどのサスペンス系落語ほどダイナミックな場面転換こそ無いものの、ストーリーのドンデン返しやミステリアスな展開が見事な名作落語の数々ご紹介します。

まず『はてなの茶碗』(別題『茶金』)。一攫千金を狙いたい油屋の男が、京都一の古道具屋に売った安物の茶碗がとんでもなく高価な品になる話。この高くなっていく過程が一番の聴き所です。江戸時代の京都というのがヒントになるかも…。

 

22.はてなの茶碗

~あらすじ~

ある油屋の男が茶屋で休憩をしていると評判のいい茶道具店の男がある茶碗を「はてな?」という目で見ており、買わずに帰っていった。油屋の男はその茶碗をさぞかし良い茶碗なのだろうと思い2両で購入する・・・

~概要~

江戸(東京)では『茶金』の題で知られる。

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続いて『蒟蒻問答』。江戸から上州(今の群馬県)に来た遊び人の男が、地元の蒟蒻屋の六兵衛の世話で寺の僧侶になり、そこで諸国行脚(しょこくあんぎゃ:諸国を歩いて回ること)の僧と禅問答をするはめになる話。クライマックスは言葉でなく身振り手振りになりますので、映像かライブでお楽しみあれ。

 

23.蒟蒻問答

~あらすじ~

江戸から上州(今の群馬県)に来た遊び人の男が、地元の蒟蒻屋の六兵衛の世話で寺の僧侶になり、そこで諸国行脚(しょこくあんぎゃ:諸国を歩いて回ること)の僧と禅問答をするはめに・・・

~概要~

2代目 林屋正蔵が作った演目と言われる。

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次が『大山詣り』。長屋の一行で登山をした帰りの宿で暴れた熊さんが、罰として頭をツルツルに剃られた腹いせに、一行にとんでもない仕返しを挙行する話。まるで最近のテレビのドッキリ番組みたいなラストが待ち構えています。

 

24.大山詣り

~あらすじ~

長屋の一行で登山をした帰りの宿で暴れた熊さんが、罰として頭をツルツルに剃られた腹いせに、一行にとんでもない仕返しを挙行する・・・

~概要~

元の話は狂言の演目。

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そして『盃の殿様』。廓噺(くるわばなし=色街の落語)は人間ドラマの宝庫とも言えますが、その中でも格別に異質な、吉原通いにはまる殿様の話です。

登場人物のキャラクターの濃さもありますが、実際に殿様が行列を組んで吉原に通うなんてことはありえませんから、ドラマはまったく予想もつかない展開に進んでゆきます。個人的には一番のおすすめです。

 

25.盃の殿様

~あらすじ~

子供の頃から甘やかされて育った殿様。運動不足、精神的にもあまりいい状態でなくなった。しかし薬も苦いので飲みたくない、という有様。そんなある時ひょんなことから一度も行った事のない吉原に興味を持つ・・・

~概要~

六代目三遊亭円生が十八番にした演目。

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他にも、気になるキーワードを見つけたら是非一度聴いてみてください。

 

ベストシチュエーション

 

最後に、ハラハラドキドキ系ストーリーの落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

山あり谷ありの展開をじっくり聴き入りたいという人には、市販のCDやDVDをおすすめします。まずはタイトルで検索して、過去の名人の高座をじっくり堪能しましょう。

故人の落語家さんの中では、三遊亭円生(さんゆうてい えんしょう)師匠、立川談志(たてかわ だんし)師匠、桂米朝(かつら べいちょう)師匠など、状況描写が抜群に優れた名人たちで聴いてみてください。

 

▼三遊亭円生

▼立川談志

▼桂米朝

 

またその一方では、こうしたストーリーの激しい落語を、寄席や落語会などのライブ口演で聴けた時の感動と快感は、何者にも替えがたいものがあります。

まさしく一生ものの記憶になると言っても過言ではありません。

先ほどの『盃の殿様』ではありませんが、生の落語にやみつきになる落語ファンというのは、そうした一期一会の感動経験を何度も何度も積み重ねた結果なのです。

もちろんライブですから、100%の確率で名演に出会える訳ではありません。

しかし、寄席や落語会の集客動員が年々増加しているということは、現在こうしたやみつき人口が増加している証拠でもあるのです。

 

以上、ハラハラドキドキさせるストーリー展開の落語演目でした。

次のページでは涙を流す人も続出するドラマチックな落語演目を紹介します。

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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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たとえ落語を聴いた経験が無い人でも、好きなドラマの1本や2本は必ずあることでしょう。

そんな人は落語を「耳で感じて、頭の中で映像を想像するドラマ」と捉えてみてください。グッと親近感が出てくるはずです。

落語にもドラマと同様、いろいろなストーリーが存在します。

このページでは、男女の「恋愛」を扱った落語の数々を、いくつかの項目に分けて紹介してまいりましょう。

 

若い二人の恋模様が描かれた演目

 

古典落語の舞台となる江戸や明治の頃、男女の恋愛は今ほどオープンでなくて、恋する異性のことを考えて一人思い悩む若者も多かったようです。

その結果、ノイローゼ状態から鬱に陥り寝込んでしまうことを、昔は「恋わずらい」と呼びました。

落語で恋わずらいがストーリーの発端となる代表的なお話が『崇徳院』(すとくいん)です。

大店の若旦那が花見の名所で出会った娘に一目惚れして、その娘が短冊に百人一首の崇徳院の歌の上の句だけ書いて若旦那に渡すことから始まる、ドラマチックな内容です。

 

1.崇徳院

~概要~

元々は上方(関西)の落語。後に東京でも演じられるようになった。

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この他、恋わずらいが出てくる落語に『紺屋高尾』(こうやたかお)『幾代餅』(いくよもち)『胆潰し』『宇治の柴舟』などがあります。

 

2.紺屋高尾

~あらすじ~

とある紺屋(染物屋)の職人。26歳になっても遊び一つ知らず真面目に仕事をする好青年。しかしある日寝込んでしまう。親方が調べたところ「恋わずらい」だということがわかる。しかも相手は高尾太夫(遊廓の最高位の女性)だと言う・・・

~概要~

浪曲(三味線とともに語られる芸)でも演じられる演目。

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3.幾代餅

~あらすじと概要~

『紺屋高尾』との違いは、主人公の久蔵の勤め先とラストに開店する店の業種だけで、基本的には同じ内容の落語。『紺屋高尾』を演じる一門と『幾代餅』を演じる一門という具合に、落語家の系統によって分かれる。

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4.胆潰し

~あらすじ~

とある男が病気で伏せっている友人の家に見舞いに行く。聞けば「恋わずらい」だと言う。相手は呉服屋の娘・・・

~概要~

「肝をつぶす」とは大きく驚く、という意味。

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5.宇治の柴舟

~あらすじ~

とある男が病に伏せっている。薬も効かず、医者が言うには「胸に何かが詰まっている」と。気心知れた仲の友人が聞き出すとやはり「恋わずらい」。その相手は掛け軸に描かれている女だと言う・・・

~概要~

上方(関西)でよく演じられる演目。

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その他にこうした若い男女の恋愛がテーマの落語を探すと以下の3つの演目が有名です。

 

6.宮戸川

~あらすじ~

ある日、半七が将棋を友人と指していて遅くなってしまい家から閉め出しをくらう。そこへカルタを友人と遊んでいて同様に家から閉め出しをくらったお花とばったり出会う・・・

~概要~

宮戸川は現在の隅田川の浅草周辺の流域と言われる。別題『お花半七馴れ初め』『お花半七』。

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7.花見小僧

~あらすじ~

とある店の娘が年頃になったので店の主人が婿を迎えようとするが娘は一向に応じない。そんな時、店の者と娘ができている、という噂を聞く・・・

~概要~

『おせつ徳三郎』という噺の前半部分。

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8.お若伊之助

~あらすじ~

とあるおかみさんの美人な1人娘が一中節(いっちゅうぶし:浄瑠璃の一つ)を習いたいと言い出す。習う事になったのはいいが教えにくる者が伊之助という26歳の男。まだ18歳の娘がおかみさんは心配になる・・・

~概要~

別題『因果塚由来』。

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一方では、奉公に入ったばかりの娘めがけて商家の男連中が夜這いをたくらむ『引っ越しの夢』(別題『口入屋』)や、村一番のマドンナに男が夜這いを仕掛ける『お玉牛』(おたまうし)なんて落語演目もありますが、いずれも失敗に終わるのが落語らしい所です。

 

9.引っ越しの夢

~あらすじ~

とあるお店に口入屋(職業紹介所)から美女が女中として訪れる。今までお店は間違いがあってはいけないと美女を断っていたのだが番頭の差し金で美女が来るようにしておいたのだった・・・

~概要~

上方(関西)では『口入屋』(くちいれや)という演目名で呼ばれる。

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10.お玉牛

~あらすじ~

堀越村の男たちが集まって美女の女中、お玉のことを話している。そこへ乱暴者の源太がやってきて、今お玉に会って来たと言う・・・

~概要~

別題『堀越村のお玉牛(ほりこしむらのおたまうし)』『堀越村(ほりこしむら)』。

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夫婦を描いた落語

 

落語では若者の恋愛ドラマだけでなく、幅広い年代の恋愛模様が描かれています。

既に紹介した『宮戸川』が10代の若い恋愛ならば、

20代の婚礼の夜を描いたのが『たらちね』、

蜜月の空気感漂う若夫婦を描いたのが『目薬』、

臨月(妊娠後期)の女房が出てくるのが『町内の若い衆』、

倦怠期の夫婦が出てくるのが『堪忍袋』、

女房が亭主を尻に敷く熟年夫婦を描いたのが『鮑のし』…と続きます。

そしてさらに、お互い年を重ねた老夫婦が登場するのも、最初に紹介した『宮戸川』なのです。

若い二人を見ながら自分たちの若き日を思い出す場面では、笑いの中に人生の深さを感じられると思います。

 

11.たらちね

~あらすじ~

独り身の八五郎の元へ大家さんが縁談を持ちかける。聞けば器量良しの若い女だがいかんせん話し方が丁寧すぎて何を言っているか分からないらしい。いざ八五郎が会ってみて、挨拶をされたがちんぷんかんぷんで・・・

~概要~

『垂乳女』と書いて『たらちね』と読む。『たらちめ』とも。上方では『延陽伯』というタイトルで呼ばれる。

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12.目薬

~あらすじ~

ある職人が目の病になって仕事ができず食うに困る事に。そんなある日妻が薬屋に行って目薬を買ってくる。しかし説明書の字が読めず・・・

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13.町内の若い衆

~あらすじ~

とある職人の男が親方の家に行ったが親方はおらず、親方の妻だけがいる。親方の妻と話すがとても良い女性。職人は自分の妻と比べて情けなく感じてしまう・・・

~概要~

元々は1690年の笑話本にあった噺だが噺が原話から変わっていない珍しい落語演目とされている。

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14.堪忍袋

~あらすじ~

ある喧嘩の絶えない夫婦を見かねた大家さんが中国に伝わる故事を言い聞かせる。その故事では喧嘩をしそうになった男が「水がめ」に向かって叫びたい事を叫ぶ、というもの。そこで夫婦は嫌な事があると「袋」に向かって相手の悪いところを叫んだ。すると気持ちが爽快になる・・・

~概要~

喜劇脚本家の益田太郎冠者氏が作った新作落語。

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15.鮑のし

~あらすじ~

おめでたい男、甚兵衛(関西では喜六)がお腹を空かして帰り嫁さんに言うと「ご飯が食べたければお金を50銭借りてこい」と言われる。何とか借りて帰ると、その金で鯛を買い大家さんにプレゼントをして1円をお返しでもらってこい、と嫁さんに言われる。しかし甚兵衛が50銭で買えたのは鮑(アワビ)だけだった・・・

~概要~

別題『鮑貝(あわびがい)』『祝いのし』。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

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年代だけではありません。

酒に溺れる亭主を女房の尽力で更生させる『芝浜』

江戸時代、生活に困った夫婦が「蹴転(けころ)」という最下級の女郎屋を始める『お直し』

一度別れた夫婦が子供をキッカケによりを戻す『子別れ』(別題『子は鎹』)

など、様々なシチュエーションの夫婦愛を、落語では扱っているのです。

これらもおすすめですので一度聴いていただければと思います。

 

16.芝浜

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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17.お直し

~あらすじ~

年をとった花魁と若い客引きが恋に落ちる。しかし遊郭で同業者の恋はご法度。そこで花魁は引退し二人は無事に夫婦生活を始める・・・

~概要~

元々あまり誰もやっていなかった演目だが五代目 古今亭志ん生(ここんてい しんしょう)が復活させた演目。

▼五代目 古今亭志ん生

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18.子別れ

~あらすじ~

あるところに仕事の腕はいいが酒と女が好きな夫がいた。ある日我慢できなくなった妻は子供を連れて家を出ていってしまう・・・

~概要~

別題『子は鎹』『強飯の女郎買い』など。よく知られる落語演目。

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傾城(けいせい)の恋を描いた落語

※傾城(けいせい)・・・かつては美人のことをこう呼んだ。落語では花魁(おいらん)・遊女のこと。

 

落語で男女の関係がテーマとなるもう一つの舞台が、遊廓やお茶屋が並ぶ色街(いろまち)。今風に言うと歓楽街(かんらくがい)です。

呼び方は廓(くるわ)・遊里・遊び場・岡場所など演目によっていろいろです。

「傾城の恋はまことの恋ならで 金持ってこいが本の恋なり」

(訳:遊廓の”恋”は本当の”恋”ではなく、お金を持って”来い”が本当の意味である)

と狂歌にもあるように、本来は大人が疑似恋愛を楽しむ場所なのですが、色欲と金銭欲が渦巻く世界だけに、これまた様々な人間ドラマの溜まり場になっています。

 

こうした場が舞台の落語は「廓噺(くるわばなし)」と呼ばれ、名作も目白押しなのですが、その中から現代にも通じるドラマ性を含んだ演目ということで、先ほども名前の出た『紺屋高尾』を筆頭に、『たちきり』(別題『立ち切れ線香』)、『三枚起請』(さんまいきしょう)、『文違い』、『品川心中』の5作品をおすすめしておきましょう。

いずれも比較的演者の多いポピュラーな演目ですので、どんな恋愛が繰り広げられているか、試しに聴いてみてください。

 

 

19.たちきり

~あらすじ~

とある真面目な男が花街へ行く。そこにいた芸者に惚れてしまい、働いていたお店のお金にまで手を付けてしまう。困った親族や番頭たちがその芸者に会わせなくするよう企てる・・・

~概要~

別題『立ち切れ線香』『たちぎれ』など。元々上方(関西)の落語。

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20.三枚起請

~あらすじ~

とある遊び人の男が友人に、ある花魁(おいらん)から「遊女を辞めたら貴方と結婚する」という起請文(きしょうもん=誓約書)をもらったと自慢する。しかしその自慢された友人も、同じ花魁から同様の起請文をもらっていた・・・

~概要~

元々は上方(関西)の落語演目が江戸に持ち込まれた。

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21.文違い

~あらすじ~

とある女郎が「父親に20両貸してくれとせがまれて困っている」と客に金をねだる。しかしその客は20両も持ち合わせていない。すると他の客に「母親に20両貸してくれとせがまれて困っている」と金をねだる・・・

~概要~

江戸(東京)で多く演じられる演目。

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22.品川心中

~あらすじ~

品川で働くある女郎が金が無くて馬鹿にされるのを嫌がり死ぬことを決意する。しかし一人で死ぬのは嫌なのでなじみ客のうちのぼーっとしているある男を選び死のうとする・・・

~概要~

品川の遊廓が舞台の噺。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

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こんな恋愛シチュエーションも…

 

恋愛をテーマにした落語は、まだまだあります。とはいえ全部挙げていくといつまでたっても終わりませんので、ここではジャンルと演目名だけ列挙します。

名前だけでも覚えて、何かの折に聴いてみてください。

 

・【伴侶の死】がテーマの落語

『三年目』『短命』『樟脳玉』『反魂香』(別題『高尾』)など

・【愛人・妾】がテーマの落語

『三軒長屋』『星野屋』『権助提灯』『権助魚』など

・【ジェラシー】がテーマの落語

『夢の酒』『悋気の独楽』『悋気の火の玉』『汲み立て』など

・【浮気・間男】がテーマの落語

『庖丁』『紙入れ』『風呂敷』『つづら』『駒長』など

 

名作恋愛落語【新作】

 

ここまでにご紹介したのは、すべて江戸や明治が舞台の古典落語です。

 

現代が舞台の新作落語の場合、感動ドラマよりもコメディ色が強くなる傾向が強いため、昭和期に生まれた落語で恋愛ドラマ仕立ての作品はほとんど存在しませんでした。

しかし平成期に入り、落語界全体で新作の創作が盛んになりだしてからは、恋愛ドラマばりに叙情的で感動を招く落語が何本も生まれたのです。

 

平成期の新作落語創作

三遊亭円丈・春風亭昇太・柳家喬太郎・三遊亭白鳥・林家彦いち・立川志の輔・桂三枝(六代目桂文枝)・笑福亭仁智などにより新作落語が平成で多く作られ、ブームになった。現在もその下の世代も含めて新作落語の創作は盛んに行われている。

 

中でも柳家喬太郎師匠が作った『純情日記横浜篇』は、同じバイト先で働く女性をデートに誘えない男性の切ない恋愛模様が描かれた傑作です。

 

▼柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)

 

23.純情日記横浜篇

~あらすじ~

同じバイト先で働く女性をデートに誘えない男性の切ない恋愛模様・・・

~概要~

既に作者の喬太郎師匠から何人もの後輩落語家に口伝され、早くも古典化しつつある。

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同じく喬太郎師匠の、年老いた男が昔好きだったハワイ在住の女性に会いに行く『ハワイの雪』も、名作の誉れ高い感動ストーリーです。

 

24.ハワイの雪

~あらすじ~

年老いた男が昔好きだったハワイ在住の女性に会いに行く・・・

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ベストシチュエーション

 

最後に、恋愛ドラマの落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

恋愛にまつわる落語は、できれば等身大のストーリー楽しみたいものです。自分の年齢と近い登場人物が出てくる落語なら、より一層共感できるはずですから。

特に夫婦の落語の場合、ご自身の年代とリンクする落語から聴くことをお勧めします。もし結婚間もない二人がうっかり倦怠期夫婦の落語など聴いたりしたら、どんよりした気分になりかねません。

 

そしてもう一点。ドラマ性のあるしっとりとした内容の落語は、なるべく音響の整った会場でじっくり腰を据えて聴きたいものです。

具体的には東京で言えば有楽町の「よみうりホール」、池袋の「東京芸術劇場」、虎ノ門の「ニッショーホール」、小さい所では中野の「なかの芸能小劇場」とか、要は演劇舞台をやる会場ですね。他にも都内および近郊では、数多くのホールが落語公演に使用されています。

逆に音響が整っていない会場というのは、地方の体育館とか、文化会館の和室とか、飲食店など、本来演劇をやる場ではない場所のことです。

 

東京のおすすめ寄席スポットは別Webon『落語初心者入門』で紹介しています! 東京のおすすめ寄席スポットは別Webon『落語初心者入門』で紹介しています!

 

ホールでの落語会は事前に演目のタイトルが発表されることが多いので、チケット販売サイトなどを検索すれば見つかる可能性が高いでしょう。できれば2枚購入して、落語デートに使ってみるとよいかもしれません。

 

▼チケット販売サイトの例

チケットぴあ

 

若い二人のデートならば演者さんは達者なベテラン落語家さんよりも、若手~中堅の落語家さんの若々しい声で聴いた方が、より共感できて強く印象に残る気がします。

もちろんベテラン落語家さんの話芸にもベテランならではの技術と妙味がありますけどね。

 

以上、恋愛が題材になっている落語を紹介しました。

次のページでは聴いているだけでハラハラドキドキする落語を紹介していきます。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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