落語と言えばこの5つ! 【定番ギャグと「笑点」の落語】

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)

 

エンタメ業界には「定番」と称される作品が必ずあります。

映画の「寅さん」や歌舞伎の「忠臣蔵」のように、長年贔屓にしているファンにとっては常識中の常識で、かつビギナーに対しては教科書の1ページ目のような存在のもの。それが「定番」です。

 

▼寅さん(男はつらいよ)

▼忠臣蔵

 

では落語で「定番」と呼ばれる演目となりますと、どうでしょう。

寅さんや忠臣蔵のような、全世代が知っている演目は、果たしてどれくらいあるでしょうか?

落語の場合、超が付くほど有名なタイトルは残念ながら限られます。100人が100人とも知っている落語となりますと、それこそ五本の指に収まる程度かもしれません。

そこで、ここではちょっとだけ解釈を変えて、一般的によく知られる演目に加え、「実はこの落語は定番ギャグになっていた」という演目や、あの定番演芸番組にまつわる演目など、多角的な「定番」を紹介してみたいと思います。

まずは「定番」とされる超有名な落語演目を5つご紹介します。

 

超有名な定番落語5選

 

まずは、落語に詳しくない人でもタイトルぐらいはご存知な有名落語から。

 

1.寿限無

 

一番メジャーな落語と言えば『寿限無(じゅげむ)』でしょう。

子供が生まれてお寺の住職にいろいろな名前を提案してもらった父親が、子供の健康を思う余り、その提案を全部もらってめちゃくちゃ長い名前を作り上げてしまうという、お馴染みの話です。

 

~あらすじ~

あるお家に子供が生まれた。子供にめでたい名前を付けてもらおうと住職に依頼をする。いくつも名前の案を出してもらったが、父親が全てをつなげて名前にしてしまう・・・

~概要~

昔上方(関西)では『長名』という演目名で演じられた。子供がつけられる名前は落語家によって異なる事もある。よく用いられる例は以下の通り。

「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ」

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NHK-Eテレの幼児向け番組『にほんごであそぼ』で番組開始時からフィーチャーされ、落語を知らない子供たちの間にも『寿限無』は知れ渡りました。

 

▼NHK-Eテレ『にほんごであそぼ』

(出典:http://www.nhk.or.jp/kids/program/nihongo.html)

 

寄席では昔から、入門したての前座さんが発声と滑舌の稽古を兼ねてよく演じます。構成も分かりやすいですし、長すぎる名前を繰り返すことで生じる可笑しみは全世代共通だと思います。

まだ全編ちゃんと聴いたことが無いという人は、一度聴いてみてはいかがでしょうか。

 

2.饅頭怖い

 

一方、落語の台詞が独立して有名フレーズになるパターンもあります。

友達が怖い物を言い合う落語『饅頭怖い』のオチに出てくる台詞「ここらで一杯お茶が怖い」は、聴き覚えのある人も多いでしょう。

これは饅頭が大好物の男が「俺は饅頭が怖い」と嘘をつき、友達がイタズラ心で饅頭を持ち寄ってみるとそれをペロリとたいらげてしまった、その直後に口にする言葉です。

 

~あらすじ~

街の男たちが集まって自分たちの「怖いもの」の話をしている。クモが怖い、お化けが怖い、などと言っているがその中で一人だけ「まんじゅうが怖い」と言う男がいた・・・

~概要~

広く世間に知られる人気の演目。若手の練習噺としても用いられるが、持ちネタにする名人落語家も多い。

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3.時そば

 

『時そば』の「今、何時(なんどき)だい?」も有名フレーズです。

江戸時代、ある男が一杯16文のそばを食べて支払う際、わざわざ細かい銭を1枚ずつ「ひ、ふぅ、みぃ…」と払っていく途中で「今、何時だい?」とそば屋に訊ねて1文ごまかすという話からこの演目は作られていて、落語の後半ではそれを真似た男がことごとく失敗するギャグ満載の展開になります。

 

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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4.目黒のさんま

 

同じく江戸時代、殿様が目黒で人生初の焼きたてのさんまを食べて感激し、「さんまは目黒に限る」と言い切る落語が『目黒のさんま』です。

この落語が元となって、1990年代からは毎年9月にJR目黒駅周辺など数箇所で「目黒のさんま祭り」というイベントが催されています。

お馴染みの落語が町おこしイベントにまで派生した例です。

 

~あらすじ~

とある殿様が目黒へ出かけた際、家来が弁当を忘れてしまった。殿様一同、空腹で歩いているといい匂いがしてくる。「なんだこの匂いは?」と問う殿様に家来は「『さんま』という魚ですが、殿様が食べるような魚ではありません。庶民の魚です。」と答えるが、今はそのような事を言っている時ではないとさんまを殿様は食す。するとあまりの美味しさに殿様は感動する・・・

~概要~

演目に出てくる「目黒」は現在の目黒区であるという説と他の場所であるという説がある。

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5.芝浜

 

JRと言えばもう一つ。2018年にJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」の名前が決定した際、一般公募で3位になった名前が古典落語の名作として名高い『芝浜』でした。江戸の昔、芝の一帯はまだ海浜でした。

もし「芝浜」の名前に決定していたら、目黒のようなイベントが始まっていたかもしれません。

 

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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あのギャグフレーズは落語だった?

 

テレビで有名な芸能人のギャグの中にも、出典が落語だったものがあります。何かというと、志村けんさんが「変なおじさん」のコントのオチに使う「だっふんだ」です。

 

▼志村けん

 

あのフレーズは元々、関西の爆笑王と呼ばれた桂枝雀(かつら しじゃく)師匠(故人)が演じた『ちしゃ医者』という演目の中で、医者の先生が貫録を示すためにちょっと偉そうに「だっふんだぁー」と誇張した咳払いをする声から来ています。

 

▼桂枝雀

 

枝雀師匠のファンだった志村さんが、コントの中で同じような咳払いをして真似ていましたが、それが時を経て独立したギャグフレーズに変化したのでした。

ちなみに「ちしゃ」というのはレタスの和名(萵苣)で、『ちしゃ医者』は田舎の頼りないお医者さんとその門弟の話です。

 

6.ちしゃ医者

~あらすじ~

ある時、村人が藪医者の元へ急患がいるから来てくれとやってくる。藪医者だからとその医者を手伝っている男が言うが村人は「もう死にそうだから」と診に来てもらおうとする。そこで駕籠(カゴ:医者が乗って往診に行く為のもの)を村人と手伝いの男に担がせるが途中で急患が死に村人は帰ってしまう・・・

~概要~

別題『駕籠医者』。上方(関西)の落語。

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「だっふんだ」以外にも、一時期志村さんがコント番組で多用していた「すびばせんね」(お詫びする時の「すみませんね」が酔っ払って発音不明瞭になった言葉)とか、「頭沸くねー」(嬉しさで頭の中が混乱した時の言葉)も、枝雀師匠が落語高座の中で使用していたフレーズでした。

1999年に枝雀師匠が他界された時は多くのファンが悲しみましたが、今もフレーズが残っているのは、ファンとしてはどこか嬉しいものです。

ちなみに「すびばせんね」は枝雀師匠の『首提灯』など酔っ払いの出てくる落語、「頭沸くねー」は同じく『船弁慶』という演目の中に出てきます。興味のある人はCDやDVDで確認してみてください。

 

7.首提灯

~あらすじ~

ある男が煮売屋(居酒屋)で飲み食いした後、細かい金が無かったため、表の露店で日本刀を購入して、その釣り銭で払いを済ませる。その後、試し切りをしたくなった男は、自宅の玄関をわざと開け放って泥棒を誘い込み・・・

~概要~

江戸(東京)と上方(関西)では導入部分が異なる噺。

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8.船弁慶

~あらすじ~

ある日喜六が留守番をしていると友人の清八が訪ねてきて芸者遊びをしに行こうと言う。喜六は妻にいつも内緒で遊びに出かけていた事やいつも驕られてばかりいたので芸者から「弁慶」と呼ばれている事を気にするが、結局また遊びに行くことにする・・・

~概要~

元々は能の演目だった。

※喜六と清八は落語の主要キャラクター。こちらのページで解説しています。

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「笑点」オープニングに登場する落語

 

1966年にスタートした日本テレビの国民的演芸番組「笑点」は、たとえ落語に興味の無い人でも必ず一度は見たことがあるでしょう。

 

 

その「笑点」の看板コーナーが大喜利です。

大喜利とは本来、寄席興行の中で行われる特別企画のことでした。

その日の出演者が揃って登場して、踊りを踊ったり、茶番(ちゃばん)と呼ばれるお芝居をしたりすることが大喜利であって、お馴染み回答者と司会者の問答形式もその一種でした。

その「笑点」のオープニングアニメで、出演者たちはそれぞれ何をしているんだろう?と思っている人も多いのではないでしょうか。

実はあれも、全部落語のワンシーンなのです。

 

林家木久扇(はやしや きくおう)師匠は『昭和芸能史』という木久扇師匠自身が創作した漫談で、昭和の名優・片岡千恵蔵のスタイルを木久扇師匠が真似ています。

 

引用:笑点(http://www.ntv.co.jp/sho-ten/) ©Nippon Television Network Corporation

▼林家木久扇

▼片岡千恵蔵

 

三遊亭好楽(さんゆうてい こうらく)師匠は『王子の狐』。好楽師匠が女性に化ける狐の役になっています。

 

▼三遊亭好楽(右)

 

三遊亭小遊三師匠は『強情灸』。江戸っ子が山盛りのお灸の熱さを我慢している場面です。

 

▼三遊亭小遊三

 

三遊亭円楽師匠は『秘伝書』。博学の円楽師匠が豆知識満載の本を売っています。

 

▼三遊亭円楽

 

春風亭昇太師匠は先ほど紹介した『寿限無』。登場人物の子供になりきっています。

 

▼春風亭昇太

 

林家たい平師匠は『二十四孝』。孝行息子が母親に「鯉を食べたい」と言われ、自分の体温で池の氷を解かしている場面です。

 

▼林家たい平

 

林家三平師匠はやはり先ほど紹介した『時そば』。失敗する方の客でしょうか?

 

▼林家三平

 

そして山田隆夫さんは『藪入り』。大店の小僧さんの衣装が似合いますね。

 

▼山田隆夫

 

この他にも、『元犬』『鰻屋』『しわいや』『笠碁』『鼠穴』『居酒屋』のワンシーンが盛り込まれています。

ちょっとした所に落語ネタをはさんで、少しでも落語に親しみを持つキッカケにしてほしいというスタッフの心遣いを感じます。どんな内容の落語か興味が沸いた人は、是非一度試しに聴いてみてください。

 

寄席で笑点メンバーに会う

 

では最後に、これら有名落語を聴きたい場合はどうすればいいのかを説明します。

「笑点」のオープニングアニメに出てくる落語も含めて、ここで紹介した落語はいずれも寄席や落語会で頻繁に演じられる落語ばかりですので、まずは寄席観覧がおすすめです。

では、寄席で「笑点」メンバーを見たい場合にはどうすればいいのか?

まず基本情報として覚えておきたいのは、「笑点」メンバーはそれぞれ所属団体が異なるため、全員が同じ寄席興行に並ぶ機会は基本的には無いということです。

木久扇師匠・たい平師匠・三平師匠は『落語協会』

小遊三師匠・昇太師匠は『落語芸術協会』

好楽師匠・円楽師匠は『五代目円楽一門会』

にそれぞれ所属しています。(団体は全部で5つあり、その他に『落語立川流』と『上方落語協会』があります)

 

落語家の団体はなぜ5つもある?

最初は明治時代に設立された落語協会だけでしたが「金銭問題」「人間関係上のこと」「落語界の改革のため」など、いろいろな理由によって分裂や統合を繰り返して今のような状態になっています。

各団体はそれぞれ独自に興行を打ったり、二ツ目や真打の昇進の決定などを行っています。

※落語初心者入門 第1章「落語家の階級」より引用

 

このうち都内の寄席に出演するのは落語協会と落語芸術協会で、10日交代で興行を受け持っています。

円楽一門会は独自に活動していますが、円楽師匠は落語芸術協会の客員もしているため興行に参加することもあります。また、寄席の特別興行などではごくたまにメンバーの中の2~3人が並ぶこともあります。

それぞれの寄席や所属団体のサイト(円楽一門会は公式サイトが無いため他の2団体)などで出演情報をチェックして、メンバーの生の落語を聴きにお出掛けください。

 

▼メンバーの所属団体と公式サイト

メンバー 所属団体 公式サイト
木久扇師匠
たい平師匠
三平師匠
落語協会 http://rakugo-kyokai.jp/
小遊三師匠
昇太師匠
落語芸術協会 https://www.geikyo.com/
好楽師匠
円楽師匠
五代目円楽一門会 なし

 

次のページでは落語を楽しむ為に知っておくといい基礎知識を有名落語演目と共にご紹介。知識とともに落語を聴いてみていただければと思います。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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落語のストーリーには多かれ少なかれ、笑える要素が盛り込まれています。中でもとりわけ笑いの要素が強い落語を「滑稽噺(こっけいばなし)」という呼び方で分類します。

このページでは、数ある滑稽噺の中から、何も考えずにとにかく笑える内容の演目を次々に紹介してまいりましょう。

 

ドタバタ系滑稽噺

 

ここでいうドタバタ系滑稽噺とは、ストーリーの中でドタバタ要素が徐々に積み重なり、クライマックスで最も笑いが大きくなる、さながら喜劇の舞台のような落語のことです。

喜劇がお好きな方はドタバタ系滑稽噺の演目を聴いてみるといいでしょう。

 

 

そんなドタバタ系滑稽噺の中で身振り手振りのオーバーアクションで笑わせる落語演目をまずは5つご紹介していきます。

 

1.ちりとてちん

~あらすじ~

知ったかぶりで何でも通な感じを出す男に対して何人かの若い男たちが腐った豆腐を食わせてやろうと企む。腐った豆腐を騙して食わせて、知ったかぶり男は苦悶の表情を浮かべるが・・・

~概要~

江戸(東京)では「酢豆腐」と呼ばれる演目。NHK朝ドラ「ちりとてちん」の由来の一つとなった演目。

【著者談】『ちりとてちん』はここがポイント!

知ったかぶりで自慢たらしい男がこらしめられる図式は、ドラマの勧善懲悪に通じます。要は落語版『スカッとジャパン』です。

※スカッとジャパン・・・フジTVで放映中(2019年3月時点)のドラマ型バラエティ番組

最大の笑い所はクライマックスの七転八倒する表情。ここだけ切り取られると、聴いてない人には絶対「いじめだ」なんだと誤解されそうですが。

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2.反対俥(はんたいぐるま)

~あらすじ~

終電に間に合うように駅に行きたい男が人力車をつかまえる。最初は病弱な男が引く人力車をつかまえる。駅までいけないばかりか時間を食ってしまってさらに急いで駅までいかなければならなくなる。次の人力車は速そうな男をつかまえる事に成功。急いで人力車を走らせてもらい駅に着くが、その人力車を引く男はスピードが速過ぎてあっという間に目的駅を通り越しており遠くの駅に着いてしまう・・・

~概要~

江戸落語(東京)では『反対俥』だが上方落語(関西)では『いらち俥』という名で呼ばれる演目。目的地を通り過ぎてたどり着く地名は落語家によってまちまち。

【著者談】『反対俥』はここがポイント!

弱弱しい人力車夫が登場する前半と、超人レベルで脚の速い人力車夫が登場する後半の対比です。加えて後半はひたすらわかりやすいアクションギャグです。光景が想像できたらなお楽しめます。

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3.たいこ腹

~あらすじ~

とあるお店の若旦那が鍼(はり)治療を習ったので試しに誰かに治療をしてみたくなる。その白羽の矢が幇間(ほうかん:お座敷などで場を盛り上げる芸人)の男へ立つ。しかしその幇間は何度もその若旦那に大変な思いをさせられてきた事を思い出し今回の鍼治療も大変な事になるのではないかとドキドキするが・・・

~概要~

春風亭小朝が若い頃に得意とした演目。

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4.四人癖

~あらすじ~

癖を持つ4人の男が互いの癖を直そうとする。鼻の下をこする癖、目をこする癖、こぶしで手のひらを叩く癖、着物の袖口を引く癖がそれぞれにある。

~概要~

多くの落語家が演じる演目。『二人癖』という演目もある。

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5.手水(ちょうず)廻し

~あらすじ~

ある宿に大阪からお客さんが泊まりに来る。そのお客さんは朝、宿の従業員に「ちょうずを廻してほしい」と言う。しかし従業員や宿にいる人間は「ちょうず」がどのようなものかわからず「長頭(ちょうず)」と勘違いしてしまう・・・

~概要~

大阪の方言で「手水(ちょうず)」とは洗面道具の事。つまり「手水を廻してほしい」とは洗面道具を貸して欲しいという意味。この演目は方言が分かっていないといけないからか、関西(上方落語)で演じられる。

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これらの演目が、爆笑落語としてはおなじみです。

上記以外のドタバタ系滑稽噺として代表的なものを以下に4つ挙げます。

 

6.寄合酒

~あらすじ~

ある男がみんなで集まってお酒を飲もうと思いつく。しかし金がないので集まったそれぞれに酒の肴を持ち寄ってもらって宴会を開こうとする。しかし皆料理が苦手な男ばかりで持ち寄ったものがとんでもないものばかりになってしまう・・・

~概要~

寄合酒は「ん廻し(別名:運廻し)」という演目の前半部分。後半部分は「田楽喰い」という演目。

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7.猫と金魚

~あらすじ~

金魚鉢で飼っている金魚が猫に狙われていると思った主人(旦那)が番頭に対して「猫を追っ払ってくれ」と頼むがなかなか番頭が上手くやってくれず・・・

~概要~

世界初の落語専門作家となった高見沢路直(PN・高沢路亭、のちの漫画家・田河水泡)が作った新作落語。落語家の初代柳家権太楼(しょだい やなぎや ごんたろう)が演じる事で広まったと言われる。

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8.代書屋

~あらすじ~

代書屋に字が書けない男が履歴書を書いてほしいと頼みにくる。代書屋がその男の代わりに履歴書を書いてやろうとするが、代書屋の質問に対してとんちんかんな答えしか返ってこないので代書屋は困り果てる・・・

~概要~

上方落語の四代目桂米団治が、自身の体験をもとにして1930年代に創作した。

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9.軒付け

~あらすじ~

ある浄瑠璃好きの男が軒付けをしようとする。軒付けとは浄瑠璃が好きな人の家に行き、浄瑠璃を軒(のき)の下で披露する事である。いざ軒付けをしようとするが浄瑠璃に必要な三味線の伴走者が来ておらず・・・

~概要~

関西で演じられる演目。(上方落語)

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これら9の演目が、滑稽噺の代表格でしょう。

ここで紹介した演目は確実に爆笑が取れるため演者も多く、寄席でよく聴けます。

ただし『5.手水廻し』と『9.軒付け』は上方落語(関西の落語)で、東京の落語家は演じません。

 

江戸落語と上方落語

落語は「上方落語」「江戸落語」で分けることができ、両者は「言葉遣い」や「演出」などが違う。例えば同じ内容の演目でもタイトルが違ったりする。

▼江戸と上方の違い一覧

江戸落語 上方落語
発祥地 江戸 関西(上方)
階級制度 見習い→前座→二つ目→真打ち なし
言葉 江戸弁 関西弁
道具 扇子・手ぬぐい 扇子・手ぬぐい・見台・ひざ隠し・小拍子
噺の演出の特徴 特になし ハメモノが入る演目が多い
江戸落語と上方落語について詳しくは「落語初心者入門」で! 江戸落語と上方落語について詳しくは「落語初心者入門」で!

 

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Q. ドタバタ系滑稽噺の中で一番好きな演目はどれですか?

A. 自分が好きな落語と言いますか、笑える落語は全部好きですので、落語初心者に勧めることを前提に考えますと、設定がわかりやすいのは『1.ちりとてちん』ですね。

あと、ドタバタ系ではその光景が容易に想像できることも笑いを倍化する要素ですので、その意味では『7.猫と金魚』もいいかもしれません。

『猫と金魚』はギャグアニメのように軽快なテンポで進行する落語なので、おのおのの頭の中で自分なりのアニメキャラを動かしてもらえればよいかと思います。

 

▼ちりとてちんを聴く

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マシンガン系滑稽噺

 

ここでいうマシンガン系滑稽噺とは、テンポのよいギャグがマシンガンのごとく連続する落語のことです。

登場人物が一人ないし二人で進行することが多いため、ギャグの量が漫才並みに多いのが特徴です。

マシンガン系滑稽噺と漫才の共通点は「笑わせ所の数とテンポの早さ」です。

漫才がお好きな方は以下に紹介する演目を聴いてみると楽しめるかもしれません。

 

まずは新作落語を7つご紹介していきます。

 

古典落語と新作落語

古典落語と新作落語の定義は諸説あるため、一概には言えませんが、理解しやすい基準としましては、作者が明確なのが新作落語で、長年にわたり不特定多数の作者の手が加わって出来上がったのが古典落語という考え方です。

その一方で、一代限りで演者が途絶えるのが新作落語、何代もの演者によって口伝され継承されるのが古典落語、という考え方もあります。その意味では、昭和に完成した新作落語の中にも、多くの演者に受け継がれて既に古典化した演目もあります。2015年に亡くなった桂米朝師匠が1950年代に自作した新作落語『一文笛』などはその好例でしょう。

 

10.結婚式風景

~あらすじ~

とある結婚式で仲人や来賓がスピーチをするがそのスピーチがめちゃくちゃなものばかり・・・

~概要~

春風亭柳昇(しゅんぷうてい りゅうしょう:故人)師匠の自作。春風亭柳昇師匠は1960年代から2000年ごろまで活躍した落語家。

『結婚式風景』はここがポイント!

結婚式のスピーチを徹底的にギャグにしています。パロディ構造(結婚式のスピーチのパロディ)は無条件に笑えるものです。

聴く人の脳内にスピーチとはどんなものかの情報がインプットされていればより楽しめるでしょう。

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11.金満家族

~あらすじ~

お金が使いきれず困っている家族のところへ、またお金が入ってきて途方に暮れる・・・

~概要~

『結婚式風景』を作った柳昇師匠の弟子にあたる昔昔亭桃太郎(せきせきてい ももたろう)師匠の自作。

『金満家族』はここがポイント!

この演目もいわば現実のパロディです。例えて言えば、ドリフターズの「もしもこんな○○があったら?」の落語版ですね。あまりに非現実的すぎて笑ってしまうという感じです。

▼ドリフターズ

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12.受験家族

~あらすじ~

浪人している息子の受験の日。息子の受験からの帰りを父親と母親は待つが話しをしているうちに息子のできの悪さがお互いのせいだと言い合いになる・・・

~概要~

昔昔亭桃太郎(せきせきてい ももたろう)師匠の自作。ファンでも聞いた事がある人が少ないと言われる。

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13.お見合い中

~あらすじ~

何度もお見合いに失敗してきた男「ジミカワ テツオ」がまたお見合いをすることに。次のお見合い相手は何でも派手な女性。全く趣味が合わず、会話も噛み合わないが・・・

~概要~

昔昔亭桃太郎(せきせきてい ももたろう)師匠の自作。

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14.宴会の花道

~あらすじ~

会社の宴会シーズン。いつも宴会では飲めない人も上司に飲まされる。そして飲まされた挙句吐きそうになると「吐くな」と怒られる。そこで飲めない男が「次は好きなお酒ではなく好きな食べ物を持ち寄って宴会をしよう」と提案し、それが採用されるが・・・

~概要~

昔昔亭桃太郎師匠と同じく柳昇門下で『笑点』の司会者として知られる春風亭昇太(しゅんぷうてい しょうた)師匠の自作。

▼春風亭昇太氏

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15.力士の春

~あらすじ~

相撲大好き両親から貴乃花の名前をとって「貴の爪」と名付けられた息子。貴の爪を関取にしようと両親は相撲教育を始めるが・・・

~概要~

春風亭昇太師匠の新作落語。この落語を原作にした絵本も発売された。

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16.愛犬チャッピー

~あらすじ~

「チャッピー」と名付けられた柴犬の目線で主人との生活を語る。人間の勝手な言動に本音でツッコミを入れるチャッピーだが・・・

~概要~

春風亭昇太師匠の新作落語。

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続いて古典落語のマシンガン系滑稽噺を4つご紹介します。

 

17.堀の内

~あらすじ~

慌て者の男が自分のそそっかしさを信仰心で直そうと毎日堀の内にあるお寺へ参拝する事を妻と決める。そして早速堀の内のお寺まで行こうとするのだが道中そそっかしすぎてなかなか参拝が始まらない・・・

~概要~

そそっかしい男のエピソード集のような話。

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18.大安売り

~あらすじ~

街で若い衆が前から歩いてきた相撲取りへ声をかける。「関取さん、この前の場所はどうだった?」「勝ったり負けたりです。」このように会話が始まるがよくよく聞いてみると・・・

~概要~

テレビタレントとしても有名な六代目桂文枝(かつらぶんし)もかつて演じていた。

▼六代目 桂文枝

By Ogiyoshisan投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

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19.色事根問

~あらすじ~

もてない男がモテ方を聞きに行く。一つ一つモテる条件を教えてもらうが自分にはどれも当てはまらない・・・

~概要~

関西で演じられる事が多い上方落語。『稽古屋』という噺の前半部分がこの演目。

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また、春になると寄席で必ず演じられる『長屋の花見』は、登場人物こそ多数ですが(2人の掛け合いではないですが)ギャグの連射具合では引けを取りません。

 

20.長屋の花見

~あらすじ~

お金の無い連中が花見をしようと思い立つ。いざ花見に来てみるとお金持ちの連中がいて、彼らとの落差に消沈する。そこで喧嘩をしているふりをしてお金持ちを追っ払い、その隙に食べ物や酒を奪う策略を考え付くが、喧嘩のフリのつもりが本当に喧嘩になってしまう・・・

~概要~

上方落語では「貧乏花見」という名前の演目。短縮して演じられたり、オチ(サゲ)がいくつかあったりする。

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著者のおすすめ!

Q. マシンガン系滑稽噺の中で一番好きな演目はどれですか?

A. 春風亭昇太師匠の新作『15.力士の春』または『16.愛犬チャッピー』でしょうか。初心者が誰にするか迷ったら「とりあえず知っている人から」といつも伝えています。(昇太師匠が『笑点』の司会者であることを知っている前提で書いていますが)

両方とも10分弱の短い落語なので、聴きやすいと思います。

 

▼力士の春を聴く

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▼愛犬チャッピーを聴く

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リズムネタ系滑稽噺

 

リズムネタ芸は現在のテレビでよく見かけますが、古典落語にもリズムネタと呼べる演目は存在します。

 

【コラム】リズムネタ系とは

リズムネタの定義の前に、かいつまんで落語を「上手く口演する」ということと、それを聴いて何を「上手い」と評価するかの関係についてご説明します。

落語は言葉を使う芸ですので、たとえばスラスラしゃべるのと、噛み噛みでしゃべるのとでは聴く側の印象度が天地ほど違います。かといって、早口すぎても聴く側に意味が伝わらないのでよくありません。

心地よいスピードで、イントネーションも明確で、さらに声のトーンの耳あたりがよいのが理想形です。これに落語の場合は「お話の内容」が加わりますから、前記の3つのポイントを上手にこなして「お話の内容」を伝えられる人が、すなわち優れた落語家さんとなるわけです。

以上をふまえまして、「リズムネタとは」です。

名人や達人と呼ばれる落語家さんは、いずれもスピードとイントネーションとトーンが優れていて、聴いていると音楽のBGMのような心地よさを感じられます。

加えて、落語では言葉を繰り返す演目と、息もつかずに言葉を一気に長々としゃべる「言い立て」と呼ばれる部分を含む演目があります。

『日本語ラップ』を想像して頂ければ、共通点が見つかると思いますが、心地よさから派生するリラックス感、そしてそこに盛り込まれる言葉や仕草のちょっとしたギャグが、笑いにつながるのです。

これから紹介する演目でいうと、前者(言葉を繰り返す演目)が『松竹梅』『高砂や』『平林』『紙屑屋』で、後者(「言い立て」と呼ばれる部分を含む演目)には『がまの油』が該当します。

それ以外に、『豊竹屋』は浄瑠璃と三味線の物真似で、浄瑠璃自体にメロディーがあります。

また『小言念仏』『夢八』はお話自体がリズムをきざんでいるので、聴いていてリズムと言葉や仕草が同化する楽しさを感じられます。

他にも三味線や太鼓によるお囃子をBGMにした落語も上方(関西)には数十種類あり、これなどはそのものズバリ、楽器演奏のリズムを使ったネタですが、カテゴリーが増えすぎるため今回は省略しました。

以上のように、聴いて心地よさを感じる落語の種類は多岐にわたり、分類すれば内容は全然違いますが、今回はこれらの演目を「リズムネタ系」ということですべてひとまとめにした次第です。

 

21.がまの油

~あらすじ~

がまの油を売る男が口上を演じる。怪しい口上ではあるがその口上で大儲けした男は飲み屋でべろべろになる。帰りがけに橋の上で口上を始めるが酔っている為変な口上を演じてしまう・・・

~概要~

元々は『両国八景』という長編落語の後半部分。ちなみに「がまの油」とは江戸時代に売られた傷などに塗る軟膏。「がま」はガマガエルの事だが「がまの油」の主成分はワセリン。

『がまの油』はここがポイント!

前述(コラム)のように息もつかずに言葉を一気に長々としゃべる「言い立て」が特徴的です。がまの油売りの口上は、笑いとは別に話芸としても聴く価値があります。

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22.松竹梅

~あらすじ~

松五郎、梅吉、竹蔵という3人が出入り先(取引先のようなもの)のお店の娘の結婚式に「名前がめでたい」という事で呼ばれた。飲み食いするだけでは失礼だと思い、何かを披露しようと考えるが・・・

~概要~

現・笑点メンバー林家木久扇(はやしや きくおう)も演じる。

『松竹梅』はここがポイント!

謡曲とか、お座敷で結婚式の余興をする生活習慣とか、現代の人には想像しにくいかもしれませんが、時代劇映画のコメディシーンと思って聴いてもらえれば楽しめるかもしれません。「昔の長屋の婚礼はこんな感じだったのか」と想像しつつ。

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23.高砂や

~あらすじ~

もの知らずな男「八五郎」が結婚式の仲人を任されてしまう。着る服も無いので隠居に着物を借りにいったところ「ご祝儀として『高砂や』を歌うといい」と言われ教えてもらうが・・・

~概要~

『松竹梅』と同様に教えてもらった歌を歌う、という噺。

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24.豊竹屋

~あらすじ~

なんでもかんでも出来事を即興で義太夫節にしてしまう「豊竹屋節右衛門(とよたけや ふしえもん)」という男がいた。そこへどんな節(ふし:義太夫節)にも即興で口三味線(くちじゃみせん:口で三味線を真似る)ができる男が現れる・・・

~概要~

別題『豊竹屋節右衛門(とよたけや ふしえもん)』『節右衛門』。義太夫(義太夫節)とは浄瑠璃の一種で節をつけて語るもの。

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25.小言念仏

~あらすじ~

主人公の老人が仏前で念仏を唱える。その念仏の合間に「小言」を挟む。ついには妻に念仏の合間に頼み事をしだす・・・

~概要~

ストーリーがあるわけではなく様々な念仏の様子を演じる演目。落語家は扇子で台や床を叩き、木魚(もくぎょ:念仏の際に叩く木製の道具)に見立てながら演じる。

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26.夢八

~あらすじ~

いつも夢ばかり見ている八兵衛、通称夢八のもとへ「そこにいるだけでいい仕事」が舞い込む。そんないい話は無いと二つ返事で仕事を引き受ける夢八だったが実はその仕事には裏があった・・・

~概要~

別題『夢見の八兵衛』。

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以下、紹介する『平林』『紙屑屋』(別題『浮かれの屑より』)は同じ言葉を連発しているうちに言葉のリズムが快感になって、それが次第に笑いを生みます。

 

27.平林

~あらすじ~

とあるお店の丁稚(でっち:使い走り)が平林(ひらばやし)さんの家に手紙を届けてくれと頼まれる。行先を忘れないように「ヒラバヤシ、ヒラバヤシ、、」と唱えながら歩くがひょんなことで名前を忘れてしまう。手紙を読もうにも字が読めない丁稚は道行く人に字を読んでもらうが「それはタイラバヤシだよ」と言われてしまう・・・

~概要~

別題『字違い(じちがい)』『名違い(なちがい)』。オチ(サゲ)にはいくつかのバリエーションがある。

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28.紙屑屋(別題:浮かれの屑より)

~あらすじ~

道楽ばかりしているため勘当された若旦那が出入り先(取引先のようなもの)の棟梁(大工)に居候をしている。居候先でも遊んでばかりいるため紙屑屋(古紙回収業)に働きに行かされる。しかしその紙屑屋でも紙屑の仕訳をしている時に歌い出してしまい・・・

~概要~

上方落語(関西)では別題『浮かれの屑より』『天下一浮かれの屑より』。関西(上方)で演じられる時には演出が変わったりする。

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さらに以下の『野ざらし』のように途中で歌が入る演目を含めれば、リズムネタ系落語は結構な数に及びます。

 

29.野ざらし

~あらすじ~

夜、八五郎の隣の部屋に住む女性が嫌いな清十郎の部屋から女の声が聞こえてくる。次の日清十郎に問いただしてみると「あれは幽霊だ」と言う。清十郎が言うには川で釣りをしていたところ頭蓋骨が落ちていたため酒をかけたら夜にその頭蓋骨の幽霊が訪ねて来たらしい。八五郎は幽霊でも綺麗な女性ならと川に頭蓋骨を探しにいくがなかなか見つからない・・・

~概要~

別題『手向の酒(たむけのさけ)』、上方落語(関西)では『骨釣り(こつつり)』と呼ばれる。骨釣りは野ざらしを元に構成されており、根本は同じだが少し話が異なる。

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著者のおすすめ!

Q. リズムネタ系滑稽噺の中で初心者におすすめするとしたらどの演目ですか?

A. 落語初心者に勧めることを考えれば『21.がまの油』でしょうか。

大道芸の口上のすごさと、ストーリー構造のわかりやすさ(後半が前半のパロディになっている)は、初心者にも楽しんでもらえると思います。

 

▼がまの油を聴く

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滑稽噺を聴くベストシチュエーション

 

最後に、ギャグ系落語を聴くにあたって、ベストのシチュエーションをお教えしましょう。

最もオススメなのは、寄席やホールの落語会で、大勢の人と一緒にライブで聴くことです。

生の落語に慣れない人は、始めこそ緊張が勝ってしまいがちですが、それでも生の落語を聴いて他の客と一斉に笑う気持ちよさは、動画サイトを見て一人で笑うのとは比較になりません。

特にリズムネタ系はライブの方が余計に楽しめるはずです。

なぜなら同じリズムに乗るにしても「集中力の度合」が違うのです。

映画や演劇を見る時、小さい画面で見るのと、目の前に広がる大空間を大音量で見るのとでは、見る側の「集中力」に大きな違いが出ます。

落語もそれと同様で、集中力が違えば高揚感も変わりますから、生でリズムとテンポのよいしゃべりを聴くと一層気持ちよくなってくるわけです。

 

 

おすすめ落語家【爆笑編】

 

現役で「爆笑派」と呼ばれる落語家さんを順不同で紹介しますと、まずマシンガン系の横綱格が2019年3月に四代目を襲名した三遊亭円歌(さんゆうてい えんか)師匠(旧名・三遊亭歌之介)。

 

▼四代目 三遊亭円歌

 

他にも爆笑派のおすすめ落語家さんは柳家権太楼師匠、三遊亭小遊三師匠、柳家喬太郎師匠、三遊亭白鳥師匠、三遊亭兼好師匠、笑福亭鶴光師匠、笑福亭福笑師匠、桂雀々師匠等々、ここには書き切れないほどいます。

もしあなたの家の近所の市民会館やホールに、ここで挙げた落語家さんが出演する落語会がありましたら、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

以上、笑えるおすすめ落語演目【爆笑編】でした。

次のページでは笑えるおすすめ落語演目【あるある編】を紹介します。

『落語の演目と知識』目次へ  (全10ページ)



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目次著者

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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