落語と言えばこの5つ! 【定番ギャグと「笑点」の落語】

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落語の演目数は数えきれないほど。そんな落語をいざ聴こうと思っても何を聴いたらいいかわからない・・・そんなあなたに好みにピッタリと合った落語演目をご紹介!落語を聴く上で知っておくといい知識も大公開!読めば落語にハマる事間違い無し!!

『読んで楽しい落語の演目と知識 ~人気の演目から泣ける演目まで~』はこちらから!

著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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エンタメ業界には「定番」と称される作品が必ずあります。

映画の「寅さん」や歌舞伎の「忠臣蔵」のように、長年贔屓にしているファンにとっては常識中の常識で、かつビギナーに対しては教科書の1ページ目のような存在のもの。それが「定番」です。

 

▼寅さん(男はつらいよ)

▼忠臣蔵

 

では落語で「定番」と呼ばれる演目となりますと、どうでしょう。

寅さんや忠臣蔵のような、全世代が知っている演目は、果たしてどれくらいあるでしょうか?

落語の場合、超が付くほど有名なタイトルは残念ながら限られます。100人が100人とも知っている落語となりますと、それこそ五本の指に収まる程度かもしれません。

そこで、ここではちょっとだけ解釈を変えて、一般的によく知られる演目に加え、「実はこの落語は定番ギャグになっていた」という演目や、あの定番演芸番組にまつわる演目など、多角的な「定番」を紹介してみたいと思います。

まずは「定番」とされる超有名な落語演目を5つご紹介します。

 

超有名な定番落語5選

 

まずは、落語に詳しくない人でもタイトルぐらいはご存知な有名落語から。

 

1.寿限無

 

一番メジャーな落語と言えば『寿限無(じゅげむ)』でしょう。

子供が生まれてお寺の住職にいろいろな名前を提案してもらった父親が、子供の健康を思う余り、その提案を全部もらってめちゃくちゃ長い名前を作り上げてしまうという、お馴染みの話です。

 

~あらすじ~

あるお家に子供が生まれた。子供にめでたい名前を付けてもらおうと住職に依頼をする。いくつも名前の案を出してもらったが、父親が全てをつなげて名前にしてしまう・・・

~概要~

昔上方(関西)では『長名』という演目名で演じられた。子供がつけられる名前は落語家によって異なる事もある。よく用いられる例は以下の通り。

「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ」

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NHK-Eテレの幼児向け番組『にほんごであそぼ』で番組開始時からフィーチャーされ、落語を知らない子供たちの間にも『寿限無』は知れ渡りました。

 

▼NHK-Eテレ『にほんごであそぼ』

(出典:http://www.nhk.or.jp/kids/program/nihongo.html)

 

寄席では昔から、入門したての前座さんが発声と滑舌の稽古を兼ねてよく演じます。構成も分かりやすいですし、長すぎる名前を繰り返すことで生じる可笑しみは全世代共通だと思います。

まだ全編ちゃんと聴いたことが無いという人は、一度聴いてみてはいかがでしょうか。

 

2.饅頭怖い

 

一方、落語の台詞が独立して有名フレーズになるパターンもあります。

友達が怖い物を言い合う落語『饅頭怖い』のオチに出てくる台詞「ここらで一杯お茶が怖い」は、聴き覚えのある人も多いでしょう。

これは饅頭が大好物の男が「俺は饅頭が怖い」と嘘をつき、友達がイタズラ心で饅頭を持ち寄ってみるとそれをペロリとたいらげてしまった、その直後に口にする言葉です。

 

~あらすじ~

街の男たちが集まって自分たちの「怖いもの」の話をしている。クモが怖い、お化けが怖い、などと言っているがその中で一人だけ「まんじゅうが怖い」と言う男がいた・・・

~概要~

広く世間に知られる人気の演目。若手の練習噺としても用いられるが、持ちネタにする名人落語家も多い。

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3.時そば

 

『時そば』の「今、何時(なんどき)だい?」も有名フレーズです。

江戸時代、ある男が一杯16文のそばを食べて支払う際、わざわざ細かい銭を1枚ずつ「ひ、ふぅ、みぃ…」と払っていく途中で「今、何時だい?」とそば屋に訊ねて1文ごまかすという話からこの演目は作られていて、落語の後半ではそれを真似た男がことごとく失敗するギャグ満載の展開になります。

 

~あらすじ~

とある男がそば屋の屋台を呼び止めた。1杯いただくと言った後、その男はそば屋の看板から割りばし、器などを褒めちぎる。気を良くした店主、そばをその男に振舞う。さらにそば、つゆをその男は矢継ぎ早に褒め、いざお勘定になった時・・・

~概要~

『刻そば』『時蕎麦』と書かれる時もある。上方(関西)では『時うどん』という演目名。多くの落語家が演じる人気演目。

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4.目黒のさんま

 

同じく江戸時代、殿様が目黒で人生初の焼きたてのさんまを食べて感激し、「さんまは目黒に限る」と言い切る落語が『目黒のさんま』です。

この落語が元となって、1990年代からは毎年9月にJR目黒駅周辺など数箇所で「目黒のさんま祭り」というイベントが催されています。

お馴染みの落語が町おこしイベントにまで派生した例です。

 

~あらすじ~

とある殿様が目黒へ出かけた際、家来が弁当を忘れてしまった。殿様一同、空腹で歩いているといい匂いがしてくる。「なんだこの匂いは?」と問う殿様に家来は「『さんま』という魚ですが、殿様が食べるような魚ではありません。庶民の魚です。」と答えるが、今はそのような事を言っている時ではないとさんまを殿様は食す。するとあまりの美味しさに殿様は感動する・・・

~概要~

演目に出てくる「目黒」は現在の目黒区であるという説と他の場所であるという説がある。

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5.芝浜

 

JRと言えばもう一つ。2018年にJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」の名前が決定した際、一般公募で3位になった名前が古典落語の名作として名高い『芝浜』でした。江戸の昔、芝の一帯はまだ海浜でした。

もし「芝浜」の名前に決定していたら、目黒のようなイベントが始まっていたかもしれません。

 

~あらすじ~

とある魚屋、腕はいいが酒飲み。酒が原因で仕事で失敗ばかりしていた。そんなある時大金の入った財布を拾う。あろうことかその金で飲み明かしてしまう。泥酔して帰り夜が明けると妻が「金も無いのにそんなに飲んで」と言う。そこで拾った財布のことを言うと「どこにそんな財布あるんだい?」と言われる。あったはずの財布がなくなっている・・・

~概要~

人情噺(感動する落語演目)の定番中の定番。

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あのギャグフレーズは落語だった?

 

テレビで有名な芸能人のギャグの中にも、出典が落語だったものがあります。何かというと、志村けんさんが「変なおじさん」のコントのオチに使う「だっふんだ」です。

 

▼志村けん

 

あのフレーズは元々、関西の爆笑王と呼ばれた桂枝雀(かつら しじゃく)師匠(故人)が演じた『ちしゃ医者』という演目の中で、医者の先生が貫録を示すためにちょっと偉そうに「だっふんだぁー」と誇張した咳払いをする声から来ています。

 

▼桂枝雀

 

枝雀師匠のファンだった志村さんが、コントの中で同じような咳払いをして真似ていましたが、それが時を経て独立したギャグフレーズに変化したのでした。

ちなみに「ちしゃ」というのはレタスの和名(萵苣)で、『ちしゃ医者』は田舎の頼りないお医者さんとその門弟の話です。

 

6.ちしゃ医者

~あらすじ~

ある時、村人が藪医者の元へ急患がいるから来てくれとやってくる。藪医者だからとその医者を手伝っている男が言うが村人は「もう死にそうだから」と診に来てもらおうとする。そこで駕籠(カゴ:医者が乗って往診に行く為のもの)を村人と手伝いの男に担がせるが途中で急患が死に村人は帰ってしまう・・・

~概要~

別題『駕籠医者』。上方(関西)の落語。

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「だっふんだ」以外にも、一時期志村さんがコント番組で多用していた「すびばせんね」(お詫びする時の「すみませんね」が酔っ払って発音不明瞭になった言葉)とか、「頭沸くねー」(嬉しさで頭の中が混乱した時の言葉)も、枝雀師匠が落語高座の中で使用していたフレーズでした。

1999年に枝雀師匠が他界された時は多くのファンが悲しみましたが、今もフレーズが残っているのは、ファンとしてはどこか嬉しいものです。

ちなみに「すびばせんね」は枝雀師匠の『首提灯』など酔っ払いの出てくる落語、「頭沸くねー」は同じく『船弁慶』という演目の中に出てきます。興味のある人はCDやDVDで確認してみてください。

 

7.首提灯

~あらすじ~

ある男が煮売屋(居酒屋)で飲み食いした後、細かい金が無かったため、表の露店で日本刀を購入して、その釣り銭で払いを済ませる。その後、試し切りをしたくなった男は、自宅の玄関をわざと開け放って泥棒を誘い込み・・・

~概要~

江戸(東京)と上方(関西)では導入部分が異なる噺。

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8.船弁慶

~あらすじ~

ある日喜六が留守番をしていると友人の清八が訪ねてきて芸者遊びをしに行こうと言う。喜六は妻にいつも内緒で遊びに出かけていた事やいつも驕られてばかりいたので芸者から「弁慶」と呼ばれている事を気にするが、結局また遊びに行くことにする・・・

~概要~

元々は能の演目だった。

※喜六と清八は落語の主要キャラクター。こちらのページで解説しています。

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「笑点」オープニングに登場する落語

 

1966年にスタートした日本テレビの国民的演芸番組「笑点」は、たとえ落語に興味の無い人でも必ず一度は見たことがあるでしょう。

 

 

その「笑点」の看板コーナーが大喜利です。

大喜利とは本来、寄席興行の中で行われる特別企画のことでした。

その日の出演者が揃って登場して、踊りを踊ったり、茶番(ちゃばん)と呼ばれるお芝居をしたりすることが大喜利であって、お馴染み回答者と司会者の問答形式もその一種でした。

その「笑点」のオープニングアニメで、出演者たちはそれぞれ何をしているんだろう?と思っている人も多いのではないでしょうか。

実はあれも、全部落語のワンシーンなのです。

 

林家木久扇(はやしや きくおう)師匠は『昭和芸能史』という木久扇師匠自身が創作した漫談で、昭和の名優・片岡千恵蔵のスタイルを木久扇師匠が真似ています。

 

引用:笑点(http://www.ntv.co.jp/sho-ten/) ©Nippon Television Network Corporation

▼林家木久扇

▼片岡千恵蔵

 

三遊亭好楽(さんゆうてい こうらく)師匠は『王子の狐』。好楽師匠が女性に化ける狐の役になっています。

 

▼三遊亭好楽(右)

 

三遊亭小遊三師匠は『強情灸』。江戸っ子が山盛りのお灸の熱さを我慢している場面です。

 

▼三遊亭小遊三

 

三遊亭円楽師匠は『秘伝書』。博学の円楽師匠が豆知識満載の本を売っています。

 

▼三遊亭円楽

 

春風亭昇太師匠は先ほど紹介した『寿限無』。登場人物の子供になりきっています。

 

▼春風亭昇太

 

林家たい平師匠は『二十四孝』。孝行息子が母親に「鯉を食べたい」と言われ、自分の体温で池の氷を解かしている場面です。

 

▼林家たい平

 

林家三平師匠はやはり先ほど紹介した『時そば』。失敗する方の客でしょうか?

 

▼林家三平

 

そして山田隆夫さんは『藪入り』。大店の小僧さんの衣装が似合いますね。

 

▼山田隆夫

 

この他にも、『元犬』『鰻屋』『しわいや』『笠碁』『鼠穴』『居酒屋』のワンシーンが盛り込まれています。

ちょっとした所に落語ネタをはさんで、少しでも落語に親しみを持つキッカケにしてほしいというスタッフの心遣いを感じます。どんな内容の落語か興味が沸いた人は、是非一度試しに聴いてみてください。

 

寄席で笑点メンバーに会う

 

では最後に、これら有名落語を聴きたい場合はどうすればいいのかを説明します。

「笑点」のオープニングアニメに出てくる落語も含めて、ここで紹介した落語はいずれも寄席や落語会で頻繁に演じられる落語ばかりですので、まずは寄席観覧がおすすめです。

では、寄席で「笑点」メンバーを見たい場合にはどうすればいいのか?

まず基本情報として覚えておきたいのは、「笑点」メンバーはそれぞれ所属団体が異なるため、全員が同じ寄席興行に並ぶ機会は基本的には無いということです。

木久扇師匠・たい平師匠・三平師匠は『落語協会』

小遊三師匠・昇太師匠は『落語芸術協会』

好楽師匠・円楽師匠は『五代目円楽一門会』

にそれぞれ所属しています。(団体は全部で5つあり、その他に『落語立川流』と『上方落語協会』があります)

 

落語家の団体はなぜ5つもある?

最初は明治時代に設立された落語協会だけでしたが「金銭問題」「人間関係上のこと」「落語界の改革のため」など、いろいろな理由によって分裂や統合を繰り返して今のような状態になっています。

各団体はそれぞれ独自に興行を打ったり、二ツ目や真打の昇進の決定などを行っています。

※落語初心者入門 第1章「落語家の階級」より引用

 

このうち都内の寄席に出演するのは落語協会と落語芸術協会で、10日交代で興行を受け持っています。

円楽一門会は独自に活動していますが、円楽師匠は落語芸術協会の客員もしているため興行に参加することもあります。また、寄席の特別興行などではごくたまにメンバーの中の2~3人が並ぶこともあります。

それぞれの寄席や所属団体のサイト(円楽一門会は公式サイトが無いため他の2団体)などで出演情報をチェックして、メンバーの生の落語を聴きにお出掛けください。

 

▼メンバーの所属団体と公式サイト

メンバー 所属団体 公式サイト
木久扇師匠
たい平師匠
三平師匠
落語協会 http://rakugo-kyokai.jp/
小遊三師匠
昇太師匠
落語芸術協会 https://www.geikyo.com/
好楽師匠
円楽師匠
五代目円楽一門会 なし

 

次のページでは落語を楽しむ為に知っておくといい基礎知識を有名落語演目と共にご紹介。知識とともに落語を聴いてみていただければと思います。

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著者:なかむら治彦

本業は4コマ漫画家兼イラストレーター。学生時代から筋金入りの落語ファン。1998年「第1回新作落語大賞」に落語脚本を投稿し、大賞を受賞。その後は「尾張家はじめ」のペンネームで落語作家兼ライターを副業に。現在、隔月パズル雑誌『漢字道』(イード)で落語4コマを連載中。著書は『落語まんが寄席』(新星出版社)他。

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