初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選をご紹介しております。

前ページでは「滑稽噺」をご紹介しましたが、落語はおもしろおかしい滑稽噺だけではありません。

夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」と呼ばれる演目が数多くあります。

そんな人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を3つご紹介します。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【人情噺編】

9 芝浜(しばはま)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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▼筆者おすすめ「芝浜」を鑑賞できる作品

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10 子別れ

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。

上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

11 藪入り(やぶいり)

あらすじ

 

奉公(=住み込みで主人に仕えること)に出た息子の亀吉が、しばらくぶりに藪入り(年に二度の休暇)で帰って来る。

その前夜、父親はそわそわして寝つけない。

「あれも食べさせたいこれも食べさせたい」とうるさいのなんの。

 

 

まだ夜が明けないうちから、今度は息子と一緒に出かけたい場所を次々と挙げていき「落ち着け」と女房にたしなめられる。

そうしているうちにやっと夜が明ける。

父親が待ちきれない様子で家の前の掃除をしているところへ亀吉が帰って来る。

立派な挨拶をする息子に両親は感動。

 

 

息子を湯屋(=銭湯)へ送り出したあと、母親が亀吉の財布に大金が入っていることに気づく。

「ひょっとしたら店の金に手をつけたんじゃないか」と疑い、帰って来た亀吉を問い詰める。

口論となって父親は亀吉に手をあげ、母親はそれを制止し泣きながら問いただすと

「このごろペストが流行っているので、ネズミを捕まえて警察に持っていったら一匹十五円の懸賞に当たった。このお金は今日まで主人に預かってもらっていたけど、今日は藪入りだから持って帰って両親を喜ばせてやれと、主人が持たせてくれた」

というようなことを答える。

 

–ネタバレ–

 

両親はそれを聞いて安心する。

亀吉に父親は「これからも主人を大切にしなよ」と教える。そして

「これもやっぱりチュウ(忠とネズミの鳴き声をかけている)のおかげだ」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

息子が帰って来るのを心待ちにする両親の心情が伝わってくる、ほっこりした気持ちになる噺です。

うきうきが止まらず、とんちんかんな言動をする父親、それを温かく見守っている母親、立派に成長した息子、たがいに相手を思いやりながらも起こってしまう、気持ちのすれ違いが聞きどころです。

 

▼筆者おすすめ「藪入り」が鑑賞できる作品

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この第2章ではおすすめ古典落語についてお伝えしました。

次の章(第3章)からは実際に落語を鑑賞する方法についてお伝えします。落語が行われている「寄席」は飲食もオーケーであり気軽に入れるところなので、ふらっと足を運んでいただければと思っております。

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選を紹介しています。

 

このページでは、ただただ笑えるおもしろい落語を3つ紹介。

落語といえばやっぱり、おもしろおかしい「滑稽噺」!

難しいことは考えずに、とにかく笑えることが落語の魅力です。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【滑稽噺編】

6 天狗裁き

あらすじ

 

家で寝ている八五郎は、笑ったりぶつぶつ言ったりしている。

それを見た女房が熊五郎を起こし「いったいどんな夢を見たんだい?」とたずねるが、熊五郎は「夢なんか見ていない」と言う。

 

 

嘘をつくなと問い詰めるが熊五郎は「見ていない」の一点張りで、ついには喧嘩になってしまう。

そこへ隣人が割って入り喧嘩をおさめる。しかし隣人もどんな夢なのか知りたくなり「女房に言えなくても、俺には言えるだろう」とたずねる。

しかし熊五郎は見ていないと言い、またもや喧嘩になるが今度は大家が来て仲裁をする。

 

女房と隣人の男を外へ出すと、大家が「親同然の大家になら言えるだろう」と迫る。

ここでも見ていないと答えると「だったら長屋から出ていけ」と無茶なことを言われ、困った熊五郎は奉行所(現在でいうところの裁判所)へ願い出る。

 

奉行の裁きにより長屋を出ていかなくてもよくなって熊五郎が喜んでいると、お奉行さまも「奉行になら喋れるだろう」と夢の話を聞きたがった。

「お奉行さまでも、見ていないものは喋れません」と答えると奉行の怒りを買って木に吊るされてしまう。

 

 

このまま死ぬのかと諦めかけたとき、一陣の風が吹いて熊五郎は飛ばされてしまう。

気がつけば山の中。

そして目の前には大天狗が立っていた。

 

 

–ネタバレ–

 

大天狗は八五郎を山奥へと連れて行くと「どんな夢だ。教えないと八つ裂きにする」と言われる。「うー、助けてくれー」と言う八号郎。

そこへ「ちょいとお前さん起きよ。どんな夢見てたんだい」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

見ていない夢のことでいろんな人から責められ、思わぬ事態に陥ってしまう熊五郎にはとても気の毒ですが、思わず笑ってしまいます。

天狗が出てくる不思議な噺ですがスピーディーな展開で飽きさせません。

そして最後のオチは秀逸だと思います!

 

【編集部コラム】実は続編がある?
「天狗裁き」は長編落語である「羽団扇」の前半部分の物語が独立した演目です。

そのため「羽団扇」では「天狗裁き」の続編のような噺を聴くことができます。「羽団扇」では、天狗に脅されていたところからなんとか脱出した後に、七福神と遭遇するという奇想天外な展開になっています。

 

▼筆者おすすめ「天狗裁き」が鑑賞できる作品

⚫特選!!米朝落語全集 第四集(DVD)

 

 

7 粗忽長屋(そこつながや)

あらすじ

 

同じ長屋に住む、八五郎と熊五郎は兄弟のように仲がいい。

ある日、日課である浅草の観音様詣に来た八五郎はその帰りに道端の人だかりに気づく。人だかりに聞くところ、行き倒れだという。

死体を確認した八五郎は「こいつは今朝会った熊五郎だ」と言う。

 

 

しかし役人は「こいつは昨晩からここにいるから、お前が言ってるのとは別人だ」と説明するが、熊五郎は「当人は死んでるのを忘れてんだよ、当人をここへ連れて来るよ」などと言い残し、急いで長屋へ戻った。

 

八五郎から話を聞いた熊五郎は「そんなはずはない」と反論するが「お前は粗忽者(そそっかしい人)だから自分が死んだことに気づいてないんだ」などと言われ、納得してしまう。

自分の死体を引き取るために、熊五郎は八五郎と一緒に浅草観音へ向かうのだが・・・。

 

–ネタバレ–

 

死体を確認した後、死体が自分であると熊五郎は納得してしまう。

死骸を2人で持ち上げようとすると役人に、「(死骸は)お前さんじゃないんだから」と諭される。

「いいから遠慮するな、自分の死骸なんだから」と遠慮せずに死骸を抱いてしまうことを促す八五郎。

すると熊五郎が

「でも兄貴、なんだかわからなくなっちゃった。抱かれているのはたしかにおれだけれど、抱いてるおれは、一体どこのだれなんだろう」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「当人が自分の死体を引き取りに行く」という、あまりに不思議な噺ですが、八五郎と熊五郎のすっとぼけたやりとりが最高に面白い落語です。

粗忽者(そこつもの)とは「そそっかしい人」のことで、落語には「粗忽の〇〇」という演目がたくさんあります。

その粗忽シリーズの中でも個人的に一番好きなのが「粗忽長屋」です。

ぜひこの不思議でバカバカしい世界観を味わってください。

 

他の粗忽シリーズの例

⚫粗忽の釘

上方落語では「宿替え」として演じられる。江戸落語では「粗忽の釘」。そそっかしい男が引っ越しを行い、トラブルを起こす噺。

⚫粗忽の使者

原話は1701年に出版された「軽口百登瓢箪」に収録された話。「尻ひねり」とも呼ばれる演目。粗忽者の侍が使者として偉い人の屋敷に出向きトラブルを巻き起こす。

 

▼筆者おすすめ「粗忽長屋」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平 落語集「粗忽長屋」「干物箱」(CD)

 

8 代書屋

あらすじ

 

自分で字が書けない男が、代書屋(=本人の代わりに書類や手紙などの代筆を行う商売)のもとに履歴書を代わりに書いてくれとやって来る。

代書屋はさっそく仕事に取りかかるが、何を聞いてもトンチンカンな答えばかりで一向に前に進まない。

 

 

名前、生年月日、住所、何ひとつまともに答えることができない男に困り果てながらも、必死に履歴書を完成させようと代書屋は四苦八苦。

果たして履歴書は完成するのか・・・。

 

–ネタバレ–

 

これ以上聞いても意味がないと思った代書屋は、最後に「賞罰」を聞く。

罰がないかを確認するために聞いたが実は賞があると言う「大きな賞状もろて、新聞に写真入りで載った」と聞いて代書屋は驚く。

「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を八十六食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り・・・・・」

「そんなアホなこと書けるかいな」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

もとは上方落語ですが現在は東京の落語家も演じています。

昭和の初めに四代目・桂米團治が作った新作落語ですが、今では古典に近い演目となっており多くの落語家が演じています。

 

▼四代目・桂米團治

 

代書屋は何人かの客が出てくる噺ですが最後までやることは希で、ほとんどが一人目の客のくだりで噺を切ります。(上記ネタバレ部分は一人目の客のくだりまで紹介)

とにかく笑いどころ満載の落語ですっとんきょうな掛け合いは爆笑ものです。

 

▼筆者おすすめ「代書屋」が鑑賞できる作品

⚫柳家権太楼2「不動坊火焔」「代書屋」-「朝日名人会」ライヴシリーズ22(Amazon Music Unlimited)

 

このページでは滑稽噺を紹介してきました。落語には夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」があります。次のページでは人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を紹介します。

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ここまでの第1章では落語の基本的な情報をお伝えしてきました。

この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの11の古典落語をご紹介します。このページでは【定番編】と題して「定番の落語」と「個人的におすすめしたい落語」を紹介します。

古典落語の演目の数は現在寄席で演じられているのは200~300くらいと言われており、やる人がほとんどいないものも全部合わせると、その数は500とも800とも言われています。その中から厳選しておすすめします。

 

「古典落語って何?」などの演目の基礎知識は第1章で解説!(現在は第2章)

 

定番落語

 

まずは誰でも演目名だけは聞いたことがあるであろう有名な定番古典落語をご紹介します。とてもわかりやすくて短い噺ばかりなので、古典落語初心者でも楽しめますよ!

 

1 寿限無(じゅげむ)

あらすじ

 

とある若夫婦に男の子が生まれる。

息子に長生きしてほしいから縁起の良い名前をつけたいと、父親の八五郎は寺の和尚に相談しに行く。

和尚はいくつもの名前を候補として提案。

八五郎は「どれもおめでたいから全部つけちゃえ」ということで、息子はとんでもなく長い名前になってしまいます。

 

▼つけられた名前(一例)

寿限無、寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末食う寝る処に住む処 藪ら柑子の藪柑子 パイポ パイポ パイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助 

 

縁起の良い名前のおかげか息子はすくすくと成長するが、両親や友達など周りの人たちは長い名前をいちいち呼ばなければならない。

 

–ネタバレ–

 

大きくなってわんぱくになった息子。ある日「八五郎の息子になぐられてこぶができた」と八五郎の家にいいつけにきた子がいた。

「あーん、あーん、あのねぇ、おばさんのところの寿限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助が、あたいのあたまをぶって、こんな大きなこぶができたよ」

「あらまあ金ちゃんすまなかったね。あんたきいたかい、うちの寿限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助が金ちゃんのあたまにこぶをこしらえたんだって」

「じゃあなにかい、うちのうちの限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助がこぶをこしらえたっていうのか。どれ金坊見せてみろ。こぶなんかないじゃないか」

「あんまり名前が長いから、こぶがひっこんじゃった」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

長い名前が引き起こしてしまうドタバタがシンプルで面白い噺です。

この噺を聴けばあなたも必ず「じゅげむじゅげむ~」と口にしたくなるはずです!

 

筆者おすすめ「寿限無」が聴ける作品

古典落語である「寿限無」を聴くなら林家たい平さんのCDがおすすめです。

▼林家たい平

人気演芸番組『笑点』でお馴染みのたい平さんですが、古典落語をこれほどわかりやすく演じてくれる落語家は他にいないと思います。たい平さんのCDは古典落語初心者の方にはおすすめなのです。

▼林家たい平落語集 たい平のはじめの一歩(CD)

 

2 まんじゅうこわい

あらすじ

 

町内の若い男たちが集まって嫌いなものや怖いものについて話をしている。

ずっと黙っている辰さんに、どんなものが怖いかと聞いたら

「こわいものなんかない」

と答える。

 

腹が立った男たちが本当にないのかとしつこく聞くと、辰さんは「まんじゅうが怖い」と打ち明ける。

それを聞いた男たちは「ちょいといたずらをしてやろう」と計略を練る。

辰さんを脅かしてやろうと菓子屋から大量に饅頭(まんじゅう)を買ってきて、まんじゅう攻めにするが・・・。

 

 

–ネタバレ–

 

饅頭と聞いただけで震えだす辰さんは、布団をかぶって寝てしまう。

男たちは辰さんを怖がらせようと「気付け薬だよ」と言って枕もとに大量の饅頭を置く。

男たちが辰さんを見てみると「まんじゅうが怖い」と言いながら辰さんは饅頭を食べている。

してやられた男たちは辰さんに問う「オイ!食うのをやめろ!本当は何が怖いんだ!?」

「ここらで渋いお茶が一番怖い」と辰さんは答える。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

自分を酷い目に遭わそうとしていることを知ってか知らずかわかりませんが、まんまと連中を騙してしまう辰さんの頭の良さに思わず感心してしまいます。

小学校に呼ばれた落語家が子供たちの前で演じることも多い、万人を楽しませる秀逸な落語です。

 

筆者おすすめ「まんじゅうこわい」が聴ける作品

「まんじゅうこわい」は桂文珍さんがおすすめです。

桂文珍さんは、1980年代以降「ニューウェーブ落語」と称したパフォーマンスがヒットしテレビ17本のレギュラーを持つようになりました。

独演会のチケットは入手困難と言われています。そんな文珍さんの「まんじゅうこわい」を是非お聴きくださいませ。

▼桂文珍(15)「宿替え」/「饅頭こわい」-「朝日名人会」ライヴシリーズ28 Live

 

3 時そば

あらすじ

 

天秤棒をかついで歩くそば屋を、ある男が呼び止める。

 

▼天秤棒をかつぐ人

 

男はそばを注文。男は、割り箸・どんぶり・つゆ・麺、とにかく何でもかんでも褒めまくりながらそばを食べる。

男は食べ終わり、勘定を支払う時になって

「細かい銭で払う。手の上の銭を置くから手を出してくれ」

と言い、一枚一枚銭を店主の手の上に置いていく。

「十六文だったね。ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな、やー」

と8まで数えたタイミングでそば屋の店主に「今何時だい?」と尋ねる。

「9時」と店主が答えると、9を飛ばして「とお、じゅういち、じゅうに・・・」と数えはじめて勘定をごまかす。

 

 

その様子を陰からこっそり見ていた男がいた。

翌晩、男は小銭を用意し、昨晩見たの男の真似をしようとそばを食べに出かける。

昨晩の男のと同じように振る舞おうとするが、どうにもうまくいかない。

そして勘定を支払う段になって・・・。

 

–ネタバレ–

 

「じゃあいいかい、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、いまなんどきだい?」

「へえ、四刻(よっつ)で」

「いつつ、むっつ、ななつ、やっつ・・・」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「時そば」は上方落語の「時うどん」が東京に移植されてできた噺で、内容はほぼ同じです。そばをすするリアルな描写も楽しめます。

 

「時そば」をより楽しむための豆知識
「時そば」は江戸時代を舞台に描かれている噺です。当時は長屋(ながや)と呼ばれる集合住宅にひとり暮らしをしている男性がたくさんおりそば屋さんは繁盛していたそうです。
筆者おすすめ「時そば」が聴ける作品

「時そば」は柳家小三治(やなぎや こさんじ)さんの作品がおすすめです。

小三治さんは存命する唯一の人間国宝の落語家であり「最後の名人」とも称されています。飄々とした表情でぶっきら棒にしゃべる語り口や、芸に厳しい姿勢などもあり「孤高の落語家」とも呼ばれています。

▼落語名人会(37)~柳家小三治13 初天神/時そば(CD)

▼柳家小三治さんについては第4章で詳しく紹介しています!(現在第2章)

個人的におすすめな古典落語

 

ここからは私が初心者の人に個人的におすすめしたい古典落語をご紹介します。

 

4 はてなの茶碗

あらすじ

 

京都清水のとある茶店で、京都一の目利きと言われる「茶金」という男が茶を飲んでいた。

茶金はふと茶碗に目を止め、不思議そうにひねくり回しながら「はてな?」とつぶやく。

これを見ていた油屋(油を売る商売人)の男。

 

 

あの茶金が注目するなら値打ちがあるものに違いないと、半ば強引に茶店の主人から茶碗を買い取る。

 

その後、油屋は茶金の店に茶碗を持って行き、茶碗を見てもらうが「値打ちがない」と言われてしまう。

油屋は茶店で「茶金さんが不思議そうに茶碗を見ていたところを見ていた」と伝えると、茶金は「この茶碗はどこも割れていないのに水が漏れるのが不思議だった」と言い、油屋はがっかりする。

気の毒に思った茶金は茶碗を買い取る。

そしてこの茶碗のことを周囲の人間に話すと「割れていないのに漏れる茶碗の話」があっという間に広がる。関白という地位の高い人の耳に入り、この茶碗についての句を詠み上げるなどをして茶碗の価値が上がる。そして最終的に千両で売れてしまう。

 

–ネタバレ–

 

茶金さんは千両の半分を油屋に渡す。喜ぶ油屋。

数日後、茶金さんの店を訪れる油屋。

そして「十万八千両の儲けや!」と言う油屋。茶金さんが「なんやて?」と驚くと「水瓶の漏れるやつ。見つけて来た」と油屋。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

価値のないはずの安い茶碗にどんどん値がついていく過程が面白い。

最後にまた油屋が現れる、楽しいオチ(サゲ)にも注目です。

 

筆者おすすめ「はてなの茶碗」が聴ける作品

「はてなの茶碗」は桂米朝さんの作品がおすすめです。

上方落語界初の人間国宝の米朝さん。巧みな話術とギャグセンスに溢れた米朝さんの「はてなの茶碗」を是非堪能ください。

▼特選!!米朝落語全集 第四集(DVD)

 

5 松山鏡

あらすじ

 

鏡のない松山村に、「正直正助」という男が住んでいた。

親孝行な正助の評判が領主に届き、ごほうびがもらえることに。

望みを聞かれた正助は、死んだ父親にもう一度会いたいと言う。

 

 

すると領主は、箱に入れた鏡を取り出す。

正助が箱の中を覗くと中の鏡に正助の顔が映る。

鏡を知らない正助は、父親に会えて大感動。

 

 

領主は他人には見せないようにと申しつけ、箱に入った鏡をほうびとして与える。

正助は納屋(=物置小屋)のつづらの中に箱を隠し、毎朝、毎晩、そこへ足を運び、鏡に向かって話しかける。

 

▼つづら


By Ocdp投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

それを不審に思った女房のお光が、正助の留守に納屋へ行き、つづらのふたを取って鏡に映った自分の顔を見る。

同じく鏡を見たことがないお光は、正助が女をかこっていると思いこみ、帰って来た正助を問い詰め、夫婦ゲンカに発展してしまう。

 

–ネタバレ–

 

ちょうど表を通りかかった尼さんが夫婦喧嘩の仲裁に入る。

事情を聴く尼さん。女房のお光は「あれは女だ」と言い、正助は「あれは父だと」言う。尼さんが「自分が会ってよく言い聞かせる」と鏡を覗く。

そして尼さんが「ふふふ、お光よ、正さんよ、喧嘩せねえがええよ。おめえらがあんまりえれえ喧嘩したで、中の女ぁ、尼になって詫びている」と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

鏡が珍しい時代ならではの噺です。

出てくる人物がすべて善人で、ほのぼのとした世界観が味わえます。

 

次のページでは、ただただ笑えるおもしろい落語である「滑稽噺」を3つ紹介したいと思います。

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Endless SHOCKのみどころ⑤ 夜の海

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「Endless SHOCK(エンドレスショック)」は堂本光一さん主演の日本一チケットが取れないと言われているミュージカル。「フライング」「階段落ち」などの演目も素晴らしいですが、ストーリーの素晴らしさをもっと知っていただきたい。帝国劇場での鑑賞経験はございませんが、精一杯魅力をお伝えします。

「『Endless SHOCK』入門 ~堂本光一主演ミュージカル~」はこちらから!

著者:しあ

40代後半女性。Endless SHOCKは博多座にて多数鑑賞。ライブが大好きで今まで行ったライブは数百本。全部チケットの半券をとっているのでとても大切な想い出です。私の好きなアーティストの魅力を知っていただければ、と思います。

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Endless SHOCK(エンドレスショック)はストーリーが素晴らしいです。また、演目も素晴らしいものであり「ストーリーと演目の相乗効果」によって素晴らしい舞台になっていると思います。

このページではEndless SHOCKの中でも、特に感動的な演目「夜の海」についてご紹介します。

 

「夜の海」について

 

夜の海は、Endless SHOCK 2幕のクライマックスで上演される、とてもとても感動的な美しい演目です。

 

光一さんがジャニー喜多川社長(=ジャニーズ事務所の社長)に「夜の海」を演目にと提案したところ「こんな暗い曲をラストに持ってくるなんて信じられない」と言われたそう。

でも、ここでぶつかっておかなければジャニーさんを超えられないと感じ、

「絶対良いシーンになるからやらせて。」

と想いをぶつけたとの事。

 

今では「夜の海」は、Endless SHOCKを代表する曲となっており、ファンの間でも大人気。

Endless SHOCKグッズとして、オルゴールにもなりました。

“Endless SHOCKのみどころ⑤ 夜の海” の続きを読む

Endless SHOCKのみどころ④ 殺陣・階段落ち

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「Endless SHOCK(エンドレスショック)」は堂本光一さん主演の日本一チケットが取れないと言われているミュージカル。「フライング」「階段落ち」などの演目も素晴らしいですが、ストーリーの素晴らしさをもっと知っていただきたい。帝国劇場での鑑賞経験はございませんが、精一杯魅力をお伝えします。

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40代後半女性。Endless SHOCKは博多座にて多数鑑賞。ライブが大好きで今まで行ったライブは数百本。全部チケットの半券をとっているのでとても大切な想い出です。私の好きなアーティストの魅力を知っていただければ、と思います。

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Endless SHOCK(エンドレスショック)はストーリーが素晴らしいです。また、演目も素晴らしいものであり「ストーリーと演目の相乗効果」によって素晴らしい舞台になっていると思います。

このページでは「殺陣/階段落ち」の演目についてお伝えいたします。 

 

殺陣シーンについて

 

Endless SHOCKの中でも大きな話題となっているのが、約15分ほどに渡って行われる激しい殺陣のシーン。

 

Endless SHOCKでは堂本光一さん、キャスト全員が本格的な殺陣にこだわって、このシーンを創り上げています。

動きの激しさと手数の多さは、実際に生で観るとその迫力に圧倒されます。

しかも、舞台が上がったり下がったり回ったりするのです。

その中で行っているのですから、一歩間違えば大事故につながりそうな場面なんです。

 

アクション・コーディネーターの諸鍛治裕太さんが、光一さんに殺陣の指導を始めたのが2004年頃。

 

諸鍛治裕太(もろかじ ゆうた)
1965年生まれ。映画・ドラマ・舞台と数々のアクションのコーディネートを行う。手掛けた作品に映画「バトル・ロワイヤル」「あずみ」、ドラマ「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」などがある。

 

その時に殺陣の激しさに光一さんが倒れたそうですが、「俺できる。俺ガンバレ俺ガンバレ。」と自分に言い聞かせていたそう。

その姿に諸鍛治さんは感動したとの事。

「あれはすごい、やめたいじゃなくて、自分に活を入れている姿には脱帽。」

と語っていました。

 

そんな殺陣のシーンをご紹介します。

ちなみにニュースなどでよく取り上げられる「階段落ち」のシーンも、この殺陣のシーンの中の一コマです。こちらも合わせてご紹介します。

 

–以下ネタバレ的な内容を含みます–

ネタバレしたくない方のための「みどころまとめページ」は下記より! ネタバレしたくない方のための「みどころまとめページ」は下記より!

 

 

殺陣/階段落ち 登場シーン解説

 

下記では、演目「ジャパネスク」にて行われる殺陣シーンについて解説いたします。また、こちらの「ジャパネスク」では殺陣シーンと共に行われる「階段落ち」も見どころなのです。

 

 

「殺陣シーン」は、Endless SHOCKの1幕最後の演目、ジャパネスクで行われます。

 

リカ演じるお姫様がウチ(コウイチのライバル)陣営にとらわれ、それをコウイチ陣営が助けるという劇中劇が行われます。

 

「Endless SHOCK」のあらすじ
Endless SHOCKは、ブロードウェイを目指す主人公「コウイチ」率いるカンパニー(劇団のようなもの)の物語。仲間との衝突、和解を繰り返しながら、皆と心を一つにshowに自分の全てを捧げていくコウイチの姿が描かれている。「現実の芝居部分」と「劇中劇」とで物語は進行していく。

 

殺陣に入る前に光一さんは客席から登場します。

ウチが客席に向かって矢を放つ、それを客席後方でコウイチが手で取り阻害する。

コウイチがステージに駆け上がり、激しい戦いが始まる。

キャスト全員休む暇なく激しい殺陣の連続です。

 

光一さんは、このジャパネスクでは

「ウチとコウイチの気持ちのぶつかり合い。それを殺陣という物を通して表現している。」

と語っています。

 

この場面は観ているこちらも苦しくなる。

殺陣の迫力と共に、気持ちが伝わるからか、私はとても辛い気持ちになってしまいます。

なので、1幕終わった後には観ているだけだったのに、ぐったりします(笑)

でも、周りの人たちも疲れたように「はぁ~っ」と言っているので、同じ気持ちかもしれません。

 

【シーン解説!】殺陣の迫力と共に伝わってくる気持ち

この演目「ジャパネスク」では殺陣の前に出トチリしたウチの怒りをきっかけに、コウイチと激しく言い争いをしていてお互いの気持ちをぶつけあっています。

コウイチはカンパニーのリーダーとして、常にいろんなことを考えている。こうすればよくなる、ああすればよくなる、と。

そんなコウイチにウチは「お前のせいでみんなふりまわされてるんだ。」「またShow must go onかよ。続ける続けるって何を続けるんだよ」と言い、コウイチは「立ち止まったらそこですべてが終わってしまう」と言う。

そんな二人のすれ違い、対立が殺陣を通して表現されていると思います。

殺陣を通して、お互いの気持ちがぶつかり合っている、その気持ちが強く伝わってきます。

また、コウイチが相手側にボコボコにやられながらも何度も立ち上がる姿が「Show must go on 」の精神と重なり涙が出ます。

 

そして大階段が現れ、最上段にはとらわれたお姫様とウチが。

コウイチは階段を上がっていき、お姫様を助けるためウチと戦います。

 

そこでウチが刀を(わざと)落としてしまい機転を利かせた仲間が予備の刀をコウイチに渡します。

受け取ったコウイチは、それが真剣(本当に切れる剣)だと気づき驚く。

「Show must go on 何があってもショーを続けるんだろ?さあ、続けてみろよ」

と言わんばかりのしてやったり顔のウチ。

 

コウイチは、そんなウチの目の前に刀を突き刺し、

「抜けよ。抜けーーーーー!!」

とウチを挑発。

 

コウイチの「来い。」という言葉に驚くウチ。

しかしその迫力にパニックなり、ショーを続けコウイチを刺してしまう。

この出来事にウチはうずくまり泣き叫ぶ。

コウイチは「続けろー」と言い、自ら階段上で刀を掲げポーズ。

そして真剣で刺された血まみれのコウイチは、階段の最上段から転がり落ちてしまう。

 

▼階段落ちのイメージ

 

転がり落ちてもコウイチは最後までショーを続け、気力を振り絞り立ち上がり、手を上げ勝利のポーズをとって終演。

帝国劇場では奈落(=舞台の真下にあるスペース)に落ちますが、博多座では後ろに倒れ幕が下ります。

 

【筆者に聴きました!】階段落ちのここがすごい!
階段落ちは転がるのは割と簡単で、止める方が難しいそう。光一さんは階段落ちの際、下から5.6段目の階段で、転がりながら足で階段をダンっと踏んでブレーキをかけるそう。

そうしないと、ステージ下まで転がってしまうかもしれないから。冷静に転がっていることに驚きます。かすり傷や打撲はあるにせよ、大きな怪我がない事に感心します。

 

演目「ジャパネスク」前の楽屋シーンでは、演目「SOLITARY」の「ラストが暗くないか?」と仲間に言われたコウイチが「次のジャパネスクが、ハッピーエンドだからこれくらいでいいんだよ。」と語っています。

なので本来なら(事故が無ければ)、お姫様を助けウチ陣営をやっつけ、ハッピーエンドなのかな、と思います。

 

余談ですが、コウイチが階段最上段で壁を背にしてウチに刺されるシーン、光一さんの頭付近から血が噴き出します。

これは後ろの壁から噴き出しているのですが、その後光一さんの顔も血まみれになるんです。

それってどうやって?と思っていたのですが、2階席サイドの席から見ると光一さんが自分で顔に血糊を塗ってるのがわかりました。

壁の後ろの小さい穴から誰かが黒いスポンジを光一さんに渡して、前に立ちはだかっている内さんの陰に隠れ、下を向いてそのスポンジを顔に塗り、そのまま下に落としていました。

その場面を初めて見た時、こんな壮絶なシーンを演じながらも、冷静に段取りをしていることにちょっと驚いてしまいました。

 

殺陣のシーンは迫力があるだけではなく、コウイチとウチの気持ちが伝わってきてとても感動します。

次のページでは、クライマックスで上演される、特に感動的な演目である「夜の海」についてお伝えします。

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落語の演目の基礎知識 【古典落語と新作落語の違い】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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落語の演目は「古典落語」「新作落語」に分けられる

 

落語の演目の種類は「古典落語」と「新作落語」に分けることができます。

古典落語と新作落語の違いは何を基準に区別するのかというと、一言でいえば「年代」です。

「古典落語」は江戸中期から明治にかけて作られた演目で、「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のことを指します。

 

 

以下では、古典落語と新作落語の特徴について詳しく解説していきます。

 

古典落語とは

 

古典落語とは「江戸中期から明治にかけて作られた演目」を指します。

 

古典落語は、決まった同じネタを色々な落語家さんが何度も行います。

ネタは、昔の落語家さんから新しい落語家さんへと引き継がれていきます。

長い年月をかけて師匠から弟子に受け継がれていくなかで、それぞれの時代の落語家によって練り上げられ、洗練されていくので、現代人の心にも響く名作が多いのです。

 

【編集部コラム】古典落語の進化
古典落語は先代から受け継がれてきた噺を全く同じに演じるという訳ではありません。ストーリーの大まかな流れは変わらなくても自分なりのアレンジを加え、登場人物の言葉遣いが変わったり、オチが変わったりすることがあります。そうして練り上げられているからこそ、現代人の心に響く名作が多いのです。

 

古典落語の演目の多くは江戸時代が舞台で、江戸庶民の暮らしぶりや江戸の文化、風俗を取り扱っているものが多くあります。

 

 

古典落語の数

 

演目の数ははっきりとはわかりませんが現在寄席で演じられているのは200~300くらいと言われており、やる人がほとんどいないものも全部合わせると、その数は500とも800とも言われています。

古典落語の多くは作者不明で、一部の演目を除いてそのほとんどは誰が作ったのかわかりません。

 

古典落語の種類

 

古典落語をジャンル分けすると、「滑稽噺」と「人情噺」の2種類があります。

 

滑稽噺

 

滑稽噺は「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」のことです。

間抜けでドジな与太郎や、口が達者な江戸っ子、ぐうたらな若旦那などが活躍する噺でそのユニークな言動におかしみが滲み出て笑えます。

 

与太郎
落語に登場する架空の人物。楽天的な性格で失敗ばかり。「愚か者」の代名詞となっている。

 

一般的に落語と聞いてイメージするのはこの滑稽噺のほうでしょう。

 

滑稽噺のおすすめの演目は「天狗裁き」「粗忽長屋(そこつながや)」「代書屋(だいしょや)」です。こちらの演目については次の章(第2章)で解説いたします。

 

人情噺

 

人情噺は「ストーリー性を重視し、心温まる人情を描いた落語」のことをいいます。

扱うテーマは、夫婦愛や親子愛、友情がメインです。

オチはあるものとないものがありますが、あったとしても、取ってつけたような地口オチ(じぐちおち:ダジャレ)になっていることが多いです。

人情噺でおすすめの演目は「芝浜」「子別れ」「藪入り(やぶいり)」です。

こちらの演目についても次の章で解説しています。

 

古典落語の魅力

 

はじめに」でもお伝えしましたが「古典」と名前に付いていますが、特別な知識なく楽しめます。

江戸や明治、古典落語の世界に生きる人々の、のんびりとした日常に触れるのは「情報過多でストレスが多い現代人だからこそ価値がある」と考えています。

心が楽しいときでも寂しいときでも、古典落語がそばにあるだけでちょっとラクになれる、そんな不思議な力が古典落語にはあると私は思っています。

 

古典落語の魅力は「はじめに」のページで詳しく解説!

 

新作落語とは

 

「新作落語」は大正時代以降に作られた演目のこと」を指します。また「創作落語」ともいいます。

落語家自身による創作が多いですが、落語作家が作ったものもあります。次々に作られるので、数を把握することは不可能です。

 

落語作家
落語の脚本を作る人のこと。昭和のラジオやテレビの時代に演芸番組に携わり、台本を提供していた。現在で言う放送作家のような立ち位置。「玉川一郎」「古城一兵」らが活躍した。

 

新作落語はその時代の旬のトピックや時事ネタを取り入れて作られることが多いので、古典に比べて内容がわかりやすく、落語初心者でも爆笑できるという特徴があります。

 

 

新作落語の楽しみ方

 

また、作者である落語家独自の世界観が色濃く反映されるので、バラエティ豊かな噺を楽しむことができます。

基本的に噺の舞台は現代ですが、未来を描いたり、異次元の世界を描いたものなどもたくさんあり、「とにかくおもしろければいい!」といった感じで次々と生み出されています。

現代を描くだけが新作ではなく、稀ではありますが、江戸を舞台にした作品もあり、これを「まげもの新作」と呼びます。

落語家には、古典しかやらない人もいれば、新作専門の人もいますし、古典も新作も両方やるという人もいます。最近では古典と新作のボーダーがあまりなくなり、両方やるという落語家も増えてきています。

 

古典と新作両方やる落語家
柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)さんは、古典と新作どちらも行います。新作落語では独自の世界観で楽しませてくれる爆笑必至です。また、古典落語にも定評があり喬太郎さんならではの解釈や演出を加え「喬太郎の古典」にしてしまうところがあります。喬太郎さんの魅力の解説は第3章にて!(現在第1章)

 

新作落語はどちらかというと、肩の力を抜いて聴ける爆笑ネタが多いですが、落語である以上は、やはりそこには普遍的なテーマやストーリー(夫婦愛、親子愛、友情、生と死、出世劇、逆転劇、転落人生など)があります。

 

時代を選ばないテーマやストーリーであるからこそ、演じられるたびに洗練されていき、将来的にはそれが古典と呼ばれる演目になり、後世までずっと残り続けていく可能性もあります。

新作落語を演じる落語家は、それが古典になることを目指しているというわけではありませんが、そうなる可能性があるという意識で聴いてみるというのも、新作落語の楽しみ方のひとつだと思います。

 

▼筆者おすすめ新作落語、春風亭昇太さんの「力士の春」収録作品

⚫落語 The Very Best 極一席1000 ストレスの海/力士の春(CD)

 

次のページでは「江戸落語」と「上方落語」の違いについてお伝えします。内容は同じでも、江戸落語では「時そば」上方落語では「時うどん」と演目のタイトルが違ったりするのです。

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【落語作品が数多く聴ける。無料体験あり】

 

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著者:ミドケン

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