【街なか】の身近な昆虫を観察してみよう

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

國谷正明氏による『身近な昆虫の観察入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
facebook(國谷)

 

『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第2章)では一歩踏み込んで、実際に自然のなかに足を運ぶことを想定して【山野】【水辺】【街なか】【】とフィールドのタイプ別に、比較的簡単に見つけることのできる虫の種類と観察のポイントをお伝えしていきます。

このページでは【街なか】の昆虫を紹介します。

点在する公園内に緑地や場所によってはため池が整備されている市街地では、住宅街の只中でも多様な生き物の姿を観察することができます。

身近にいる昆虫を見つける喜びを体験し、観察することで昆虫との触れ合いを楽しんでいただければと思います。

 

シミ


By Syonnbori投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link 

名称 ヤマトシミ
大きさ 体長 約10mm
出現時期 1年中
分布 日本全土
いる場所 家・本棚

 

シミは家のなかでよく見ることのできる昆虫で、一般に害虫として扱われています。

書籍の装丁の糊付けされた部分を食す性質があり、また金属光沢のある鱗粉をまとい身をくねらせて動く姿が魚のように見えることから、漢字で「紙魚」と表されます。

書籍、特に古書を好んで食害し、また衣類やコメなどの穀物を食すこともあります。ただ、害虫として及ぼす被害はそれほど大きくはなく、どちらかというと外見や動きに起因する「不快害虫」としての側面が強いといえます。

 

【編集部の昆虫豆知識】本を食べる昆虫
シミは「本を食べる昆虫」として有名ですが、表面をなめるように、かじりとるように食べるのでポッコリと穴が開くようなことはありません。

同じく本を食べる虫として知られているのが「シバンムシ(死番虫)」です。シミと違って、トンネルを掘るように食べるので本に穴が開いてしまう可能性があります。またシバンムシは畳に穴を開けたりもします。

 

シミは夜行性で光を嫌う性質があるため、段ボール箱や収納の内部などで見つかるケースが多いですが、当然すべての家にシミが棲息しているはずもありませんので、長年住んでいて見たことがないのであれば発見できる確率は低いでしょう。

ゴキブリのように衛生的な問題もなく、噛む・刺すなどの攻撃を加えてくることもありませんので見つけたら、時にはぜひ手に取って観察してみてください。

シミは昆虫類のなかでも特に原始的な生き物であるといわれ、長い間その姿を変えていません。

このように性質を理解し、生物学的な分類を知ることで、一般に害虫といわれる生き物もその魅力が見えてくるのではないでしょうか。

 

アシナガバチ


photo by 孫鋒 林 Some rights reserved Link

名称 キアシナガバチ
大きさ 体長20~26mm
出現時期 4月~10月
分布 日本全土
いる場所 建物の軒先

 

アシナガバチは建物の軒先に営巣(えいそう:巣を作る事)することが多く、しばしば駆除の対象となっています。

全身に黒と黄の縞模様があることからスズメバチと混同されてしまいがちです。しかし凶暴なスズメバチと違い、アシナガバチは比較的温和な性格であるため、こちらから刺激しなければ襲われることはまずありません。

 

▼スズメバチ

 

ただ、巣を駆除されそうになると巣を守るため途端に攻撃的になります。アシナガバチに刺されるケースのほとんどが巣を駆除した際のことであるといわれています。

日本には11種のアシナガバチが棲息しており、キアシナガバチやセグロアシナガバチ、フタモンアシナガバチが代表的です。なかなかじっくり観察することが難しいため、外見での判別は困難です。

 

▼セグロアシナガバチ


By KENPEI – KENPEI’s photo, CC 表示-継承 3.0, Link 

▼フタモンアシナガバチ

 

巣を作っているアシナガバチを見かけたら、すこし離れたところから観察してみると良いでしょう。双眼鏡や単眼鏡があると便利ですが、スマホカメラのズーム機能でも代用することができます。

 

▼単眼鏡

 

巣作りの様子は非常に興味深く、思わず時間を忘れて見入ってしまいますが、刺されるとアナフィラキシーショック(=強いアレルギー反応でショック状態になること)で命に関わる事態にもなりかねませんので、くれぐれも注意を怠らないように気をつけてください。

 

▼巣を作る嬢王蜂


By Alvesgaspar投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

ハラビロカマキリ

名称 ハラビロカマキリ
大きさ 体長 45~65mm
出現時期 8月~11月
分布 本州・四国・九州・沖縄
いる場所 林緑・樹木

 

住宅街の至るところに昆虫が棲息しているということは、それらを捕食(ほしょく:捕まえて食べる)する生き物もまた姿を現すということを意味しています。

中でも被捕食者であり捕食者でもあるハラビロカマキリは、緑地や庭先だけでなく、ときには路上でも見かけることがあるほどのポピュラーな昆虫です。

大型で前翅(まえばね)に白い模様の入っているのが特徴です。

 

▼ハラビロカマキリ

 

カマキリの見分け方

 

全国的に生息するカマキリの仲間に、オオカマキリやヒナカマキリ、コカマキリ、ウスバカマキリ、チョウセンカマキリ、ヒメカマキリなどがありますが、大きさや前肢の模様などで見分けることができます。

 

名称/写真 大きさ 見分け方
オオカマキリ


By Yasunori Koide投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

体長 70~95mm 大型。前翅に模様がなく、前肢の付け根部分が淡い黄色のもの。
チョウセンカマキリ


By Yasunori Koide投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

体長 60~85mm 大型で前翅に模様がないが、前肢の付け根部分が濃い黄色のもの。
コカマキリ


By Opencage]] – http://opencage.info/pics/large_4892.asp, CC 表示-継承 2.5, Link 

体長 45~60mm 中型で前肢の2箇所に黒い模様がある。茶色のものが多く、緑色は稀。

ウスバカマキリ


By I, Zwentibold, CC 表示-継承 3.0, Link 

体長 47~65mm 中型だが前肢に1箇所しか黒い模様がない。
ヒメカマキリ


By Yasunori Koide投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link 

体長 25~32mm 小型で後翅が長く前翅からはみ出している。

 

カマキリを見つけた際には、以上の特徴を参考に細部を観察し、見分けることに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

このページでは【街なか】の昆虫を紹介いたしました。

次のページでは【夜】の昆虫を紹介します。夜行性の昆虫である「オオミズアオ」の夜の闇に浮かび上がる翅(はね)は幻想的であり昆虫が苦手な方でも思わず息を呑むのではないでしょうか。

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【夜】の身近な昆虫を観察してみよう

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この章(第2章)では一歩踏み込んで、実際に自然のなかに足を運ぶことを想定して【山野】【水辺】【街なか】【】とフィールドのタイプ別に、比較的簡単に見つけることのできる虫の種類と観察のポイントをお伝えしていきます。

このページでは【夜】の昆虫を紹介します。

身近にいる昆虫を見つける喜びを体験し、観察することで昆虫との触れ合いを楽しんでいただければと思います。

 

夜行性の昆虫について

 

昆虫には夜行性のものも多く、中には光のある方向に近づく「正の走光性」をもっているものも少なくありません。対して、前ページでご紹介したシミのように光を嫌う性質を「負の走光性」と呼びます。

 

 

「負の走光性」をもっている生き物は全般的に観察が難しいです。

一方で「正の走光性」をもつ昆虫は街灯や懐中電灯の光に寄ってくるため、比較的容易に観察することができます。

昆虫が光に集まるメカニズムについては未だ明らかになっていない部分も多いです。ただ、夜行性の昆虫は月を目印に移動する方向を判断しているため、月と街灯の区別がつかずに引き寄せられてしまうという説があります。

 

※諸説あります

 

「種によって月の満ち引きで誘引される個体数に違いが出た」という研究結果もあるので、あながち間違ってはいないかもしれません。

言うまでもありませんが、夜の昆虫採集は昼間に比べてさまざまなリスクが格段に跳ね上がりますので、安全面に配慮して行うようにしてください。

 

オオミズアオ

名称 オオミズアオ
大きさ 前翅長(ぜんしちょう) 50~75mm
出現時期 8月~9月
分布 北海道~屋久島
いる場所 林緑・雑木林
備考 「ガ」の一種なので光に集まる習性がある。

 

オオミズアオは日本に棲息する昆虫の中で最も美しい生き物であるといっても過言ではありません。

夜の闇にぼんやりと浮かびあがる薄水色の大きな翅(はね)は幻想的ですらあり、昆虫が苦手という方でも思わず息を呑むのではないでしょうか。

 

▼オオミズアオが動く様子

 

正の走光性をもつため市街地でも普通に見ることができますが、オオミズアオの魅力を堪能するには都会の喧騒を離れた自然のなかこそ適していると断言できます。

近縁(きんえん=近い種)のものにオナガミズアオがありますが、外見的な違いはほとんどないため、見分けるにはかなりの経験が必要となります。

観察のポイントなど、もはや語るまでもないでしょう。ただただオオミズアオの美しさを堪能してください。

 

トゲナナフシ

名称 トゲナナフシ
大きさ メス 57~75mm
出現時期 6月~12月
分布 本州・四国・九州・沖縄
いる場所 樹木

 

トゲナナフシは昼間じっとして木の枝に擬態(ぎたい:他のものにようすや姿を似せる事)していますが、夜になると活発に動きまわります。

樹皮(じゅひ)のような焦げ茶色の体なので樹の表面にいるとなかなか見つけられませんが、葉を食べに緑色の葉の上を歩いているときは簡単に発見することができます。

 

木の枝に擬態した姿形も十分に奇妙ですが、ナナフシにはさらに奇妙な生態があります。それは「単為生殖(たんいせいしょく)」です。

単為生殖とは、雌の個体が単独で繁殖する性質のことで、トゲナナフシの99%以上が雌の個体であるといわれています。

トゲナナフシの雄個体の発見例は国内にわずか1件で、2009年に京都で捕獲されました。

 

トゲナナフシは他のナナフシと比べると体が太く、また背中には名前の由来にもなっているトゲ状の突起が生えているので、見分けるのは容易です。

 

▼トゲナナフシ


By KENPEI – KENPEI’s photo, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

雄(オス)の個体は雌と比べてひとまわり体が小さいので、5cm前後しかない成体(=生殖ができるほど成長した状態)を発見したら、研究者に報告してみると良いでしょう。ナナフシの研究に大きく貢献できるかもしれません。

 

▼大体5cmのもの:クレジットカードの縦の長さ(およそ5.4cm)

 

 

セミの幼虫

 

昆虫の王様といえばカブトムシとクワガタムシですが、セミの幼虫こそ夜の昆虫採集の醍醐味

成虫は至るところで見られるセミも、幼虫は土から這い出して羽化するまでのごく短い間しか見ることができません。

運が良ければ、羽化する瞬間に立ち会う名誉に預かることもできるでしょう。

 

▼セミの羽化の動画

 

ほとんどのセミ(幼虫)は日没を待って地上に現れますので、セミの羽化に立ち会いたいのであれば日が落ちる19時30分頃には探索をはじめたいところです。

樹木の根元や木製の杭など、セミが羽化をおこなう場所は限られていますので、時期と時間帯が正しければかなり高い確率で観察することができます。

ちなみに、どうしても観察したければ樹木の根元にある小さな穴のなかに潜んでいるセミの幼虫を昼間のうちに掘り返してしまうという方法もあります。

 

▼小さな穴の中のセミ

 

小さいお子様がいる家庭の場合には、このような方法で捕獲した幼虫を室内のカーテンなどに捕まらせて、羽化の様子を観察してみるのも良いかもしれません。

その際にはテレビなどの音を消し、灯りを暗くし、なるべく自然の状態に近い環境を整えるようにしてください。もちろん蚊取り線香や殺虫剤は厳禁です。

セミは1時間半ほど掛けて羽化をおこなうので、気長に観察しましょう。

 

この章(第2章)ではフィールド別に見つけることができる昆虫を紹介してきました。次の章では【格好いい昆虫】【可愛い昆虫】【不思議な昆虫】と昆虫の特徴別にランキング形式で紹介いたします。

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【水辺】の身近な昆虫を観察してみよう

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『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第2章)では一歩踏み込んで、実際に自然のなかに足を運ぶことを想定して【山野】【水辺】【街なか】【】とフィールドのタイプ別に、比較的簡単に見つけることのできる虫の種類と観察のポイントをお伝えしていきます。

身近にいる昆虫を見つける喜びを体験し、観察することで昆虫との触れ合いを楽しんでいただければと思います。

このページではため池水田といった【水辺】で観察することのできる昆虫についてご紹介していきます。

 

▼ため池

 

カブトエビ

名称 カブトエビ
大きさ 体長 200~300mm
出現時期 6月~8月
分布 関東・中部地方以西
いる場所 水田

 

田植えの終わった田んぼでかならずといっていいほど見ることのできる生き物がカブトエビです。(カブトエビは甲殻類に分類されるので厳密にいうと昆虫ではありませんが、で述べているように、ここでは一般に「虫」として認識されている節足動物を含めて取り扱います。)

 

▼田んぼ

 

カブトエビはその一生を田んぼの中で過ごします。

カブトエビの卵は乾燥状態で何年も生き延びることができるため、収穫が終わり固まった田んぼの中でも死んでしまうことはありません。

田植えの季節になって水が入れられると卵が孵化し、水中のプランクトンなどを捕食して成長していきます。

 

【編集部の昆虫豆知識】カブトエビ

カブトエビの寿命は一ヶ月程だと言われています。カブトエビの成体(=成長して生殖ができるようになった状態の生物)は6月~8月の間だけ見ることができます。

カブトエビは一生のうちに300~1000個の卵を生むと言われています。田んぼの水が入る時期に生んだ卵のうちの3割だけが孵化します。一度に全て孵化しないのは種を絶滅させないためです。例えば、農薬をまかれて孵化したカブトエビは死んだとしても、卵は死ぬことはないのです。こうしてカブトエビは「生きた化石」と言われる程、長い間生き残ってきたのです。

 

 

餌を探して動きまわるカブトエビが水底をかきまわすことで農業の邪魔になる雑草の生育が抑えられます。それにより稲の発育を促す効果が期待できます。

成体はおよそ3cmほどに成長します。

 

▼約3cm:SDカードの縦の長さ

 

水田のなかをちょろちょろと動きまわる姿を観察することができますが、採取する際には稲を傷つけないよう慎重におこなってください。

 

日本にはアジアカブトエビ、アメリカカブトエビ、ヨーロッパカブトエビの三種が棲息しており、アジアカブトエビ以外は外来種(がいらいしゅ:人為的にその地域に入ってきた生物)であるとされています。顕微鏡レベルで観察する必要があるため、外見上で見分けることは困難です。

 

▼アジアカブトエビ


By Jack4740 at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link 

▼アメリカカブトエビ


Copyrighted free use, Link 

▼ヨーロッパカブトエビ


By Stijn Ghesquiere, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

水田を眺めていれば、ちょろちょろと動きまわるカブトエビの姿を容易に見つけられるはずです。

カブトエビは「生きた化石」と呼ばれ、2億年以上の太古から変わらない姿で現存しています。

その原始的で完成された形態は、見る者に進化の霊異を感じさせることでしょう。

 

マツモムシ

名称 マツモムシ
大きさ 体長 11.5~14mm
出現時期 4月~10月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 ため池・田んぼ

 

マツモムシはため池や田んぼ、まれに水たまりなどでも見ることができる水棲昆虫(すいせい こんちゅう=主に水中で生活する昆虫)です。体長1cm前後の小さな昆虫です。

 

▼1cmのもの:1円玉の半径

 

水面に仰向けに張りついている姿にはどこか愛嬌があり、眺めていて飽きることがありません。

 

水に落ちた虫などを捕食する肉食性の昆虫で、長い口吻(こうふん:くちさきの意)を獲物に刺して消化液を分泌し、どろどろに溶けた肉質を吸いこみます。

小柄ながら攻撃性が高く、捕まえようとすると刺してきますので、なるべく素手では触らないようにしてください。

 


By コンピュータが読み取れる情報は提供されていませんが、Keisotyoだと推定されます(著作権の主張に基づく)  CC 表示-継承 3.0, Link 

 

近縁種(きんえんしゅ=生物の分類で近い存在にあたる種)にキイロマツモムシやコマツモムシなどがありますが、大きさや色味で容易に判別することができます。

マツモムシは水面を注意深く観察すれば、見つけることができるかもしれません。

仰向けで水面に貼りつくマツモムシをじっと見つめていると、まるで水中が水面という分厚い壁によって隔てられた別世界であるかのような錯覚に陥ってしまいます。

自然に対する畏怖(いふ)を思い出させてくれるという意味でも、ぜひ観察してほしい昆虫のひとつです。

 

ミズカマキリ


By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link 

名称 ミズカマキリ
大きさ 体長 40~50mm
出現時期 4月~10月
分布 日本全土
いる場所 水田

 

ミズカマキリはカメムシの仲間に分類される昆虫ですが、カマキリのような鎌をもっていることからその名がつけられました。……カマキリよりもむしろナナフシに似ていると思うのは筆者だけでしょうか。

 

▼ナナフシ

 

捕食の際にはマツモムシと同じように長い口吻(こうふん:くちさきの意)を獲物の体に突き刺しますが、素手で掴んでも刺されることはまずありません。

細長い茶褐色の体で枯れ草や枝と同化しているので、注意深く探さないと見つからないかもしれませんが、ため池や水田、水路やよどんだ水たまりなど、さまざまな水辺で観察することができます。

 


余談ですが、筆者が小学生の頃はプールの授業中によく遭遇しました。今になって考えると、塩素殺菌された水のなかでよく生きていられたものだと思います。

近縁種(=生物の分類で近い存在にあたる種)にヒメミズカマキリとマダラアシミズカマキリがあります。

ヒメミズカマキリは体長の長さに比べて呼吸管(こきゅうかん)が明らかに短いのが特徴です。マダラアシミズカマキリは足に黒い斑点の模様があります。

 

 

目視で見つけることは難しいですが、タモ網などで水中の枯れ草などをガサガサすると捕獲できることがありますので、根気強く探してみてください。

 

▼タモ網

 

違う生き物を探していてミズカマキリが網に入ってきたときなどは、小さな感動さえおぼえます。

 

ネグロセンブリ

名称 ネグロセンブリ
大きさ 前翅長 15mm
出現時期 6月~7月
いる場所 水辺

 

ネグロセンブリはセンブリ科に属する生物種で、カゲロウに近い昆虫であるといえます。

 

▼カゲロウ

 

「ネグロセンブリ」は、おそらくほとんどの人は耳にしたこともない名前かと思います。それもそのはずでセンブリ科の昆虫は日本でわずか七種しか見つかっていません。

かといって珍しい昆虫なのかというとそんなこともなく、春先に水辺を散策しているとかなりの確率で遭遇することができます。

 

カゲロウの仲間と同じように幼虫時代を川や池沼などの水中ですごし、成虫(=昆虫の最終形態)になると地上を飛びまわるようになります。

幼虫は水中の石や堆積した落ち葉の裏などに潜んでいますが、カゲロウの幼虫はどれも似たような外見をしているため、かなりの経験を積まなければ見極めは難しいでしょう。

また、センブリの仲間は成虫になっても非常によく似た姿をしており、特に本種と近縁のクロセンブリは色味も変わらないため、外見上での見極めはほとんど困難であるといえます。

 

その他水辺で見られる昆虫一覧

 

By mojimojisan – Mojimojisan, CC 表示 3.0, Link 【名称】ハラビロトンボ
【大きさ】体長 50mm
【出現時期】5月~10月
【分布】北海道~種子島
【いる場所】浅い池
【名称】オニヤンマ
【大きさ】体長 95~100mm
【出現時期】6月~10月
【分布】日本全土
【いる場所】渓流付近
【名称】アキアカネ
【大きさ】体長 35~45mm
【出現時期】6月~12月
【分布】北海道~九州
【いる場所】 池・水田
【解説】【秋】の身近な昆虫5選

 

このページでは【水辺】の昆虫を紹介いたしました。

次のページでは【街なか】の昆虫を紹介します。住宅街でも様々な昆虫を見つけることができるのです。

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【山野】の身近な昆虫を観察してみよう

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『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

第1章では、わたしたちにとって身近な昆虫たちを季節別でご紹介してまいりました。

この章(第2章)では一歩踏み込んで、実際に自然のなかに足を運ぶことを想定して【山野】【水辺】【街なか】【】といったフィールドのタイプ別に、比較的簡単に見つけることのできる虫の種類と観察のポイントをお伝えしていきます。

身近にいる昆虫を見つける喜びを体験し、観察することで昆虫との触れ合いを楽しんでいただければと思います。

このページでは山野(=山や野原)に生息する昆虫についてお伝えします。

 

山野に棲息する昆虫

 

まずは山野に棲息する昆虫について。

草木が生い茂る山野は「野生動物の宝庫」であるといっても過言ではありません。よほど注意を怠らないかぎり、相当数の昆虫を観察することができるでしょう。

季節にもよりますが、花の近くにはチョウやハチ、さらにはそれらを捕食しようと待ち構えるカマキリが。

 

▼花の近くで見られる昆虫

【名称】モンシロチョウ
【大きさ】前翅長(ぜんしちょう) 25~30mm
【出現時期】 3~11月頃
【分布】 日本全土
【いる場所】 野原・畑
【解説】春の身近な昆虫 6選
【名称】ハナアブ
【大きさ】体長 14~16mm
【出現時期】4月~12月
【分布】日本全土
【いる場所】花の上
【名称】オオカマキリ
【大きさ】体長 68~95mm
【出現時期】8月~11月
【分布】北海道・本州・四国・九州
【いる場所】野原

 

草むらにはコオロギやバッタ、アリや小さな甲虫たちがところ狭しと這いまわっています。

 

甲虫(コウチュウ)とは
甲虫目の昆虫の総称を甲虫と言う。甲虫目には、カブトムシ、クワガタムシ、ハンミョウ・ホタル・テントウムシなどが該当する。外骨格が「クチクラ」という細胞で作られた丈夫な膜で形成されているのが特徴。

▼甲虫


By Bugboy52.40投稿者自身による作品 (from User:Fir0002 images), CC 表示-継承 3.0, Link

 

▼草むらで見られる昆虫

【名称】トノサマバッタ
【大きさ】体長 48~65mm
【出現時期】6月~10月
【分布】日本全土
【いる場所】草地
【名称】クロオオアリ
【大きさ】体長 7~12mm
【出現時期】4月~10月
【分布】日本全土
【いる場所】草原

 

石や倒木をひっくり返せば、ヤスデやゴミムシ、ワラジムシなどがもぞもぞと蠢(うごめ)き、広葉樹には樹液を目当てにチョウやカナブン、スズメバチが集まります。

 

昆虫を見つけたら

 

昆虫を発見したら、まずは手にとってじっくりと観察したいところです。

ただ、中には毒を持っていたりする危険な昆虫もいたりします。そのため、その昆虫が人間にとって有害かどうか判断が難しい場合には、素手で触ることは避けましょう。

手袋を着用してから動かないように抑えておくか、触れないようにして網からかごに移す、虫採り網の上から観察するに留めるなどの配慮をすると良いでしょう。

 

 

採取した昆虫は飼う気がなければその場」放すようにしてください。

日本に棲息している種類だからといって本来の生息域と異なる場所に放すことは遺伝子汚染を引き起こし、長い目で見れば生態系の多様性を狭める事態をもたらしかねません。

 

遺伝子汚染とは
本来はその地域に生息していない生物が、他の場所から移入されたことにより、その地域に生息していた生物の特異性が失われること。近年はメダカの絶滅を危惧し、別の地域からメダカを放流したことにより在来種(ざいらいしゅ:元々いた種)の駆逐が進むことになるなどの問題が起きたりしている。

 

生物種の同定(=名前や種名を調べたりすること)が目的であれば、3つの方法があります。

① ポケットサイズの昆虫図鑑を持参してその場で同定する。

② スマホやデジカメ等で写真を撮影して帰宅後に同定する。

③ ある程度の目星をつけられる知識があるのなら、観察した記憶を頼りに後日同定する。

捕まえた昆虫を持ち帰りたくなる気持ちもわかりますが、遊び場を「原状回復」することが、大人の虫採りのマナーではないでしょうか。

 

採集にあると便利な道具

 

採集および観察にあたっては、虫あみや虫かごはもちろんですが、土を掘り起こすためのシャベルや、安全に昆虫を保定(=動かないようにおさえること)するための手袋などもあると便利かもしれません。

 

 

また中~小型の甲虫をメインに採集するのであれば、虫かごの代わりに釣り用のルアーケースを利用すると一匹ずつ区分けされたスペースに隔離できるため、昆虫同士の喧嘩などを防ぐことができます。

 

▼釣り用ルアーケースの例(画像クリックで商品詳細へ)

 

 

また、場所によっては昼間でも薄暗いポイントがありますので、懐中電灯やペンライトも用意しておくと良いでしょう。詳しく観察する際にはLEDライト付きのジュエリールーペが便利です。

 

▼LEDライト付きのジュエリールーペ(画像クリックで商品詳細へ)

 

観察する際の注意点

 

野外で生き物を観察する際の注意点ですが、ハチや毛虫、ヒルやダニといった有害な生き物からの被害を最小限に抑えるためにも、真夏でもなるべく長袖と長ズボンを着用し帽子を被って頭部を保護します。

 

スズメバチ


▲スズメバチ

 

特にスズメバチは昆虫採集において遭遇し得るもっとも恐ろしい昆虫であるといえるので、常に周囲の状況に注意を配りいつでも遠ざかれるような心構えを整えてください。

スズメバチは動いているものに反応する習性があるので、接近されてもパニックにならず、ゆっくりとしゃがんでスズメバチが通りすぎるのをじっと待ちましょう。

 

 

また、黒などの濃い色味にも反応するので、自然のなかに足を運ぶ際にはなるべく白っぽい服装を着用するとより安全でしょう。

ちなみに筆者の場合ですが、このままでは刺されてしまう、逃げ切れそうにないというときには、スズメバチが大群でなければ持参している虫採り網でスズメバチを捕獲し、網の上から踏み潰してしまいます。

できることならば無用な殺生はしたくありませんが、こちらの命にも関わることですから、そう悠長なことは言っていられません。

 

毒蛇(どくへび)

 

マムシやヤマカガシといった毒蛇の襲撃に備えて丈の長い長靴を履いていくのもベターです。いざというときに顔や首などの急所を保護するタオルや、水分補給用の飲み物も忘れないようにしてください。

 

▼マムシ

▼ヤマカガシ


By Yasunori Koide投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

第1章(現在は第2章)でご紹介した昆虫はいずれも山野で見ることができますので、実際に見つけてみて昆虫を見つける喜びを堪能していただければと思います。

 

次のページでは「ため池」「水田」などの【水辺】で見ることができる昆虫を紹介します。

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昆虫たちの【冬】の越し方

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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。

寒い冬は昆虫たちにとって「死の季節」であり、生き抜くために様々な方法を駆使して冬を乗り越えています。

昆虫たちの冬の乗り越え方を知り、昆虫への興味をより深めていただきたく思います。

 

冬に見られる昆虫

 

【名称】ハナアブ
【大きさ】体長 14~16mm
【出現時期】4月~12月
【分布】日本全土
【いる場所】花の上
By Andreas Thomas Hein投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 【名称】オツネントンボ
【大きさ】体長 26~41mm
【出現時期】11月~4月
【分布】北海道~九州
【いる場所】沼・林に近い池
【名称】キタテハ
【大きさ】前翅長(ぜんしちょう) 3~8.5mm
【出現時期】4月~12月
【分布】北海道南西部~九州
【いる場所】草むら・花の上

 

冬の昆虫観察が困難な理由

 

冬は他の季節に比べて昆虫の観察が困難になります。

空気が乾燥し、気温が著しく低下する冬は多くの虫たちにとって「死の季節」であるといっても過言ではありません。昆虫の他、爬虫類や両棲類といった野生動物の観察が難しい冬の間はなんとも味気ない日々が続きます。

 

冬の観察が困難な理由は、昆虫が変温動物であるからです。

 

人間をふくむ哺乳類や鳥類は恒温動物です。恒温動物は外気温に左右されることなく一定の体温を保つことができます。

一方、昆虫などの変温動物は外部の温度によって体温が変化します。

 

 

動物が活動するには「熱」が必要です。熱がなくなれば基本的に動物は死んでしまいます。

恒温動物の場合は食料を食べるなどして自分の内から熱を生み出すことできます。

一方、変温動物である昆虫は内から熱を生み出すことができません。また、外気温により体温が変化してしまうため、気温が下がる冬を越すにはなんらかの工夫を凝らさなければ生き残ることができないのです。

 

昆虫の冬の越し方

 

昆虫が安全に冬を越すための方法は二つに大別されます。

 

① 暖かい場所を求めて移動

 

ひとつは「暖かい場所を求めて移動する」というもので、一部のチョウやトンボがこれに該当します。

日本にも棲息するウスバキトンボは「渡り」をする昆虫として有名で、近年の研究によってなんと7,100kmもの距離を移動していることが判明しました。

 

▼ウスバキトンボ

名称 ウスバキトンボ
大きさ 体長 45~55mm
出現時期 4月~9月
分布 北海道~沖縄
いる場所

 

これは生物界でも最長で、これまで最長の渡りをおこなうとされていたオオカバマダラの4,000kmを大きく上回る記録です。

 

【編集部の昆虫豆知識】オオカバマダラ

オオカバマダラは、冬の間は南へ渡りを行います。

「渡り鳥のように渡りを行う蝶」として有名な昆虫です。

 

 

夏は米国北部とカナダをすみかとし、毎年秋になるとカルフォルニア州とメキシコへ移動を行います。世代交代をしながら大移動します。

 

② 代謝を抑えた状態で寒さに耐える

 

もうひとつの方法が、代謝を抑えた状態で寒さに耐えるというものです。

 

代謝とは
代謝は生物が生命を維持するための体内で行われる化学反応のことです。人間の場合は脂肪をエネルギーに変えることで体を動かしていますが、これが代謝に該当します。

 

耐寒性の強い生物種であれば、成虫(=昆虫の最終形態)の状態でも冬を生き抜くことができます。ハチやアリ、テントウムシやカメムシがその例です。

彼らは樹皮の隙間や落ち葉の下でおしくらまんじゅうのように身を寄せ合うことで外気から身を守ります。ただ動かずに何も食べなければ飢え死にしてしまいますので、気温の高い時間には活動的になることもあります。

 

▼落ち葉の下で集まるテントウムシのイメージ

 

一方で、コオロギやカマキリといったバッタ目に属する昆虫は寒さに弱く、成虫の状態では冬を越せずに死んでしまいます。彼らは秋になると産卵して次の世代に命を託します。

代表的な例が、カマキリの卵です。

 

▼カマキリの卵

 

カマキリの卵は、泡状のタンパク質に包まれることで寒さや外敵から守られます。気温の上昇とともに休眠から覚めておびただしい数の幼虫が一斉に孵化します。

 

カブトムシやクワガタムシの幼虫が土の中や樹木の中で過ごすのも、寒さや外敵から身を守るためであるといわれています。

 

▼カブトムシの幼虫

 

また、ガやチョウの仲間は蛹(さなぎ)の状態で冬を過ごすものが多いですが、越冬できずに蛹のまま死んでしまうものも少なくありません。

 

▼蛹のアゲハチョウ

 

▼形態別、冬の越え方一覧

成虫 集団で物陰に隠れて身を寄せ合うなどして冬を越す。
成虫は死に、卵を生んで次の世代に託す。
幼虫 寒さや外敵から身を守るため、土や樹木の中で過ごす。
蛹越 蛹は食べる必要もなく厳しい冬を超すには適した状態。枝に同化していたりする。

 

寒さの厳しい冬の時期でも、比較的気温が高い日には一時的に冬眠からさめて日向ぼっこをしている生き物の姿を見ることができますので、そういう日には自然のなかに足を伸ばしてみるのも一興です。

また、樹皮の裏や土の中、落ち葉の裏をのぞいてみると休眠中の生き物と出会えることがありますが、越冬を妨げないためにも手短に観察を済ませたら速やかに元の状態に戻してやるようにしてください。

 

この章(第1章)では、四季ごとに昆虫を紹介いたしました。次の章(第2章)からは【山野】【水辺】【街なか】【】とフィールド別に見つけることができる昆虫を4ページにわたって紹介します。

次のページは【山野】で見つけることができる昆虫を紹介します。

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【秋】の身近な昆虫 5選

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

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著者:國谷正明

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この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

ちなみに昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。

こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

このページでは「秋の昆虫」を紹介します。厳しい暑さが過ぎ去った秋は、多くの虫たちを観察することのできる季節です。

 

エンマコオロギ

名称 エンマコオロギ
大きさ 体長 30~35mm
出現時期 8月~11月
分布 本州~九州
いる場所 公園の草地・枯草の中
備考 縄張りを主張する時、メスを誘う時、ケンカをする時で鳴き方が違う。

 

エンマコオロギは国内最大のコオロギで、夏から秋にかけて多く見ることができます。

甲高い独特の鳴き声を発しますが、真夏の暑さの下で鳴くことはあまりないです。そのため、コオロギの鳴き声はわたしたちに「秋の訪れ」をしらせるひとつの風物詩であるといえます。

エンマコオロギの鳴き声はコオロギのなかでもっとも美しいとされており、鳴き声を愛でるために飼育する愛好家も少なくありません。

 

▼エンマコオロギの鳴き声を聴いてみよう!

 

また、中国では雄のコオロギ同士を戦わせる「闘蟋(とうしつ)」という競技が古くから親しまれています。日本でも「コオロギ相撲」として稀にイベントが開催されることがあります。

 

アキアカネ


By Kropsoq – photo taken by Kropsoq, CC 表示-継承 3.0, Link 

名称 アキアカネ
大きさ 体長 35~45mm
出現時期 6月~12月
分布 北海道~九州
いる場所 池・水田

 

アキアカネは夏の初めに幼虫であるヤゴから羽化(うか:成虫になること)します。

 

ヤゴ
「ヤゴ」とはトンボの幼虫を指します。ヤゴは成虫のトンボとは大きく異なる見た目や形態をしています。成虫は空中を飛びますが、ヤゴは水中で生活します。

▼ギンヤンマ(トンボの一種)のヤゴと成虫

 

アキアカネは夏の間は標高の高い山間部などですごし、気温が下がるにつれて人里に姿を現しはじめるため「秋の虫」という印象を強く感じさせます。

アカトンボとは赤い体色のトンボの総称ですが、アキアカネを指してアカトンボと呼ぶことも少なくありません。

 

▼アキアカネが動く様子

 

他にアカトンボと呼ばれるものに、ナツアカネ、マイコアカネ、マユタテアカネ、ネキトンボ、ミヤマアカネ、コノシメトンボなどがありますが、翅の色や胸の模様で見分けることができます。

 

▼アカトンボの代表種である「アキアカネ」「ナツアカネ」の見分け方

アキアカネ 名称 ナツアカネ
</By Alpsdake投稿者自身による作品File:アキアカネ メス Sympetrum frequens female s3.JPG, CC 表示-継承 3.0, Linktd> 写真 By Alpsdake投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

胸部の黒い三本線の真ん中の先端が尖っている。
見分けるポイント
胸部の黒い三本線の真ん中の先端が角ばっている。

 

アカトンボは秋の季語としても親しまれています。

江戸時代の俳人・沢露川が「盆つれて 来たか野道の 赤蜻蛉(あかとんぼ)」と詠んでいるように、アカトンボもまた濃厚な秋の気配を感じさせる昆虫です。

また、江戸時代の俳人・宝井其角が「あかとんぼ はねをとったら とうがらし」と詠んだ句に、其角の師匠である松尾芭蕉が「とうがらし はねをつけたら あかとんぼ」と返したという、微笑ましい逸話が残っています。

 

ツクツクボウシ

名称 ツクツクボウシ
大きさ 体長 30mm
出現時期 7月~10月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 森林

▼鳴き声を聴いてみよう!

 

ツクツクボウシはセミの一種です。

セミは夏の虫というイメージが強いですが、夏の終わりには多くが姿を消してしまいます。そんな中、ツクツクボウシは秋の初めまでその姿を観察することができます。

ツクツクボウシはその名のとおり「オーシ・ツクツク・オーシ・ツクツク――」という印象的な鳴き声を発します。その鳴き声から容易にツクツクボウシを判別することができます。

ただ、警戒心が強く、人の気配を感じると他の場所に逃げてしまうため、声のわりに姿を見かける機会は少ないセミであるといえます。

外見的には細身の体と透明な翅(はね)が特徴ですが、似たような外見のセミも多く、見た目だけで見分けることは難しいでしょう。

 

カネタタキ

名称 カネタタキ
大きさ 体長 10~14mm
出現時期 8月~11月頃
分布 本州以南
いる場所 街路樹・枯木の隙間
備考 オスには翅がありメスには翅がない

 

カネタタキはバッタ目カネタタキ科に属する昆虫で、科目は異なりますがコオロギに近い生き物であるといえます。

 

▼コオロギ

 

上でご紹介した虫たちと比べるとなじみが薄いかもしれませんが「鉦叩(かねたたき)」という名のとおり、金属製の皿を叩いているような甲高い鳴き声が特徴的です。

美しい鳴き声を好む愛好家がいる一方で、カネタタキは約1cmという小柄な体格ながら昼夜を問わず鳴き続けるため、家屋に侵入した場合には騒音害虫として駆除の対象となることもあります。

 

▼1cm:1円玉の半径

 

▼カネタタキの鳴き声

 

マツムシ

名称 マツムシ
大きさ 体長 19~33mm
出現時期 8月~11月
分布 本州・四国・九州・沖縄
いる場所 草地・河川敷・線路沿い

▼鳴き声

 

マツムシはかの有名な唱歌「虫のこえ」のいちばん最初に登場することからもわかるように、秋の虫として古くから親しまれてきた昆虫のひとつです。

 

▼唱歌「虫のこえ」

 

歌詞で「チンチロ チンチロ チンチロリン」と例えられている鳴き声のマツムシは、鈴の音にも笛の音にも似て非常に美しく、マニアの間ではしばしば高額で取引されています。

近年では棲息数が減少しており、その美しい鳴き声を耳にする機会もめっきり減ってきたように感じられます。

明治時代に移入された外来種であるアオマツムシと混同されることもあります。文字どおり緑色の体色をもつアオマツムシに対し、マツムシの体色は茶色であり、また鳴き声もまったく異なるため、簡単に見分けることができます。

 

▼アオマツムシ


By ふうけ投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

このページでは【秋】の身近な昆虫を紹介してきました。次のページでは【冬】の身近な昆虫を紹介します。

寒い冬は昆虫たちにとって死の季節と言えます。昆虫を見つけるには困難な季節ですが昆虫たちの冬の越し方を知り、魅力に触れて昆虫を好きになっていただきたいです。

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【夏】の身近な昆虫 6選

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

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この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。

このページでは「夏の昆虫」を紹介します。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

また、昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

夏の昆虫について

 

気温とともに生物の活動が活発になり、夏には多くの昆虫が姿を現します。カブトムシやクワガタなどの成虫(=虫の最終形態)が発生し、セミが鳴きはじめます。

中にはこの季節にしか見ることのできない昆虫も少なくありません。

 

ゲンジボタル/ヘイケボタル

名称 ゲンジボタル
大きさ 体長 12~18mm
出現時期 7~8月
分布 本州・四国・九州
いる場所 川の周り
備考 日本最大のホタル。成虫は水だけを飲み、エサを食べることとはない。寿命は1週間ほど。

 


By yellow_bird_woodstock さん https://www.flickr.com/photos/yellow_bird_woodstock/https://www.flickr.com/photos/yellow_bird_woodstock/3709493763/, CC 表示-継承 2.0, Link 

名称 ヘイケボタル
大きさ 体長 7~8mm
出現時期 6~7月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 水田・池
備考 日本ではゲンジボタルと並ぶ、代表的な光るホタル。

 

ホタルは夏の風物詩として古くから高い人気を誇っている昆虫で、初夏になると自然公園等で開催されるホタルの観察会は例年多くの人で賑わいます。

日本にはゲンジボタルとヘイケボタルが見られます。

ゲンジボタルの名前の由来には『戦死した源頼政の亡霊が乗り移っていると考えられたことから「源氏蛍」と名付けられた』という説と『源氏物語に登場する光源氏が由来になっている』という説があります。

対して、ヘイケボタルはゲンジボタルよりも、ひとまわりほど小さい体長であるため『源平合戦で結果的に破れた平家の名を取った』と言われています。

 

源平合戦
1180年に起きて6年間にわたって続いた源氏と平氏の戦い。

 

ヘイケボタルとゲンジボタルは光り方が異なり、1分間に点滅する回数はゲンジボタルよりヘイケボタルの方が早いです。

 

▼ゲンジボタルの光り方

▼ヘイケボタルの光り方

 

ハグロトンボ


By Cory, CC 表示-継承 3.0, Link 

名称 ハグロトンボ
大きさ 体長 57~67mm
出現時期 5~10月
分布 本州・四国・九州
いる場所 小川・水路の付近

 

ハグロトンボは初夏から初秋にかけて見ることのできる昆虫で、小川や水路の付近で頻繁に姿を現します。

「羽黒蜻蛉(はぐろとんぼ)」という名の由来にもなっている黒々とした羽で蝶のようにひらひらと舞う姿は非常に印象的で、夏の訪れを強く感じさせる筆者お気に入りの昆虫のひとつです。

 

雄(オス)は以下の画像のように、全身に青みがかった金属光沢をまとっています。

 

▼雄(オス)のハグロトンボ

 

一方、雌(メス)のハグロトンボは全身が黒く、雄(オス)のような光沢は見られません。

 

▼雌(メス)のハグロトンボ


By
Tennen-Gas投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

ハグロトンボは、日本に200種ほどが棲息しているトンボの仲間の中でも特に美しい種であるといえます。

体長6cm前後と決して大きくはありませんが、真っ黒の翅(ハネ)は自然の景色の中でよく映えるため、容易に発見することができます。

 

▼約6cmのもの:マッチ箱の横の長さ(5.6cm)

 

 

 

ゴマダラカミキリ

名称 ゴマダラカミキリ
大きさ 体長 25~35mm
出現時期 6月~9月
分布 北海道・本州・沖縄
いる場所 農園・林の周辺

 

ゴマダラカミキリも夏にしか姿を見ることのできない昆虫のひとつです。

「胡麻斑髪切(ごまだらかみきり)」という名のとおり全身に白と黒の斑点模様があり、イチジクやバラ、シラカバなどさまざまな樹木の生木を食樹(しょくじゅ:樹を食べること)します。

 

身の危険を感じると、他のカミキリムシの仲間と同じように、胸を強くこすり合わせてキィキィという甲高い鳴き声を発します。

また、生木を食樹することからもわかるように、強い顎の力の持ち主です。

ゴマダラカミキリは体長3cm前後と小さいため危険性は低いですが、大型のカミキリムシに噛まれると出血する場合もありますので捕まえる際には注意してください。

 

▼約3cmのもの:SDカードの縦の長さ

 

アオハナムグリ

名称 アオハナムグリ
大きさ 体長 15~19mm
出現時期 5月~9月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 林の周辺・原っぱ

 

アオハナムグリは金属光沢のある緑色の体色が美しい中型の甲虫(こうちゅう:堅い前羽を持つ虫)です。

植物の葉を食べるコガネムシや樹液を吸うカナブンと違い、ハナムグリの仲間は花の蜜や花粉を食します。

ミツバチと同じように植物の受粉に大きく関わっているため、一般に益虫(えきちゅう:人の役に立つ虫)として扱われています。

 

姿形がよく似たアオカナブンやアオドウガネ。

ナミコガネムシとは鞘翅(しょうさ:堅くなった前翅)の形や模様で容易に見分けることができます。

 

▼アオドウガネ(腹部に長い毛が生えている。アオハナムグリと違い体色の光沢の艶が弱い。)


By I, KENPEI, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

ただ、より近縁なナミハナムグリやコアオハナムグリは腹部の色味や脚部の毛の色で見分けるしかないため、見分ける難易度は高いといえます。

 

▼コアオハナムグリ(腹部は黒く、翅に毛が多いのが特徴)


By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link 

 

オオスカシバ

名称 オオスカシバ
大きさ 前翅長(ぜんしちょう) 25~30mm
出現時期 6月~9月
分布 関東地方以南
いる場所 花の上・クチナシ
備考 「蜂」と間違えられることがあるが「ガ」の一種。

 

オオスカシバは透明な翅(はね)と鶯色(うぐいすいろ:くすんだ黄緑色。抹茶色に近い色)の毛並みが美しいスズメガの一種で、筆者がもっとも好きな昆虫のひとつでもあります。

夏の強い日差しのなか、透明な翅をすばやくはためかせて空中に静止したまま、蝶のような長い口吻で花の蜜を吸う姿は美しく、オオスカシバに遭遇すると思わず息を呑んで見入ってしまいます。

 

▼オオスカシバが空中に静止し花の蜜を吸う姿

 

成虫の飼育は困難ですが、飼育下で羽化したオオスカシバは人によく馴れます。幼虫から育てて羽化させ、ひとしきり観察した後で自然に放すというスタイルで愛でている愛好家も少なくありません。

羽化直後に『羽ばたいて翅から鱗粉がこぼれ落ちる様子』にはえも言われぬ美しさが漂っています。

稀にスズメガの仲間であるホシホウジャクと混同されることがありますが、体色が大きく異なるため容易に見分けることができます。

 

▼ホシホウジャク(全体にこげ茶色。後翅のみ黄褐色)


By I, KENPEI, CC 表示-継承 3.0, Link 

▼オオスカシバ(背中あたりがくすんだ黄緑色)


By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link 

 

このページでは【夏】の身近な昆虫を紹介しました。

次のページでは【秋】の身近な昆虫を紹介します。秋は「もっとも美しい鳴き声のコオロギ」と言われる「エンマコオロギ」など、多くの虫たちを見つけることができます。

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【春】の身近な昆虫 6選

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

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『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第1章)では【】【】【】【】にわけて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。

このページでは「春の昆虫」を紹介します。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

また、昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。

こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

春になると昆虫が見られる

 

冬の寒さの中では昆虫は生き抜くことが困難です。そのため、昆虫たちは冬を越すために暖かい場所を求めて移動したり、土の中で過ごしたりします。

また昆虫の仲間には、冬を過ごすのに適した「蛹(さなぎ)」の形態で冬を越し、暖かくなってから羽化(=成虫になること)するものが多いです。

 

 

そのため冬は昆虫を見かけることが少なくなる季節ですが、春を迎えるとさまざまな種類の昆虫を目にすることができるようになります。

 

モンシロチョウ

名称 モンシロチョウ
大きさ 前翅長(ぜんしちょう) 25~30mm
出現時期 3~11月頃
分布 日本全土
いる場所 野原・畑

 

春に見られる最も代表的な昆虫のひとつが、モンシロチョウです。モンシロチョウの幼虫はキャベツやナノハナなどアブラナ科の植物を主食とするため、それらの植物が多い場所で頻繁に見られます。

 

▼モンシロチョウの幼虫


CC 表示 2.0, Link 

 

モンシロチョウは漢字で「紋白蝶」と表すことからもわかるように、白い羽に紋様があります。ちなみにモンシロチョウは羽化する季節によって紋様に違いができます。春に成虫になったモンシロチョウは黒の紋様が目立たず、夏に成虫になると黒の紋様が目立ちます。

 

 

▼モンシロチョウの動く様子

 

モンキチョウ

名称 モンキチョウ
大きさ 前翅長 23~26mm
出現時期 3~11月頃
分布 日本全土
いる場所 野原・畑

 

モンキチョウはモンシロチョウの近縁(=近い種)にあたります。

モンキチョウは漢字で書くと「紋黄蝶」です。「紋黄蝶」という名前のとおり黄色い羽が特徴的ですが雌(めす)の中には白みの強い個体もおり、モンシロチョウとの見間違えられることも少なくありません。

 

モンシロチョウとモンキチョウの見分け方

 

翅(ハネ)の縁の部分が黄色っぽく、触覚に白と黒の縞模様のあるものがモンシロチョウです。翅の縁と触覚がピンク色っぽいものがモンキチョウですので、見かけたときにはよく観察してみると良いでしょう。

 

 

モンシロチョウだと思っていたものが、よく見るとモンキチョウだった。なんてこともあるかもしれません。

 

▼モンキチョウが飛ぶ様子

 

キアゲハ/ナミアゲハ

名称 キアゲハ
大きさ 前翅長 52mm前後
出現時期 4月~10月頃
分布 屋久島以北 日本全土
いる場所 草地・山頂・海岸・市街地
備考 パセリ・ニンジン・みつばなどを食べる。

 

キアゲハもまた、春を代表する昆虫のひとつです。

ステンドグラスのような翅を優雅にはためかせる姿を見て、春の息吹を実感するという方も少なくないでしょう。

一般にアゲハチョウと呼ばれるナミアゲハとは異なる種であり「黄揚羽(きあげは)」の名のとおり翅の黄色味が強いことが特徴です。

 

▼ナミアゲハ

名称 ナミアゲハ
大きさ 前翅足 55mm前後
出現時期 4月~11月頃
分布 日本全土
いる場所 草原・公園の花
備考 単に「アゲハチョウ」と呼ばれることもある。都会の庭や鉢植えに卵を植え付けていることがある。

 

キアゲハとナミアゲハの見分け方

 

キアゲハとナミアゲハは羽の模様で見分けることができ、翅の付け根が黒っぽく塗りつぶされているものがキアゲハ、翅の付け根に細かい模様が入っているものがナミアゲハです。

 

 

幼虫はさらに見分けるのがが容易で、オレンジ色の紋が入った黒い縞模様をもつものがキアゲハ、全身が緑色で頭部後方に目玉模様があるものがナミアゲハというように見分けることができます。

 

 

ナナホシテントウ

名称 ナナホシテントウ
大きさ 体長 5~9mm
出現時期 3~11月
分布 日本全土
いる場所 草原・畑
備考 「日本で最もよく見られるテントウムシ」と言われている。

 

蛹(さなぎ)の状態で越冬するモンシロチョウやキアゲハと異なり、ナナホシテントウは成虫の状態で春を迎えます。

漢字で「七星天道」と表すことからわかるように、硬化した前翅(ぜんし)に七つの黒い斑点模様が入っていることが特徴です。

 

 

赤と黒の派手な外見は典型的な警戒色であり、身の危険を感じると黄色い毒液を分泌します。

また、野菜などの植物に群がるアブラムシを捕食する性質があることから、一般に「益虫(=害虫を食べるなど人間の役に立つ昆虫)」として扱われています。

 

▼ナナホシテントウが飛ぶ様子

 

ビロウドツリアブ

名称 ビロウドツリアブ
大きさ 体長 8~12mm
出現時期 3月~5月頃
分布 北海道~九州
いる場所 草地・林縁
備考 長い口先で花の蜜を吸う。

 

ビロウドツリアブの成虫は3~5月の間にしか見ることができないため、春の風情を強く感じさせる昆虫であるといえます。

昆虫に詳しくない方には馴染みのない昆虫かもしれません。

ツリアブの仲間は日本に10種ほど棲息しており、ホバリング(=空中の一点に静止した飛行状態)しながら花の蜜を吸っている姿が、まるで天から吊り下げされているように見えることから命名されたと言われています。

 

▼ビロウドツリアブが飛ぶ様子

 

漢字で書くと「天鵞絨吊虻(びろうどつりあぶ)」です。その名のとおりビロウドという織物のようになめらかな体毛が特徴的で、他のツリアブとは外見が大きく異なるため見分けるのは容易です。

 

▼他のツリアブの例:トラツリアブ


By Joan Quintana from Barcelona, Spain – Anastoechus nitidulus, CC 表示-継承 2.0, Link 

 

体長1cm程度の小さな昆虫ですが、よく見ると非常に愛くるしい姿をしていることがわかります。

 

次のページでは夏の身近な昆虫を紹介します。中には夏にしか見られない昆虫も多いのです。

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▼昆虫Youtuberの昆虫動画を観てみよう!

 

 

身近な昆虫の観察入門 ~昆虫を見つける喜びを思い出そう~

 

子供の頃は昆虫に対して夢中になった方も多いと思います。ただ、大人になると昆虫に対して嫌悪感を覚える方が少なくありません。

子供の頃のように虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せがきっと増えるはずです。

このWebonでは身近な昆虫を魅力とともに紹介していき、昆虫を見つける喜びを感じれていただけるようになればと思います。

 

はじめに

昆虫の魅力を知れば、ありふれた日常にささやかな幸せを覚える機会が増えるのです。ここでは昆虫の魅力を学ぶ意義についてお伝えします。

昆虫の魅力を知ると幸せが増える

 

第1章 季節から見つける

ここでは身近に見つけることができる昆虫を【春】【夏】【秋】【冬】と季節ごとに紹介します。

【春】の身近な昆虫 6選

【夏】の身近な昆虫 6選

【秋】の身近な昆虫 5選

昆虫たちの【冬】の越し方

 

第2章 フィールドから見つける

ここでは【山野】【水辺】【街なか】【夜】とフィールド別に身近に見つけることができる昆虫を紹介します。

【山野】の身近な昆虫を観察してみよう

【水辺】の身近な昆虫を観察してみよう

【街なか】の身近な昆虫を観察してみよう

【夜】の身近な昆虫を観察してみよう

 

第3章 特徴から見つける

ここでは【格好いい昆虫】【可愛い昆虫】【不思議な昆虫】をランキング形式で紹介しております。お気に入りの昆虫をぜひ見つけてみてください。

【格好良い昆虫】ランキングベスト5

【可愛い昆虫】ランキングベスト5

【不思議な昆虫】ランキングベスト5

 

第4章 実際に見つけに行く

ここでは筆者が実際に昆虫最終に行く様子を写真を交えてレポートしております。昆虫を見つける喜びを筆者目線で体験してみてください。

昆虫採集体験レポート① 【1日目 公園】

昆虫採集体験レポート② 【2日目前半 山道】

昆虫採集体験レポート③ 【2日目後半 公園】

昆虫採集体験レポート④ 【夜の虫採り】

 

番外編

ここまでは昆虫の魅力をお伝えしてきましたが、中には気持ちの悪くて見たら嫌いになってしまような昆虫もいます。よりディープな昆虫の世界に興味がある方は閲覧をおすすめしますが、覚悟を持ってご覧くださいませ。

【気持ち悪い昆虫】ランキングベスト5

昆虫の魅力を知ると幸せが増える

Webon紹介目次著者
身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

國谷正明氏による『身近な昆虫の観察入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
facebook(國谷)

 

『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

子供は昆虫に夢中になる


▲【春の身近な昆虫】アゲハチョウ

 

子供の頃には誰もが夢中になった虫採り。

捕まえた昆虫を虫かごで飼ってみたり、虫同士を喧嘩させてみたり、捕まえたことに満足してそのまま逃がしてやったり、ちょっと残酷ですが殺して遊んでみたり……。

その楽しみ方は人によってさまざまですが、おそらくほとんどの人が子どもの頃に昆虫を通して多くを学んだことと思います。

 

しかし、子どもの頃には喜々として昆虫を捕まえていたという人でも、大人になるにつれて昆虫に対する嫌悪感が芽生え、今では見るのも触るのも嫌だという方は少なくありません。

むしろ子どものように興味を持ち続けている大人のほうが少数派だといえるでしょう。

 

 

このように変わっていってしまうはっきりとした理由はわかりません。ただ、さまざまな知識を身につけていくなかで昆虫のもつ危険性や衛生面での問題を知り、嫌悪感が好奇心を上回ってしまうことが一因ではないかと考えられます。

 

昆虫の魅力を学ぶ意味


▲【夏の身近な昆虫】ハグロトンボ

 

筆者が小学生の頃だったでしょうか。

隣に住む幼児園入学前の子どもが「かっこいいー!」といってゴキブリを虫かごに入れて飼ってみたり、「かわいいー!」といって巨大な毛虫を手のひらに乗せて愛でたりしていました。

その姿を見て、子どもながらに「無知って怖いな……」と思った記憶があります。

 

しかし、知識をもたない幼児の感性こそ、今わたしたちが思い出すべきものだと言えるのではないでしょうか。

「黒光りする体を持ち目にも止まらない速さで走り抜けるゴキブリ」はいかにも男心をくすぐる生き物です。また「全身をやわらかい毛で覆われもぞもぞと愛らしく動きまわる毛虫」も捉えようによってはぬいぐるみのようで可愛らしいようにも思えます。

 

 

ゴキブリも森林に棲息するものであれば衛生的な問題はありません。また後になってわかったことですが、隣の子どもが触っていた毛虫は通称「クマケムシ」と呼ばれる「ヒトリガの幼虫」で毒性がないため触っても害のない種でした。

 

望むと望まざるとに拘らず、わたしたちの身の回りにはさまざまな昆虫が棲息しています。

昆虫嫌いの方にとって虫との遭遇は不快で恐ろしい出来事でしかありませんが、筆者を含む昆虫マニアは「日常生活における虫との遭遇に小さな幸せ」をおぼえるといっても過言ではありません。

 

昆虫の魅力を再発見し、子どもの頃のように虫を見つけることで喜びを感じられるようになれば、ありふれた生活の中にささやかな幸せをおぼえる機会が増えます。

 

 

昆虫は生き物の中でも特に種類が豊富でどこにでも棲息しているので他の動物と比べて採取/観察のハードルが低いです。昆虫採集を行えば気軽に生き物と直に触れ合うことができ、そして自然をより深く感じることができると思います。

私は昆虫の魅力を知れば、わずかにせよ日常に潤いがでてくるのではないかと思っています。

このWebonでは身近な昆虫を紹介していきます。身近な生き物である「昆虫」に対する愛情を思い出すきっかけになれば幸いです。

 

筆者注※)そもそも昆虫とは節足動物のなかでも六本の脚をもつ生き物を指す用語ですが、ここではクモやサソリといった鋏角類(きょうかくるい)の他、ムカデやヤスデなどの多足類(たそくるい)、ダンゴムシやワラジムシといった甲殻類(こうかくるい)など、現代において一般に「虫」として認識されている節足動物も含めて取り扱います。

 

次の章(第1章)からは【】【】【】【】にわけて、季節ごとに身近な昆虫たちを紹介していきます。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを感じていただければ幸いです。

ちなみに昆虫には似たものがあり、見分けるのも昆虫を見つける楽しさのひとつです。適宜似た昆虫の見分け方も紹介しておりますので、こちらも合わせてお楽しみください。

次のページでは【春】の身近な昆虫を紹介します。

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