【秋】の身近な昆虫 5選

Webon紹介目次著者
身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

國谷正明氏による『身近な昆虫の観察入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
facebook(國谷)

 

『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

ちなみに昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。

こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

このページでは「秋の昆虫」を紹介します。厳しい暑さが過ぎ去った秋は、多くの虫たちを観察することのできる季節です。

 

エンマコオロギ

名称 エンマコオロギ
大きさ 体長 30~35mm
出現時期 8月~11月
分布 本州~九州
いる場所 公園の草地・枯草の中
備考 縄張りを主張する時、メスを誘う時、ケンカをする時で鳴き方が違う。

 

エンマコオロギは国内最大のコオロギで、夏から秋にかけて多く見ることができます。

甲高い独特の鳴き声を発しますが、真夏の暑さの下で鳴くことはあまりないです。そのため、コオロギの鳴き声はわたしたちに「秋の訪れ」をしらせるひとつの風物詩であるといえます。

エンマコオロギの鳴き声はコオロギのなかでもっとも美しいとされており、鳴き声を愛でるために飼育する愛好家も少なくありません。

 

▼エンマコオロギの鳴き声を聴いてみよう!

 

また、中国では雄のコオロギ同士を戦わせる「闘蟋(とうしつ)」という競技が古くから親しまれています。日本でも「コオロギ相撲」として稀にイベントが開催されることがあります。

 

アキアカネ


By Kropsoq – photo taken by Kropsoq, CC 表示-継承 3.0, Link 

名称 アキアカネ
大きさ 体長 35~45mm
出現時期 6月~12月
分布 北海道~九州
いる場所 池・水田

 

アキアカネは夏の初めに幼虫であるヤゴから羽化(うか:成虫になること)します。

 

ヤゴ
「ヤゴ」とはトンボの幼虫を指します。ヤゴは成虫のトンボとは大きく異なる見た目や形態をしています。成虫は空中を飛びますが、ヤゴは水中で生活します。

▼ギンヤンマ(トンボの一種)のヤゴと成虫

 

アキアカネは夏の間は標高の高い山間部などですごし、気温が下がるにつれて人里に姿を現しはじめるため「秋の虫」という印象を強く感じさせます。

アカトンボとは赤い体色のトンボの総称ですが、アキアカネを指してアカトンボと呼ぶことも少なくありません。

 

▼アキアカネが動く様子

 

他にアカトンボと呼ばれるものに、ナツアカネ、マイコアカネ、マユタテアカネ、ネキトンボ、ミヤマアカネ、コノシメトンボなどがありますが、翅の色や胸の模様で見分けることができます。

 

▼アカトンボの代表種である「アキアカネ」「ナツアカネ」の見分け方

アキアカネ 名称 ナツアカネ
</By Alpsdake投稿者自身による作品File:アキアカネ メス Sympetrum frequens female s3.JPG, CC 表示-継承 3.0, Linktd> 写真 By Alpsdake投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

胸部の黒い三本線の真ん中の先端が尖っている。
見分けるポイント
胸部の黒い三本線の真ん中の先端が角ばっている。

 

アカトンボは秋の季語としても親しまれています。

江戸時代の俳人・沢露川が「盆つれて 来たか野道の 赤蜻蛉(あかとんぼ)」と詠んでいるように、アカトンボもまた濃厚な秋の気配を感じさせる昆虫です。

また、江戸時代の俳人・宝井其角が「あかとんぼ はねをとったら とうがらし」と詠んだ句に、其角の師匠である松尾芭蕉が「とうがらし はねをつけたら あかとんぼ」と返したという、微笑ましい逸話が残っています。

 

ツクツクボウシ

名称 ツクツクボウシ
大きさ 体長 30mm
出現時期 7月~10月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 森林

▼鳴き声を聴いてみよう!

 

ツクツクボウシはセミの一種です。

セミは夏の虫というイメージが強いですが、夏の終わりには多くが姿を消してしまいます。そんな中、ツクツクボウシは秋の初めまでその姿を観察することができます。

ツクツクボウシはその名のとおり「オーシ・ツクツク・オーシ・ツクツク――」という印象的な鳴き声を発します。その鳴き声から容易にツクツクボウシを判別することができます。

ただ、警戒心が強く、人の気配を感じると他の場所に逃げてしまうため、声のわりに姿を見かける機会は少ないセミであるといえます。

外見的には細身の体と透明な翅(はね)が特徴ですが、似たような外見のセミも多く、見た目だけで見分けることは難しいでしょう。

 

カネタタキ

名称 カネタタキ
大きさ 体長 10~14mm
出現時期 8月~11月頃
分布 本州以南
いる場所 街路樹・枯木の隙間
備考 オスには翅がありメスには翅がない

 

カネタタキはバッタ目カネタタキ科に属する昆虫で、科目は異なりますがコオロギに近い生き物であるといえます。

 

▼コオロギ

 

上でご紹介した虫たちと比べるとなじみが薄いかもしれませんが「鉦叩(かねたたき)」という名のとおり、金属製の皿を叩いているような甲高い鳴き声が特徴的です。

美しい鳴き声を好む愛好家がいる一方で、カネタタキは約1cmという小柄な体格ながら昼夜を問わず鳴き続けるため、家屋に侵入した場合には騒音害虫として駆除の対象となることもあります。

 

▼1cm:1円玉の半径

 

▼カネタタキの鳴き声

 

マツムシ

名称 マツムシ
大きさ 体長 19~33mm
出現時期 8月~11月
分布 本州・四国・九州・沖縄
いる場所 草地・河川敷・線路沿い

▼鳴き声

 

マツムシはかの有名な唱歌「虫のこえ」のいちばん最初に登場することからもわかるように、秋の虫として古くから親しまれてきた昆虫のひとつです。

 

▼唱歌「虫のこえ」

 

歌詞で「チンチロ チンチロ チンチロリン」と例えられている鳴き声のマツムシは、鈴の音にも笛の音にも似て非常に美しく、マニアの間ではしばしば高額で取引されています。

近年では棲息数が減少しており、その美しい鳴き声を耳にする機会もめっきり減ってきたように感じられます。

明治時代に移入された外来種であるアオマツムシと混同されることもあります。文字どおり緑色の体色をもつアオマツムシに対し、マツムシの体色は茶色であり、また鳴き声もまったく異なるため、簡単に見分けることができます。

 

▼アオマツムシ


By ふうけ投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

このページでは【秋】の身近な昆虫を紹介してきました。次のページでは【冬】の身近な昆虫を紹介します。

寒い冬は昆虫たちにとって死の季節と言えます。昆虫を見つけるには困難な季節ですが昆虫たちの冬の越し方を知り、魅力に触れて昆虫を好きになっていただきたいです。

『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)