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子供は昆虫に夢中になる
▲【春の身近な昆虫】アゲハチョウ
子供の頃には誰もが夢中になった虫採り。
捕まえた昆虫を虫かごで飼ってみたり、虫同士を喧嘩させてみたり、捕まえたことに満足してそのまま逃がしてやったり、ちょっと残酷ですが殺して遊んでみたり……。
その楽しみ方は人によってさまざまですが、おそらくほとんどの人が子どもの頃に昆虫を通して多くを学んだことと思います。
しかし、子どもの頃には喜々として昆虫を捕まえていたという人でも、大人になるにつれて昆虫に対する嫌悪感が芽生え、今では見るのも触るのも嫌だという方は少なくありません。
むしろ子どものように興味を持ち続けている大人のほうが少数派だといえるでしょう。
このように変わっていってしまうはっきりとした理由はわかりません。ただ、さまざまな知識を身につけていくなかで昆虫のもつ危険性や衛生面での問題を知り、嫌悪感が好奇心を上回ってしまうことが一因ではないかと考えられます。
昆虫の魅力を学ぶ意味
▲【夏の身近な昆虫】ハグロトンボ
筆者が小学生の頃だったでしょうか。
隣に住む幼児園入学前の子どもが「かっこいいー!」といってゴキブリを虫かごに入れて飼ってみたり、「かわいいー!」といって巨大な毛虫を手のひらに乗せて愛でたりしていました。
その姿を見て、子どもながらに「無知って怖いな……」と思った記憶があります。
しかし、知識をもたない幼児の感性こそ、今わたしたちが思い出すべきものだと言えるのではないでしょうか。
「黒光りする体を持ち目にも止まらない速さで走り抜けるゴキブリ」はいかにも男心をくすぐる生き物です。また「全身をやわらかい毛で覆われもぞもぞと愛らしく動きまわる毛虫」も捉えようによってはぬいぐるみのようで可愛らしいようにも思えます。
ゴキブリも森林に棲息するものであれば衛生的な問題はありません。また後になってわかったことですが、隣の子どもが触っていた毛虫は通称「クマケムシ」と呼ばれる「ヒトリガの幼虫」で毒性がないため触っても害のない種でした。
望むと望まざるとに拘らず、わたしたちの身の回りにはさまざまな昆虫が棲息しています。
昆虫嫌いの方にとって虫との遭遇は不快で恐ろしい出来事でしかありませんが、筆者を含む昆虫マニアは「日常生活における虫との遭遇に小さな幸せ」をおぼえるといっても過言ではありません。
昆虫の魅力を再発見し、子どもの頃のように虫を見つけることで喜びを感じられるようになれば、ありふれた生活の中にささやかな幸せをおぼえる機会が増えます。
昆虫は生き物の中でも特に種類が豊富でどこにでも棲息しているので他の動物と比べて採取/観察のハードルが低いです。昆虫採集を行えば気軽に生き物と直に触れ合うことができ、そして自然をより深く感じることができると思います。
私は昆虫の魅力を知れば、わずかにせよ日常に潤いがでてくるのではないかと思っています。
このWebonでは身近な昆虫を紹介していきます。身近な生き物である「昆虫」に対する愛情を思い出すきっかけになれば幸いです。
筆者注※)そもそも昆虫とは節足動物のなかでも六本の脚をもつ生き物を指す用語ですが、ここではクモやサソリといった鋏角類(きょうかくるい)の他、ムカデやヤスデなどの多足類(たそくるい)、ダンゴムシやワラジムシといった甲殻類(こうかくるい)など、現代において一般に「虫」として認識されている節足動物も含めて取り扱います。
次の章(第1章)からは【春】【夏】【秋】【冬】にわけて、季節ごとに身近な昆虫たちを紹介していきます。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを感じていただければ幸いです。
ちなみに昆虫には似たものがあり、見分けるのも昆虫を見つける楽しさのひとつです。適宜似た昆虫の見分け方も紹介しておりますので、こちらも合わせてお楽しみください。
次のページでは【春】の身近な昆虫を紹介します。
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はじめに
第1章 季節から見つける
第2章 フィールドから見つける
第3章 特徴から見つける
第4章 実際に見つけに行く
番外編
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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