【夏】の身近な昆虫 6選

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

國谷正明氏による『身近な昆虫の観察入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。

このページでは「夏の昆虫」を紹介します。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

また、昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

夏の昆虫について

 

気温とともに生物の活動が活発になり、夏には多くの昆虫が姿を現します。カブトムシやクワガタなどの成虫(=虫の最終形態)が発生し、セミが鳴きはじめます。

中にはこの季節にしか見ることのできない昆虫も少なくありません。

 

ゲンジボタル/ヘイケボタル

名称 ゲンジボタル
大きさ 体長 12~18mm
出現時期 7~8月
分布 本州・四国・九州
いる場所 川の周り
備考 日本最大のホタル。成虫は水だけを飲み、エサを食べることとはない。寿命は1週間ほど。

 


By yellow_bird_woodstock さん https://www.flickr.com/photos/yellow_bird_woodstock/https://www.flickr.com/photos/yellow_bird_woodstock/3709493763/, CC 表示-継承 2.0, Link 

名称 ヘイケボタル
大きさ 体長 7~8mm
出現時期 6~7月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 水田・池
備考 日本ではゲンジボタルと並ぶ、代表的な光るホタル。

 

ホタルは夏の風物詩として古くから高い人気を誇っている昆虫で、初夏になると自然公園等で開催されるホタルの観察会は例年多くの人で賑わいます。

日本にはゲンジボタルとヘイケボタルが見られます。

ゲンジボタルの名前の由来には『戦死した源頼政の亡霊が乗り移っていると考えられたことから「源氏蛍」と名付けられた』という説と『源氏物語に登場する光源氏が由来になっている』という説があります。

対して、ヘイケボタルはゲンジボタルよりも、ひとまわりほど小さい体長であるため『源平合戦で結果的に破れた平家の名を取った』と言われています。

 

源平合戦
1180年に起きて6年間にわたって続いた源氏と平氏の戦い。

 

ヘイケボタルとゲンジボタルは光り方が異なり、1分間に点滅する回数はゲンジボタルよりヘイケボタルの方が早いです。

 

▼ゲンジボタルの光り方

▼ヘイケボタルの光り方

 

ハグロトンボ


By Cory, CC 表示-継承 3.0, Link 

名称 ハグロトンボ
大きさ 体長 57~67mm
出現時期 5~10月
分布 本州・四国・九州
いる場所 小川・水路の付近

 

ハグロトンボは初夏から初秋にかけて見ることのできる昆虫で、小川や水路の付近で頻繁に姿を現します。

「羽黒蜻蛉(はぐろとんぼ)」という名の由来にもなっている黒々とした羽で蝶のようにひらひらと舞う姿は非常に印象的で、夏の訪れを強く感じさせる筆者お気に入りの昆虫のひとつです。

 

雄(オス)は以下の画像のように、全身に青みがかった金属光沢をまとっています。

 

▼雄(オス)のハグロトンボ

 

一方、雌(メス)のハグロトンボは全身が黒く、雄(オス)のような光沢は見られません。

 

▼雌(メス)のハグロトンボ


By
Tennen-Gas投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

ハグロトンボは、日本に200種ほどが棲息しているトンボの仲間の中でも特に美しい種であるといえます。

体長6cm前後と決して大きくはありませんが、真っ黒の翅(ハネ)は自然の景色の中でよく映えるため、容易に発見することができます。

 

▼約6cmのもの:マッチ箱の横の長さ(5.6cm)

 

 

 

ゴマダラカミキリ

名称 ゴマダラカミキリ
大きさ 体長 25~35mm
出現時期 6月~9月
分布 北海道・本州・沖縄
いる場所 農園・林の周辺

 

ゴマダラカミキリも夏にしか姿を見ることのできない昆虫のひとつです。

「胡麻斑髪切(ごまだらかみきり)」という名のとおり全身に白と黒の斑点模様があり、イチジクやバラ、シラカバなどさまざまな樹木の生木を食樹(しょくじゅ:樹を食べること)します。

 

身の危険を感じると、他のカミキリムシの仲間と同じように、胸を強くこすり合わせてキィキィという甲高い鳴き声を発します。

また、生木を食樹することからもわかるように、強い顎の力の持ち主です。

ゴマダラカミキリは体長3cm前後と小さいため危険性は低いですが、大型のカミキリムシに噛まれると出血する場合もありますので捕まえる際には注意してください。

 

▼約3cmのもの:SDカードの縦の長さ

 

アオハナムグリ

名称 アオハナムグリ
大きさ 体長 15~19mm
出現時期 5月~9月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 林の周辺・原っぱ

 

アオハナムグリは金属光沢のある緑色の体色が美しい中型の甲虫(こうちゅう:堅い前羽を持つ虫)です。

植物の葉を食べるコガネムシや樹液を吸うカナブンと違い、ハナムグリの仲間は花の蜜や花粉を食します。

ミツバチと同じように植物の受粉に大きく関わっているため、一般に益虫(えきちゅう:人の役に立つ虫)として扱われています。

 

姿形がよく似たアオカナブンやアオドウガネ。

ナミコガネムシとは鞘翅(しょうさ:堅くなった前翅)の形や模様で容易に見分けることができます。

 

▼アオドウガネ(腹部に長い毛が生えている。アオハナムグリと違い体色の光沢の艶が弱い。)


By I, KENPEI, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

ただ、より近縁なナミハナムグリやコアオハナムグリは腹部の色味や脚部の毛の色で見分けるしかないため、見分ける難易度は高いといえます。

 

▼コアオハナムグリ(腹部は黒く、翅に毛が多いのが特徴)


By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link 

 

オオスカシバ

名称 オオスカシバ
大きさ 前翅長(ぜんしちょう) 25~30mm
出現時期 6月~9月
分布 関東地方以南
いる場所 花の上・クチナシ
備考 「蜂」と間違えられることがあるが「ガ」の一種。

 

オオスカシバは透明な翅(はね)と鶯色(うぐいすいろ:くすんだ黄緑色。抹茶色に近い色)の毛並みが美しいスズメガの一種で、筆者がもっとも好きな昆虫のひとつでもあります。

夏の強い日差しのなか、透明な翅をすばやくはためかせて空中に静止したまま、蝶のような長い口吻で花の蜜を吸う姿は美しく、オオスカシバに遭遇すると思わず息を呑んで見入ってしまいます。

 

▼オオスカシバが空中に静止し花の蜜を吸う姿

 

成虫の飼育は困難ですが、飼育下で羽化したオオスカシバは人によく馴れます。幼虫から育てて羽化させ、ひとしきり観察した後で自然に放すというスタイルで愛でている愛好家も少なくありません。

羽化直後に『羽ばたいて翅から鱗粉がこぼれ落ちる様子』にはえも言われぬ美しさが漂っています。

稀にスズメガの仲間であるホシホウジャクと混同されることがありますが、体色が大きく異なるため容易に見分けることができます。

 

▼ホシホウジャク(全体にこげ茶色。後翅のみ黄褐色)


By I, KENPEI, CC 表示-継承 3.0, Link 

▼オオスカシバ(背中あたりがくすんだ黄緑色)


By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link 

 

このページでは【夏】の身近な昆虫を紹介しました。

次のページでは【秋】の身近な昆虫を紹介します。秋は「もっとも美しい鳴き声のコオロギ」と言われる「エンマコオロギ」など、多くの虫たちを見つけることができます。

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