TOKIOの軌跡

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ジャニーズファン歴25年で『なぜ90年代J-POPはあんなにアツかったのか?』の著者であるシン氏が90年代ジャニーズという存在を紐解く!「少年隊」「光GENJI」が築いたジャニーズの礎とは?「SMAP」「V6」「TOKIO」「KinKi Kids」の軌跡とおすすめ楽曲をジャニーズと共に青春を過ごしてきた筆者視点で語る!

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著者:シン アキコ

30代前半女性。ジャニーズファン歴25年。70年代、80年代、90年代の邦楽を愛している。著書『なぜ90年代J-POPはあんなにアツかったのか?: J-POP愛して25年の著者がヒット曲を徹底分析 (Webonブックス) 』

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この章では90年代活躍したジャニーズグループ「SMAP」「TOKIO」「V6」「KinKi Kids」の軌跡と楽曲を紹介します。

このページからは「TOKIO」の軌跡と楽曲を紹介していきます。

 

「TOKIO」90年代簡易年表

年月 出来事
1994年9月 「LOVE YOU ONLY」でCDデビュー
1994年12月 「第45回NHK紅白歌合戦」出場
1995年4月 3枚目シングル「うわさのキッス」リリース。アニメ「キテレツ大百科」のED。オリコン2位。
1995年11月 冠番組「鉄腕!DASH!!」スタート
1997年2月 11枚目シングル「フラれて元気」が松岡昌宏主演ドラマ「サイコメトラーEIJI」の主題歌に。オリコン5位。
1997年5月 12枚目シングル「Julia」が国分太一主演ドラマ「せいぎのみかた」のオープニングに。オリコン10位。
1998年5月 14枚目シングル「Love & Peace」が松岡昌宏主演ドラマ「LOVE&PEACE」の主題歌に。オリコン9位。
1999年11月 18作目シングル「愛の嵐」が松岡昌宏主演ドラマ「サイコメトラーEIJI2」の主題歌に。オリコン10位。
2001年5月 22枚目シングル「メッセージ」でオリコン初の1位獲得。

 

TOKIOの軌跡

デビュー

 

「ダテに待たせたワケじゃない」という、期待いっぱいのキャッチフレーズを背負い、1994年「LOVE YOU ONLY」でデビューしたTOKIO。

男闘呼組以来、ジャニーズでは2組目のバンドスタイルをとるアイドルとして注目を浴びました。

91年にジャニーズ事務所に入所した長瀬智也を除く4人は、少年隊のバックダンサーや光GENJIのバックバンドの経験を豊富に積んでおり、今で言うジャニーズジュニアにおいてはベテラン的存在でした。

デビュー曲の「LOVE YOU ONLY」は2019年現在においてもTOKIO最大の52万枚の売上を誇っています。

いきなりアニメの主題歌に起用されたかと思うと、デビューからわずか2ヶ月で日本武道館公演を、年末には紅白歌合戦初出場を果たしました。

 

冠番組「鉄腕!DASH!!」

 

翌1995年には、冠番組「鉄腕!DASH!!」(のちに改名。現在の「ザ!鉄腕!DASH!!」)がスタート。

深夜枠の30分番組から始まり、じわじわと視聴率が上昇、1998年には日曜のゴールデン枠へと進出しました。

定番企画だった電車とのリレー対決や「〇〇でどこまで行けるか」シリーズといったチャレンジ企画に、NGなしの体当たりで挑むTOKIOは「日本一身体を張るアイドル」として男女問わず人気を獲得していきます。

番組を通し、5人はそれぞれの個性を視聴者に強く印象づけました。

まだ20代ながら、おじさんキャラを世間に定着させたリーダーこと城島茂。

肉体派でスポーツ万能・兄貴肌の山口達也。

バラエティやドラマはもちろん、ダンスに歌にと器用タイプの国分太一は、ジャニー喜多川社長からも「逸材」と評された存在です。

料理上手でなんでも器用、ジャニーズらしくないのにジャニーズへの憧れや愛は人一倍強い松岡昌弘。

抜群のスタイルと美しい容姿からは想像もつかない天然ボケっぷりを世間に知られることとなった長瀬智也。

彼らの魅力は、バラエティで見せる「素の姿」と、ひとたび楽器を持てばガラリと表情が変わるパフォーマンスとのギャップです。

にぎやかな5人で構成されたバンドは、ジャニーズにJ-POP界にと新たな風を吹き込んでいきます。

 

メンバー主演のドラマ主題歌が軒並みヒット

 

TOKIOの楽曲は、メンバー主演のドラマ主題歌に起用される機会に多く恵まれました。

松岡・長瀬のふたりはとくに、これまでのジャニーズとはひと味違う、長身でワイルドな「いかにもヒーロー」という役柄を演じられる存在。

一方でコミカルな演技にも定評があり、90年代から2000年代初頭にかけてはまさにひっぱりだこの状態でした。

いまでも彼らに演技の仕事は絶えませんね。

コメディからシリアスまで様々なドラマの主演に抜擢され、そのほとんどの主題歌をTOKIOが担当。

▼TOKIOの主演ドラマの主題歌例

年月 ドラマ
1997年2月 「フラれて元気」 松岡昌宏主演ドラマ「サイコメトラーEIJI」主題歌
1997年5月 「Julia」 国分太一主演ドラマ「せいぎのみかた」オープニング
1998年5月 「Love & Peace」 松岡昌宏主演ドラマ「LOVE&PEACE」主題歌
1999年11月 「愛の嵐」 松岡昌宏主演ドラマ「サイコメトラーEIJI2」主題歌
2001年10月 「DR」 長瀬智也主演ドラマ「ハンドク!!!」主題歌

 

彼らの楽曲はあらゆる世代の視聴者にとって耳なじみのあるものになりました。

それゆえ一般層にも知られている曲が多いのですが、意外にもオリコンチャートで初登場1位を獲得したのは2001年の「メッセージ」が初めてのことでした。

 

TOKIOの音楽と魅力

 

デビュー曲「LOVE YOU ONLY」以降はスマッシュヒットが続きましたが、TOKIOにとっての大ヒット曲・代表曲は何かと問われれば正直、難しいところもあります。

チャート順位だけを見れば、他のグループほど目を見張るような記録には恵まれていないという見方もあるでしょう。

しかし、確実に記憶には残っている。

当時、毎週楽しみにしていたドラマやバラエティとともに、多くの人のなかでTOKIOの楽曲は生きている。

現在も活躍するジャニーズのグループにおいてTOKIOは、楽曲にしろ個人にしろ、ジャニーズファン以外にもっとも受け入れられ、愛されている存在といえるかもしれません。

 

楽曲の特徴

 

TOKIOの楽曲は、これまでのジャニーズ制作陣とは異なる作家が目立ちます。

数々のアニメソングの作詞を手掛けた工藤哲雄氏をはじめ、クレジットには他のジャニーズアイドルとはひと味違う名前がずらりと並びます。

▼TOKIOに楽曲提供アーティストの例

リリース年 アーティスト 曲名
1994年 工藤哲雄 「LOVE YOU ONLY」
2006年 中島みゆき 「宙船」
2007年 甲斐よしひろ 「ひかりのまち」
2007年 長渕剛 「青春 SEISYuN」
2008年 椎名林檎/東京事変 「雨傘」
2010年 TUBE(前田亘輝・春畑道哉) 「-遥か-」

 

それゆえ、TOKIOの楽曲はジャニーズらしいというよりも「TOKIOらしい」。そう言えるのではないでしょうか。

各々の楽器が見せ場を持てるようなアレンジ、とにかく前へ前へというポジティブな歌詞、誰もが口ずさみやすいキャッチーなメロディ。

ボーカル・長瀬が年齢を重ね、大人の魅力を放つようになると、バンドのサウンドも本格的なものになっていきます。

全員がソングライターであるTOKIO。

現在はシングル・アルバム問わず、楽曲制作やMVの企画・制作に至るまで自分たちで行っています。

本格的なバンドとしてオリジナルの世界を確立しつつあるTOKIOには、やはり新曲のリリースを期待してしまいます。

欠けてしまったメンバーの「音」を、他のミュージシャンに任せるのは簡単なことでしょう。

でもそれはTOKIOの音ではない。

それほどメンバーというのは「代わりがいない」存在。

楽曲リリースがないことは寂しいけれど、5人でなければTOKIOではないとも思う。

とても複雑な心境で待つ日々です。

 

“ジャニーズのバンド”としてのTOKIO

 

まだデビュー初期のころのこと。当時のジャニーズとしては異端ともいえる、サングラス&バンダナといった格好で寡黙にビートを刻む松岡は、カメラが回ってくるタイミングでスティックを回してみせることがよくありました。

城島、山口、国分も、カメラ目線と笑顔は欠かしません。

コンサートでは、フライングしながら楽器を演奏することもありました。

一部は当てぶりもあったでしょうが、あくまで当時の彼らは「ジャニーズのバンド」。

エンターテインメントであることはもちろん、アイドルでありなおかつバンドであることの両立を模索していたのでしょう。

特に彼ら4人は、ジャニーズのエンターテインメントを誰よりも間近で見てきた存在なのですから。

 

長瀬はというと、デビュー当時のトレードマークは短パン。

デビュー曲はまだまだ歌唱も頼りなく、ツインボーカルとして多くのパートを山口が歌唱しています。

けれど、長瀬をTOKIOのボーカルに決めたことこそ、ジャニー喜多川社長の功績であると思います。

私はかつて、まだジャニーズジュニアであった長瀬が、あるグループのバックダンサーを務めている映像を見たことがあります。

ダンススキルに秀でているわけではない、むしろ苦手なほうなのではないかと思うほど振り付けも危うい長瀬でしたが、なぜだかとにかく目をひくのです。

ジュニアらしからぬ長身、おどろくほど整った顔立ち、そして全力で「演じる」ようなダンス。

彼は画面のどこで踊っていても、たとえ上手くはなかろうとも、同世代のなかでは目立ちすぎてしまう。

目を奪われるというのはこういうことかと、彼の存在感やオーラに圧倒された記憶があります。

 

すでに形が出来つつあった先輩グループのボーカルというのは、まだ15歳の少年にとって恐れ多いポジションだったことでしょう。

しかし長瀬にとってはこれ以上ない適所であったと思います。

ステージを経験するたびに着実に度胸をつけていく長瀬は「ボーカル」としてどんどん成長し、ポジションを確立するようになります。

デビューからたった数年で、TOKIOのセンター、TOKIOのボーカルは長瀬しかいない、そんな存在になりました。

いまTOKIOは、空を飛ぶこともなければ派手な衣装に身をつつむこともほとんどない。

けれど目を引く「魅せ方」がある。

ジャニーズ×バンドの答えは、TOKIOそのものだと言えるでしょう。

 

次のページではTOKIOの90年代のおすすめの名曲をご紹介します。

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90年代ジャニーズの魅力を伝えたい理由

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90年代ジャニーズの魅力を伝えたい理由

 

私には2つの疑問があります。

なぜ日本には「ジャニーズファン」ということが恥ずかしいことであるような、隠すべきことであるような風潮があるのでしょうか。

あれだけのヒット曲を持ち、ミリオンセラーを売り上げ、社会現象までも巻き起こしたジャニーズが、なぜひとつの音楽ジャンルとして認められていないのでしょうか。

かくいう私も、ジャニーズファンであることを公にしてこなかった一人です。

 

あくまで個人的見解ではありますが、世間の風潮ではジャニーズファンに対して偏見を持っている方もいると思います。

「ジャニーズファン=顔ファン、イケメン好きという偏見」
「音楽番組の番協にみる黄色い声援=歌を聴いていない、マナーがないという偏見(番協はあくまで「協力」であり、タレントのパフォーマンスを盛り上げるため、事務所の指示のもと行うもの。事前に集合し、振り付けや合いの手、声援の練習を行います)」
「世間的には『ジャニーズは音楽じゃない』という認識がある」

このようなイメージから、なかなかジャニーズファンであると公にできない方も少なくないはずです。

 

私も「好きな音楽は?」と問われたとき「ジャニーズ」だとか「光GENJI」だとか「KinKi Kids」だと答えることはありませんでした。

しかし、ふと思ったのです。本当に、ふと。

ジャニーズファンであることの、なにが恥ずかしいのだろうかと。

ジャニーズはカッコイイ。顔だけじゃない。音楽も、パフォーマンスも、すべてカッコイイ。だから好き。それの何が悪い。何が恥ずかしいのだろうかと。

「ジャニーズを見つけた自分を誇れないことのほうが恥ずかしい」

そう気付いたとき、ジャニーズの素晴らしさを伝えたい、分かり合いたい、そういった衝動に駆られました。

そしてライターとして、音楽を愛する者として、ジャニーズの音楽の魅力をぜひ伝えたいと思ったのです。

なかでも80~90年代はジャニーズが著しく活躍、そして飛躍を果たした「黄金時代」と呼べるでしょう。

そして、90年代は私が青春を過ごした時期であり、リアルタイムで彼らの活躍を目の当たりにしてきました。

そこで今回は、音楽的な視点を交えつつ90年代ジャニーズの魅力をひも解いていきます。「ジャニーズ」という文化や楽曲の魅力を知れば、ジャニーズをもっと好きになることでしょう。

 

まずおさえるべきは「デビュー曲」

 

誰もが知るジャニーズのヒット曲、知る人ぞ知る隠れた名曲、ジャニーズの音楽の裏にはたくさんの著名な作家の存在があります。

とくにそれぞれのデビュー曲は、ジャニーズを知るにはまずおさえるべき彼らの象徴的存在です。

思い出してみてください。

もちろん過去の映像でもかまいません。

 

きっと誰の想い出にも「仮面舞踏会」でバック転を決める少年隊、

ローラースケートで「STAR RIGHT」を舞い踊る光GENJI、

カメラににらみをきかせ「DAYBREAK」を鳴らす男闘呼組の姿があることでしょう。

 

音楽番組氷河期にデビューしたSMAPの「Can’t Stop!! -LOVING-」はどうでしょう。

国民的スターに登り詰めたSMAPの野心とプロ根性は彼らの魅力であり、恵まれなかった不遇のデビューもいつしか伝説に変えてしまいました。

本格派のバンドスタイルでデビューしたTOKIOの「LOVE YOU ONLY」はフジテレビ系アニメ「ツヨシしっかりしなさい」の主題歌にも起用され、老若男女問わず愛されるTOKIOに相応しいキャッチーな曲。

いわゆる「バレーボールデビュー」の先駆けとなったV6の顔ぶれには、当時のジャニーズファンはみな驚いたはず。

※バレーボールデビュー…「ワールドカップバレー」のスペシャルサポーターとしてジャニーズの新グループが結成され、デビュー曲が大会テーマソングになるという流れはジャニーズファンにおいて四年に一度のおきまりとなっていた時期がありました。

流行していたユーロビートに乗せたダンサブルな「MUSIC FOR THE PEOPLE」は、今も変わらぬダンスとアクロバットでファンを楽しませてくれる彼らの代名詞といえます。

当時、日本中の女の子が恋をしたKinKi Kidsのデビューは、約5年ものあいだ今か今かと待ちわびたもの。

そして山下達郎&松本隆による名曲「硝子の少年」と『A album』の同時発売という異例の形で期待に応えました。

彼らは現在に至るまでシングルチャート初登場1位のギネス記録を更新し続け、「あのころの女の子たち」はずっと彼らを見つめ続けています。

 

このWebonではそれぞれのデビュー曲についてもご紹介していきます。

また各グループの色…ファンタジック、等身大、アクロバティック、アーティスティック…彼ら自身の輝きを最大限に際立たせる曲、コレオ、演出。それらを作り上げた影の存在についても触れていきたいと思います。

 

ジャニーズには歴史、美学、ロマンがある

 

ジャニーズは、世界にたったひとつ日本にしかない文化です。

「ジャニー喜多川」という若き青年が見た夢を、同じくショービジネスを志す若者たちが未来へと繋いでいく。

そこには歴史があり、美学があり、ロマンがある。

ジャニーズの世界で生きることを決めた少年たちは、レッスンに舞台にコンサートにと、日々エンターテインメント道をまい進していきます。

 

普通の男の子としての青春はそこにはないでしょう。

でも、ジャニーズだからこそ見える景色がきっとあるのだと思いますし、そうであってほしいと願うファン心もあります。

彼らの青春が、光り輝く照明とペンライトの波で彩られますようにと。誰よりも幸せな景色がその目に映りますようにと願っています。

 

そして私はいくつになっても、彼らを輝かせるペンライトのひとつでありたい。

これまでの人生で、さまざまなジャニーズグループのコンサートを鑑賞しました。

どれをとっても忘れることのない、私の青春をたしかに輝かせてくれるものです。

彼らが歌い、踊り、駆けまわり、笑って泣いた。

私は、彼らの名を呼び、胸をときめかせ、笑って泣いた。

それが私の、私たちの青春でした。おこがましくはあるけれど、彼らと私たちの宝物のような青春。

そんな時間が、季節が、彼らにとっても生涯すばらしい記憶でありますようにと願っています。

ところどころ、想い出話の蛇足があるかもしれませんがどうぞ温かい目でお付き合いください。

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SMAPの軌跡

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ジャニーズファン歴25年で『なぜ90年代J-POPはあんなにアツかったのか?』の著者であるシン氏が90年代ジャニーズという存在を紐解く!「少年隊」「光GENJI」が築いたジャニーズの礎とは?「SMAP」「V6」「TOKIO」「KinKi Kids」の軌跡とおすすめ楽曲をジャニーズと共に青春を過ごしてきた筆者視点で語る!

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この章では90年代活躍したジャニーズグループ「SMAP」「TOKIO」「V6」「KinKi Kids」の軌跡と楽曲を紹介します。

まずは「SMAP」の軌跡と楽曲を紹介していきます。

 

「SMAP」90年代簡易年表

年月 出来事
1988年4月 SMAP結成
1991年9月 「Can’t Stop!! -LOVING-」でCDデビュー
1994年3月 12枚目シングル「Hey Hey おおきに毎度あり」で初のオリコン1位
1994年6月 13枚目シングル「オリジナルスマイル」でオリコン2位
1994年9月 14枚目シングル「がんばりましょう」でオリコン1位
1994年12月 15枚目シングル「たぶんオーライ」でオリコン1位
1995年1月 「がんばりましょう」で日本を元気づける
1995年3月 16枚目シングル「KANSHAして」でオリコン1位
1996年4月 冠番組「SMAP×SMAP」放送開始
1996年5月 メンバーの森且行が脱退
1998年1月 27枚目シングル「夜空ノムコウ」で初のミリオンヒット
2000年8月 32枚目シングル「らいおんハート」で二度目のミリオンヒット

 

SMAPはジャニーズを変えた存在

 

2016年。SMAPは惜しまれつつも解散を迎えましたが、その活動は国民的アイドルグループと称されるにふさわしいものでした。

前章で紹介した少年隊や光GENJIがジャニーズの教科書を作った存在であるとするならば、SMAPはそこに数多くの番外編を残したアイドルであると、私は思います。

後に続くアイドルの中には、教科書を丁寧に辿る者もいれば、ときには塗り替える者もいるでしょう。

「バラエティへの本気の進出」「衣装も用意されないアイドルから国民的アイドルへの転身」「30歳を超えても歌って踊るアイドルグループで居続けたこと」などSMAPの描いた番外編はSMAPにしか辿ることのできないページ。

解散してもなおSMAPがオンリーワンであることの証明です。

日本中、老若男女問わず誰もが彼ら個人の名前を言える。

いつのまにかそんなグループになっていましたね。

「音楽番組氷河期のデビュー」「なかなか埋まらないホール公演」といった、ジャニーズアイドルとしては異例ともいえる不遇の時期を乗り越えてきたSMAP。

体当たりもいとわぬバラエティへの進出や、コミックソングも全力でやりきる姿勢など「新しいアイドル」の道を切り拓き、着実に知名度と人気を獲得していきました。

 

SMAPの軌跡

不遇の時代

 

音楽面ではキャッチーな良曲に恵まれ、アニメの主題歌やCMに起用されながらも、あと一歩というところで代表曲には至らない時代が続きます。

代表曲に至らなかった理由の一つとしては、メディアで曲を披露できる機会がこれまでのジャニーズアイドルと比較して圧倒的に少なくなったことが挙げられます。

この頃、日本の主要な音楽番組は軒並み終了していきました。「ザ・ベストテン」が89年に終了、「夜のヒットスタジオ」シリーズも90年には終了。とくに「ザ・ベストテン」は毎回趣向をこらした演出や生パフォーマンスが人気の番組であり、少年隊や光GENJIのブレイクには欠かせない番組であったと思います。

これらの番組が終了したことはSMAPにとっては痛手であったと思いますし、彼ら自身もかつてそのように語っていたことがありました。

また、音楽業界ではビーイング系ブームやバンドブームに火がついたことで、相対的にジャニーズ全体の売り上げも低迷していた時期でした。

※ビーイング系ブーム:ビーイングという音楽プロダクション所属によるアーティスト「ZARD」「大黒摩季」「DEEN」「B’z」などが90年代J-POPシーンで大活躍。1992年12月28日から93年7月26日までの31週間中、27週にわたってビーイング系アーティストが首位を獲得するという快挙を成し遂げる。ビーイング系ブームについて詳しくはこちらで解説!

 

現在とは異なり、曲を聴くためにはCDを購入しなければならない時代です。

楽曲が受け、気に入られればファン以外も購入し、売り上げが伸びるということ。

知名度や話題性が、ダイレクトにチャートに反映する時代でした。

一般層にもCDが購入されチャートをかけのぼるためには、良曲であることはもちろん、話題性やタイアップといった付加価値も必要だったといえるでしょう。

 

黄金時代へ突入

 

そんなとき転機となったのは1994年にリリースされたSMAPの12枚目のシングル「Hey Hey おおきに毎度あり」。

当時の「KANZAI BOYA」ことKinKi Kidsとのかけ合いが話題になりました。

この曲でSMAPは初のオリコンチャート初登場1位を獲得しています。

続く「オリジナルスマイル」は木村拓哉出演「オロナミンC」のCMタイアップに起用、以降「がんばりましょう」「たぶんオーライ」「KANSHAして」と3か月に1枚のペースで新曲をリリース。

いずれもスマッシュヒットを記録し、SMAPはいよいよ黄金時代へと突入していきます。

 

当時のSMAPは現オートレーサーの森且行を加えた6人体制。

メンバー全員、従来のジャニーズアイドルと比較すると長身でスタイルが良く、ステージ映えするシルエットが魅力でした。

アイドル然としていない、単色のスーツやシャツといったシンプルな衣装で歌い踊ってもキマる。シックな衣装では隠せないほどのオーラと若い色気、ギラギラした野心がTV越しにも伝わってくるようでした。

長髪や茶髪、ピアスといったスタイルは他のグループのメンバーにも見受けられましたが、これらもSMAPの「(良い意味で)優等生ジャニーズではない」雰囲気によく似合いました。

ノッてきた6人時代のSMAPは、まさに「無敵」「向かうところ敵なし」と言わんばかりの存在感を放っていたのです。

 

「がんばりましょう」で日本中を勇気づけた

 

SMAPを語る上で外せないエピソードといえば、やはり1995年1月20日「ミュージックステーション」で披露した「がんばりましょう」の歌唱。

「がんばりましょう」は前年の9月に発売されており、SMAPとしては2度目のオリコンチャート初登場1位を獲得した楽曲です。

ミュージックステーション放送の3日前に発生した、阪神・淡路大震災。SMAPは予定していた曲ではなく「がんばりましょう」を披露し、被災者へのメッセージとしました。

 

2011年3月放送の「SMAP×SMAP」では、東日本大震災の被災者に向け同じく「がんばりましょう」を披露。

同番組では、番組終了のその日までチャリティー募金のメッセージを呼びかけています。

「がんばりましょう」は、気だるい毎日を歌った楽曲ではありますが、ところどころに核心をついてくるような、はっとさせられるフレーズが存在します。

苦しいときやつらいとき、胸に届く言葉などせいぜいワンフレーズ。意図して放たれた言葉よりも、不意に耳に飛び込んでくる、必然的に出会うような言葉があるものです。

私自身は震災被害者でないため、震災のつらさやおそろしさについて語る言葉を持ちません。しかし、

 

いつの日にか また幸せになりましょう
空は青い 僕らはみんな生きている

引用:SMAP「がんばりましょう」作詞:小倉めぐみ

 

この「たった一言」に、彼らの笑顔に、支えられた人がきっときっと、たくさんいたのだと思うのです。

 

SMAPが愛された理由~「カッコ悪いほう」を歌えるアイドル~

 

SMAPは、いつでもなんとなく身近な存在でした。

先述したように、快進撃を始めたころのSMAPはとてつもないオーラを放つ存在で、押しも押されぬスーパーアイドルで…手が届くわけなどないのです。

けれど、SMAPはファンタジーの住人ではなかった。

 

私たちと同じように歳を重ね、同じように「今日」を生きている。

たしかにそう思えるアイドルでした。

「カッコ悪いほう」を歌えるアイドル。

私はSMAPをそのように形容します。

だるい日もあるね、カッコ悪い日もあるし、人生って大変だよね、いろいろあるよね…そんなどうにもならない「人生」ってものを代弁してくれる。

鬱屈とした毎日を、歌とパフォーマンスで昇華してくれる。

そこにどうしてかリアリティがある。

そんな存在でした。

 

バラの花束が似合うのも いるのさ
だけど似合わない 転がるように生きていくだけ

引用:SMAP「俺たちに明日はある」作詞:相田毅

 

SMAPは、いうまでもなく「バラの花束が似合う」ほうでしょう。

だけど、いつでも「似合わない」ほうを歌う、そしてキマる。

SMAPが愛された理由。

それは、ファンタジーではなく現実を生きるアイドルだったから。

私はそう思います。

 

かつてアイドルとは、だいたいが20代のうちに解散または引退してしまうのが通例とされてきました。

その常識を打ち破ったのもSMAPです。

全員が30代になっても、40代に差し掛かろうとも、現役で歌って踊り続ける姿、ずっとトップであり続ける姿はジャニーズファンにとって希望でした。

そして元メンバー森と交わした「ずっと一番であってほしい」という約束を、いつまでも守り続けていた。

 

ですから、SMAPだけはいつでもそこにいてくれる、いつまでも変わらず先頭を走り続け、道を切り開いてくれるものだとばかり思っていました。

私の人生において、SMAPがいなくなる日など来るはずがないと思っていた。

SMAPが解散してしまったこと、今でもさみしく思います。

けれどSMAPがいたから、私の平成は楽しかった。

そしていまでもSMAPがくれた元気に、私は支えられて生きています。

 

次のページではSMAPの90年代のおすすめの名曲をご紹介します。

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ジャニーズブームの歴史 ~90年代ジャニーズを理解する~

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ジャニーズファン歴25年で『なぜ90年代J-POPはあんなにアツかったのか?』の著者であるシン氏が90年代ジャニーズという存在を紐解く!「少年隊」「光GENJI」が築いたジャニーズの礎とは?「SMAP」「V6」「TOKIO」「KinKi Kids」の軌跡とおすすめ楽曲をジャニーズと共に青春を過ごしてきた筆者視点で語る!

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90年代には、SMAP、TOKIO、V6、KinKi Kidsという誰もが知る人気グループが続々とCDデビューを果たしました。

90年代当時は、活動しているジャニーズグループの母体数そのものが少なく、メディアの数も媒体も現在とはまるで異なります。

そういった要因も関連してか、2019年現在よりもメジャーな立ち位置に「ジャニーズ」は君臨していたように思います。

しかし、90年代の音楽界、あるいはアイドル市場において「ジャニーズ」の人気を不動のものとしたのは、85年デビューの少年隊、87年デビューの光GENJI、88年デビューの男闘呼組の存在と功績。

彼らの活躍と魅力を語らずして、90年代のジャニーズを語ることはできません。

 

ジャニーズ簡易年表

▼ジャニーズ簡易年表

年月 出来事
1968年9月 フォーリーブス「オリビアの調べ」でレコードデビュー
1985年12月 少年隊「仮面舞踏会」でレコードデビュー
1987年8月 光GENJI「STAR LIGHT」でレコードデビュー
1988年8月 男闘呼組「DAYBREAK」でレコードデビュー
1991年9月 SMAP「Can’t Stop!! -LOVING-」でCDデビュー
1994年9月 TOKIO「LOVE YOU ONLY」でCDデビュー
1995年11月 V6「MUSIC FOR THE PEOPLE」でCDデビュー
1997年7月 KinKi Kids「硝子の少年」、アルバム『A album』でCDデビュー

 

80年代デビューのジャニーズ

少年隊

 

1985年12月「仮面舞踏会」でデビューした少年隊は、まさにジャニー喜多川氏の夢を具現化したともいえる存在。

フォーリーブスの時代から脈々と息づくジャニーイズムは、少年隊を持ってひとたびの完成を見せたといえるでしょう。

彼らは高い身体能力と表現力を武器にミュージカルでも活躍をみせました。

 

【コラム】ジャニーイズムとは

私の主観ではありますが

  • 歌って踊る
  • オリジナルの新しさ(アイデア)がある
  • 美男子である
  • 歌、ダンスにストーリー性がある
  • 数分間のミュージカルである
  • 見て楽しめるものである

といったものにジャニーイズムを感じます。ジャニー喜多川氏自身、ミュージカル映画「ウエストサイドストーリー」に感銘を受け、エンターテインメント事業の道を進んだとのこと。歌って踊る、ストーリー性がある、見て楽しむエンタメこそジャニーイズムであると思います。

 

光GENJI

 

少年隊がデビューしてから約2年後の1987年8月に「STAR LIGHT」でデビューした光GENJIは、まさに「国民的スーパーアイドル」の代名詞的存在。

日本中の少年少女が彼らに熱狂し、社会現象をも引き起こした伝説のアイドルです。

彼らの逸話は今も語り継がれ、現役時代を知らない世代にも「光GENJI」の名やヒット曲が息づいていることでしょう。

少年隊の系譜を引き継ぎ「ジャニーズ=歌って踊れるアイドル」の定説を守りながらも、ダンスや楽曲のジャンルはまるで異なるもの。

少年隊の次に光GENJIが現れたことで、ジャニーズが持つアイドルとしての幅の広さを見せつけました。

 

男闘呼組

 

光GENJIのデビューの翌年に「DAYBREAK」でデビューした男闘呼組は、当時のジャニーズでは初のバンドスタイル。

デビュー当初こそ当てぶりであったものの、次第に自分たちでの演奏や楽曲制作を行うようになります。

主にメインボーカルをとっていた成田昭次、高橋一也の歌唱力は「ちょっと歌がうまいアイドル」の域を超え、それぞれに味をもつホンモノ。

彼らもまた、ジャニーズの表現を広げた存在です。

ジャニーズで音楽ができる。

バンドができる。

ロックができる。

男闘呼組が作ったその実績は、のちに続く少年たちの夢を広げました。

 

実際、SMAPは男闘呼組のカッコよさを何歳になっても少年のような瞳で話していましたし、KinKi Kidsはデビュー前のコンサートで男闘呼組の曲をよくカバーしていました。

ジャニーズアイドルが憧れるアイドル、それが男闘呼組でした。

たとえ未来のアイドルを夢見る少年たちであっても、素顔は思春期真っただ中の男の子。

「男らしさ」「不良っぽさ」への憧れはあって当然でしたでしょうから。

 

後継というわけではありませんが、94年にはTOKIOがバンドスタイルをとるアイドルとしてデビュー。

歌って踊らずとも「ジャニーズ」が成り立つ、男闘呼組の作った功績は大きいと思います。

 

3のグループが作った礎

 

この3つのグループには、それぞれ異なる色があります。そしてそれぞれの色が、ジャニーズの礎を作り上げました。

歴史あるジャニーズ事務所ですから、さらに遡れば数多くのアイドルやタレントが存在します。

メディアは多様化し、ブームは目まぐるしく変化する。

当然、時代によってアイドルの位置づけや、求められるスタイルは異なっていきます。

少年隊・光GENJI・男闘呼組。

彼らは、TVがメディアの主流であった時代に「ジャニーズアイドル」の可能性を見せつけた存在です。

ジャニーズはこんなことができる、と。

ジャニーズは、目で見、耳で聴き、ファンも一体となって楽しむ総合エンターテインメントであると。

近代ジャニーズに教科書があるならば、彼らはその1ぺージ的存在であると思うのです。

 

【コラム】それまでのジャニーズの傾向

私の主観ではありますが、それまでのジャニーズの傾向は…

  • 人気を得たグループはあったものの、社会現象や国民的アイドルには至らなかった。ブームまでは起こせず、短命であった。そのためソロへの移行や俳優への移行も多かった。
  • ソロ歌手は数名、爆発的人気を得た。しかし冒頭で述べたジャニーイズムを引き継ぐ存在ではなかった。
  • 高いダンススキルやパフォーマンス(見る)よりも歌唱(聞く)に長けていた。

というものがあったと考えます。

 

そして彼らのバックダンサーをつとめてきたメンバー、彼らの活躍を間近でみてきたメンバーが90年代に入り続々とデビューを果たします。

今回語るのは主に彼らのお話ですが、90年代ジャニーズの魅力をより深く味わっていただくには、やはり「ジャニーズの歴史」について知ることが不可欠なのです。

 

ジャニーズがいつの時代もスターだった理由 ~歴史や定義を守り次世代にバトンをつないでいく~

 

なぜジャニーズはいつの時代もスターだったのか。

ジャニーズという歴史や定義を大切にしながらも、時代の流れに敏感かつ柔軟であったことが、ジャニーズの成功の秘訣であると私は考えます。

ジャニーズアイドルたちは、いつの時代も先輩アイドルの曲を歌い継ぎます。

フォーリーブスの「ブルドッグ」「踊り子」といったジャニーズ創世期の楽曲も、令和を迎えた今なお歌い継がれている。

アレンジやパフォーマンスを時代によって変化させながら、先人の楽曲を繋いでいく。ジャニーズはそうして歴史を紡いできました。

 

ジャニーズの定義、それは「エンターテインメントであること」そして「アイドルであること」。

観る者に夢を与える、非日常へと連れていく、いつも笑顔で全力のパフォーマンスを見せる。

それが、ジャニーズイズムの基礎であり、ジャニーズ事務所に根付いたアイドル精神であると考えます。

そんな歴史と定義を大切に守り、次世代へバトンを繋いでいく。

その上で、ジャニーズは流行や時代の変化に実に柔軟なのです。

 

ジャニーズは流行や時代の変化に柔軟

 

音楽氷河期にデビューしたSMAPは、バラエティや体当たりの企画にも果敢に挑戦しました。

ジャニーズアイドルの領域をきちんと守りながらも、彼らは「手の届く存在」へと降りてきてくれた。

アイドルは、実際には手が届かない存在です。けれどファンタジーの住人ではない。

同じように毎日を生き、同じように年齢を重ね、悩んだり苦しんだりもする。

そういった等身大の姿を見せるというのは、80年代のアイドルブームやアイドル神話の去ったJ-POP界を生き抜く上では得策であったといえます。

 

また、当時流行していたユーロビートを積極的に取り入れ、ダンスの近代化を図ったのはV6。

ジャニーズが旧来踊ってきたシアター系のしなやかなダンスを抜け出し、ロックダンスやブレイクダンスといった新たな魅せ方を極め、アクロバティックな高いパフォーマンス力を見せつけました。

 

関西弁を話すアイドルというのも、当時はたいへんめずらしかったこと。ジャニーズは、KinKi Kidsに標準語を話すことをあえてさせませんでした。

 

今でこそ当たり前のことですが、新しい「当たり前」、後世にとっての当たり前を作るのは、いつの時代もジャニーズでありジャニー喜多川であったのではないかと思います。

90年代も後半に近づくと「いつも笑顔のキラキラ正統派アイドル」というスタイルはやや時代遅れとなっていきます。

バンドブームや洋楽、ヒップホップやR&Bといった多様な音楽スタイルがヒットチャートにのぼるようになるとますます世の「カッコイイ」は多様化していきました。

ここでもジャニーズは「正統派アイドル」の核を守りながら、流行を敏感にキャッチし柔軟に変化した。

「カッコイイ」の形をうまく時代の波に乗せ変化させることで、90年代もトップアイドルであり続けた。

そうして、ミレニアム以降のジャニーズへとバトンを繋いだのです。

 

ひとつひとつのグループに味があり、歴史があり、色がある。

それを読み解くことで「ジャニーズという文化」を俯瞰でみる面白さがあることを知っていただきたいです。

このページに続く第2章では80年代に活躍した「少年隊」「光GENJI」の2つのグループについてさらに解説してまいります。80年代の彼らの活躍を知れば、90年代ジャニーズについても理解が深まることでしょう。

そして第3章では、90年代を彩ったジャニーズアイドルの軌跡、ヒット曲を読み解きながら、ジャニーズという文化の魅力を解説していきます。

『90年代ジャニーズ入門』目次へ  (全15ページ)



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2.5次元舞台の音響効果の楽しみ方② 【効果音の作り方】

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

『2.5次元舞台の「裏側」の楽しみ方 ~照明・映像・音響・裏方観劇を知る~』(全8ページ)はこちらから!

著者:零音(れおん)

小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

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前ページでは、舞台「刀剣乱舞」を例に挙げて、音響効果、特に「効果音」の工夫についてお伝えしてきました。

このページでは「効果音の作り方」についてご説明していきたいと思います。

効果音の作り方を知ることで、さらに音響効果についての理解が深まり、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がることでしょう。

 

効果音はどうやって作っている?

 

音の作り方は様々な方法があり、人によって用いる手法は千差万別です。ここでは、基礎的な効果音の作り方の一種について解説いたします。

 

もし皆さんが効果音を作るとしたら何から始めますか?

例えば、ドアの開閉音を作るとしましょう。

「ドアを開ける音と閉める音を録音して、それをそのまま使用する方法」や「効果音を集めたサイトやCDの素材を引用する方法」などがあるかと思います。

前者の方法で音を作る場合は、様々な扉の開閉音をあらかじめ録音し、作品の中でどこに音を入れるのか、作品の世界観や年代などを考慮し、どんな音を入れるかを決定します。

録音した素材の中に当てはまる音がなければ、録音した効果音をミックス・加工して使用する事もあります。

そのままの音を使えれば良いのですが、一つの音に違和感があるだけで作品の良さが台無しになってしまう場合もあります。そのため、世界観を考えて音を作ることは重要になり、試行錯誤を重ねて効果音の完成を目指します。

 

以上が、ごく普通な効果音の作り方です。

2.5次元舞台の場合には「現実に存在しないものの音をどう作るか」ということを考えなければなりません。

 

現実に存在しないものの音をどう作るか

 

「現実にないものの音」を想像だけで作るのは、大変骨が折れる作業です。また、一つ作れば良いのではないのでさらに大変な作業となります。

例えば刀の効果音ひとつとっても、斬り方次第で様々な種類の音を流す必要があります。

舞台「刀剣乱舞」では、「大太刀」という大きすぎて人では振ることができない刀が出てきます。

通常の刀を使った殺陣シーンであれば、つける効果音は想像できそうですが、人が振れない様な大きい刀を振り回した時の音など、想像できません。

舞台「刀剣乱舞」の音響担当をされている方が、刀を振った時の効果音の作り方の動画をあげられていました。

大太刀の効果音は「まず刀の重さを表現するためにテニスラケットを振る音の音程を低くし、長めの竹ひごを降った音を加え、少し加工する事によって作った」そうです。

舞台で実際に観劇しましたが、本当に大太刀を振っているような音に聞こえ、それがまさかテニスラケットと竹ひごの音を基にして、加工して作った音とは思えないクオリティでした。

ちなみに、同じ音響効果の方が「銃声」の効果音を作る方法も紹介していました。ペットボトルを机に叩きつけて元となる音を録音し、それをパソコンのソフトで、「音を分解→音程を低くする→音の始まりの部分の調整→元の音の音程を更に低くしたものを重ねる→微調整」という流れで作成されていました。

 

このように、2.5次元舞台の効果音は、日常的にある音を加工して非日常的な音を作り上げる技術が使われています。刀の音に竹ひごが使われていたのは意外だったのではないでしょうか。

まだ、舞台化されていない作品を読みながら「これはどんな音がするのかな?」と考えたり、文字で表されている音について「どうすれば再現できるかな?」と、舞台化される時の効果音を想像しながら読むと原作を読む楽しみも増えます。実際に舞台化された時に、読みが当たったか確認するのも楽しみの一つ。

また、試行錯誤して一つの効果音を作り上げることは、効果音を作成する側の醍醐味でしょう。音響担当者によって少しずつ違うので、この違いに着目するのも面白いです。

「裏側」について知って見てみると、2.5次元舞台の見方が変わります。

 

さて、ここまでは音響効果の効果音に重きを置いて説明してきました。

次のページでは「ミュージカルと舞台の音楽の使われ方の違い」について解説いたします。

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2.5次元舞台の「映像技術」の注目するのがおすすめな理由

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

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2.5次元舞台に使用されている「映像技術」

 

2.5次元舞台を鑑賞するにあたって、原作を先に見た方は「現実世界で再現できないようなアクションやシーンを舞台でどう表現するのか?」という疑問を持たれることがあると思います。

実際に私も、何作品かは「絶対に再現は無理だろう」と思っていたものがありました。現実世界で、影分身などできるはずもないし、いきなり氷の柱を出現させたり、何の道具もなしに火をおこしたりはできません。

この物理的に再現することが難しい部分の演出方法で用いられているのが「映像技術」です。

このページでは2.5次元舞台の「映像技術」の使用方法や、映像技術を堪能する上でのおすすめ作品をご紹介します。「原作」と「再現された映像」を比較すると、映像スタッフや演出家がどういった点にこだわって映像を作っているかなどが想像でき、より楽しみ方が広がります。

 

映像技術の使用方法

 

2.5次元舞台では「プロジェクションマッピング」「スクリーン上に投影される映像」が用いられています。

まずはこれらの映像技術がどのように使用されているのかをお伝えします。

 

プロジェクションマッピング

 

プロジェクションマッピングは、プロジェクターで立体物の表面に映像を映し出す手法です。各地のイベントで建築物に投影されて用いられています。

舞台の場合は、舞台セットに直接ビル街などの町並みを投影するなど、シチュエーションを明確にするために用いられたりしています。

使用例としては、舞台「PSYCHO-PASS:virtue and Vice」があげられます。

▼舞台「PSYCHO-PASS:virtue and Vice」ゲネプロ映像

 

舞台「PSYCHO-PASS:virtue and Vice」は、「人々の精神が数値化された近未来」という世界観で、冒頭から映画マトリックスに出てくるような数字やアルファベットの羅列が背景に流れてきます。

さらに物語中盤には公園を表す精密な映像が流れたり、高層ビルが立ち並ぶ背景が映し出されたり、CGを駆使した映像がセットに映し出され、まるで実際に物語の中に入り込んだような錯覚を覚えます。

 

スクリーンに投影される映像

 

スクリーンに投影される映像は、「舞台上に投影される」という点ではプロジェクションマッピングと同じですが、キャストが映し出されたりするなど、「背景」ではなく「動画」が映し出されることが多いです。

例えば、ミュージカル「刀剣乱舞」の最初の作品である「阿津賀志山異聞」では、キャラクター紹介時に大きなスクリーンでアクションシーンが映し出され、映像と全く同じ動きで舞台上のキャストも動く演出方法が用いられています。

また、同作品で主人公が最後の敵と対峙した時に「真剣必殺」という技を出します。この時に原作のゲームと同じように、衣装に穴が開いたり、体に傷が入ったりする映像が映し出され、その後にキャストが同じ格好で舞台上に登場するという演出方法が用いられています。

▼ミュージカル「『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~」ゲネプロ

 

映像技術を堪能する!おすすめ作品

 

「どのようなシチュエーションで映像技術が使われるているのか」という使用例にも目を向けると、より映像技術への理解が深まることでしょう。

2.5次元舞台の映像技術を堪能する上でおすすめの作品を、映像技術の使用例ごとにご紹介いたします。

 

① ストーリーの中(「NARUTO」「僕のヒーローアカデミア」)

 

アニメを原作としたストーリーを舞台で再現する上では映像技術を欠かすことができません。

ストーリーの中で映像技術が使用されている作品でおすすめなのが「NARUTO」や「僕のヒーローアカデミア」です。現実世界とはかけ離れた「技」などを映像技術によって見事に表現されています。

 

「NARUTO」では忍の技を表現するために使われています。

影分身の術や、大蛇のキャラクターの尾の部分などを舞台上のセットに投影する事によって、舞台上では表現が難しい演出を可能にしています。

舞台上での役者の動きとも合わせる必要があるため、細かい修正や打ち合わせなどが必要です。

▼舞台「NARUTO-ナルト-~暁の調べ~」公開ゲネプロ 映像技術を用いたシーン(0.30~)

 

また「僕のヒーローアカデミア」では、キャラクターそれぞれの「個性」と呼ばれる技をクリーン上に投影し、その映像に合わせて役者が技の動きをするという演出方法がされています。

▼舞台「僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Stage」公演ダイジェスト映像

 

② 小道具(舞台「刀剣乱舞」)

 

さらに高度な演出として「小道具に映像を投影する」という方法も使われています。

例えば、舞台「刀剣乱舞」ではエンディングでキャスト全員が番傘を持って踊る場面があるのですが、その番傘に役名を投影し挨拶をする演出があります。

これはキャストの立ち位置や番傘を開く速度やタイミングなどが揃わなければ、成り立たない演出であるために、とても入念なリハーサルが繰り返されています。劇場も変わるので、舞台の幅が少しずつ違うことにも対応しなければなりません。

高度な映像技術により、現実にはない世界が舞台で表現されていること、また大きなアクシデントもなく無事に終わることができているのは、スタッフとキャストの皆さんの力あってこそです。映像技術では、そうしたスタッフさんとキャストさんの努力や技術にも目を向けると、さらに楽しみ方の幅が広がるでしょう。

▼舞台「『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ」Blu-ray/DVD CM(番傘の演出がある舞台「刀剣乱舞」)

 

映像技術を堪能するならDVDと舞台はどちらがおすすめ?

 

実際に劇場で鑑賞するとDVDと違い、舞台全体が見渡せるので、他のキャラクターが何をしているか、舞台全体で何を表現しているかを見ることができます。また、迫力や臨場感も劇場の方が感じられます。

観劇に行く際は、事前に原作を読んでから行くと「あのシーンはこんな演出の工夫がされているんだ!」「この部分の映像凄いな!」など新しい発見があると思います。

一方、DVDで鑑賞する場合は、映像を集中して見ることができるので、気になった部分を繰り返し見たり、詳細な映像技術を見ることができます。

劇場やDVDでは映像技術の楽しみ方に違いがあります。いずれにしろ、映像技術にも目を向けて映像スタッフさんの技術の結晶を楽しんでいただけたらと思います!

 

さて、ここまでは「照明」「映像技術」について解説してきましたが、次のページからは「音響効果」について解説いたします。音響効果こそ2.5次元舞台を作り上げる上で最も難しい部分だと思います。

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2.5次元舞台の音響効果の楽しみ方③ 【ミュージカルと舞台の音楽の使われ方の違い】

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

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小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

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これまでは音響効果の「効果音」に重きを置いて説明してきましたが、ここでは「音楽」についてもふれたいと思います。

ミュージカルでもストレートプレイ(=ミュージカルではない演劇)でも音楽は世界観を表現する場合に重要になってきますし、回想シーンや重要シーンではドラマチックな演出をすることができます。

ミュージカルとストレートプレイでは、音楽の使われ方や意味合いが異なる部分があります。

これらの違いを知ってから見ると、2.5次元舞台の楽しみ方の幅はさらに広がることでしょう。

 

「刀剣乱舞」に見るミュージカルと舞台での音楽の表現方法の違い

 

「刀剣乱舞」は、アニメ・映画と様々なメディアミックスを展開していますが、はじまりは「刀剣乱舞-ONLINE-」というゲーム。

「刀剣乱舞」というひとつの作品に対して、同時期に別の制作会社がそれぞれ舞台化しており、ミュージカル「刀剣乱舞」と舞台「刀剣乱舞」があり、キャストや内容は異なります。

ここではミュージカルと舞台の両方が作られている「刀剣乱舞」を例に、ミュージカルと舞台での音楽の使われ方の違いについて説明したいと思います。

舞台「刀剣乱舞」とミュージカル「刀剣乱舞」の音楽の使われ方の違いを知れば、その他の舞台とミュージカルの見方も変わるかと思います。

 

ミュージカル「刀剣乱舞」の音楽の使い方

 

ミュージカル「刀剣乱舞」の殺陣の場面では、登場人物の心情は歌やダンスで表現され、音楽に乗せて行われることがあります。

ミュージカル「刀剣乱舞」では重要なシーンなどで音楽が流れ、キャラクターの心情を歌やダンスで表現するという演出方法が多く使われるのです。

「刀剣乱舞 」の一番最初の作品である「阿津賀志山異聞」の本公演の前にトライアル公演(=本公演の前の試験的な公演)というものが行われていました。

「登場人物が矛盾を感じ、自分のあり方について考えていた」という重要な場面で、トライアル公演の時は台詞を言うだけの演出で、役者もどうすれば観客に伝わるのかを稽古時に試行錯誤しながら演じていました。

本公演時にはその場面が歌に変更になっており、より観客に感情が伝わりやすくなっていました。「台詞」にするか「歌(音楽)」にするかで、観客が受け取る印象は変わります。そういったことも考慮され、ミュージカルは作られているのです。

ミュージカルは、台詞で伝えなければならないこともある上に、歌やダンスも組み込まれるため「歌唱力」「音楽の解釈力」「ダンススキル」が求められます。

さらに芝居パートの後にはライブパートもあります。ゲームを原作としたそれぞれのキャラクターが「もしダンスや歌を歌ったらどうなるか」を想像して演出がされています。

「音楽」の要素に絡んで演者の技術や演出力が「ミュージカル」には要求されるのです。

▼ミュージカル「刀剣乱舞 ~阿津賀志山異聞~」ゲネプロ公開

 

舞台「刀剣乱舞」の音楽のつけかた

 

さて、ミュージカル「刀剣乱舞」の場合は、重要なシーンでは音楽が流れてキャラクターの心情をダンスや歌で伝えるということをお伝えしました。

舞台「刀剣乱舞」では重要な場面でも音楽が流れることもありますが、無音のままキャストが台詞を話すという演出方法がとられています。

また、舞台「刀剣乱舞 悲伝 結いの目の不如帰」の2人のキャラクターのそれぞれの思いがぶつかり合うラストシーンでは音楽ではなく、照明や殺陣などの演出で見せ場が作られていました。

舞台「刀剣乱舞」もミュージカル「刀剣乱舞」も演じるという部分では同じですが、舞台の方では、音楽ではなく台詞だけで観客にキャラクターの感情を伝えなければならないため演技力や物語の解釈力などが求められます。

▼舞台「刀剣乱舞 悲伝 結いの目の不如帰」ダイジェスト映像

 

重要なシーンを「音楽」で表現するシーンが多い「ミュージカル」と、「台詞」で重要なシーンを表現することが多い「舞台」。

どちらも演出家が違うため、物語の進め方や着眼点が全く違うので、違いを比較するのも面白い見方だと思います。

また、重要なシーンでの音楽の使われ方や、殺陣の場面の音楽の違いなどにも着目すると、舞台とミュージカルを比較する楽しみも感じられると思います。

「刀剣乱舞」は舞台もミュージカルもとても良い作品が多く、演出も素晴らしいので何回見直しても新しい発見ができます。

 

ここまで音響効果についてお伝えしてきましたが、次のページからは「裏方観劇」の魅力についてお伝えします。まずは、「メイク・衣装・小道具・舞台セット」で注目すべき点についてお伝えします。

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2.5次元舞台の「照明」に注目するのがおすすめな理由

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

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小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

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−舞台の幕が開く時、劇場の明かりが一斉に消され、舞台上の役者が明るい光の中物語を進めてゆく−

さて、演劇で欠かせない演出効果の一つが「照明」です。

特に2.5次元舞台にとっては、照明での見せ方によって原作イメージやキャラクターのイメージがガラッと変わることもあります。

ここでは、照明の劇中での使われ方や、照明に注目する上でのおすすめ作品をご紹介します。

 

2.5次元舞台の照明の注目すべきところ

 

2.5次元舞台はジャンル自体が新しいものです。さらにアニメや漫画という非現実の世界を表現するため、これまで使われてなかったような技術が組み込まれています。

実験段階のものやこれまでの技術の応用などの要素が盛り込まれており、最先端の舞台技術を堪能できる楽しさがあるのです。

2.5次元舞台の照明では

「現実世界ではありえない舞台を表現するための工夫」

「新たな舞台演出技術」

この2点に注目して観劇すると、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります。以下では実際にどのように照明が使われているのか、実例を挙げながら解説します。

 

照明を楽しむ上で注目すべき作品!照明での劇中での使われ方!

 

照明はキャストを照らすだけではなく、様々な用途で使用されています。その使い方を知ればきっと驚くことでしょう。

 

① 小道具を表現

 

照明を「小道具」を表現するために使用する舞台もあります。

その代表的な作品といえばやはり「ミュージカルテニスの王子様(通称:テニミュ)」でしょう。

試合中のボールがライトで表現されています。

▼試合中のボールをライトで表現している様子(0.08秒)

 

初めてテニミュを観劇した時に「ライトがボールになってる!」と感動した覚えがあります。

一口に「ライトでボールを表現する」といっても、簡単なことではありません。

「キャストのラケットの動き」と「ライトの動き」をうまく合わせないといけないので照明スタッフもキャストも大変だったと、これまで演じてきた方々がインタビューで答えています。

ここで使用されているライトの種類は「ピンスポットライト」。「ピンスポットライト」は主役やシーンごとの重要なキャラクターが際立つように当てられる照明です。

テニミュではライトを絞って小さくしてボールに見せています。こんな使い方があるなんて目から鱗でした。

▼一般的なピンスポットライトの使われ方のイメージ

 

ピンスポットライトは「どんな色で、どの位の明るさで、どの位の長さで」使うのかがとても難しく、高度なテクニックと入念なリハーサルが必要なのです!

もし、テニミュを見る機会があれば、ぜひ注目して見てください!

 

 

また、舞台「文豪ストレイドックス」では、登場人物が異能力という特殊能力を使いますが照明と映像により、原作に近くなるよう演出されています!

照明に模様をつけて異能力空間を再現したり、アンサンブル(=役がついていない人)の持つ布に照明を当て、うごめいている様に見せるという演出方法がされています。こちらもテニミュと合わせて注目してほしいです。

▼舞台「文豪ストレイドックス」公開ゲネプロ

 

② 様々な世界を背景で表現

 

照明は、季節の移り変わりの演出などでも活躍しています。

季節の移り変わりや場面の移り変わりは主に、舞台上の背景を変えることができる照明を使います。

例えば、森の中を表す場合は緑の照明を、海辺や青空の表現であれば青色や水色などの照明を使用します。

私がこれまで見てきた中で、最も綺麗だと感じた背景の照明は舞台「煉獄に笑う」の「村が焼け落ちるシーン」と「深い森の中のシーン」です。

「火事」「森」を表現する場合はバックスクリーンや舞台の後ろから、火事であれば「赤」、森であれば「緑」の照明を使用されることが多いのですが、この作品はに工夫が凝らされています。

火事を表現する場合、この作品では赤い照明だけでなく、炎が揺れる様や炎の大きさなどが投影された映像と連動してオレンジの照明が照らされるなどの工夫がされています。

そのため、本物の火がなくても、とても臨場感のある火事の現場が表現されているのです!

「深い森の中のシーン」を表現する場合は、この作品では緑を使うだけでなく、白色や木漏れ日や葉の濃淡なども表現されており、リアルな森の中のシーンが表現されています。

この作品では、キャラクターの登場シーンやアクションシーンなども魅力的な照明の使われ方をしていますのでおすすめです。

▼舞台「煉獄に笑う」(ゲネプロ)

 

2.5次元舞台に使用されている照明の種類

 

2.5次元舞台では様々な照明が使用されています。照明の種類の違いにも目を向けることで楽しみ方の幅が広がるでしょう。

照明はたくさんあるので、ここでは代表的な照明の中から「サスペンションライト」「バックサス」の2つの照明の使われ方について解説いたします。

 

① サスペンションライト

 

「サスペンションライト」は、舞台上部にある照明。主にスポットライトとして使用される照明です。

2.5 次元舞台では、回想シーンでの語りの人物や、違う空間にいるキャラクターが話す時によく照らされます。

「サスペンションライト」の使い方で、演出家がどこに重きを置いて演出したいと思っているかがよく分かります。

原作では軽く流されている場面でも、キャラクターの関係性を明確にするために、あえてサスペンションライトを当ててセリフを言う場面も見られたりします。

演出家の考えが垣間見えるという点だけでなく、原作との違いも見つけられるので、注目すると面白みがあると思います。

 

② バックサス

 

バックサスは、サス(=サスペンションライトの略)を客席に向けて照らす明かりです。

これは客席から見て逆光になるため舞台上が見えなくなる照明です。

バックサスは「戦いの前など素早く場面転換をしたい時」や「舞台上でキャラクターが時空移動するような内容の時」に使われています。

使用例としては、舞台「刀剣乱舞:悲伝結いの目の不如帰」です。物語終盤のシーンで、キャラクターがこれまでの時間を移動する場面がありますが、ここでバックサスが使われています。

バックサスは、注目すべきシーンの前や重要なシーンの前に使われることが多いです。バックサスの使われ方にもぜひ、注目してみてください。

 

DVDよりも現地鑑賞の方がおすすめ

 

DVDの鑑賞では、キャストメインで写るのでカメラワークによってどうしても切り取られる部分が出てきます。

そのため、演出の詳細な部分を見ようとしても見られない場合の方が多く、照明を観察する点では、DVDは劇場で鑑賞するより面白みは半減すると感じます。

劇場での鑑賞は、自分の好きな所を見ることができたり、常に舞台全体が見渡せたりするので、照明を見るのならば劇場での鑑賞をおすすめします。

 

ここまで、照明についてご紹介しました。

細かい部分かもしれませんが、少しでも原作の世界観に近づけようとたくさんの工夫がされています。

注目してみると2.5次元舞台の楽しみ方が広がると思います。

 

次のページでは2.5次元舞台の「映像技術」についてお伝えします。現実とはかけ離れた世界を舞台化するためには「映像技術」が欠かせないのです。

『2.5次元舞台の「裏側」の楽しみ方』目次へ  (全8ページ)

 

8/31(日)風水の記事がマイナビウーマン様に掲載されました!

8/31日(日)に占い師ライターの大柴あまねさんの記事『風水における方角とは。間取りの見方と色との関係』がマイナビウーマン様で公開となりました。

本記事では「風水における方角の意味」「風水的な観点からどのようなインテリアを取り入れたいいか」などについて解説しています。

ぜひご覧ください!

 

ちなみに、弊社サイトWebonでは大柴あまねさんによる「ミルクグラス入門~日常で使えるヴィンテージ食器~」(全14ページ)を掲載しております。

ミルクグラスの収集歴が10年程がある大柴さんがミルクグラスの基礎知識からマニアックな知識まで解説しております!

ミルクグラスは1950年頃のアメリカで誕生したヴィンテージ食器です。

ミルクグラスはヴィンテージなのに丈夫でリーズナブル!ハイセンスで可愛くどんな料理にも合わすことができる「日常で使えるヴィンテージ食器」なのです!

是非ご覧いただけますと幸いでございます!

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2.5次元舞台の音響効果の楽しみ方① 【おすすめ作品 舞台「刀剣乱舞」】

Webon紹介目次著者

2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

『2.5次元舞台の「裏側」の楽しみ方 ~照明・映像・音響・裏方観劇を知る~』(全8ページ)はこちらから!

著者:零音(れおん)

小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

お問い合わせはこちらから

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音響効果とは

 

音響効果とは「舞台上の演技に効果音をつけたり、映像と一緒に音楽を流したりする演出」のことです。

キャストさんたちの歌やセリフはピンマイクを通して客席に届きますが、小道具の音などは大きな舞台だと音が吸収されてしまい客席には聞こえません。

しかし、マントをバサッと翻している音がなかったり、刀で戦ってるのに、金属音がしなかったらリアル感がないですよね?

そこで用いられる演出が「音響効果」です。

「物語に合わせて音楽を流す」のも音響効果の一つですが、舞台では主に「効果音」の音響効果が用いられます。刀のつばぜり合いの音や鞘から刀を抜く音、ドアの音やマントの裾さばきの音などを流します。

 

音響効果に注目するのがおすすめな理由

 

私は2.5次元舞台を見る時はかならず音響効果に注目して観劇します。

その理由は、効果音と音楽こそ2.5次元舞台を作り上げる上で最も難しい部分であると考えているからです。

すでにアニメなどで音が作られている場合は、そこから連想したり、その音を用いて音を作り出すことは可能でしょう。

ただ、漫画や小説が原作だった場合、物語の中の「音」は想像することでしか作り出せません。

「漫画の世界の人物が武器を振り回す」などの音は、原作からヒントを得つつ「何から音を作るのか」「何と何を組み合わせて音を作るのか」「現実世界では何に近い音なのか」試行錯誤しながら探らなければなりません。しかもその音が、聞き手に伝わらなければ意味がないのです。また、舞台ではその場で役者の動きにも合わせて効果音を出す必要もあります。

このようなところは音響技術の腕の見せ所であり、注目すると面白いところであると感じています。

 

音響効果を堪能するなら!おすすめは舞台「刀剣乱舞」

私が総合的に音響効果が優れていると感じる作品は、舞台「刀剣乱舞」です。

この作品は、エンディングでキャストが番傘を持ち音楽に乗せて歌ったり踊ったりします。また、毎回担当の方が作品に沿った舞台オリジナルの曲を作曲されているので音楽でも楽しめますが、基本的にはストレートプレイ(=ミュージカルではない演劇)であるためミュージカルに比べると音楽は重要視されません。

舞台「刀剣乱舞」の音響効果で最も素晴らしいのは「効果音」です。

 

一度観劇された方はお分かりになるかと思いますが、初期の作品では出演する刀剣男子が6〜7人程度でしたが、「悲伝:結いの目の不如帰」(4作目)「慈伝:日日の葉よ散るらむ」(5作目)の2作品は出演する刀剣男子の人数が一気に増えます。

そのため、集団で行う殺陣シーンでは効果音をつけるのが大変難しいのですが、一つ一つのアクションに効果音が付いているのではないかというほど、ほぼ全ての部分に音が付いています。

▼舞台「『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰」ダイジェスト映像

 

また、マントを被っているキャラクターのマントの音も、「翻す音」「走っている時にたなびく音」「少し払う音」など、行動によって全ての効果音が異なります。

刀に関する効果音も刀の長さや種類によって音を変えたり、刀の振り方や鞘からの出し方・収め方によっても音を変えているので、臨場感やリアル感を最大限楽しむことができます。

実際に刀剣乱舞の音響担当の方は「短刀、打刀、太刀、大太刀はシュン、ヒュン、ブゥン、ブォーンと全部イメージを変えている」とおっしゃっていました。つまり、それぞれの刀によって音を全て変えているということです。

なんとなく見ているとなかなか気づかないところかもしれませんが、「音響効果」にはこれほどまでに工夫が凝らされているのです。

もしこれから、アクションシーンのある2.5次元舞台を見る方は最初はストーリーを楽しんで、2回目は音に注目してみてはいかがでしょうか。

 

 

さて、このページでは舞台「刀剣乱舞」を例に挙げて、音響効果、特に「効果音」の工夫についてお伝えしてきました。

次のページでは「効果音の作り方」についてお伝えします。効果音の作り方を知ることで、さらに音響効果についての理解が深まり、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がることでしょう。

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