2.5次元舞台の音響効果の楽しみ方② 【効果音の作り方】

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

『2.5次元舞台の「裏側」の楽しみ方 ~照明・映像・音響・裏方観劇を知る~』(全8ページ)はこちらから!

著者:零音(れおん)

小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

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前ページでは、舞台「刀剣乱舞」を例に挙げて、音響効果、特に「効果音」の工夫についてお伝えしてきました。

このページでは「効果音の作り方」についてご説明していきたいと思います。

効果音の作り方を知ることで、さらに音響効果についての理解が深まり、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がることでしょう。

 

効果音はどうやって作っている?

 

音の作り方は様々な方法があり、人によって用いる手法は千差万別です。ここでは、基礎的な効果音の作り方の一種について解説いたします。

 

もし皆さんが効果音を作るとしたら何から始めますか?

例えば、ドアの開閉音を作るとしましょう。

「ドアを開ける音と閉める音を録音して、それをそのまま使用する方法」や「効果音を集めたサイトやCDの素材を引用する方法」などがあるかと思います。

前者の方法で音を作る場合は、様々な扉の開閉音をあらかじめ録音し、作品の中でどこに音を入れるのか、作品の世界観や年代などを考慮し、どんな音を入れるかを決定します。

録音した素材の中に当てはまる音がなければ、録音した効果音をミックス・加工して使用する事もあります。

そのままの音を使えれば良いのですが、一つの音に違和感があるだけで作品の良さが台無しになってしまう場合もあります。そのため、世界観を考えて音を作ることは重要になり、試行錯誤を重ねて効果音の完成を目指します。

 

以上が、ごく普通な効果音の作り方です。

2.5次元舞台の場合には「現実に存在しないものの音をどう作るか」ということを考えなければなりません。

 

現実に存在しないものの音をどう作るか

 

「現実にないものの音」を想像だけで作るのは、大変骨が折れる作業です。また、一つ作れば良いのではないのでさらに大変な作業となります。

例えば刀の効果音ひとつとっても、斬り方次第で様々な種類の音を流す必要があります。

舞台「刀剣乱舞」では、「大太刀」という大きすぎて人では振ることができない刀が出てきます。

通常の刀を使った殺陣シーンであれば、つける効果音は想像できそうですが、人が振れない様な大きい刀を振り回した時の音など、想像できません。

舞台「刀剣乱舞」の音響担当をされている方が、刀を振った時の効果音の作り方の動画をあげられていました。

大太刀の効果音は「まず刀の重さを表現するためにテニスラケットを振る音の音程を低くし、長めの竹ひごを降った音を加え、少し加工する事によって作った」そうです。

舞台で実際に観劇しましたが、本当に大太刀を振っているような音に聞こえ、それがまさかテニスラケットと竹ひごの音を基にして、加工して作った音とは思えないクオリティでした。

ちなみに、同じ音響効果の方が「銃声」の効果音を作る方法も紹介していました。ペットボトルを机に叩きつけて元となる音を録音し、それをパソコンのソフトで、「音を分解→音程を低くする→音の始まりの部分の調整→元の音の音程を更に低くしたものを重ねる→微調整」という流れで作成されていました。

 

このように、2.5次元舞台の効果音は、日常的にある音を加工して非日常的な音を作り上げる技術が使われています。刀の音に竹ひごが使われていたのは意外だったのではないでしょうか。

まだ、舞台化されていない作品を読みながら「これはどんな音がするのかな?」と考えたり、文字で表されている音について「どうすれば再現できるかな?」と、舞台化される時の効果音を想像しながら読むと原作を読む楽しみも増えます。実際に舞台化された時に、読みが当たったか確認するのも楽しみの一つ。

また、試行錯誤して一つの効果音を作り上げることは、効果音を作成する側の醍醐味でしょう。音響担当者によって少しずつ違うので、この違いに着目するのも面白いです。

「裏側」について知って見てみると、2.5次元舞台の見方が変わります。

 

さて、ここまでは音響効果の効果音に重きを置いて説明してきました。

次のページでは「ミュージカルと舞台の音楽の使われ方の違い」について解説いたします。

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2.5次元舞台の音響効果の楽しみ方① 【おすすめ作品 舞台「刀剣乱舞」】

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

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音響効果とは

 

音響効果とは「舞台上の演技に効果音をつけたり、映像と一緒に音楽を流したりする演出」のことです。

キャストさんたちの歌やセリフはピンマイクを通して客席に届きますが、小道具の音などは大きな舞台だと音が吸収されてしまい客席には聞こえません。

しかし、マントをバサッと翻している音がなかったり、刀で戦ってるのに、金属音がしなかったらリアル感がないですよね?

そこで用いられる演出が「音響効果」です。

「物語に合わせて音楽を流す」のも音響効果の一つですが、舞台では主に「効果音」の音響効果が用いられます。刀のつばぜり合いの音や鞘から刀を抜く音、ドアの音やマントの裾さばきの音などを流します。

 

音響効果に注目するのがおすすめな理由

 

私は2.5次元舞台を見る時はかならず音響効果に注目して観劇します。

その理由は、効果音と音楽こそ2.5次元舞台を作り上げる上で最も難しい部分であると考えているからです。

すでにアニメなどで音が作られている場合は、そこから連想したり、その音を用いて音を作り出すことは可能でしょう。

ただ、漫画や小説が原作だった場合、物語の中の「音」は想像することでしか作り出せません。

「漫画の世界の人物が武器を振り回す」などの音は、原作からヒントを得つつ「何から音を作るのか」「何と何を組み合わせて音を作るのか」「現実世界では何に近い音なのか」試行錯誤しながら探らなければなりません。しかもその音が、聞き手に伝わらなければ意味がないのです。また、舞台ではその場で役者の動きにも合わせて効果音を出す必要もあります。

このようなところは音響技術の腕の見せ所であり、注目すると面白いところであると感じています。

 

音響効果を堪能するなら!おすすめは舞台「刀剣乱舞」

私が総合的に音響効果が優れていると感じる作品は、舞台「刀剣乱舞」です。

この作品は、エンディングでキャストが番傘を持ち音楽に乗せて歌ったり踊ったりします。また、毎回担当の方が作品に沿った舞台オリジナルの曲を作曲されているので音楽でも楽しめますが、基本的にはストレートプレイ(=ミュージカルではない演劇)であるためミュージカルに比べると音楽は重要視されません。

舞台「刀剣乱舞」の音響効果で最も素晴らしいのは「効果音」です。

 

一度観劇された方はお分かりになるかと思いますが、初期の作品では出演する刀剣男子が6〜7人程度でしたが、「悲伝:結いの目の不如帰」(4作目)「慈伝:日日の葉よ散るらむ」(5作目)の2作品は出演する刀剣男子の人数が一気に増えます。

そのため、集団で行う殺陣シーンでは効果音をつけるのが大変難しいのですが、一つ一つのアクションに効果音が付いているのではないかというほど、ほぼ全ての部分に音が付いています。

▼舞台「『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰」ダイジェスト映像

 

また、マントを被っているキャラクターのマントの音も、「翻す音」「走っている時にたなびく音」「少し払う音」など、行動によって全ての効果音が異なります。

刀に関する効果音も刀の長さや種類によって音を変えたり、刀の振り方や鞘からの出し方・収め方によっても音を変えているので、臨場感やリアル感を最大限楽しむことができます。

実際に刀剣乱舞の音響担当の方は「短刀、打刀、太刀、大太刀はシュン、ヒュン、ブゥン、ブォーンと全部イメージを変えている」とおっしゃっていました。つまり、それぞれの刀によって音を全て変えているということです。

なんとなく見ているとなかなか気づかないところかもしれませんが、「音響効果」にはこれほどまでに工夫が凝らされているのです。

もしこれから、アクションシーンのある2.5次元舞台を見る方は最初はストーリーを楽しんで、2回目は音に注目してみてはいかがでしょうか。

 

 

さて、このページでは舞台「刀剣乱舞」を例に挙げて、音響効果、特に「効果音」の工夫についてお伝えしてきました。

次のページでは「効果音の作り方」についてお伝えします。効果音の作り方を知ることで、さらに音響効果についての理解が深まり、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がることでしょう。

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