2.5次元舞台の「照明」に注目するのがおすすめな理由

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2.5次元舞台は映像・照明・音響などの「裏側」に注目するのがおすすめ!刀の効果音は刀の長さや種類によって音が変えられていたり、裏側に秘められた技術や工夫に目を向けると2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります!観劇後は必ず「観劇ノート」を書いている観劇マニアが解説します!

『2.5次元舞台の「裏側」の楽しみ方 ~照明・映像・音響・裏方観劇を知る~』(全8ページ)はこちらから!

著者:零音(れおん)

小学生の時に劇団四季を見てから舞台の虜になっていく。現在はブロードウェイミュージカル・2.5次元ミュージカル・ストレートの舞台を観劇。観劇後は必ずキャスト・スタッフの方々に感想のお手紙を書くため、目を引いた所などは観劇ノートに書いている。裏方に注目し独学で勉強している。

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−舞台の幕が開く時、劇場の明かりが一斉に消され、舞台上の役者が明るい光の中物語を進めてゆく−

さて、演劇で欠かせない演出効果の一つが「照明」です。

特に2.5次元舞台にとっては、照明での見せ方によって原作イメージやキャラクターのイメージがガラッと変わることもあります。

ここでは、照明の劇中での使われ方や、照明に注目する上でのおすすめ作品をご紹介します。

 

2.5次元舞台の照明の注目すべきところ

 

2.5次元舞台はジャンル自体が新しいものです。さらにアニメや漫画という非現実の世界を表現するため、これまで使われてなかったような技術が組み込まれています。

実験段階のものやこれまでの技術の応用などの要素が盛り込まれており、最先端の舞台技術を堪能できる楽しさがあるのです。

2.5次元舞台の照明では

「現実世界ではありえない舞台を表現するための工夫」

「新たな舞台演出技術」

この2点に注目して観劇すると、2.5次元舞台の楽しみ方の幅が広がります。以下では実際にどのように照明が使われているのか、実例を挙げながら解説します。

 

照明を楽しむ上で注目すべき作品!照明での劇中での使われ方!

 

照明はキャストを照らすだけではなく、様々な用途で使用されています。その使い方を知ればきっと驚くことでしょう。

 

① 小道具を表現

 

照明を「小道具」を表現するために使用する舞台もあります。

その代表的な作品といえばやはり「ミュージカルテニスの王子様(通称:テニミュ)」でしょう。

試合中のボールがライトで表現されています。

▼試合中のボールをライトで表現している様子(0.08秒)

 

初めてテニミュを観劇した時に「ライトがボールになってる!」と感動した覚えがあります。

一口に「ライトでボールを表現する」といっても、簡単なことではありません。

「キャストのラケットの動き」と「ライトの動き」をうまく合わせないといけないので照明スタッフもキャストも大変だったと、これまで演じてきた方々がインタビューで答えています。

ここで使用されているライトの種類は「ピンスポットライト」。「ピンスポットライト」は主役やシーンごとの重要なキャラクターが際立つように当てられる照明です。

テニミュではライトを絞って小さくしてボールに見せています。こんな使い方があるなんて目から鱗でした。

▼一般的なピンスポットライトの使われ方のイメージ

 

ピンスポットライトは「どんな色で、どの位の明るさで、どの位の長さで」使うのかがとても難しく、高度なテクニックと入念なリハーサルが必要なのです!

もし、テニミュを見る機会があれば、ぜひ注目して見てください!

 

 

また、舞台「文豪ストレイドックス」では、登場人物が異能力という特殊能力を使いますが照明と映像により、原作に近くなるよう演出されています!

照明に模様をつけて異能力空間を再現したり、アンサンブル(=役がついていない人)の持つ布に照明を当て、うごめいている様に見せるという演出方法がされています。こちらもテニミュと合わせて注目してほしいです。

▼舞台「文豪ストレイドックス」公開ゲネプロ

 

② 様々な世界を背景で表現

 

照明は、季節の移り変わりの演出などでも活躍しています。

季節の移り変わりや場面の移り変わりは主に、舞台上の背景を変えることができる照明を使います。

例えば、森の中を表す場合は緑の照明を、海辺や青空の表現であれば青色や水色などの照明を使用します。

私がこれまで見てきた中で、最も綺麗だと感じた背景の照明は舞台「煉獄に笑う」の「村が焼け落ちるシーン」と「深い森の中のシーン」です。

「火事」「森」を表現する場合はバックスクリーンや舞台の後ろから、火事であれば「赤」、森であれば「緑」の照明を使用されることが多いのですが、この作品はに工夫が凝らされています。

火事を表現する場合、この作品では赤い照明だけでなく、炎が揺れる様や炎の大きさなどが投影された映像と連動してオレンジの照明が照らされるなどの工夫がされています。

そのため、本物の火がなくても、とても臨場感のある火事の現場が表現されているのです!

「深い森の中のシーン」を表現する場合は、この作品では緑を使うだけでなく、白色や木漏れ日や葉の濃淡なども表現されており、リアルな森の中のシーンが表現されています。

この作品では、キャラクターの登場シーンやアクションシーンなども魅力的な照明の使われ方をしていますのでおすすめです。

▼舞台「煉獄に笑う」(ゲネプロ)

 

2.5次元舞台に使用されている照明の種類

 

2.5次元舞台では様々な照明が使用されています。照明の種類の違いにも目を向けることで楽しみ方の幅が広がるでしょう。

照明はたくさんあるので、ここでは代表的な照明の中から「サスペンションライト」「バックサス」の2つの照明の使われ方について解説いたします。

 

① サスペンションライト

 

「サスペンションライト」は、舞台上部にある照明。主にスポットライトとして使用される照明です。

2.5 次元舞台では、回想シーンでの語りの人物や、違う空間にいるキャラクターが話す時によく照らされます。

「サスペンションライト」の使い方で、演出家がどこに重きを置いて演出したいと思っているかがよく分かります。

原作では軽く流されている場面でも、キャラクターの関係性を明確にするために、あえてサスペンションライトを当ててセリフを言う場面も見られたりします。

演出家の考えが垣間見えるという点だけでなく、原作との違いも見つけられるので、注目すると面白みがあると思います。

 

② バックサス

 

バックサスは、サス(=サスペンションライトの略)を客席に向けて照らす明かりです。

これは客席から見て逆光になるため舞台上が見えなくなる照明です。

バックサスは「戦いの前など素早く場面転換をしたい時」や「舞台上でキャラクターが時空移動するような内容の時」に使われています。

使用例としては、舞台「刀剣乱舞:悲伝結いの目の不如帰」です。物語終盤のシーンで、キャラクターがこれまでの時間を移動する場面がありますが、ここでバックサスが使われています。

バックサスは、注目すべきシーンの前や重要なシーンの前に使われることが多いです。バックサスの使われ方にもぜひ、注目してみてください。

 

DVDよりも現地鑑賞の方がおすすめ

 

DVDの鑑賞では、キャストメインで写るのでカメラワークによってどうしても切り取られる部分が出てきます。

そのため、演出の詳細な部分を見ようとしても見られない場合の方が多く、照明を観察する点では、DVDは劇場で鑑賞するより面白みは半減すると感じます。

劇場での鑑賞は、自分の好きな所を見ることができたり、常に舞台全体が見渡せたりするので、照明を見るのならば劇場での鑑賞をおすすめします。

 

ここまで、照明についてご紹介しました。

細かい部分かもしれませんが、少しでも原作の世界観に近づけようとたくさんの工夫がされています。

注目してみると2.5次元舞台の楽しみ方が広がると思います。

 

次のページでは2.5次元舞台の「映像技術」についてお伝えします。現実とはかけ離れた世界を舞台化するためには「映像技術」が欠かせないのです。

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