ゴシック&ロリータファッションとは 

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20年以上ロリータファッションを愛し続けた筆者がロリータファッションの基礎知識とリアル過ぎるロリータ事情を語ります!これからロリータを着る人必読!現実とのバランスのとり方も含めてロリータについてまるっと学べるロリータ入門の決定版!

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著者:佐藤遊佳(さとう ゆうか)

高校卒業と同時にロリータファッションに目覚め、以来13年間私服ではずっとロリータ服やゴシック&ロリータ服を着続ける。鍼灸師として患者さんを診るかたわら、ロリータファッションの服飾小物、アクセサリーの個人作家として活動。現在は結婚し地元で鍼灸院を開業し、執筆活動もしている。

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ロリータファッションに限らず、全てのファッションにおいてジャンルの定義はあいまいです。おおよそのジャンルは分けられるけれど、細かなジャンル分けは「着ている本人がどう思っているか」次第なのです。

とはいえ、ある程度の傾向はもちろん存在します。

この章ではロリータファッションのジャンルについて【定番】【ゴシック&ロリータファッション】【サブカルチャーと融合して生まれたジャンル】【ジャンルに対する考え方】に分けてご紹介いたします。

 

このページではロリータファッションと切っても切れない関係の「ゴシック&ロリータファッション」をご紹介致します。

 

ゴシック&ロリータとは


By tim t. from arlington, amerika – harajuku gals II, CC 表示-継承 2.0, Link
▲ゴシック&ロリータの例

 

ゴシック&ロリータとは「ゴシックファッション」にロリータの要素が融合した日本独自のファッションスタイルです。また「ゴスロリ」と略されて呼ばれることもあります。

以下ではまず、ゴシック&ロリータの基となったファッションである「ゴシックファッション」をご紹介致します。

 

ゴシックファッションについて


By Iriseyes at the English Wikipedia, CC 表示-継承 3.0, Link

▲ゴシック・ファッションの男性(左)とゴシック・アンド・ロリータの女性(右)

 

「ゴシック(略してゴス)」は元々12~15世紀のヨーロッパの建築様式のことですが、ファッションとしては15世紀に西ヨーロッパでうまれたものとされています。

▼ゴシック様式の建築物のイメージ

 

ゴシックファッションにもさまざまなジャンルがあるのですが、多くの場合「ダーク(暗黒性)」「ミステリアス(神秘的)」の要素を含みます。

吸血鬼や魔女、コウモリ、カラスなど世間的には不吉とされるものが好まれます。これらの世界観はファッションに反映されており色調は総じて黒多め。

赤や青、白など黒以外の色でもゴシック性を主張する場合がありますが、黒づくめであることが多いようです。

本格的なゴシックファッションは日本よりアメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなどで多く、一部熱烈な愛好家が居ます。ヴィクトリア朝やエリザベス朝風のファッションも取り入れられています。

▼ヴィクトリア朝(1837年~1901年のイギリスの時代)的なゴシック・ファッションを着る少女。


By David Featherston, CC 表示-継承 2.0, Link 

 

ファッションとしてのゴシックは、ロリータ同様に多くの音楽や文学と融合しました。

ロック・パンク・メタルなどの音楽や、SM・ボンテージファッション(=体を締め付けるコルセットなどをまとったファッション)などのフェティッシュ系(=SM系ファッションのこと)とも融合。

そうした中で、日本のロリータファッションとも見事な融合を果たします。

 

ヴィジュアル系バンドの影響を受けたゴシック&ロリータ

 

ゴシックファッションは奇抜で身体のラインを誇張する装飾が多く、日本で1990年台に加速したヴィジュアル系バンドの衣装にも多く用いられました。

中でも有名なのがMALICE MIZER(マリスミゼル)。

▼MALICE MIZERのコスプレをする人


By Mike Chachich, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

MALICE MIZERのメンバーのMana様の人気は凄まじく、ゴシックの暗黒面にロリータ服の可愛らしさを足した「エレガント・ゴシック&ロリータ」は、Mana様の提唱からスタートしたファッションであると言われています。

 

【コラム】エレガント・ゴシック&ロリータとゴシック&ロリータは同じもの?

エレガント・ゴシック&ロリータはゴシック&ロリータとは別物ジャンルといえます。少し乱暴な言い方ですが、「Mana様のプロデュースブランド『moi-meme-moitie(モワメームモワティエ)』がエレガント・ゴシック&ロリータと言えるでしょう。『moi-meme-moitie』の公式HPにエレガント・ゴシック&ロリータの解説が以下のように記載されています。

少女の持つあどけなさ、
可憐さ、可愛らしさ 、そして残酷さ
誰の中にもある、そんな記憶を
形にしたファッションイメージ
それがE.G.L(Elegant Gothic Lolita)
フリルやリボン、レースを贅沢にあしらい
まるでアンティークドールのような
無垢な愛らしさを演出しながらも
どこか「毒」を感じさせる装いを追求
引用:Moi-même-Moitiéhttps://moi-meme-moitie.com/?mode=f1

「エレガント・ゴシック&ロリータ」はメジャーな立ち位置ですが、ゴシック&ロリータを着ている人もいろいろな人が居るので、マリスミゼルというバンドやMana様を知らない人なら「エレガント・ゴシック&ロリータ」という単語を知らない可能性もあります。現在では休刊となっているゴスロリバイブルなどで取り上げられてきた知識なので、うんと年が若い人は知らないかもしれません。

 

Mana様は衣装として着るだけに足らず、ご自身でもエレガント・ゴシック&ロリータファッションブランドを創設されています。

ロリータを着ている人なら誰もが知っている「ゴシック&ロリータバイブル」という雑誌にも自身のブランドを身に着けたMana様が2001年に掲載されています。ちなみにMana様は男性です。

▼2001年発売『ゴシック&ロリータバイブルVol.3』に登場したMana様


引用:2001年『ゴシック&ロリータバイブルVol.3』ヌーベルグー

 

ゴシック&ロリータの特徴と言えば、縦ロール、白塗りに青や黒の口紅、アイシャドウ。コルセットで細く絞ったウエスト、パニエで膨らませたスカート、レースやフリルの装飾。

ゴシック&ロリータ(略してゴスロリ)は、ロリータファッションの愛らしさは取り入れつつ、根底にはゴシックの持つ暗黒性や神秘性があります。

ヴィジュアル系バンドのファンの少女たち(通称バンギャ)には確かにゴシック&ロリータファッション愛好家が多いです。

すべてのゴシック&ロリータファッション愛好家がバンギャ(ヴィジュアル系バンドのファンの女性)であるわけではありませんが、ヴィジュアル系バンドの影響は非常に大きかったと言えるでしょう。

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ゴシック&ロリータの基本

 

「ゴスロリ」という名称はともかく、そういった装い自体は1980年台には既に生まれていました。

ゴシックの持つ暗黒性や神秘的な思想は、少女特有の「無垢であるがゆえの残酷さ」という精神論と相性抜群でした。

「退廃的な黒いファッション」に「少女服の可愛らしい装飾」を融合させた独特のスタイルが確立されていきます。

ロリータファッションに比べ、ゴシック&ロリータファッションには精神論が根強く存在します。

 

【コラム】精神論とは何か?

ロリータで言うところの「精神論」とは、極端に「少女性」にこだわることを意味しています。ロリータ服を着ていたら男性とはしゃべらないとか、絶対に乙女文学を読んでいるとかいった極端な発想です。強者になるとお手洗いに行くのも我慢します(可愛い少女や人形は排泄しないという精神論)。

 

教会の荘厳な美しさ、廃墟や墓場などの静謐で神秘的な美しさ、吸血鬼や魔女などに魅力を感じる「ゴシック精神」を持ち、それをファッションで体現しようとするのです。

ヴィクトリア朝ファッションを取り入れたブランド「Victorian maiden」では、ブランド設立当初(2000年~)商品にお洋服だけでなくなんと「棺桶」があったくらいです。

▼「Victorian maiden」の公式HP


引用:「Victorian maiden」の公式HP

▼Victorian maidenの棺桶(復刻版)

 

本当に人間が入るサイズの棺桶。薔薇の花で満たしてベッド代わりにしていたゴシック&ロリータさんも居たそうです。

何はともあれ、ゴシック&ロリータでは黒が好まれます。髪形やメイクにもゴシック要素が強く、白・赤・黒・青といった濃い色調が基本です。ロリータよりメイクが濃い印象が強いでしょう。

ゴシックファッションは男性でも着ている人が多く、ゴシック&ロリータの女性と並んで歩いているとまるで映画の中から出て来たような雰囲気です。

▼ゴシックな男性とゴシック&ロリータな女性(筆者撮影)


画像提供:男性モデル『美少女』Twitter,Twitterモデル依頼アカウント

 

ロリータとゴシック&ロリータの違い

 

また「ロリータとゴシック&ロリータはどこが違うの?」と聞かれることもよくあるのですが、ロリータの時と同様一番の違いは「本人の気の持ちかたひとつ」でしょうか。もちろんロリータとは明らかに色使いやメイクは違いますが。

以下の写真は、筆者(佐藤)本人の気持ち的にはゴシック&ロリータな時です。

▼本人の気持ち的にはゴシック&ロリータ(筆者撮影)

 

また、同じ黒と白2色使いの装いでも、前者はゴシック&ロリータ、後者はロリータだと思って着ていた時。

▼ゴシック&ロリータファッションと思って着ていた時の写真(筆者撮影)

▼ロリータファッションと思って着ていた時の写真(筆者撮影)

 

分かりやすく、雑誌のブランドカタログを見比べてみましょう。

ロリータ界の超有名ファッション雑誌「ゴシック&ロリータバイブルVol.3」内のブランドカタログを並べてみます。

▼ゴシックな装いのカタログ


引用:2001年『ゴシック&ロリータバイブルVol.3』ヌーベルグー

▼ゴシック&ロリータな装いのカタログ


引用:2001年『ゴシック&ロリータバイブルVol.3』ヌーベルグー

▼ロリータな装いのカタログ


引用:2001年『ゴシック&ロリータバイブルVol.3』ヌーベルグー

 

以上の画像を見れば、使われているモチーフの違いやヘアメイクなどで、その人が目指している方向性はなんとなくわかるかと思います。

実際にそれぞれの愛好家でなければ気が付かないような差かもしれませんが、着ている本人にとっては大切な違いです。

そして、私のように「ロリータも好きだし、ゴシックも好きだし、ゴシック&ロリータも好き。それぞれ違う魅力があるから!」という人だって、もちろんたくさん居ます。

 

以上がゴシック&ロリータファッションのジャンルについての解説でした。次のページではサブカルチャーと融合して生まれたジャンルについて解説いたします。

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目次著者

著者:佐藤遊佳

高校卒業と同時にロリータファッションに目覚め、以来13年間私服ではずっとロリータ服やゴシック&ロリータ服を着続ける。鍼灸師として患者さんを診るかたわら、ロリータファッションの服飾小物、アクセサリーの個人作家として活動。現在は結婚し地元で鍼灸院を開業し、執筆活動もしている。

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