昆虫採集体験レポート② 【2日目前半 山道】

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身近な昆虫の魅力を知り、子供の頃のように昆虫を見つけることに喜びを感じられるようになれば、毎日の生活にささやかな幸せが増えることでしょう。

國谷正明氏による『身近な昆虫の観察入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「東映実録映画」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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『身近な昆虫の観察入門』目次へ  (全17ページ)

 

 

この章(第4章)では4ページにわたって、筆者が実際に昆虫採集をおこなった様子を写真の数々と共にレポートしていきます。

子どもの時のように必死で虫を探すというよりも、散歩がてら景色を楽しみつつ気ままに昆虫採集をしていますので、そのつもりでのんびりとご覧になっていただければ幸いです。

このページでは【山中の散歩道】より昆虫採集を行っております。

 

▼森の音

 

 

2日目昆虫採集スタート

 

 

 

2日目に訪れたのは、とあるバーベキュー場に隣接する山中の遊歩道。

前回の反省を活かして、今回は気温30℃前後の比較的涼しい日を選びました。

 

 

 


▲藤棚(ふじだな:藤というつるをはわせられた棚。垂れ下がる花などを鑑賞することを目的として作られる)

 

 

 

 

 

左手に池を眺めながら、トンネルのような藤棚の中をくぐっていきます。

そして辺りにとどろくおびただしいセミの鳴き声

 

それもそのはず。藤棚のいたるところにセミの抜け殻があり、少なく見積もっても200はくだらない数です。

 

 

 

目にはいるのはセミとアブだけ。

セミの鳴き声とアブと羽音に苛(さいな)まれながら、快と不快が綯い交ぜ(ないまぜ)になった複雑な心持ちで藤棚をくぐり抜けました。

 

セミの幼虫の羽化の様子を見る方法は第2章で解説!(現在は第4章) セミの幼虫の羽化の様子を見る方法は第2章で解説!(現在は第4章)

 

 

 

 

 

 

 

 

広葉樹の根元には落ち葉と枝切れが堆積しています

ここには何かいるに違いない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち葉の下から這い出てきたのはゴミムシの一種。

一見するとマルガタゴミムシに似ていますが、金属光沢がなく頭部は扁平です。

ゴミムシは世界中でおよそ4万種、日本だけでも1,500以上の種が棲息していると言われるほど高い多様性があるため、筆者レベルでは容易に見分けることはできません。

ゴミムシの仲間には違いないと思うのですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散策を続けていると・・・

 

 

 

 

 

アカイラガの幼虫を見つけました!

 

 

 

名称 アカイラガ
大きさ 開帳 15~23mm
出現時期 6月~9月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所

 

 

アカイラガの幼虫は3対の黄色いトゲが特徴的で、まるでグミのような質感をしています。思わず触りたくなってしまう可愛らしさですが、イラガの幼虫は強い毒毛をもっているので注意が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に見つけたのはカネタタキです。翅(はね)がないので雌の個体ですね。

猛暑が続いた影響でしょうか、例年よりも出現がすこし早いような気がします。

 

カネタタキについては第1章で解説(現在、第4章) カネタタキについては第1章で解説(現在、第4章)

 

 

 

連日の猛暑に比べるとだいぶ涼しいとはいえ気温は30℃を超えています。先日と同じ失敗を繰り返さないためにも小まめに休憩し、水分を摂取。

 

 

せっかくなので休憩がてら、貯水池に流れ込む水路を持参したタモ網でガサってみましょう。

 

▼タモ網

 

 

 

 

 

 

 

そして網に入ったのがこちら。

魚には明るくないのですが、調べてみたところタモロコのようです。よく田んぼの用水路を群れて泳いでいるやつですね。

特に惹かれるところもないので写真を撮影したら即リリース。

 

 

 

そろそろ終点ということで、引き返す途中に見つけたジグモの巣

 

 

 

 

 

名称 ジグモ
大きさ 20mm程
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 山・木の根元
写真 By Daiju Azuma投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link

 

上手くいけば底の方にいるジグモごと筒状の巣を引き抜くことができるのですが、あえなく失敗。

子どもの頃はほぼ百発百中で成功していたというのに、この体たらく……。

他にもたくさん巣があったので成功するまで挑戦したいところでしたが、いたずらに巣を台無しにするのもどうかと思い諦めました。

見た目も格好良くて、大好きな蜘蛛なんですけどね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて、遊歩道とキャンプ場のあいだに位置する山道に挑戦。

苔(こけ)むした獣道に足をすべらせそうになりながら進んでいると、早くも素敵な昆虫に遭遇しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮やかな水色と黒のコントラストが美しいこのトンボはアオモンイトトンボ……か、もしくはアジアイトトンボでしょうか。

 

 

【名称】アオモンイトトンボ
【大きさ】体長 30~35mm
【出現時期】4月~11月
【分布】本州・四国・九州・沖縄
【いる場所】池沼
</By Alpsdake投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Linktd> 【名称】アジアイトトンボ
【大きさ】体長 24~34mm
【出現時期】4月~11月
【分布】日本全土
【いる場所】池沼・田んぼ

 

腹部の模様を見る限りでは、ホソミイトトンボの可能性も高いような気がします。

この写真だけでは見分けるのが難しいですね。現地で詳しく観察しておかなかったことが悔やまれます。

言い訳になりますが、イトトンボを観察している最中、前方にオオスズメバチの姿を確認したため、観察を中断し慌てて引き返したという経緯がありました。

当然イトトンボに対する興味もありましたが、スズメバチの恐怖がそれを上回ったというわけです。

 

 

という訳で山道を断念し、当初の予定よりも早く隣の公園にステージに足を運ぶことにします。

続きは後半戦(次のページ)で!

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昆虫採集体験レポート① 【1日目 公園】

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この章(第4章)では4ページにわたって、筆者が実際に昆虫採集をおこなった様子を写真の数々と共にレポートしていきます。

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▼森の音

 

昆虫採集スタート!

 

まず訪れたのは県内の某公園。

この日は最高気温が35℃に達する猛暑日だったので家でおとなしく過ごしたかったのですが、用事のついでに立ち寄ってみることに。

 

 

 

 

 

 

水の流れる涼しげな音色にテンションが上がり、暑さを忘れて虫採り開始!

 

 

 

 

 

 

 

 

すると早速、草むらに生き物の気配が。

 

自慢ではありませんが、外出しているときには常に生き物の気配に目を光らせているので、よほど警戒心の強い生き物でなければ筆者のセンサーから逃れることはできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姿を現したのはニホンアカガエル

近縁(きんえん:近い種)のヤマアカガエルと見分けることが難しいですが、背側線を見る限りではニホンアカガエルのような……。

 

 

アカガエルは正直それほど好きなカエルではないので、同定(=種を判別すること)にもあまり自信がありません。

でもよく見るとやっぱり可愛いなあ。

 

【コラム】昆虫採集の時には昆虫以外の動植物にも目を向けてみよう!
昆虫採集は昆虫を捕まえることそれ自体よりも自然と触れ合うことに大きな魅力があります。そのため、動物や植物、風景など、昆虫採集の過程で目にしたものはすべてが観察の対象となり得ます。

昆虫採集だからといって「昆虫」という分類にとらわれず、その過程で出会った各々の好きな生き物を採取・観察することで昆虫採集はより充実したものになるといえます。

 

 

 

 

 

 

 

のんびり散策していると、花のつぼみにぶら下がっているセミの抜け殻を発見。
なにもそんな不安定なところで羽化(うか:さなぎから成虫になる事)しなくても……。

 

夏の匂いを楽しんでいるとき、自ら虫採り網に飛びこんできたうっかり屋さんがいました。

 

 

 

 

 

おそらく若いナツアカネでしょう。成熟すると、燃えるような真っ赤な体色に変化します。

アキアカネとよく似ていますが、胸の模様で見分けることができます。

 

▼ア「アキアカネ」「ナツアカネ」の見分け方

アキアカネ
名称
ナツアカネ
</By Alpsdake投稿者自身による作品File:アキアカネ メス Sympetrum frequens female s3.JPG, CC 表示-継承 3.0, Linktd>
写真
By Alpsdake投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

胸部の黒い三本線の真ん中の先端が尖っている。
見分けるポイント

胸部の黒い三本線の真ん中の先端が角ばっている。
アキアカネとナツアカネについては第1章で解説!(現在は第4章) アキアカネとナツアカネについては第1章で解説!(現在は第4章)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小川沿いを歩いていると、すこし先で何者かが川の中に飛びこむ音が。

 

 

 

ニホンアカガエルにしては大きかったような……持参していたタモ網で捕獲を試みます。

 

 

 

 

 

 

やっぱりな!

 

その正体はトウキョウダルマガエルでした。トノサマガエルとよく似ていますが、生息域が異なるので判別は容易です。ここは関東なので十中八九ダルマガエルでしょう。

こちらは個人的に好きなカエルなので持ち帰って飼育したいところですが、この暑さでの輸送は大きな危険を伴うため断念。

 

また会いにきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木陰の多い一帯にさしかかると、ひらひらと舞う黒い影が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前の項でご紹介しましたハグロトンボです。全身が黒いのでおそらく雌(メス)の個体でしょう。

かなりの数が群生しているので、このあたりで繁殖しているに違いありません。

やっぱり格好良い!

 

ハグロトンボの解説は第1章にて(現在は第4章) ハグロトンボの解説は第1章にて(現在は第4章)

 

 

 

 

 

 

 

名称 ショウリュウバッタ
大きさ 体長 40~80mm
出現時期 6月~12月
分布 本州以南
いる場所 林緑・草地

 

草むらに潜んでいたショウリョウバッタ。定番ですね。

余談ですが、筆者はオスの成虫が飛ぶときに立てる「キリキリキリ……」という音が好きでたまりません。人間とって心地の良い周波数なのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

同じく草むらにて。

ピンボケ気味で申し訳ありませんが、葉の上にとまった蜂を狙う蜘蛛の姿が。

どちらも詳しい種類まではわかりませんが、ハバチとコガネグモの類ではないかと思います。

 

ハバチはコガネグモに狙われていることを知ってか知らずか、次の瞬間にはどこかへと飛び去っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼間でも日が差さないじめじめした一帯。ぼろぼろのコンクリートが陰気な虫たちの気配を感じさせます。

 

 

 

 

 

 

コンクリート片をどかしてみると――

 

 

 

 

 

 

 

名称 オオヒラタシデムシ
大きさ 体長 18~32mm
出現時期 4月~10月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 山林

 

 

――いました。

オオヒラタシデムシは生き物の死骸を食べる地表の掃除屋です。

 

ゴキブリとゴミムシの中間のような成虫もなかなかに薄気味悪いですが、幼虫はさらにグロテスクです。興味がある方は是非検索してみてください。

 

 

しかし、ここでハプニング。

 

 

 

夏の暑さにやられて気分が悪くなってきました……。

久しぶりの虫採りにテンションが上がって喉の渇きを忘れていたことが原因だと思います。

熱中症になっては危ないので急いで撤退します。

 

 

 

 

 

 

 

 

名称 クルマバッタモドキ
大きさ 体長 32~65mm
出現時期 7月~11月
分布 本州~九州
いる場所 草地・土手

 

 

帰り際に見つけた褐色型のクルマバッタモドキ

 

トノサマバッタやクルマバッタとよく似ていますが、翅(はね)の模様と背中の盛り上がりで判別することができます。

 

▼トノサマバッタ(クルマバッタとクルマバッタモドキには模様がある)

▼クルマバッタ

 

翅に白い模様があり、背中が盛り上がっていないので、クルマバッタモドキとみて間違いないでしょう。

 

▼クルマバッタモドキ


By KENPEI – KENPEI’s photo, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

 

昆虫採集1日目はこれにて終了です。

炎天下での虫採りはデスクワーク続きのひ弱な体には酷だったようで、公園の1/4ほどをまわったところで無念の強制終了となってしまいました。

また日を改めて再挑戦です!

 

次のページでは、山中の遊歩道を訪れて昆虫採集を行います。

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昆虫たちの【冬】の越し方

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この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。

寒い冬は昆虫たちにとって「死の季節」であり、生き抜くために様々な方法を駆使して冬を乗り越えています。

昆虫たちの冬の乗り越え方を知り、昆虫への興味をより深めていただきたく思います。

 

冬に見られる昆虫

 

【名称】ハナアブ
【大きさ】体長 14~16mm
【出現時期】4月~12月
【分布】日本全土
【いる場所】花の上
By Andreas Thomas Hein投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 【名称】オツネントンボ
【大きさ】体長 26~41mm
【出現時期】11月~4月
【分布】北海道~九州
【いる場所】沼・林に近い池
【名称】キタテハ
【大きさ】前翅長(ぜんしちょう) 3~8.5mm
【出現時期】4月~12月
【分布】北海道南西部~九州
【いる場所】草むら・花の上

 

冬の昆虫観察が困難な理由

 

冬は他の季節に比べて昆虫の観察が困難になります。

空気が乾燥し、気温が著しく低下する冬は多くの虫たちにとって「死の季節」であるといっても過言ではありません。昆虫の他、爬虫類や両棲類といった野生動物の観察が難しい冬の間はなんとも味気ない日々が続きます。

 

冬の観察が困難な理由は、昆虫が変温動物であるからです。

 

人間をふくむ哺乳類や鳥類は恒温動物です。恒温動物は外気温に左右されることなく一定の体温を保つことができます。

一方、昆虫などの変温動物は外部の温度によって体温が変化します。

 

 

動物が活動するには「熱」が必要です。熱がなくなれば基本的に動物は死んでしまいます。

恒温動物の場合は食料を食べるなどして自分の内から熱を生み出すことできます。

一方、変温動物である昆虫は内から熱を生み出すことができません。また、外気温により体温が変化してしまうため、気温が下がる冬を越すにはなんらかの工夫を凝らさなければ生き残ることができないのです。

 

昆虫の冬の越し方

 

昆虫が安全に冬を越すための方法は二つに大別されます。

 

① 暖かい場所を求めて移動

 

ひとつは「暖かい場所を求めて移動する」というもので、一部のチョウやトンボがこれに該当します。

日本にも棲息するウスバキトンボは「渡り」をする昆虫として有名で、近年の研究によってなんと7,100kmもの距離を移動していることが判明しました。

 

▼ウスバキトンボ

名称 ウスバキトンボ
大きさ 体長 45~55mm
出現時期 4月~9月
分布 北海道~沖縄
いる場所

 

これは生物界でも最長で、これまで最長の渡りをおこなうとされていたオオカバマダラの4,000kmを大きく上回る記録です。

 

【編集部の昆虫豆知識】オオカバマダラ

オオカバマダラは、冬の間は南へ渡りを行います。

「渡り鳥のように渡りを行う蝶」として有名な昆虫です。

 

 

夏は米国北部とカナダをすみかとし、毎年秋になるとカルフォルニア州とメキシコへ移動を行います。世代交代をしながら大移動します。

 

② 代謝を抑えた状態で寒さに耐える

 

もうひとつの方法が、代謝を抑えた状態で寒さに耐えるというものです。

 

代謝とは
代謝は生物が生命を維持するための体内で行われる化学反応のことです。人間の場合は脂肪をエネルギーに変えることで体を動かしていますが、これが代謝に該当します。

 

耐寒性の強い生物種であれば、成虫(=昆虫の最終形態)の状態でも冬を生き抜くことができます。ハチやアリ、テントウムシやカメムシがその例です。

彼らは樹皮の隙間や落ち葉の下でおしくらまんじゅうのように身を寄せ合うことで外気から身を守ります。ただ動かずに何も食べなければ飢え死にしてしまいますので、気温の高い時間には活動的になることもあります。

 

▼落ち葉の下で集まるテントウムシのイメージ

 

一方で、コオロギやカマキリといったバッタ目に属する昆虫は寒さに弱く、成虫の状態では冬を越せずに死んでしまいます。彼らは秋になると産卵して次の世代に命を託します。

代表的な例が、カマキリの卵です。

 

▼カマキリの卵

 

カマキリの卵は、泡状のタンパク質に包まれることで寒さや外敵から守られます。気温の上昇とともに休眠から覚めておびただしい数の幼虫が一斉に孵化します。

 

カブトムシやクワガタムシの幼虫が土の中や樹木の中で過ごすのも、寒さや外敵から身を守るためであるといわれています。

 

▼カブトムシの幼虫

 

また、ガやチョウの仲間は蛹(さなぎ)の状態で冬を過ごすものが多いですが、越冬できずに蛹のまま死んでしまうものも少なくありません。

 

▼蛹のアゲハチョウ

 

▼形態別、冬の越え方一覧

成虫 集団で物陰に隠れて身を寄せ合うなどして冬を越す。
成虫は死に、卵を生んで次の世代に託す。
幼虫 寒さや外敵から身を守るため、土や樹木の中で過ごす。
蛹越 蛹は食べる必要もなく厳しい冬を超すには適した状態。枝に同化していたりする。

 

寒さの厳しい冬の時期でも、比較的気温が高い日には一時的に冬眠からさめて日向ぼっこをしている生き物の姿を見ることができますので、そういう日には自然のなかに足を伸ばしてみるのも一興です。

また、樹皮の裏や土の中、落ち葉の裏をのぞいてみると休眠中の生き物と出会えることがありますが、越冬を妨げないためにも手短に観察を済ませたら速やかに元の状態に戻してやるようにしてください。

 

この章(第1章)では、四季ごとに昆虫を紹介いたしました。次の章(第2章)からは【山野】【水辺】【街なか】【】とフィールド別に見つけることができる昆虫を4ページにわたって紹介します。

次のページは【山野】で見つけることができる昆虫を紹介します。

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【秋】の身近な昆虫 5選

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この章(第1章)では【】【】【】【】に分けて、季節ごとに身近に棲息する昆虫たちを紹介していきます。昆虫の魅力を知り、昆虫を見つける喜びを知っていただきたく思います。

ちなみに昆虫は似た姿をしているのに種が違う昆虫が多数存在します。

こういった昆虫の見分け方を知っていると、昆虫を見つける喜びや楽しさがより深まると思います。適宜、似た昆虫の見分け方もお伝えしますので、こちらも参考になれば幸いです。

 

このページでは「秋の昆虫」を紹介します。厳しい暑さが過ぎ去った秋は、多くの虫たちを観察することのできる季節です。

 

エンマコオロギ

名称 エンマコオロギ
大きさ 体長 30~35mm
出現時期 8月~11月
分布 本州~九州
いる場所 公園の草地・枯草の中
備考 縄張りを主張する時、メスを誘う時、ケンカをする時で鳴き方が違う。

 

エンマコオロギは国内最大のコオロギで、夏から秋にかけて多く見ることができます。

甲高い独特の鳴き声を発しますが、真夏の暑さの下で鳴くことはあまりないです。そのため、コオロギの鳴き声はわたしたちに「秋の訪れ」をしらせるひとつの風物詩であるといえます。

エンマコオロギの鳴き声はコオロギのなかでもっとも美しいとされており、鳴き声を愛でるために飼育する愛好家も少なくありません。

 

▼エンマコオロギの鳴き声を聴いてみよう!

 

また、中国では雄のコオロギ同士を戦わせる「闘蟋(とうしつ)」という競技が古くから親しまれています。日本でも「コオロギ相撲」として稀にイベントが開催されることがあります。

 

アキアカネ


By Kropsoq – photo taken by Kropsoq, CC 表示-継承 3.0, Link 

名称 アキアカネ
大きさ 体長 35~45mm
出現時期 6月~12月
分布 北海道~九州
いる場所 池・水田

 

アキアカネは夏の初めに幼虫であるヤゴから羽化(うか:成虫になること)します。

 

ヤゴ
「ヤゴ」とはトンボの幼虫を指します。ヤゴは成虫のトンボとは大きく異なる見た目や形態をしています。成虫は空中を飛びますが、ヤゴは水中で生活します。

▼ギンヤンマ(トンボの一種)のヤゴと成虫

 

アキアカネは夏の間は標高の高い山間部などですごし、気温が下がるにつれて人里に姿を現しはじめるため「秋の虫」という印象を強く感じさせます。

アカトンボとは赤い体色のトンボの総称ですが、アキアカネを指してアカトンボと呼ぶことも少なくありません。

 

▼アキアカネが動く様子

 

他にアカトンボと呼ばれるものに、ナツアカネ、マイコアカネ、マユタテアカネ、ネキトンボ、ミヤマアカネ、コノシメトンボなどがありますが、翅の色や胸の模様で見分けることができます。

 

▼アカトンボの代表種である「アキアカネ」「ナツアカネ」の見分け方

アキアカネ 名称 ナツアカネ
</By Alpsdake投稿者自身による作品File:アキアカネ メス Sympetrum frequens female s3.JPG, CC 表示-継承 3.0, Linktd> 写真 By Alpsdake投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

胸部の黒い三本線の真ん中の先端が尖っている。
見分けるポイント
胸部の黒い三本線の真ん中の先端が角ばっている。

 

アカトンボは秋の季語としても親しまれています。

江戸時代の俳人・沢露川が「盆つれて 来たか野道の 赤蜻蛉(あかとんぼ)」と詠んでいるように、アカトンボもまた濃厚な秋の気配を感じさせる昆虫です。

また、江戸時代の俳人・宝井其角が「あかとんぼ はねをとったら とうがらし」と詠んだ句に、其角の師匠である松尾芭蕉が「とうがらし はねをつけたら あかとんぼ」と返したという、微笑ましい逸話が残っています。

 

ツクツクボウシ

名称 ツクツクボウシ
大きさ 体長 30mm
出現時期 7月~10月
分布 北海道・本州・四国・九州
いる場所 森林

▼鳴き声を聴いてみよう!

 

ツクツクボウシはセミの一種です。

セミは夏の虫というイメージが強いですが、夏の終わりには多くが姿を消してしまいます。そんな中、ツクツクボウシは秋の初めまでその姿を観察することができます。

ツクツクボウシはその名のとおり「オーシ・ツクツク・オーシ・ツクツク――」という印象的な鳴き声を発します。その鳴き声から容易にツクツクボウシを判別することができます。

ただ、警戒心が強く、人の気配を感じると他の場所に逃げてしまうため、声のわりに姿を見かける機会は少ないセミであるといえます。

外見的には細身の体と透明な翅(はね)が特徴ですが、似たような外見のセミも多く、見た目だけで見分けることは難しいでしょう。

 

カネタタキ

名称 カネタタキ
大きさ 体長 10~14mm
出現時期 8月~11月頃
分布 本州以南
いる場所 街路樹・枯木の隙間
備考 オスには翅がありメスには翅がない

 

カネタタキはバッタ目カネタタキ科に属する昆虫で、科目は異なりますがコオロギに近い生き物であるといえます。

 

▼コオロギ

 

上でご紹介した虫たちと比べるとなじみが薄いかもしれませんが「鉦叩(かねたたき)」という名のとおり、金属製の皿を叩いているような甲高い鳴き声が特徴的です。

美しい鳴き声を好む愛好家がいる一方で、カネタタキは約1cmという小柄な体格ながら昼夜を問わず鳴き続けるため、家屋に侵入した場合には騒音害虫として駆除の対象となることもあります。

 

▼1cm:1円玉の半径

 

▼カネタタキの鳴き声

 

マツムシ

名称 マツムシ
大きさ 体長 19~33mm
出現時期 8月~11月
分布 本州・四国・九州・沖縄
いる場所 草地・河川敷・線路沿い

▼鳴き声

 

マツムシはかの有名な唱歌「虫のこえ」のいちばん最初に登場することからもわかるように、秋の虫として古くから親しまれてきた昆虫のひとつです。

 

▼唱歌「虫のこえ」

 

歌詞で「チンチロ チンチロ チンチロリン」と例えられている鳴き声のマツムシは、鈴の音にも笛の音にも似て非常に美しく、マニアの間ではしばしば高額で取引されています。

近年では棲息数が減少しており、その美しい鳴き声を耳にする機会もめっきり減ってきたように感じられます。

明治時代に移入された外来種であるアオマツムシと混同されることもあります。文字どおり緑色の体色をもつアオマツムシに対し、マツムシの体色は茶色であり、また鳴き声もまったく異なるため、簡単に見分けることができます。

 

▼アオマツムシ


By ふうけ投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

このページでは【秋】の身近な昆虫を紹介してきました。次のページでは【冬】の身近な昆虫を紹介します。

寒い冬は昆虫たちにとって死の季節と言えます。昆虫を見つけるには困難な季節ですが昆虫たちの冬の越し方を知り、魅力に触れて昆虫を好きになっていただきたいです。

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