クラシックコンサートの楽しみ方④ 【コンサートホールの歴史】

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クラシックコンサートに興味があっても「敷居が高い」「拍手のタイミングとかわからない」などの不安から、行くことを躊躇している方も多いのではないでしょうか。そんな不安を払拭し、さらにはより楽しむ方法をお伝えします。

クラシックコンサート初心者入門こちらから!

著者:めーぷる

国立大学医学部生。プログラマーとライターの仕事も手掛ける。幼少期からピアノとヴァイオリンを習っており高3の夏頃まではプロのピアニストを目指していた。クラシック音楽、ジャズ、洋楽と幅広いジャンルの音楽に親しむ。お問い合わせはこちらから

 

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前のページの最後では「『コンサートホール』に注目すれば、よりコンサートが楽しめる」とお伝えしました。

このページでは「コンサートホール」の歴史をお伝えします。コンサートホールへの理解を深めれば、さらにクラシックコンサートの楽しみ方が広がることでしょう。

 

コンサートホールの誕生


photo by Jorge Franganillo
▲コンサートホールの例:ベルリン・フィルハーモニー

 

19世紀以前のヨーロッパではクラシック音楽というのはもともと王侯貴族が楽しむためのものでした。したがって、クラシック音楽は当時、一般市民にとってはあまり馴染みがない存在だったのです。

▼18世紀頃のヨーロッパの貴族

 

しかし、19世紀(1801年~1900年)を境にクラシック音楽というのは次第に「民衆もターゲットに含んだ娯楽」としての性格を見せ始めます。

そして、クラシック音楽がポピュラーになり始めたこの時代「一般市民でもお金さえ払えば、気軽に音楽を楽しむことのできる場所」として、コンサートホールが誕生するようになったのです。

クラシックが市民の間でも広まった理由
民衆の間でクラシック音楽がポピュラーになった要因は「産業革命」にあります。

蒸気機関の開発などの技術革新により、それまでの封建的な社会構造(簡単に言えば生まれによって貴賤が決まる極端な縦社会)が資本主義社会へと移行し、貴族に代わって市民が台頭するようになっていきました。

そして、それまではクラシック音楽は難解で市民には理解しずらいものでしたが「ホモフォニー」という、市民にもわかりやすく楽しめる表現形式が台頭してきたこと、この2点がクラシックがポピュラーになった理由と言えるでしょう。

 

19世紀に誕生したコンサートホールの例として下記のようなものがございます。

1880~1900年頃に誕生したコンサートホールの例

ベルリン・フィルハーモニー (1882)<ドイツ>
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス (1884)<ドイツ>
ウィーン楽友協会大ホール (1870)<オーストリア>
アムステルダムのコンセルトヘボウ (1888)<オランダ>
ボストンのシンフォニーホール (1900)<アメリカ>


 

アメリカのボストンにもホールが誕生していた事などからヨーロッパだけではなく、アメリカ大陸にもクラシック音楽の熱狂が伝わっていたということがわかります。

 

20世紀にはいるとコンサートホールにも少し変化が見られるようになります。具体的には聴衆が楽しむためだけではなく、コンサートを開く主催者も運営がしやすいような工夫が施されるようになったのです。

それまでのコンサートホールは、シューボックス型でした

シューボックス型は客席の場所によって音響的に良い悪いの差異が非常に大きいため、良い席というのは限られていました。そのため、空席が一定数できていたのです。

しかし、20世紀になるとヴィンヤード型という新しいタイプのコンサートホールが作られるようになり、音響的な問題が改善されました。

その結果、主催者側の収益アップにもつながったのです。

 

「シューボックス型」「ヴィンヤード型」
シューボックス型は直方体の形をしているホールで、ヴィンヤード型は席が段々畑のような形で配置されているホールとなっております。

▼シューボックス型の例(ウィーン楽友協会大ホール)


photo by Anna & Michal

▼ヴィンヤード型(ベルリン・フィルハーモニー)


photo by keriluamox Some rights reserved

 

サロンコンサート

 

ここまでコンサートホールが誕生するまでの歴史を見てきましたが、クラシック音楽の歴史をたどると、クラシック音楽のコンサートが開かれていたのは壮大なコンサートホールにおいてのみではないのです。

 


▲貴族の家にて、サロンでピアノを弾くショパン(当時19歳)の絵

 

ショパン(1810-1849)やリスト(1811-1886)が活躍していた時代というのはサロンコンサートというのも頻繁に開かれていました。

ショパン・リストが活躍していた時代
当時は、貴族が才能ある音楽家のパトロンになっていた時代。貴族たちは、音楽家たちを自分の家のサロンに招いて才能を競い合わせていたといいます。ちなみに、「ピアノの魔術師」と称されるリストに対して、ショパンは「ピアノの詩人」として両者が対比されていたことは有名な話。この話は『クラシック音楽初心者入門』のWebonで詳しく紹介。

 

サロンというのはもともとフランス語で「部屋」や「空間」を意味する言葉です。

この言葉の意味から分かるように、サロンコンサートというのはコンサートホールで開かれるような大規模なコンサートとは違います。

サロンコンサートはコンサートホールよりもはるかに狭い部屋で行われ、コンサートホールで得られるような特別な音響効果もありませんでした。

その分、サロンコンサートはコンサートホールよりも場所代が安く、よりチケット代を安く抑えることができました。そのため、一般民衆にとっても当時のクラシック音楽界のスターの演奏をお手頃に目近で聴くことのできる格好の場所だったのです。

 

そして、サロンコンサートで有名なクラシックの音楽家といえばショパン、リスト、パガニーニらが挙げられるでしょう。

▼フレデリック・ショパン

▼フランツ・リスト

▼ニコロ・パガニーニ

 

彼らは演奏家としての実力はもちろん、一種のビジネスセンスにも非常に長けていました。

そのビジネスセンスを生かし、チケットを安く抑える代わりに、より多くの聴衆を獲得することができたのです。

当然収益も相当なものでした。彼らはこのサロンコンサートを通してミュージシャンとしてのファン層を広げることに成功したのです。

最近になって、サロンコンサートの存在意義が見直され始めているようなので、クラシック音楽を楽しみたいという方はサロンコンサートも視野に入れてみるとよいのかもしれません。

 

コンサートホールの歴史の変遷一覧

年代 出来事
1830年頃 ショパン(当時19歳)が王侯貴族の家のサロンでピアノを弾く。▼その時の様子

1800年中頃 王侯貴族が楽しむための音楽だったクラシックが、一般市民にも広まる
1882年 ドイツにベルリン・フィルハーモニー誕生(ドイツ)
1884年 ドイツにケヴァントハウス誕生
1900年 アメリカのボストンに「シンフォニーホール」誕生
1960年以降 ヴィンヤード型のコンサートホールがドイツ各地に作られる。

 

コンサートホールの歴史を知ると、コンサートホールもより楽しめるかと思います。

さて、この章ではクラシックコンサートの楽しみ方について解説してまいりましたが、次の第2章からはクラシックコンサートの種類についてお伝えします。種類を知ってお気に入りのコンサートを見つけてみてくださいませ。

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パガニーニ「24の奇想曲第24番」 初心者にもわかりやすく解説

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「クラシック音楽」と聞くとなんだか難しそうで敷居も高い。でもクラシック音楽を作っている作曲家だって人間です。面白いエピソードもたくさんあるんです。有名曲と作曲家を知りクラシック音楽を楽しみましょう!

「クラシック音楽初心者入門 ~有名曲・作曲家を学ぼう!~」はこちらから!

著者:めーぷる

国立大学医学部で大学生活を楽しみつつ、プログラマーとライターの仕事も手掛けています。幼少期からピアノとヴァイオリンを習っており、クラシック音楽、ジャズ、洋楽と幅広いジャンルの音楽に親しんでいます。趣味は幅広く、音楽の他にもバドミントン、スキー、スポーツ観戦、海外ドラマ、料理、カフェ巡りなど多岐にわたります。お問い合わせはこちらから

 

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<まずは聴いてみよう!>

クラシックの名曲を通じてクラシック音楽の魅力を学んでいきましょう!今回はパガニーニの「24の協奏曲第24番」です。最初に音楽を聴いてから、記事を読むことでクラシックへの理解が増すことでしょう。

▼24の協奏曲第24番

 

 

このページでご紹介するのはパガニーニの「24の奇想曲第24番」です。

「史上最高のヴァイオリニスト」とも言われるパガニーニの生い立ちにも触れながら、この曲についてご紹介していきます。

第1章ピアノ編のページもご覧になっていた方は、あることに気づくことでしょう。

 

そうです、あのフランツ・リストの「パガニーニ大練習曲第6番」とほとんど同じメロディーを辿っている曲なのです。以前ご紹介した通り、この曲はリストの「パガニーニ大練習曲第6番」の元となった曲です。

 

▼フランツ・リストの「パガニーニ大練習曲第6番」

リストの「パガニーニ大練習曲第6番」は第1章ピアノ編で紹介!(このページは第2章バイオリン編)

 

実はこの曲をテーマとした曲を作っているのはリストだけではありません。

そこで、今回はこの曲の魅力にも触れつつ、それを編曲した他の作曲家の作品についてもご紹介することにしましょう。

 

パガニーニ

▲パガニーニ

 

パガニーニはイタリアのジェノヴァ出身の伝説的なヴァイオリニストです。

 

 

パガニーニは5歳の頃からヴァイオリンを弾き始めると、とてつもないスピードで成長し、13歳の頃にはもはやこの世の曲で弾くことの出来ない曲がなくなってしまったと言われています。

 

 

そのため、パガニーニはその頃から自作の練習曲でその腕を磨くようになっていったようです。

演奏会での彼のヴァイオリン演奏はあまりに巧みであったため

「まるで悪魔に魂を売り渡したようだ」

と言われていたようです。

 

彼の演奏というのは文字通り超人的な域に達しており、悪魔に魂を売り渡したとも噂され、彼の足が本当に地面に着いているのかどうかを本気で疑い、彼の演奏会中、ずっと足元を見つめていた観客がいた、など多くの伝説が残されています。

 

 

しかし、彼はもともと病弱で、40歳を手前にして体のいたる部分が蝕まれるようになっていきます。

そして、誤った治療法を実践し続けてしまった結果、稀代の天才は57歳にしてこの世を去りました。

 

24の奇想曲第24番

 

パガニーニの「24の奇想曲第24番」はパガニーニが作曲した曲だけあって、当然のことながら非常に高度な演奏技術が求められる曲となっています。

パガニーニが繰り出していた超絶技巧の面影というのを感じることができるでしょう。

特にこの曲で注目していただきたい箇所があります。

それは左手の「ピッチカート奏法」と「弦の上で弓をバウンドさせる奏法」を同じフレーズの中で交互に繰り出す変奏の部分です。

ではピッチカート奏法とは何か。初心者の方にも分かりやすく解説していきましょう。

 

変奏
テーマ(主題)の部分をもとにその旋律(メロディー)は変化させずに、リズムや拍子を変化させたり、装飾音を付けたりすることを変奏と言います。

例えばモーツァルトの「きらきら星変奏曲」だとアレンジが加えられており、きらきら星の「き~ら~き~ら~ほ~し~よ~♪」という馴染みのあるメロディはそのままに、急にテンポが早くなる部分があったりすると思います。これが「変奏」です。実際に聴いてみれば「変奏とは何か」が理解しやすいかと思います。

ちなみに変奏曲は当時「練習曲」としての意味合いが強かったので技術的に難しい曲が多くあります。

 

ピッチカート奏法とは

 

「ピッチカート」というのはヴァイオリンの弦を指で弾く奏法です。

このピッチカートですが、通常はヴァイオリンの弓を持つ右手で弦をはじいて音を出します。

 

▼ピッチカートのイメージ

 

しかし、この曲ではこのピッチカートを左手で行います。

ヴァイオリンにおいて左手というのは弦を押さえて音の高低を調整する役割を担っています。

この曲では左手がこの二つの役割を同時に果たすのです。

それだけでも大変だというのに、この曲ではさらに弓をバウンドさせる奏法も組み合わせているため、まさにヴァイオリニスト泣かせであるということができるでしょう。

 

 

「パガニーニ:24の奇想曲」の編曲

 

パガニーニの「24の奇想曲第24番」の編曲(改編した曲)は、以前ご紹介したリストの「パガニーニ第練習曲第6番」の他にもあらゆる音楽家達によって生み出されています。

 

リストの「パガニーニ第練習曲第6番」については第1章ピアノ編で!(このページは第2章バイオリン編)

 

その代表的なものとして、まずブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲Op.35」というのがあげられます。

 

ブラームス(1833-1897)
19世紀ドイツのピアニスト・作曲家。バッハやベートーベンと共に活躍。

▼ヨハネス・ブラームス

 

ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲Op.35」は全ての変奏において、パガニーニの原曲のメロディーを辿っているわけではなく、ブラームスが考え出した独自の旋律も組み合わせることで、少しロマン派の香りがするような編曲となっています。

リストによる編曲とはまた一味違った雰囲気を楽しむことができるでしょう。

 

 

もう一つ有名な編曲として、音楽家・ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲作品43」というのが挙げられます。

この曲は、オーケストラとピアノのために書かれた曲で、第1章でもご紹介したラフマニノフの「ピアノ協奏曲」に近い形態となっています。

 

 

曲全体にパガニーニの原曲の旋律を用いていますが、変奏自体は全てラフマニノフのオリジナルとなっています。

原曲よりもより一層ドラマティックな展開を楽しむことができます。

 

 

さて、今回はパガニーニの「24の奇想曲第24番」についてご紹介いたしましたがいかがでしたでしょうか。

この曲の編曲というのは今回ご紹介した以外にもたくさんあります。

様々な作曲家による編曲を聴き比べてみることで、音楽家それぞれの解釈の違いというのを楽しむことができるのではないでしょうか。

 

▼24の奇想曲第24番の楽譜

 

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