2.5次元ミュージカル人気スポーツ作品 【テニスの王子様・弱虫ペダル】

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2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

『2.5次元舞台』入門はこちらから!

著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

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『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

このページから第2章。第2章では人気の2.5次元ミュージカル(舞台)作品をジャンル別に紹介していきます。

このページでは2.5次元ミュージカルの定番となっているスポーツ作品の中から「ミュージカル『テニスの王子様』」「舞台『弱虫ペダル』」「舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』」を紹介します。

 

<第2章のページ>
スポーツ】(当ページ)
アイドル
擬人化
刀剣乱舞
男性向け

 

「スポーツもの」が人気の理由

 

いまや年間200本近い作品が上演されている2.5次元ミュージカル(舞台)。その中でも根強い人気を誇るのがスポーツ作品です。

スポーツを題材とした2.5次元ミュージカルは年間を通してコンスタントに上演されています。

 

スポーツものが人気であるのには2つの理由があると筆者は考えています。

 

スポーツものが人気の理由1つ目は、スポーツものというジャンル自体が漫画の題材として人気があり、舞台化に繋がっているということです。

少年漫画誌を見ると大抵1作品はスポーツものが連載されています。それだけ人気のあるジャンルであり、ヒット作も多数生まれています。

 

そして2つ目はスポーツと身体表現である演劇の相性が良いということです。

スポーツと演劇の共通点は「身体の動作によって行われる」ところにあります。

もちろん劇場のステージでスポーツの行われる広いグラウンドとまったく同じ動きをすることはできません。

しかし、役者の身体の動きや表現で、私たちの脳裏には試合風景や熱戦の様子が映し出されます。

この舞台上での表現が「私たちの想像力がかき立てられる」という演劇体験をするのに、スポーツものは適したジャンルの1つなのだと思います。

 

 

人気スポーツ作品

 

以下では2.5次元ミュージカルの人気スポーツ作品の中でも定番といえる作品を紹介します。

 

▼ここで紹介する作品

作品名 上演期間 備考
ミュージカル『テニスの王子様『 2003年4月30日~ 2019年3rdシーズン上演中
舞台『弱虫ペダル』 2012年2月1日~ 2019年「新インターハイ篇」上演決定
舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』 2016年12月9日~ 2018年5月~6月エピソード5上演

 

ミュージカル『テニスの王子様』

【基本情報】

作品名 ミュージカル『テニスの王子様』
初演 2003年4月30日(東京芸術劇場)
主人公(越前リョーマ)のキャスト(初代) 柳浩太郎・Kimeru・遠藤雄弥
ストーリー 主人公が属する青春学園テニス部が全国大会優勝を目指す
チケット チケットぴあ
動画配信サービス U-NEXT
DVD・Blu-ray amazonで探す  楽天で探す
公式サイト https://www.tennimu.com/
「男性俳優のみ」「スポーツ漫画原作」などのミュージカルはミュージカル『テニスの王子』が初めての事だったので手探り状態でスタートした。上演当初は観客動員数も少なかったが口コミなどで徐々に広がり人気ミュージカルへ。2018年には累計250万人を動員(参照:https://www.tennimu.com/news/d724)を記録した。

 

第1章で解説したとおり、2.5次元ミュージカルのはしりとなったのがミュージカル「テニスの王子様」、通称「テニミュ」です。

 

「テニミュ」が2.5次元ミュージカルブームの火付け役となった経緯については第1章で解説!(現在第3章) 「テニミュ」が2.5次元ミュージカルブームの火付け役となった経緯については第1章で解説!(現在第3章)

 

テニミュは2.5次元ミュージカルの中でもシリーズがとても長く続いている作品になります。

主人公・越前リョーマの所属する青春学園テニス部が、「数ある強豪校と戦いながら全国大会優勝を目指す」といういたってシンプルなストーリーです。

 

 

公演ではテニスの試合をするシーンがほとんどを占めています。

 

役者はラケットを握り、ネットを挟んでラリーをします。

ボールは照明の明かりで表現され、見ているうちにテニスの試合が繰り広げられる物語の世界へと引き込まれます。

 

▼ミュージカル「テニスの王子様」ダイジェスト映像

 

もちろんミュージカルなので歌やダンスも挿入されますが、相手を挑発したり、反撃をしたりという「試合展開の表現」として活きてきます。

それゆえに、試合が終わった後は勝利した喜びや負けた悔しさを舞台上のキャラクターと一緒に味わうことになるのです。

この観客が物語の中に引きこまれるような感覚こそが、テニミュの大きな魅力であり、ロングヒットの作品となった理由だと思います。

 

 

本作は2018年現在3rdシーズンが上演中です。

原作の最終回までのストーリーを1stシーズン、2rdシーズンと繰り返しており、現在3周目にあたります。そのため配信やDVDで視聴する際は各シーズンの1作目から見るのがおすすめです。(3rdシーズンの場合は「青学VS不動峰」)

 

「シーズン」について

原作の1話から最終話までの原作のストーリーを1stシーズンで一通りやり、2ndシーズンで同じく1話から最終話までを、3rdシーズンでまた1話から最終話までを…という形で上演しています。

(正確には1話からすべての話の内容をなぞっているわけではありません。シーズンごとでも多少違いはあります。また、シーズンごとに役を演じる俳優は入れ替わります。) 

 

ミュージカル『テニスの王子様』を観る方法

▼サービス名クリックorタップで公式サイトへ進めます。

サービス名 購入方法
dアニメストア ・定額配信。月額400円(税抜き)で見放題。初回31日は無料で見放題
amazon ・DVD
DMM.com ・月額レンタル。月ごとに決まった数のDVD/CDをレンタルすることができる。月980円で4枚、月に1880円で8枚、月2480円の借り放題プランがある。
ダウンロード/ストリーミング
GYAO! ・レンタル。視聴期間は決まっている。
U-NEXT
・月額2149円(税込)で見放題会員になれば視聴可能。初回31日間無料お試し期間有り。

※2.5次元ミュージカルで人気作を劇場で鑑賞したいと考える場合は、先行販売でチケットを獲得することをおすすめします。

先行販売でのチケット獲得方法については下記のページ(次の章)にて解説! 先行販売でのチケット獲得方法については下記のページ(次の章)にて解説!

 

舞台『弱虫ペダル』

【基本情報】

作品名 舞台『弱虫ペダル』
初演 2012年2月1日(天王洲 銀河劇場)
主人公(小野田坂道)のキャスト(初代) 村井良大
ストーリー 千葉県立総北高等学校の新入生・小野田坂道が自転車競技部で仲間と共にインターハイ優勝を目指す。
チケット ローソンチケット
動画配信サービス U-NEXT
DVD・Blu-ray amazonで探す  楽天で探す
公式サイト http://www.marv.jp/special/pedal/index.html
自転車競技部の物語を自転車のハンドルだけを用いて表現している。原作「弱虫ペダル」は累計1700万部を超えるヒット、そして舞台化だけでなくテレビアニメ・テレビドラマ化もしている。

 

「弱虫ペダル」は週刊少年チャンピオンで連載中の自転車競技をテーマにした漫画です。

この作品の舞台化にあたって舞台上でどう自転車競技が表現されるのか、原作ファンであれば気になったことでしょう。

 

その答えとして、本作では自転車競技のレースを役者は「自転車のハンドルとその場での足踏み」によって表現します。

映像による演出もなく、肉体1つで激しくスピード感のあるレースを舞台の上に作り上げました。

 

▼舞台「弱虫ペダル」のダイジェスト映像

 

ハンドルだけを握りしめる姿は当初、困惑とともに迎えられました。しかし、この舞台を見に行った人は口々に「自転車が見える」と言います。

もちろん、目の前にいるのはハンドルを握りしめただけの役者です。

しかし、動きや台詞が重なり合って観客の頭の中には「はっきりと風を切る自転車に乗る彼らの姿」が浮かび上がります。

 

 

この想像力をかきたてるような演出は、原作を観客の目にビジュアルとして再現するところを超えて、原作と同じだけの感動や情景を観客の心に再現することに成功しました。

原作の連載も続く本作は、現在も舞台シリーズが続いています。

私たち観客の想像力を喚起させる舞台「弱虫ペダル」の世界を是非体験してみてください。

 

舞台『弱虫ペダル』を観る方法

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サービス名 購入方法
dアニメストア ・定額配信。月額400円(税抜き)で見放題。初回31日は無料で見放題
amazon ・DVD

 

舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』

【基本情報】

作品名 舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』
初演 2016年12月9日(シアター1010)
主人公(桜井奈々)のキャスト(初代) 桃瀬美咲
ストーリー 架空のスポーツ「ストライド」に青春をかける男子高校生と、それに憧れた女子高校生の物語。
チケット チケットぴあ
動画配信サービス dアニメストア
DVD・Blu-ray amazonで探す  楽天で探す
公式サイト http://trifle-stage.com/pos_s/
通称「プリステ」。原作では桜井奈々が主人公だが舞台では八神陸(俳優:伊崎龍次郎)・藤原尊(俳優:蒼木陣)のトリプル主人公で作られている。原作はゲーム・アニメ・ドラマCDなどになっている。

 

「弱虫ペダル」がハンドル1つで自転車競技を表現したのとは対極にあるのがこの舞台「プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE」です。

 

本作は「ストライド」と呼ばれる架空のスポーツをテーマにしたゲームの舞台化作品です。

ストライドは「障害物や高低差のあるコースをリレー形式で走り抜けるスポーツ」です。

 

▼舞台「プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE」PV映像

 

舞台版ではパルクールの指導者も参加し、指導を受けたキャストが実際に客席の通路やステージを走り回ることでストライドを表現します。

 

パルクール

障害物のあるコースを道具を使うことなく進み、目的地を目指すスポーツや動作鍛錬。跳ぶ・走る・登る事で進んでいく。

▼パルクールの様子

by Benjamin Hollis Some rights reserved

 

本作に登場するストライドは架空のスポーツであるにも関わらず、舞台作品となったことで「スポーツをやっている姿を目の前で観戦できる」という新たな体験をファンに与えました。

現実に「ない」ものも劇場という空間でなら「ある」ように見せてくれるという、2.5次元らしい作品です。

 

舞台『プリンス・オブ・ストライド THE LIVE STAGE』を観る方法

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以上、2.5次元ミュージカルの人気スポーツ作品の紹介でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルの人気アイドル作品を紹介します。

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

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2.5次元ミュージカルのブームと今

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2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

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著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

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『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説しています。このページでは2.5次元ミュージカルのブームについて解説していきます。

<第1章のページ>
定義
テニミュ
ブームと今】(当ページ)
俳優

 

2.5次元ミュージカルの作品数

 

2.5次元ミュージカル(舞台)作品の動員数・市場規模は右肩上がりで成長を続けています。

特に2012年以降の伸びは大きく、2012年に65億7700万円だった市場規模は2017年には156億円と2倍以上となっています。

 

(データ参考:https://www.oricon.co.jp/confidence/special/51523/)

 

また、2.5次元ミュージカル(舞台)のタイトル数も2012年までは50本に満たなかったのが、2012年は100本を超え、2017年には171本と増えています。

 


(データ参考:https://www.oricon.co.jp/confidence/special/51523/)

 

このような2.5次元ミュージカルの作品数の増加の背景には2つの理由があると考えられます。

 

1つは「長期シリーズとなる作品が増えた」ことです。

「テニミュ」の愛称で親しまれるミュージカル『テニスの王子様』(2003年初演)をはじめとして、

「弱虫ペダル」(2012年初演)

「薄桜鬼」(2012年初演)

「刀剣乱舞」(ミュージカル版2015年初演)

など、初演から2018年現在に至るまで、長くシリーズ化した舞台が多くなりました。

ファンが多い作品であれば、シリーズ化(続編が作られること)することで長期的に舞台作品も追いかけてくれます。

 

2つ目の理由は「新作が増えた」ことです。

女性をターゲットとしたアニメ・漫画・ゲーム作品では舞台化を念頭においたメディアミックス(=「テレビと漫画」などの異なるメディアが合わさって商品が作られる事)が行われることが多くなりました。

2018年も「文豪ストレイドッグス」や「夢色キャスト」「A3!」など多数の新作が上演されています。

 

▼文豪ストレイドッグス

漫画×舞台

▼夢色キャスト

ゲーム×舞台

▼A3!

ゲーム×舞台

 

以前は舞台化が発表されると不安や疑問の声が多く聞かれましたが、ここ数年で「あの作品は舞台になりそうだったけど、やっぱり舞台化された!」という声や、キャストの発表を楽しみにするファンも増えました。

それだけ特に女性をターゲットとした作品においては、2.5次元ミュージカルは馴染みのあるものになっているということです。

 

 

広がる作品の差

 

作品数の増加とともに人気作とそうではない作品の差も大きく広がりました。

チケットがなかなか取れず、一般発売でもすぐに売り切れという舞台もあれば、なかなかチケットが売れず客席が埋まらない作品もあります。

 

また、質の高い演技や演出が楽しめる作品がある一方で、原作ファンが納得できない舞台化もあります。

 

【コラム】原作ファンが納得できない舞台化って?

・衣装やウィッグの質が悪く、ビジュアルイメージが満足できない

・舞台オリジナルのストーリーだが、原作で受けるキャラクターのイメージとそぐわないストーリーになっている

・新人の役者が多く、演技の面でキャラクターの再現ができていない。また、歌やダンスの技術力不足

納得できない要因として大きいのは一番最後に挙げた役者の技量不足かと筆者は思っています。

作品数が増えたために、作品によってはほぼ初舞台というキャストで上演する作品もあり、お遊戯会と揶揄されることも少なくありません。 

 

2.5次元ミュージカル(舞台)はもともと原作ファンが持つ舞台化への強い抵抗感や拒否感を、作り手側の熱意や工夫によって覆してきたジャンルです。

市場規模が広がった今だからこそ、質の高い作品を制作サイドには求めていっていただきたいと思います。

 

ブームで拡大するターゲット層

男性向け作品

 

ここ2017年~2018年の特徴として、男性に人気がある作品やキャストを起用している2.5次元舞台が増えていることがあります。

「けものフレンズ」や「魔法先生ネギま!」といった女性キャストのみの作品や、女性キャスト中心の作品が上演されました。

 

▼舞台「けものフレンズ」(画像クリックで商品詳細へ)

▼舞台「魔法先生ネギま!」

 

男性向けの舞台化作品は、役者ではなく声優を舞台版キャストに起用するパターンが多いことが特徴的です。

 

また、乃木坂48版「セーラームーン」のようにアイドルグループのメンバーをキャスティングし「原作ファン」よりもむしろ「キャストファン」にたいして訴求力を高めているというケースも見られます。

 

▼乃木坂48版「セーラームーン」

 

一方で、キャストファンにたいして訴求力を高めるのではなく「Fate/Grand Order」のように原作ファンを引きつけ、続編が決まった作品もあります。

 

Fate/Grand Order

スマートフォン専用のRPGゲーム。日本ゲーム大賞2018優秀賞を受賞している。コミック化、アニメ化などメディアミックスを展開している。2017年9月に舞台化。

▼アニメ「Fate/Grand Order」(画像クリックで商品詳細へ)

この作品の解説は第3章でしています。

 

男性向け作品もこれまでの女性向け作品のように原作ファンが足を運ぶのか、2.5次元舞台へのファンが定着するのかは今後注目していきたいところです。

 

 

海外ファンからの支持

 

2.5次元ミュージカルは海外での人気も高まっています。

2015年から上演を続けているミュージカル「刀剣乱舞」は中国やフランスでも上演されており、海外のファンからも支持を受けているのがわかります。

 

刀剣乱舞

DMMゲームスとニトロプラス(ゲームメーカー)が共同製作したPC版ブラウザゲーム。「刀剣男士」として擬人化された名だたる名刀を育成するゲーム。映画は2019年に公開。2015年にはミュージカル、2016年には舞台化された。

▼ミュージカル「刀剣乱舞」映像作品(画像クリックで商品詳細へ)

ミュージカル「刀剣乱舞」については第2章で解説! ミュージカル「刀剣乱舞」については第2章で解説!

 

また、海外公演とまではいかなくてもライブビューイング(舞台公演をリアルタイムで映画館に配信し、映画館で観劇できるイベントのこと)は中国、台湾、香港などを中心に、海外の映画館に向けて配信されることが少なくありません。

 

オリジナル作品

 

2.5次元ミュージカルは「作品ファン」から「キャストファン」になり、さらに他の作品にも足を運ぶという流れが生まれています。

その流れの中で、2.5次元ミュージカルによく出演する若手俳優を起用した原作のないオリジナル舞台の制作も増えています。

 

▼作品ファンからキャストファンになる流れ

 

原作のないオリジナル舞台の制作の例でいえば、2018年に制作された「御茶ノ水ロック」はテレビドラマの放映、ドラマ終了後に同じキャストで舞台版の上演を行いました。

 

▼ドラマ「御茶ノ水ロック」(画像クリックで商品詳細へ)

 

2.5次元ミュージカルにも多く出演するキャスト陣を起用した本作は、2.5次元ミュージカルファンをターゲットにした作品だと考えられます。

ドラマ放送から始まった「御茶ノ水ロック」は、コミカライズ作品やノベライズ(小説)作品が発売され、3次元が2次元化する”逆2.5次元”ともいえる現象が起こりました。

 

【筆者に聞きました!】御茶ノ水ロックは2.5次元ミュージカル?

「御茶ノ水ロック」はコミックもリリースされていますが、テレビドラマが原作となっているので、ドラマのコミカライズ(コミック化)になります。

2.5次元ミュージカル(舞台)の定義としては漫画が原作である作品の舞台化になるので、筆者の考えとしては2.5次元ミュージカル(舞台)ではないと思っています。

ただ、キャストも含め2.5次元ミュージカルファンをメインターゲットにしているように見てえるため、人によっては2.5次元ミュージカル(舞台)にカテゴライズする人もいるのではないかと思います。 

 

2.5次元ミュージカルならではの魅力である原作世界観の表現やキャラクターが目の前にいる感覚が当たり前になってきた今、お馴染みのキャスト陣でのオリジナル作品に新たな需要が生まれているのかもしれません。

 

以上、「2.5次元ミュージカルのブームと今」でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルを支える俳優さん達について解説をしていきます。

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

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2.5次元ミュージカルの俳優・演出家

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2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

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『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説しています。このページでは2.5次元ミュージカルの俳優や演出家について解説していきます。

<第1章のページ>
定義
テニミュ
ブームと今
俳優】(当ページ)

 

俳優(キャスト)

「テニミュ」の初演から15年。(※テニミュ=テニスの王子様のミュージカルの略)

数多くの2.5次元ミュージカル(舞台)が上演されるようになりました。

当初は原作ファンをターゲットにしてきた2.5次元ミュージカルですが、徐々に2.5次元ミュージカルに出演する舞台俳優のファンも増えてきました。

 

好きな作品が舞台化されるのをきっかけに初めて劇場に足を運び、そこで出演していた俳優を好きになる。

そして、今度はその俳優が出演している別の舞台を見に行く。

そういった作品ファンからキャストファン(俳優ファン)へと移行し、さらに別の舞台へと足を運ぶという流れができてきています。

 

 

キャスト(俳優)に求められるもの

 

2.5次元ミュージカル(舞台)に出演するのは10代後半~30代の男性俳優が中心です。

2.5次元ミュージカルが初舞台という俳優も多く、作品によっては俳優の平均年齢が20代前半ということも珍しくありません。

これは2.5次元ミュージカル作品のキャラクターが10代の学生が多いということもあるでしょう。こうした若手俳優たちが中心となって2.5次元ミュージカルは作られています。

 

 

2.5次元ミュージカルにおいてキャストに求められるのは

「原作キャラクターの再現性」

「3次元化したときの説得力」

です。

 

 

再現性としては、衣装を着てメイクを施した時のビジュアルだけではなく、立ち居振る舞いや声色も重視されます。

さらに、ちょっとしたアドリブでの言動がどれだけ原作に沿っているかという部分も原作ファンにとっては重要です。

公演前に原作ファンから「ビジュアルがイメージと違う」という厳しい意見があっても仕草や表情で「○○くん(原作のキャラクタ―)がいた!」と評価が大きく覆ることもあります。

 

一方で、物語やキャラクターの行動原理に説得力がなければ、見ている観客は白けてしまいます。

「原作のキャラクターにイメージの合うイケメンがやればいいんだろう」と思われがちですが、表現力や演技力もまた2.5次元ミュージカルを演じる若手俳優には必須の要素です。

 

近年の2.5次元ミュージカルはレベルが上がっているので演出や演技の面で、ただ漫画の中のキャラクターの姿で台詞を喋るだけでは物足りなくなっています。

「〇〇な性格のキャラクターが××な経験をして△△と感じたので、最後のシーンでこうなった」

という登場人物の心情の移り変わりが観客に伝わり、心を打つ必要があります。

下手な役者さんだと、クライマックスのシーンが感動的なはずなのに「なぜか心動かない」と感じることがあります。

それは、クライマックスまでの行動で何を感じて、どうして最後にそれをしようと思ったのかという部分がはっきりしないからだと思います。逆に、そうした部分がクリアに見える演技をしてくれると、説得力を感じます。

実際の人間が演じるからこそ、登場人物の心情をきちんと表現しなければなりません。

 

 

さらに、ミュージカルであれば歌やダンスが、作品によってはアクロバットな動きが要求されることもあり、若手俳優に求められるものは多くあります。

 

▼多くの若手俳優が出演するミュージカル「テニスの王子様」ダイジェスト映像

 

キャスト(俳優)のファン

 

お気に入りの若手俳優はファンの間では「推し」と呼ばれています。

推しがいる若手俳優ファンは舞台の公演情報が発表されればチケットを取り、複数都市で公演があれば東京、大阪と舞台に通います。

人によっても違いますが、全通(全公演を観劇すること)を目指す場合もあるようです。そうでなくても、推しがいれば作品に関わらず一度は見に行くという人は多いです。

 

舞台を中心に活動する若手俳優の特徴として、ファンとの距離が近いということが挙げられます。

実際に舞台を見に行けば目の前で見ることができますし、ファンとのイベントを開催している俳優さんも多くいます。

イベントではトークショーの他、隣に座って写真を撮るツーショットチェキの時間があることがほとんどです。

好きな俳優さんと一緒に写真が撮れ、直接会話ができるというのは若手俳優ならではの楽しみです。

 

 

演出家

 

舞台作品を作り上げる上で最も重要な役割を持つのが演出家です。

演出家は映画における監督と同じような役割があり、キャスト・スタッフを取りまとめます。

キャストの演技についても最終的にジャッジするのは演出家であるため、台詞の解釈や表現には演出家の色が出ます。

 

2.5次元ミュージカルは上演作品数が増えるにつれ、関わる演出家も多くなってきました。

佐々木蔵之介氏も所属していた「惑星ピスタチオ」で演出を担当していた西田シャトナー氏をはじめとして、小劇場で活躍している演出家も2.5次元ミュージカルで演出をしています。

 

惑星ピスタチオ

1989年に旗揚げされ、2000年に解散した関西で人気の劇団。メンバーの佐々木蔵之介氏は「離婚弁護士」「間宮兄弟」など数多くのドラマや映画で活躍している。同劇団の演出を担当していた西田シャトナー氏は、2.5次元ミュージカルでは「弱虫ペダル」を手がける。

▼佐々木蔵之介

▼舞台「弱虫ペダル」(画像クリックで商品詳細へ)

 

劇団「少年社中」の毛利亘宏(もうり のぶひろ)氏や「AND ENDLESS」の西田大輔(にしだ だいすけ)氏といった人気劇団の主宰を務めている演出家も2.5次元ミュージカルに参加しており、2.5次元ミュージカルで活躍した俳優がこれらの劇団の客演(他の劇団の舞台へ臨時で出演する事)を務めるケースも増えています。

 

少年社中

1998年に旗揚げされ東京を中心に活動している劇団。主宰の毛利亘宏氏は「仮面ライダーオーズ/OOO」などの特撮テレビドラマの脚本も多数手がけ、2.5次元ミュージカルは「黒執事」「薄桜鬼」に参加。

▼舞台「黒執事」(画像クリックで商品詳細へ)

AND ENDLESS

1996年に結成された東京に拠点を置く劇団。ジャニーズ以外では初となる東京グローブ座での公演を行った。主宰の西田大輔氏は「戦国BASARA」「さよならソルシエ」などの2.5次元ミュージカルを手がける。

▼舞台「戦国BASARA」(画像クリックで商品詳細へ)

 

「演出家が○○さんだから見てみよう」と演出家で2.5次元ミュージカルを選ぶ人もおり、作品でもキャストでもなく、演出家のようなスタッフで観る舞台を決める2.5次元ミュージカルファンはこれからも増えていきそうです。

 

以上、2.5次元ミュージカルの俳優・演出家についてでした。

次のページから第2章。第2章では2.5次元ミュージカルの作品を紹介していきます。次のページでは今や2.5次元ミュージカルで定番となっているスポーツものを紹介します。

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ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)とは

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20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

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『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説しています。このページでは2.5次元ミュージカルの金字塔的作品「ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)」について解説していきます。

<第1章のページ>
定義
テニミュ】(当ページ)
ブームと今
俳優

ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)とは

【基本情報】

作品名 ミュージカル『テニスの王子様』
初演 2003年4月30日(東京芸術劇場)
主人公(越前リョーマ)のキャスト(初代) 柳浩太郎・Kimeru・遠藤雄弥
ストーリー 主人公が属する青春学園テニス部が全国大会優勝を目指す
チケット チケットぴあ
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「男性俳優のみ」「スポーツ漫画原作」などのミュージカルはミュージカル『テニスの王子』が初めての事だったので手探り状態でスタートした。上演当初は観客動員数も少なかったが口コミなどで徐々に広がり人気ミュージカルへ。2018年には累計250万人を動員(参照:https://www.tennimu.com/news/d724)を記録した。

 

2.5次元ミュージカル(舞台)を語る上で欠かせない作品がミュージカル『テニスの王子様』です。

 

▼ミュージカル『テニスの王子様』(DVD)

 

ミュージカル『テニスの王子様』、略して「テニミュ」と呼ばれるこの作品は、2003年の初演以来大ヒットを続け、2.5次元ミュージカル(舞台)の金字塔的作品となりました。

 

原作は週刊少年ジャンプで連載された許斐剛(このみ たけし)氏が作者の少年マンガ「テニスの王子様」です。

主人公・越前リョーマの所属する青春学園(略して「青学」)テニス部が地区大会から関東大会、全国大会を戦い抜いていくスポーツ漫画です。

 

 

個性豊かなキャラクターや斬新な必殺技で人気を博し、原作漫画はアニメ化もされました。

少年マンガではありますが、魅力的な男性キャラクターが多い本作は女性ファンが多いことも特徴です。

 

▼漫画「テニスの王子様」1(画像クリックで商品詳細へ)

 

テニミュの魅力

 

「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)」が上演される前も漫画原作の舞台化は行われており、「美少女戦士セーラームーン」や「聖闘士星矢(せいんと せいや)」などが上演されていました。

 

▼漫画「美少女戦士セーラームーン」

聖闘士星矢

聖闘士星矢は1991年に舞台化、主演はSMAP。漫画・アニメの舞台化の流れのはじまりと言われている。

▼劇場版 聖闘士星矢

 

しかし、舞台化のムーブメントを起こすまでには至ってはいませんでした。

「テニスの王子様」の初演時は、ミュージカルに馴染みのあるファンは少なく、当初は公演期間も短く、チケットの売り上げも厳しかったと言われています。

ただ、瞬く間に評判は口コミで広がり、15周年を迎えた2018年現在までその人気は衰えていません。

 

 

「テニミュ」の魅力は漫画の好きなキャラクターが目の前にいることです。

衣装は基本的にユニフォーム、小道具はほぼラケットのみ。ピンスポットの明かりをボールに見立ててラリーをする。

そんなシンプルな演出であっても「キャラクターが目の前にいる」という強烈な体験を観客に残していきました。

 

▼舞台のダイジェスト映像

 

テニミュがブームになった理由

 

2.5次元ミュージカル(舞台)ブームの火付け役と言われる「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)」ですが、どのようにして2.5次元ミュージカルというジャンルを流行らせるに至ったのでしょうか。

それはテニミュが「原作ファンが舞台に通うという流れを作り出したところに理由がある」と言えるのではないかと思っています。

 

 

以前も漫画やアニメを題材にした2.5次元ミュージカルのような形の舞台はありました。

代表的なもので言えば前のページで述べた「ベルばら(ベルサイユのばら)」が挙げられます。これらの舞台に足を運ぶのはキャスト(役者)や劇団(宝塚歌劇団)のファンが中心でした。

テニミュ以降の2.5次元ミュージカルには「キャストのファン」だけでなく「原作のファン」も劇場に足を運ぶようになっていったのです。

 

テニミュ以降「NARUTO」や「BLEACH」といった少年ジャンプ作品の舞台化が続きます。(「テニスの王子様」は少年ジャンプ連載)

 

▼NARUTO

▼BLEACH

 

また、少年ジャンプ以外でも「弱虫ペダル」「西遊記」といった少年マンガ作品や「戦国BASARA」といったゲーム作品も舞台化されていきました。

これらの舞台には多くの原作ファンがキャラクターに出会うために、劇場に足を運びました。

 

▼弱虫ペダル

▼西遊記

▼戦国BASARA

 

このように「テニミュ」は原作ファンが舞台に通うという流れを作り出した画期的な一作なのです。

 

原作ファンからキャストファンへ

 

また原作ファンが舞台に通うという流れを作り出したのと同時に、原作ファンから2.5次元舞台に出演するキャストのファンになる人も生み出しました。

 

▼原作ファンからキャストファンになる流れ

 

「テニミュ」に出演するキャストはデビュー直後の若手俳優が多くを占めています。『「テニミュ」が初舞台』というキャスト(若手俳優)も少なくありません。

「テニミュ」はそんな若いキャストたちが原作漫画を読みこみ、舞台上でキャラクターを表現します。

 

「キャラクターに会えるという感動」の先に待っているのは、「中の人であるキャストへの愛情」です。

お世辞にも上手いとはいえなかった歌やダンスが公演を重ねるに連れてだんだん上手くなる、キャラクターがより原作のキャラクターらしくなる。

そんなキャストたちの成長に惹かれて同じ公演に何度も足を運ぶファンも珍しくありません。

 

 

「テニミュ」はキャストを交代しながら続いている作品です。

主人公の所属する青春学園のキャストは変更され、2018年10月時点で10代目となっています。

 

どんなに愛したキャストもいつかは「卒業」という形でキャスト変更を迎えてしまう。その寂しさがあるから、今必死にチケットを握りしめて通ってしまうのかもしれません。

 

2.5次元ミュージカルは2次元を忠実に再現することで人気を得てきました。

しかし、同時にそのキャラクターの先に成長し変化するキャストがいることもまた、2.5次元の魅力です。

「テニミュ」を卒業しても絶対応援するからね。そんな気持ちでまた別の2.5次元ミュージカルに行く。

 

作品のファンからキャストのファンへと変わっていった人がたくさんいたことも、「テニミュ」以後の2.5次元ミュージカルが広がった理由だと思います。

 

テニミュを観る方法

 

▼サービス名クリックorタップで公式サイトへ進めます(下記の表では『ミュージカル「テニスの王子様」の最初の作品について紹介しています。)

サービス名 購入方法
dアニメストア ・定額配信。月額400円(税抜き)で見放題。初回31日は無料で見放題
amazon ・DVD
DMM.com ・月額レンタル。月ごとに決まった数のDVD/CDをレンタルすることができる。月980円で4枚、月に1880円で8枚、月2480円の借り放題プランがある。
ダウンロード/ストリーミング
GYAO! ・レンタル。視聴期間は決まっている。

 

以上、2.5次元ミュージカルの金字塔的作品、ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)の紹介でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルのブームと今について解説をしていきます。

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

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2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か

Webon紹介目次著者
2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

『2.5次元舞台』入門はこちらから!

著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

お問い合わせはこちらから
twitter【ゆうり藍】https://twitter.com/yuriran1

 

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

このページから第1章。第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説していきます。まずは「2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か?」という【定義】について解説していきます。

<第1章のページ>
定義】(当ページ)
テニミュ
ブームと今
俳優

 

2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か

 

2.5次元ミュージカル(舞台)とはどのようなものなのでしょうか。

『2.5次元』とは「アニメやゲームの世界である2次元と現実の世界である3次元の中間」を意味します。

つまり「2.5次元ミュージカル(舞台)」とはアニメやゲーム、漫画といった2次元の作品が原作となり舞台化(3次元化)された作品のことです。

 

※当初2.5次元の舞台作品はミュージカル形式で演じられる事が多かった為「2.5次元ミュージカル」と呼ばれるのが一般的です。しかし現在ではミュージカル以外の2.5次元作品も多数制作されているので当Webonでは「2.5次元ミュージカル=2.5次元舞台」として解説をしています。

 

しかし、この定義だと2.5次元ミュージカルと呼ばれてもいいはずなのに呼ばれていない作品が出てきてしまいます。

このようにファンの間から生まれた「2.5次元」という言葉を明確に定義することは難しいと言わざるを得ません。

定義の難しい「2.5次元」ですが、ここからは「舞台以外の作品」「ベルサイユのばら」などを紹介する事で様々な角度から「2.5次元とはなにか」ということを解き明かしていきたいと思います。

 

映画・ドラマについて

▲2.5次元ミュージカル(舞台)「刀剣乱舞」のダイジェスト映像

 

先ほども述べましたが2.5次元ミュージカル(舞台)の一番シンプルな定義は

アニメやゲーム、漫画といった2次元の作品が原作となり舞台化(3次元化)された作品

です。

しかし、これだけだと実は当てはまらないものも出てきてしまいます。

その為さらに細かく定義すると

「キャラクターに確固としたビジュアルイメージが存在し、それを舞台上で再現しようとしたもの」

が2.5次元ミュージカル(舞台)と呼ばれます。

 

 

つまり、

「ビジュアルイメージの再現を目指さない場合」

「小説原作などはっきりとしたビジュアルイメージのない作品の舞台化」

では2.5次元ミュージカル(舞台)と呼ばれないことがほとんどです。

 

また、映画やドラマについても2.5次元と呼ばれないことがほとんどですので『2.5次元』自体「舞台」で多く使われる言葉なのです。

映画やドラマが『2.5次元』と呼ばれないことの理由は映画やドラマの実写化が原作ファンである、いわゆる「オタク層」よりも役者のファンといった「ライト層」向けに作られていることが原因と考えられます。

ビジュアルイメージの無視や原作の大幅な改変は2次元を無理矢理3次元に落とし込んだだけで2.5次元ではないというわけです。

 

 

ただし、昨今では舞台版のキャストでドラマが制作された「弱虫ペダル」や映画公開が決まっている「刀剣乱舞」など、実写映画やドラマにも2.5次元の作法が広がりつつあります。

 

弱虫ペダル

週刊少年チャンピオンにて連載されており発行部数1700万部以上の人気漫画。オタクの高校生である小野田坂道が、自転車競技の世界で才能を開花していく話。BSスカパーで2016年より実写ドラマが放送された。

刀剣乱舞

DMMゲームスとニトロプラス(ゲームメーカー)が共同製作したPC版ブラウザゲーム。「刀剣男士」として擬人化された名だたる名刀を育成するゲーム。2015年にミュージカル、2016年に舞台化された。映画は2019年に公開。

 

【筆者コラム】映画やドラマでも2.5次元と呼ばれるものがある?

私の認識ですが、映画やドラマでは2.5次元と呼ばれるものは基本的にはありません。

ただ、CSで放送されたドラマ「弱虫ペダル」はほとんどのキャストが舞台版キャストからの続投で、舞台でファンになった層を取り込んでいます。この作品については2.5次元というジャンルに含めてよいと思います。

また、2017年に放送された「男水!」もテレビドラマが先行していますが、始めから舞台の上演が告知されており、出演者も2.5次元ミュージカル(舞台)で活躍したキャストが揃っていました。

▼舞台「男水」

こうした舞台作品からの派生作であるとか舞台作品を前提にしたドラマについては2.5次元と呼ばれることはありますが例外的です。 

 

宝塚歌劇団「ベルサイユのばら」

 

漫画の舞台化というと有名な作品に「ベルサイユのばら」があります。

1972年から1973年にかけてマーガレットで連載された本作品は、宝塚歌劇団によってミュージカル化され、1974年の初演以降現在も人気を博し続けています。

「ベルばら」と聞くとこの宝塚版のイメージを浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

「ベルサイユのばら」のあらすじ

男装した麗人(美人な女性)オスカルと、フランス王妃マリー・アントワネットらの生涯が描かれる。フランス革命が起きる少し前から革命初期のベルサイユが舞台。宝塚歌劇を代表する演目となっている。

▼宝塚版ベルサイユのばら(画像クリックで商品詳細へ)

 

宝塚による「ベルばら」は『少女漫画の世界を忠実に再現している』という意味で2.5次元ミュージカル(舞台)の定義にぴったりとはまるように見えます。

 

しかし「2.5次元」という単語が生まれたのは2000年代以降と言われ、それ以前から上演されてきた「ベルばら」が「2.5次元ミュージカル(舞台)」と呼ばれることはあまりありません。

また、アニメや漫画の舞台化自体は以前から散発的に行われてきましたが、大きなムーブメントになったのは2003年から上演がスタートしたミュージカル「テニスの王子様」以降です。

 

テニスの王子様

1999年~2008年週刊少年ジャンプにて連絡された少年漫画。中学の名門テニス部が全国制覇を目指す話。それぞれのキャラクターが必殺技を持っており、物語が進むにつれて常人離れした必殺技が登場するのもこの漫画の持ち味。

▼ミュージカル「テニスの王子様」(画像クリックで商品詳細へ)

 

このミュージカル「テニスの王子様」のヒットやそれ以降の舞台化ブームと同時に2.5次元という単語はファンの間で広まるようになりました。

つまり、2.5次元舞台の要素を持った舞台作品は以前から存在していたものの、2.5次元舞台というカテゴリで語られるようになるのはここ10年ということです。

 

 

さらに現在の2.5次元ミュージカルは男性俳優がキャストとして出演するものがほとんどなので2.5次元ミュージカルと言えば男性キャスト中心の舞台、というイメージがあるのが一般的です。

 

結論

 

「2.5次元」という単語がファンの間で生まれ、広まっていったという経緯から、2.5次元を正確に定義することは難しいと思います。

その中で「2.5次元舞台」をあえて定義するとすれば、下記のような特徴をもった舞台の総称だと言えます。

 

  • アニメ、漫画、ゲームなどのビジュアルイメージがはっきりとある作品の舞台化であること
  • 原作のビジュアルイメージを忠実に再現しようとしていること
  • 特定の劇団による上演ではないこと
  • 男性キャストを中心とした作品であること
  • 2000年代以降の上演作品であること
※2018年11月時点の筆者の見解

 

また、一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会という団体があり、この協会が協力している作品については、2.5次元舞台と考えて良いでしょう。

 

▼一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会公式ホームページ リンク


(引用元:https://www.j25musical.jp/)

<「2.5次元ミュージカル協会」協力作品例>
ミュージカル「忍たま乱太郎」、舞台「銀河英雄伝説」、「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ」、舞台「K」、舞台「黒子のバスケ」、舞台「刀剣乱舞」など

 

このように、ややふわっとした概念の「2.5次元」ですが、第3章では個別の作品についても紹介していきますので、実際の作品に触れながら体感していただければと思います。

 

以上、「2.5次元ミュージカルとは」でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルを語る上で欠かせない2.5次元ミュージカルの金字塔的作品「ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)」を解説をしていきます。

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

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はじめに ~2.5次元ミュージカル(舞台)の魅力~

Webon紹介目次著者
2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

『2.5次元舞台』入門はこちらから!

著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

お問い合わせはこちらから
twitter【ゆうり藍】https://twitter.com/yuriran1

 

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

2.5次元ミュージカル(舞台)とは

 

「2.5次元ミュージカル(舞台)」とはアニメやゲームなどのいわゆる「2次元」と呼ばれる媒体を原作に、演劇作品として上演される一連の作品を指します。

 

「アニメやゲームといったバーチャルな2次元」と、「演劇というリアルな世界の3次元」の間という意味で「2.5次元」と呼ばれ始めました。

 

 

この「2.5次元ミュージカル(舞台)」は今、一部の若い女性を中心にヒットしている演劇のジャンルです。

 

NHKのニュース番組「おはよう日本」(2017年2月3日放送)で取り上げられたり、週刊「東洋経済」(2017年4月1日号)で特集が組まれたりと、その存在は広く知られ始めています。

 

▼2.5次元舞台特集が組まれた週刊「東洋経済」(画像クリックで商品詳細へ)

2.5次元ミュージカルの魅力

 

私と2.5次元ミュージカルとの出会いは、好きなアニメが舞台化したところから始まりました。

2014年の夏に上演された舞台「K」という作品です。

 

「K」

「K」は2012年10月からTBSなどで放送されていたオリジナルアニメ。現実とは異なる歴史を歩んだ日本を舞台に、特殊な能力を持った7人の王の確執とそこに巻き込まれていく少年の運命が描かれた作品。イケメンキャラが数多く登場する。

▼AmazonPrimeで見放題です(期間によって見放題対象外の場合があります)

 

当時すでに2.5次元ミュージカルは1ジャンルを築いていました。

しかし、私の周囲でも2.5次元ミュージカルを初めて観るという原作ファンも多く、不安の声もありました。

私も例外ではありません。

 

そして迎えた初観劇の日。入手困難となっていたチケットを握りしめて、初めて見にいった2.5次元ミュージカルは、知らない世界を見せてくれました。

アニメで見ていたキャラクターがそこにいて、物語がそこにある。

 

「アニメで見られるものをわざわざ演劇で観る意味があるのか」

と観る前は思っていました。

 

けれども、目の前で演じられた「K」という作品は、私に新しい解釈や見方を与えてくれました。

そしてなにより、生きている人間が演じる限り、同じ公演は一度としてない。

 

その舞台ならではの「一回きり」の特別な体験は、強く胸に残りました。

以来、私は2.5次元ミュージカルをこよなく愛し、舞台に通っています。

 

▼舞台「K」のダイジェスト映像

 

最近では「漫画のアニメ化」や逆に「アニメが漫画化」されるといった形で物語が複数のメディア展開されるのはよくあることになっています。

しかし、その中でも舞台化が一番作り手の熱量を大きく感じる事ができると思います

 

それは先程述べたように「同じ公演は二度とない」というところであったり、「目の前で演じられる」という特別な状況ゆえではないかと思います。

つまりこの「凝縮された熱量」とも言えるものが感じられるのが、2.5次元舞台の魅力だと思うのです。

 

触れてほしい2.5次元の世界

 

2.5次元ミュージカル(舞台)は過去から今に至るまで、賛否両論にさらされてきました。

 

2次元の世界を役者が演じるということについて

「イメージが違う」

「コスプレみたい」

といった意見もあります。

 

▼衣装のイメージ

 

しかしながら、2次元の世界を忠実に再現しようという試みや、1つの演劇作品としての真摯な作品作りは少しずつ評価され、2.5次元ミュージカルの愛好家は年々増えています。

(また、ネガティブな意見を受けて作り手側の「本気で面白いものを作ってやろう」「面白かったと言わせてやろう」という気概を感じるような質の良い作品がその中で育っていったところも2.5次元ミュージカルの魅力であり、私の好きな部分であります。 )

 

とはいえ、アニメやゲームが好きな女性をメインターゲットとして制作されてきた2.5次元ミュージカル。

他の舞台ファンからは色物扱いをされることはまだまだありますし、「そもそも興味がない」という人も男性を中心に多くいます。

 

しかし、私は2.5次元ミュージカルは一度観ていただければ好きになる人は増えていくのではないかと考えています。

 

他の舞台ファンの方は、最近では小劇団で活躍していた演出家が2.5次元ミュージカルの演出にかかわる例が増えており、こうした共通点をきっかけに好きになってもらえるのではないかと思います。

また、男性については2章でも取り上げますが、最近では乃木坂48のようなアイドルを起用した女性キャスト中心の2.5次元ミュージカルも増えており、こういった作品から好きになる人が増えるのではないかと考えています。

 

このWebonでは2.5次元ミュージカルを観る方法やおすすめの作品についても紹介していきます。

2.5次元舞台に触れるきっかけとなれば幸いです。

 

次のページから第1章。第1章では2.5次元ミュージカルをより楽しむための歴史や俳優さんの事について紹介していきます。まずは「2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か」について深く知っていただければと思います。

 

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