2.5次元ミュージカルの俳優・演出家

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2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

『2.5次元舞台』入門はこちらから!

著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

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『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説しています。このページでは2.5次元ミュージカルの俳優や演出家について解説していきます。

<第1章のページ>
定義
テニミュ
ブームと今
俳優】(当ページ)

 

俳優(キャスト)

「テニミュ」の初演から15年。(※テニミュ=テニスの王子様のミュージカルの略)

数多くの2.5次元ミュージカル(舞台)が上演されるようになりました。

当初は原作ファンをターゲットにしてきた2.5次元ミュージカルですが、徐々に2.5次元ミュージカルに出演する舞台俳優のファンも増えてきました。

 

好きな作品が舞台化されるのをきっかけに初めて劇場に足を運び、そこで出演していた俳優を好きになる。

そして、今度はその俳優が出演している別の舞台を見に行く。

そういった作品ファンからキャストファン(俳優ファン)へと移行し、さらに別の舞台へと足を運ぶという流れができてきています。

 

 

キャスト(俳優)に求められるもの

 

2.5次元ミュージカル(舞台)に出演するのは10代後半~30代の男性俳優が中心です。

2.5次元ミュージカルが初舞台という俳優も多く、作品によっては俳優の平均年齢が20代前半ということも珍しくありません。

これは2.5次元ミュージカル作品のキャラクターが10代の学生が多いということもあるでしょう。こうした若手俳優たちが中心となって2.5次元ミュージカルは作られています。

 

 

2.5次元ミュージカルにおいてキャストに求められるのは

「原作キャラクターの再現性」

「3次元化したときの説得力」

です。

 

 

再現性としては、衣装を着てメイクを施した時のビジュアルだけではなく、立ち居振る舞いや声色も重視されます。

さらに、ちょっとしたアドリブでの言動がどれだけ原作に沿っているかという部分も原作ファンにとっては重要です。

公演前に原作ファンから「ビジュアルがイメージと違う」という厳しい意見があっても仕草や表情で「○○くん(原作のキャラクタ―)がいた!」と評価が大きく覆ることもあります。

 

一方で、物語やキャラクターの行動原理に説得力がなければ、見ている観客は白けてしまいます。

「原作のキャラクターにイメージの合うイケメンがやればいいんだろう」と思われがちですが、表現力や演技力もまた2.5次元ミュージカルを演じる若手俳優には必須の要素です。

 

近年の2.5次元ミュージカルはレベルが上がっているので演出や演技の面で、ただ漫画の中のキャラクターの姿で台詞を喋るだけでは物足りなくなっています。

「〇〇な性格のキャラクターが××な経験をして△△と感じたので、最後のシーンでこうなった」

という登場人物の心情の移り変わりが観客に伝わり、心を打つ必要があります。

下手な役者さんだと、クライマックスのシーンが感動的なはずなのに「なぜか心動かない」と感じることがあります。

それは、クライマックスまでの行動で何を感じて、どうして最後にそれをしようと思ったのかという部分がはっきりしないからだと思います。逆に、そうした部分がクリアに見える演技をしてくれると、説得力を感じます。

実際の人間が演じるからこそ、登場人物の心情をきちんと表現しなければなりません。

 

 

さらに、ミュージカルであれば歌やダンスが、作品によってはアクロバットな動きが要求されることもあり、若手俳優に求められるものは多くあります。

 

▼多くの若手俳優が出演するミュージカル「テニスの王子様」ダイジェスト映像

 

キャスト(俳優)のファン

 

お気に入りの若手俳優はファンの間では「推し」と呼ばれています。

推しがいる若手俳優ファンは舞台の公演情報が発表されればチケットを取り、複数都市で公演があれば東京、大阪と舞台に通います。

人によっても違いますが、全通(全公演を観劇すること)を目指す場合もあるようです。そうでなくても、推しがいれば作品に関わらず一度は見に行くという人は多いです。

 

舞台を中心に活動する若手俳優の特徴として、ファンとの距離が近いということが挙げられます。

実際に舞台を見に行けば目の前で見ることができますし、ファンとのイベントを開催している俳優さんも多くいます。

イベントではトークショーの他、隣に座って写真を撮るツーショットチェキの時間があることがほとんどです。

好きな俳優さんと一緒に写真が撮れ、直接会話ができるというのは若手俳優ならではの楽しみです。

 

 

演出家

 

舞台作品を作り上げる上で最も重要な役割を持つのが演出家です。

演出家は映画における監督と同じような役割があり、キャスト・スタッフを取りまとめます。

キャストの演技についても最終的にジャッジするのは演出家であるため、台詞の解釈や表現には演出家の色が出ます。

 

2.5次元ミュージカルは上演作品数が増えるにつれ、関わる演出家も多くなってきました。

佐々木蔵之介氏も所属していた「惑星ピスタチオ」で演出を担当していた西田シャトナー氏をはじめとして、小劇場で活躍している演出家も2.5次元ミュージカルで演出をしています。

 

惑星ピスタチオ

1989年に旗揚げされ、2000年に解散した関西で人気の劇団。メンバーの佐々木蔵之介氏は「離婚弁護士」「間宮兄弟」など数多くのドラマや映画で活躍している。同劇団の演出を担当していた西田シャトナー氏は、2.5次元ミュージカルでは「弱虫ペダル」を手がける。

▼佐々木蔵之介

▼舞台「弱虫ペダル」(画像クリックで商品詳細へ)

 

劇団「少年社中」の毛利亘宏(もうり のぶひろ)氏や「AND ENDLESS」の西田大輔(にしだ だいすけ)氏といった人気劇団の主宰を務めている演出家も2.5次元ミュージカルに参加しており、2.5次元ミュージカルで活躍した俳優がこれらの劇団の客演(他の劇団の舞台へ臨時で出演する事)を務めるケースも増えています。

 

少年社中

1998年に旗揚げされ東京を中心に活動している劇団。主宰の毛利亘宏氏は「仮面ライダーオーズ/OOO」などの特撮テレビドラマの脚本も多数手がけ、2.5次元ミュージカルは「黒執事」「薄桜鬼」に参加。

▼舞台「黒執事」(画像クリックで商品詳細へ)

AND ENDLESS

1996年に結成された東京に拠点を置く劇団。ジャニーズ以外では初となる東京グローブ座での公演を行った。主宰の西田大輔氏は「戦国BASARA」「さよならソルシエ」などの2.5次元ミュージカルを手がける。

▼舞台「戦国BASARA」(画像クリックで商品詳細へ)

 

「演出家が○○さんだから見てみよう」と演出家で2.5次元ミュージカルを選ぶ人もおり、作品でもキャストでもなく、演出家のようなスタッフで観る舞台を決める2.5次元ミュージカルファンはこれからも増えていきそうです。

 

以上、2.5次元ミュージカルの俳優・演出家についてでした。

次のページから第2章。第2章では2.5次元ミュージカルの作品を紹介していきます。次のページでは今や2.5次元ミュージカルで定番となっているスポーツものを紹介します。

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ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)とは

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第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説しています。このページでは2.5次元ミュージカルの金字塔的作品「ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)」について解説していきます。

<第1章のページ>
定義
テニミュ】(当ページ)
ブームと今
俳優

ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)とは

【基本情報】

作品名 ミュージカル『テニスの王子様』
初演 2003年4月30日(東京芸術劇場)
主人公(越前リョーマ)のキャスト(初代) 柳浩太郎・Kimeru・遠藤雄弥
ストーリー 主人公が属する青春学園テニス部が全国大会優勝を目指す
チケット チケットぴあ
動画配信サービス U-NEXT
DVD・Blu-ray amazonで探す  楽天で探す
公式サイト https://www.tennimu.com/
「男性俳優のみ」「スポーツ漫画原作」などのミュージカルはミュージカル『テニスの王子』が初めての事だったので手探り状態でスタートした。上演当初は観客動員数も少なかったが口コミなどで徐々に広がり人気ミュージカルへ。2018年には累計250万人を動員(参照:https://www.tennimu.com/news/d724)を記録した。

 

2.5次元ミュージカル(舞台)を語る上で欠かせない作品がミュージカル『テニスの王子様』です。

 

▼ミュージカル『テニスの王子様』(DVD)

 

ミュージカル『テニスの王子様』、略して「テニミュ」と呼ばれるこの作品は、2003年の初演以来大ヒットを続け、2.5次元ミュージカル(舞台)の金字塔的作品となりました。

 

原作は週刊少年ジャンプで連載された許斐剛(このみ たけし)氏が作者の少年マンガ「テニスの王子様」です。

主人公・越前リョーマの所属する青春学園(略して「青学」)テニス部が地区大会から関東大会、全国大会を戦い抜いていくスポーツ漫画です。

 

 

個性豊かなキャラクターや斬新な必殺技で人気を博し、原作漫画はアニメ化もされました。

少年マンガではありますが、魅力的な男性キャラクターが多い本作は女性ファンが多いことも特徴です。

 

▼漫画「テニスの王子様」1(画像クリックで商品詳細へ)

 

テニミュの魅力

 

「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)」が上演される前も漫画原作の舞台化は行われており、「美少女戦士セーラームーン」や「聖闘士星矢(せいんと せいや)」などが上演されていました。

 

▼漫画「美少女戦士セーラームーン」

聖闘士星矢

聖闘士星矢は1991年に舞台化、主演はSMAP。漫画・アニメの舞台化の流れのはじまりと言われている。

▼劇場版 聖闘士星矢

 

しかし、舞台化のムーブメントを起こすまでには至ってはいませんでした。

「テニスの王子様」の初演時は、ミュージカルに馴染みのあるファンは少なく、当初は公演期間も短く、チケットの売り上げも厳しかったと言われています。

ただ、瞬く間に評判は口コミで広がり、15周年を迎えた2018年現在までその人気は衰えていません。

 

 

「テニミュ」の魅力は漫画の好きなキャラクターが目の前にいることです。

衣装は基本的にユニフォーム、小道具はほぼラケットのみ。ピンスポットの明かりをボールに見立ててラリーをする。

そんなシンプルな演出であっても「キャラクターが目の前にいる」という強烈な体験を観客に残していきました。

 

▼舞台のダイジェスト映像

 

テニミュがブームになった理由

 

2.5次元ミュージカル(舞台)ブームの火付け役と言われる「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)」ですが、どのようにして2.5次元ミュージカルというジャンルを流行らせるに至ったのでしょうか。

それはテニミュが「原作ファンが舞台に通うという流れを作り出したところに理由がある」と言えるのではないかと思っています。

 

 

以前も漫画やアニメを題材にした2.5次元ミュージカルのような形の舞台はありました。

代表的なもので言えば前のページで述べた「ベルばら(ベルサイユのばら)」が挙げられます。これらの舞台に足を運ぶのはキャスト(役者)や劇団(宝塚歌劇団)のファンが中心でした。

テニミュ以降の2.5次元ミュージカルには「キャストのファン」だけでなく「原作のファン」も劇場に足を運ぶようになっていったのです。

 

テニミュ以降「NARUTO」や「BLEACH」といった少年ジャンプ作品の舞台化が続きます。(「テニスの王子様」は少年ジャンプ連載)

 

▼NARUTO

▼BLEACH

 

また、少年ジャンプ以外でも「弱虫ペダル」「西遊記」といった少年マンガ作品や「戦国BASARA」といったゲーム作品も舞台化されていきました。

これらの舞台には多くの原作ファンがキャラクターに出会うために、劇場に足を運びました。

 

▼弱虫ペダル

▼西遊記

▼戦国BASARA

 

このように「テニミュ」は原作ファンが舞台に通うという流れを作り出した画期的な一作なのです。

 

原作ファンからキャストファンへ

 

また原作ファンが舞台に通うという流れを作り出したのと同時に、原作ファンから2.5次元舞台に出演するキャストのファンになる人も生み出しました。

 

▼原作ファンからキャストファンになる流れ

 

「テニミュ」に出演するキャストはデビュー直後の若手俳優が多くを占めています。『「テニミュ」が初舞台』というキャスト(若手俳優)も少なくありません。

「テニミュ」はそんな若いキャストたちが原作漫画を読みこみ、舞台上でキャラクターを表現します。

 

「キャラクターに会えるという感動」の先に待っているのは、「中の人であるキャストへの愛情」です。

お世辞にも上手いとはいえなかった歌やダンスが公演を重ねるに連れてだんだん上手くなる、キャラクターがより原作のキャラクターらしくなる。

そんなキャストたちの成長に惹かれて同じ公演に何度も足を運ぶファンも珍しくありません。

 

 

「テニミュ」はキャストを交代しながら続いている作品です。

主人公の所属する青春学園のキャストは変更され、2018年10月時点で10代目となっています。

 

どんなに愛したキャストもいつかは「卒業」という形でキャスト変更を迎えてしまう。その寂しさがあるから、今必死にチケットを握りしめて通ってしまうのかもしれません。

 

2.5次元ミュージカルは2次元を忠実に再現することで人気を得てきました。

しかし、同時にそのキャラクターの先に成長し変化するキャストがいることもまた、2.5次元の魅力です。

「テニミュ」を卒業しても絶対応援するからね。そんな気持ちでまた別の2.5次元ミュージカルに行く。

 

作品のファンからキャストのファンへと変わっていった人がたくさんいたことも、「テニミュ」以後の2.5次元ミュージカルが広がった理由だと思います。

 

テニミュを観る方法

 

▼サービス名クリックorタップで公式サイトへ進めます(下記の表では『ミュージカル「テニスの王子様」の最初の作品について紹介しています。)

サービス名 購入方法
dアニメストア ・定額配信。月額400円(税抜き)で見放題。初回31日は無料で見放題
amazon ・DVD
DMM.com ・月額レンタル。月ごとに決まった数のDVD/CDをレンタルすることができる。月980円で4枚、月に1880円で8枚、月2480円の借り放題プランがある。
ダウンロード/ストリーミング
GYAO! ・レンタル。視聴期間は決まっている。

 

以上、2.5次元ミュージカルの金字塔的作品、ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)の紹介でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルのブームと今について解説をしていきます。

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

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2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か

Webon紹介目次著者
2.5次元舞台はアニメやゲームを舞台化した作品であり、近年ブームが起きています。その理由や作品を知ればきっと劇場に足を運びたくなることでしょう。

『2.5次元舞台』入門はこちらから!

著者:ゆうり藍

20代後半女性2.5次元舞台を中心に観劇が大好きなフリーライター。多い時で年間50公演以上観ることも。好きな作品は「ミュージカル テニスの王子様」「刀剣乱舞」「TRUMP」シリーズ「破壊ランナー」など。

お問い合わせはこちらから
twitter【ゆうり藍】https://twitter.com/yuriran1

 

『2.5次元ミュージカル入門』目次へ  (全14ページ)

 

このページから第1章。第1章では2.5次元ミュージカル(舞台)をより楽しむために4ページにわけて基礎知識を解説していきます。まずは「2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か?」という【定義】について解説していきます。

<第1章のページ>
定義】(当ページ)
テニミュ
ブームと今
俳優

 

2.5次元ミュージカル(舞台)とは何か

 

2.5次元ミュージカル(舞台)とはどのようなものなのでしょうか。

『2.5次元』とは「アニメやゲームの世界である2次元と現実の世界である3次元の中間」を意味します。

つまり「2.5次元ミュージカル(舞台)」とはアニメやゲーム、漫画といった2次元の作品が原作となり舞台化(3次元化)された作品のことです。

 

※当初2.5次元の舞台作品はミュージカル形式で演じられる事が多かった為「2.5次元ミュージカル」と呼ばれるのが一般的です。しかし現在ではミュージカル以外の2.5次元作品も多数制作されているので当Webonでは「2.5次元ミュージカル=2.5次元舞台」として解説をしています。

 

しかし、この定義だと2.5次元ミュージカルと呼ばれてもいいはずなのに呼ばれていない作品が出てきてしまいます。

このようにファンの間から生まれた「2.5次元」という言葉を明確に定義することは難しいと言わざるを得ません。

定義の難しい「2.5次元」ですが、ここからは「舞台以外の作品」「ベルサイユのばら」などを紹介する事で様々な角度から「2.5次元とはなにか」ということを解き明かしていきたいと思います。

 

映画・ドラマについて

▲2.5次元ミュージカル(舞台)「刀剣乱舞」のダイジェスト映像

 

先ほども述べましたが2.5次元ミュージカル(舞台)の一番シンプルな定義は

アニメやゲーム、漫画といった2次元の作品が原作となり舞台化(3次元化)された作品

です。

しかし、これだけだと実は当てはまらないものも出てきてしまいます。

その為さらに細かく定義すると

「キャラクターに確固としたビジュアルイメージが存在し、それを舞台上で再現しようとしたもの」

が2.5次元ミュージカル(舞台)と呼ばれます。

 

 

つまり、

「ビジュアルイメージの再現を目指さない場合」

「小説原作などはっきりとしたビジュアルイメージのない作品の舞台化」

では2.5次元ミュージカル(舞台)と呼ばれないことがほとんどです。

 

また、映画やドラマについても2.5次元と呼ばれないことがほとんどですので『2.5次元』自体「舞台」で多く使われる言葉なのです。

映画やドラマが『2.5次元』と呼ばれないことの理由は映画やドラマの実写化が原作ファンである、いわゆる「オタク層」よりも役者のファンといった「ライト層」向けに作られていることが原因と考えられます。

ビジュアルイメージの無視や原作の大幅な改変は2次元を無理矢理3次元に落とし込んだだけで2.5次元ではないというわけです。

 

 

ただし、昨今では舞台版のキャストでドラマが制作された「弱虫ペダル」や映画公開が決まっている「刀剣乱舞」など、実写映画やドラマにも2.5次元の作法が広がりつつあります。

 

弱虫ペダル

週刊少年チャンピオンにて連載されており発行部数1700万部以上の人気漫画。オタクの高校生である小野田坂道が、自転車競技の世界で才能を開花していく話。BSスカパーで2016年より実写ドラマが放送された。

刀剣乱舞

DMMゲームスとニトロプラス(ゲームメーカー)が共同製作したPC版ブラウザゲーム。「刀剣男士」として擬人化された名だたる名刀を育成するゲーム。2015年にミュージカル、2016年に舞台化された。映画は2019年に公開。

 

【筆者コラム】映画やドラマでも2.5次元と呼ばれるものがある?

私の認識ですが、映画やドラマでは2.5次元と呼ばれるものは基本的にはありません。

ただ、CSで放送されたドラマ「弱虫ペダル」はほとんどのキャストが舞台版キャストからの続投で、舞台でファンになった層を取り込んでいます。この作品については2.5次元というジャンルに含めてよいと思います。

また、2017年に放送された「男水!」もテレビドラマが先行していますが、始めから舞台の上演が告知されており、出演者も2.5次元ミュージカル(舞台)で活躍したキャストが揃っていました。

▼舞台「男水」

こうした舞台作品からの派生作であるとか舞台作品を前提にしたドラマについては2.5次元と呼ばれることはありますが例外的です。 

 

宝塚歌劇団「ベルサイユのばら」

 

漫画の舞台化というと有名な作品に「ベルサイユのばら」があります。

1972年から1973年にかけてマーガレットで連載された本作品は、宝塚歌劇団によってミュージカル化され、1974年の初演以降現在も人気を博し続けています。

「ベルばら」と聞くとこの宝塚版のイメージを浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

「ベルサイユのばら」のあらすじ

男装した麗人(美人な女性)オスカルと、フランス王妃マリー・アントワネットらの生涯が描かれる。フランス革命が起きる少し前から革命初期のベルサイユが舞台。宝塚歌劇を代表する演目となっている。

▼宝塚版ベルサイユのばら(画像クリックで商品詳細へ)

 

宝塚による「ベルばら」は『少女漫画の世界を忠実に再現している』という意味で2.5次元ミュージカル(舞台)の定義にぴったりとはまるように見えます。

 

しかし「2.5次元」という単語が生まれたのは2000年代以降と言われ、それ以前から上演されてきた「ベルばら」が「2.5次元ミュージカル(舞台)」と呼ばれることはあまりありません。

また、アニメや漫画の舞台化自体は以前から散発的に行われてきましたが、大きなムーブメントになったのは2003年から上演がスタートしたミュージカル「テニスの王子様」以降です。

 

テニスの王子様

1999年~2008年週刊少年ジャンプにて連絡された少年漫画。中学の名門テニス部が全国制覇を目指す話。それぞれのキャラクターが必殺技を持っており、物語が進むにつれて常人離れした必殺技が登場するのもこの漫画の持ち味。

▼ミュージカル「テニスの王子様」(画像クリックで商品詳細へ)

 

このミュージカル「テニスの王子様」のヒットやそれ以降の舞台化ブームと同時に2.5次元という単語はファンの間で広まるようになりました。

つまり、2.5次元舞台の要素を持った舞台作品は以前から存在していたものの、2.5次元舞台というカテゴリで語られるようになるのはここ10年ということです。

 

 

さらに現在の2.5次元ミュージカルは男性俳優がキャストとして出演するものがほとんどなので2.5次元ミュージカルと言えば男性キャスト中心の舞台、というイメージがあるのが一般的です。

 

結論

 

「2.5次元」という単語がファンの間で生まれ、広まっていったという経緯から、2.5次元を正確に定義することは難しいと思います。

その中で「2.5次元舞台」をあえて定義するとすれば、下記のような特徴をもった舞台の総称だと言えます。

 

  • アニメ、漫画、ゲームなどのビジュアルイメージがはっきりとある作品の舞台化であること
  • 原作のビジュアルイメージを忠実に再現しようとしていること
  • 特定の劇団による上演ではないこと
  • 男性キャストを中心とした作品であること
  • 2000年代以降の上演作品であること
※2018年11月時点の筆者の見解

 

また、一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会という団体があり、この協会が協力している作品については、2.5次元舞台と考えて良いでしょう。

 

▼一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会公式ホームページ リンク


(引用元:https://www.j25musical.jp/)

<「2.5次元ミュージカル協会」協力作品例>
ミュージカル「忍たま乱太郎」、舞台「銀河英雄伝説」、「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ」、舞台「K」、舞台「黒子のバスケ」、舞台「刀剣乱舞」など

 

このように、ややふわっとした概念の「2.5次元」ですが、第3章では個別の作品についても紹介していきますので、実際の作品に触れながら体感していただければと思います。

 

以上、「2.5次元ミュージカルとは」でした。

次のページでは2.5次元ミュージカルを語る上で欠かせない2.5次元ミュージカルの金字塔的作品「ミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)」を解説をしていきます。

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