東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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『東映実録映画入門』目次へ (全21ページ)
ヤクザ映画の歴史を通じて、東映実録映画の誕生の経緯について解説いたします。
ヤクザ映画の歴史は大きく3つに分けることができます。「時代劇の延長として作られていた時代」「任侠映画時代」「東映実録映画時代」です。
このページでは、1998年に極妻シリーズが完結するまでのヤクザ映画の歴史をお伝えさせていただきます。
初期のヤクザ映画
▼ヤクザ映画の歴史、簡易年表
ヤクザ映画は当初、時代劇の延長線上にあるものとして製作されました。
時代劇の名作として世界中で高い人気を誇る黒澤明監督の映画「用心棒」が、ヤクザの抗争を描いていることからも、その萌芽(ほうが)が見て取れます。
1950年代に隆盛を誇った時代劇は1961年に公開された「用心棒」と翌年に公開されたその続編「椿三十郎」のヒットを最後として斜陽の一途をたどり、時代劇が大きな柱となっていた東映は、時代劇に代わる主力商品の発案を余儀なくされました。
任侠映画の台頭
そんな折に製作された作品が「人生劇場 飛車角」です。
▼人生劇場 飛車角(画像クリックで商品詳細へ)
「人生劇場 飛車角」は小説家・尾﨑士郎氏の自伝小説を映画化した人気シリーズ「人生劇場」に登場する侠客(きょうかく)を主人公に据えたスピンオフ作品で、鶴田浩二(上記画像、上半身入れ墨の男性)氏を主演に起用して大きなヒットを記録しました。
「人生劇場 飛車角」のヒットに活路を見出した東映はその後も侠客の生き様を描いた映画を量産し続け、新たな一時代を築きます。
これらの作品群は「任侠映画」と呼ばれ、鶴田浩二や高倉健といったスター俳優を輩出しました。
東映実録映画の誕生
しかし盛者必衰の例に漏れず、1970年代に差しかかると任侠映画の人気にも陰りが見えはじめます。
そこで東映は当時大ヒットを記録していたマフィア映画の名作「ゴッドファーザー」の東映版を製作すべく、任侠映画の脚本に多く携わっていた看板脚本家・笠原和夫(かさはら かずお)氏に、広島抗争を題材にとった作品の脚本を依頼しました。
笠原氏が依頼を受けた1972年には事件関係者の多くが存命であったことから、不要なトラブルを避けるため当時週刊誌に連載中だったルポルタージュを原作に「添え物映画」として製作する予定でしたが、原作だけでは脚本を書けないと判断した笠原氏は事件の当事者へ取材をおこなうべく広島に飛びます。
「仁義なき戦い」と題されたそのルポルタージュは、広島抗争の当事者・美能幸三氏(=ヤクザ。広島抗争の中心人物の一人)が獄中で記した手記を基に、元新聞記者の経歴をもつ作家・飯干晃一(いいぼし こういち)氏が事件の推移をまとめたものでした。
笠原氏は単身で美能幸三氏への取材を敢行し、広島抗争にまつわるエピソードを七時間にわたって聞き取りました。
笠原氏の記した著書によれば、映画には使わないという条件で話を聞いたにもかかわらず、書き上げた脚本を美能氏に見せると、独自に脚色を加えた部分を除いて快く了承いただいたそうです。
美能氏の話を参考に笠原氏が書き上げた脚本は、原案となったルポルタージュと同じタイトル「仁義なき戦い」で映画化され、ヤクザ映画として初めて朝日新聞の映画評に取り上げられ、東映としては久しぶりの大ヒットを記録します。
「仁義なき戦い」のヒットを確信していた東映は一作目の撮影中に続編の製作を決定し、わずか一年半の間にシリーズ五部作が公開されました。
時代劇の延長線上にあった任侠映画では侠客の生き様を美化して描いていたのに対し、「仁義なき戦い」では権謀術数の渦巻くヤクザの世界を社会の病巣として批判的に描くことで、ヤクザ映画に新境地を切り開きました。
「仁義なき戦い」のヒットを皮切りに、東映は実際に起きたヤクザの抗争事件を題材にとった作品を数多く製作します。
このような作品は「実録路線」と呼ばれ、任侠映画に代わって東映の屋台骨を担うに至りました。(実録路線と東映実録映画は同義です。)
「完結篇」を除く「仁義なき戦い」シリーズ四作をはじめ、「県警対組織暴力」「暴力金脈」「バカ政ホラ政トッパ政」「やくざの墓場 くちなしの花」など数多くのヤクザ映画の脚本を手がけ、日本アカデミー章優秀脚本賞や瑞宝章を受賞した名脚本家・笠原和夫氏の脚本家としての半生を綴った「わが「やくざ」人生」を収録。
また、笠原氏が長年の脚本家人生の中で会得したシナリオ術を披露した「秘伝 シナリオ骨法十箇条」を併録し、さらに幻の未映画化作品「沖縄進撃作戦」のシナリオを丸ごと収めた贅沢な一冊。
「仁義なき戦い」シリーズのファンはもちろん、笠原和夫氏の脚本術を学びたい方は必見です。
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はじめに
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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