東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
facebook(國谷)
『東映実録映画入門』目次へ (全21ページ)
ヤクザの生き様を描いた実録映画を楽しむためには、ヤクザに関する知識が必要不可欠です。
ここでは、実録映画を鑑賞するにあたって知っておきたい最低限の予備知識についてご紹介していきます。
ヤクザの定義
言うまでもありませんが、ヤクザとは法令用語でいうところの「暴力団」にあたる存在です。
関西では「極道」と呼ばれることもありますが、現代では「暴力団」という呼称が一般的です。
暴力団対策法の中で、暴力団は以下のように定義付けられています。
――その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。
いかにも法令用語然とした七難しい表現ですが、端的に言うならば
「暴力を背景に利益を追求する団体」
といったところでしょうか。
「ヤクザ」の起源
ヤクザの起源は博徒・テキ屋・愚連隊の大きく三つに分かれます。
- 「博徒」・・・博打打ち、すなわちギャンブルの胴元で生計を立てていた団体を指します。
- 「テキ屋」・・・いわゆる露天商を指します。
- 「愚連隊」・・・繁華街で不法行為を働いていた不良集団のことで、博徒・テキ屋と共にヤクザの起源のひとつに数えられています。
現在でも博徒系・テキ屋系で団体を区別することがありますが、これらの分類はあくまでも組織のルーツにすぎず、実際の収入源とは関係ありません。
「やくざと抗争 実録安藤組」「実録・私設銀座警察」では、無法地帯と化した戦後の東京で成り上がっていく愚連隊の姿が描かれています。
▼やくざと抗争 実録安藤組(画像クリックで商品詳細へ)
▼実録・私設銀座警察(画像クリックで商品詳細へ)
ヤクザの組織構造
たとえば、山守という親分の下に、新開という子分がいたと仮定しましょう。
新開は山守組の幹部であると同時に、自身も新開組の組長を務めています。新開組には有田という若頭がおり、有田もまた新開の子分でありながら、有田組の組長を務めています。
巨大な組織であれば、有田の子分もまた自身の組の長を務め、さらにその子分も自分の組をもち……というように、ヤクザの組織はピラミッド状の階級社会の形成しており、一次団体の組長(例でいう山守親分)に近いほど、組織における地位も高くなります。
親分と子分の関係性は字のごとく血縁関係になぞらえられ、実録映画では組長を「オヤジ」、組長の兄弟分を「オジキ」、先輩や兄貴分の組員を「アニキ」と呼ぶ姿が頻繁に見受けられます。
ヤクザのシノギ(収入)
暴力団研究の第一人者であるジャーナリスト・溝口敦氏は、現代ヤクザのもっとも大きな収入源は「民事介入暴力」であると語っています。
具体的には、地上げや倒産整理、競売への介入、債権の取立てや株の買い占めなどです。
▼ヤクザのもっとも大きな収入源の例
収入源 | 内容 |
地上げ | 入居率が低いビルの入居者などに立ち退きを迫り、土地を売って稼ぐなど。 |
倒産整理 | 倒産しそうな会社の経営者を信用させ、債権管理を引き受け資産を巻き上げて行方をくらます。 |
競売への介入 | 競売物件で落札された不動産に居座ることで、法外な立ち退き料を要求する。 |
債権の取り立て | お金を取り立てる代わりに、その分の報酬をもらう。 |
株の買い占め | 企業の株を大量の買い占め、高値で会社関係者に売りつける。 |
これらのシノギは映像にすると画面が非常に地味になってしまうだけでなく、観る側にもある程度の専門知識が要求されるため映画の中で描かれることはほとんどありません。
ただ、山口組三代目の全国制覇を描いた「日本の首領」シリーズや、総会屋の成長を描いた「暴力金脈」では、民事介入暴力を駆使して金を稼ぐヤクザたちの姿が描かれています。
また、みかじめ料(場所代)や違法薬物の売買、ノミ行為(非正規の胴元)や闇カジノといった伝統的なシノギも重要な収入源であると言われています。
▼「やくざ戦争日本の首領」(画像クリックで商品詳細へ)
▼暴力金脈(画像クリックで商品詳細へ)
ヤクザ=フランチャイズ事業主?
原則としてヤクザは個々人で収入源を確保し「上納金」や「諸経費」を捻出しなければなりません。
「上納金」とは毎月決められた額を組事務所に収めるものです。
組織の運営費の他、葬儀や出所祝いなど慶弔にかかる見舞金、さらには首脳陣の生活費や交際費などにあてられます。
上納金には相互扶助の他、組員が収入を得られるのは組織の代紋(だいもん=ヤクザの一家であることを表す紋章)があってのものという発想に基づいた「ロイヤリティ(ここでは代紋の使用料の意味)」としての役割があり、ヤクザの運営形態は「フランチャイズ」経営に酷似していると考えられます。
破門と絶縁
実録映画を観ていると、親分が不始末をしでかした組員に「破門」や「絶縁」を言い渡す場面がたびたび登場します。
「破門」とはいわゆる組織からの追放を意味しますが、ほとぼりが冷めれば組に復帰する可能性が残されているなど、言葉の印象ほど重い処分ではないようです。
対して「絶縁」とは文字どおりヤクザ社会との絶縁を意味しており、復帰はおろか、他の組に加入することも許されない非常に厳しい処分であるといえます。
【参考書籍】
溝口敦「暴力団」「新版・現代ヤクザのウラ知識」
『東映実録映画入門』目次へ (全21ページ)
はじめに
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
facebook(國谷)