【時そば】あらすじや見所など落語ファン歴10年が解説!

 

落語の演目(お話)は上演回数の少ない珍しい古典落語を含めると、およそ500種類ほどと考えられています。

その中でも代表的な演目のひとつとして挙げられるのが「時そば」です。噺の中に出てくる「今、何時(なんどき)だい?」は有名なフレーズです。

このページでは落語の「時そば」のあらすじや、知らばさらに楽しめる知識、どの落語家の時そばがおすすめかなどを徹底解説いたします。

 

※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

 

あらすじ

 

天秤棒をかついで歩くそば屋を、ある男が呼び止める。

 

▼天秤棒をかつぐ人

 

男はそばを注文。男は、割り箸・どんぶり・つゆ・麺、とにかく何でもかんでも褒めまくりながらそばを食べる。

男は食べ終わり、勘定を支払う時になって

「細かい銭で払う。手の上に銭を置くから手を出してくれ」

と言い、一枚一枚銭を店主の手の上に置いていく。

「十六文だったね。ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな、やー」

と8まで数えたタイミングでそば屋の店主に「今何時だい?」と尋ねる。

「9時」と店主が答えると、9を飛ばして「とお、じゅういち、じゅうに・・・」と数えはじめて勘定をごまかす。

 

 

その様子を陰からこっそり見ていた男がいた。

翌晩、男は小銭を用意し、昨晩見たの男の真似をしようとそばを食べに出かける。

昨晩の男のと同じように振る舞おうとするが、どうにもうまくいかない。

そして勘定を支払う段になって・・・。

 

–ネタバレ–

 

男「じゃあいいかい、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、いまなんどきだい?」

そば屋「へえ、四刻(よっつ)で」

男「いつつ、むっつ、ななつ、やっつ・・・」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ・より楽しむための知識

 

「時そば」は上方落語の「時うどん」が東京に移植されてできた噺で、内容はほぼ同じです。

落語家さんが「扇子を箸に見立てて蕎麦をすする」というリアルな描写はみどころです。

 

【編集部コラム】「時そば」をより楽しむための豆知識

「時そば」は「刻そば」「時蕎麦」と書かれる時もあります。

「時そば」は江戸時代を舞台に描かれている噺です。当時は長屋(ながや)と呼ばれる集合住宅にひとり暮らしをしている男性がたくさんおりそば屋さんは繁盛していたそうです。

また、落語は同じ噺でも江戸(東京)と上方(関西)ではタイトルや噺の内容が少し違うケースがあります。噺のタイトルが江戸では「時そば」で上方では「時うどん」になります。「時そば」はタイトルが違うだけでなく、江戸の場合だとある男が勘定をごまかしてそれを見ていた他の人が真似して失敗するという流れになり、上方の場合だと兄貴分が勘定をうまくごまかしたのを見て弟分が真似して失敗するという流れになります。

【落語作家なかむら治彦氏コラム】江戸時代のお金事情と時そば

江戸時代のお金は金貨(両・分・朱)・銀貨(匁=もんめ)・銭貨(貫・文)の3種類の通貨が並行して利用されました。金貨は主に位の高い武士、銀貨は主に位の低い武士と商家、銭貨は主に庶民が利用していて、相互の換金は町の両替屋が行いました。

落語ではよく一獲千金を狙うストーリーが多く出てきますが、そこで使われるのはたいてい金貨(両)です。富くじが当たる『富久』も、高価なみかんを買う『千両みかん』も、登場人物の身分に関わらずすべて金貨です。恐らく昔は民間的にも「大金=金貨」だったのでしょう。

その一方では、庶民が主役の『時そば』はちゃんと一杯16文、つまり銭貨でした。

※こちらの解説は落語作家なかむら治彦氏の『読んで楽しい落語の演目と知識』の下記のページから引用。

 

おすすめ落語家

 

以下では、「時そば」を聴く上でおすすめの落語家さんを紹介いたします。

 

五代目 柳家小さん

名前 五代目 柳家小さん(ごだいめ やなぎや こさん)
本名 小林 盛夫(こばやし もりお)
生年月日 1915年(大正4年)1月2日/没年2002年

 

柳家小さんさんは昭和を代表する落語名人の1人であり落語会初の人間国宝です。

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小さんさんは「禁酒番屋(きんしゅばんや)」「長屋の花見」など、滑稽噺(面白おかしい演目)を得意とする落語家でした。

その巧みなしぐさや表情の豊かさはまさに一級品で、普通に喋っているだけでも笑ってしまいそうになる独特の雰囲気を持っています。

特に蕎麦をすする動作は落語界随一ともいわれていました。

小さんさんが蕎麦屋に入るとお客さんから「実際にはどんなふうに食べるんだ」と注目されるため食べずらかったというようなこともあったようですが、それほどの名人芸であったということでしょう。

その芸を味わうなら、やはり小さんさんが寄席の定番ネタとしていた「時そば」はおすすめです。

 

▼小さんさんの「時そば」収録CD:昭和の名人 古典落語名演集 五代目柳家小さん 十二

 

柳家小さんさんについては「落語初心者入門」で解説! 柳家小さんさんについては「落語初心者入門」で解説!

 

柳屋小三治

名前 十代目 柳家小三治(やなぎやこさんじ)
生年月日 1939年(昭和14年)12月17日

 

五代目柳家子さんさんの弟子である十代目柳家小三治さんの「時そば」もおすすめです。

小三治さんは存命する唯一の人間国宝の落語家であり「最後の名人」とも称されています。飄々とした表情でぶっきら棒にしゃべる語り口や、芸に厳しい姿勢などもあり「孤高の落語家」とも呼ばれています。

ぜひ、柳家小三治さんの「時そば」も聴いていただきたいです。

 

▼落語名人会(37)~柳家小三治13 初天神/時そば(CD)

 

柳家小三治さんについては「落語初心者入門」で解説! 柳家小三治さんについては「落語初心者入門」で解説!

 

時そばを聴く方法

 

「時そば」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。

以下では「時そば」が聴けるサービスを紹介いたします。

 

audible

 

audibleでは「時そば」を聴くことができます。

audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。

 

▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)

 

Spotify

 

Spotifyでも「時そば」を聴くことができます。

「Spotify」は音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。

立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。

 

Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))

 

以上「時そば」の紹介でした。その他落語の定番演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

 

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

 

▼『落語初心者入門』(全23ページ)


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与太郎とは ~落語の定番キャラ!魅力と登場する演目を紹介!~

 

落語の演目(お話)は上演回数の少ない珍しい古典落語を含めると、およそ500種類ほどと考えられています。

そんな落語の演目には何度も登場するお決まりのキャラクターというものが存在ます。中でも「与太郎」は落語の中で最も代表的な登場人物です。

「与太郎」のキャラクターの魅力を知れば、より落語が楽しめるでしょう。

 

※このページは落語作家なかむら治彦氏による『読んで楽しい落語の演目と知識』の内容をWebon編集部がまとめたものです。

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

与太郎とは

 

落語の世界から生まれた最も有名なキャラクターといえば、与太郎です。

与太郎はちょっとおバカであまり物事は考えない性格ながら、たまに鋭い指摘をして周囲の者を驚かせるという、子供がそのまま成人したようなキャラです。

落語の設定では、世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まることが多めです。

 

【編集部コラム】与太郎

与太郎は代表的な落語の登場人物。間抜けでマイペースな性格をしている。一人称は「あたい」で現在でいうとニートのような存在で語られる事が多い。噺によっては女房がいることもある。落語には、口を半開きの状態でゆっくりとしゃべると間抜けな感じに聴こえるという技術があり「与太郎口調」と呼ばれる。

 

与太郎の魅力

 

与太郎というキャラは江戸の昔から「おバカ」として落語界全体が作り上げた共有財産です。

落語の中ではヘンなことを言ったりヘンな行動をしたりする「愚か者」という業務上の役割が任されていますが、数百年の時代を経て、人格が少し変貌していったのではないか、と思います。

親戚のおじさんをちょっと大人びたシニカルな視線で評したり、いきなり核心をついたりするのは、長い落語の歴史の中で、きっと与太郎に愛着を持った落語家さんが「こんなことを与太郎に言わせたい」とか考えて、ストーリーに盛り込んだのだと思います。

今の落語ファンの方々の中には、

「与太郎って有名人に例えたら〇〇かな?」

というキャスティング遊びをなさる方がおられます。落語のキャラクターにより親しんでもらう、わかりやすく想像してもらうには、最適の遊びでしょう。

 

与太郎が登場する落語演目12選

 

以下では与太郎が登場する演目を

「親戚のおじさんが与太郎にお仕事を紹介しうる場面から始まる演目」

「与太郎が主役・準主役として活躍する演目」

「脇役やちょい役で登場する演目」

の3つのジャンルに分けて紹介いたします。

 

親戚のおじさんが与太郎にお仕事を紹介しうる場面から始まる演目

 

まずは世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まる演目を4つご紹介します。

 

1.かぼちゃ屋

~あらすじ~

20歳になってもろくに仕事もしない与太郎。面倒を見てくれているおじさんが見かねて与太郎にかぼちゃを売りに行かせる。元値を教え、そこに「上を見て売れ(売値をいくらか足して売れ)」と言われた与太郎であったが「上を見て売れ」の意味が分からず・・・

~概要~

人情噺『唐茄子屋政談』はまったく別の話。(「唐茄子」はかぼちゃの異称)

【著者談】『かぼちゃ屋』はここがポイント!

展開のわかりやすいシンプルな構成で、与太郎の性格が最もわかりやすい落語です。おじさんとのやりとりの中で口にする与太郎のへらず口が素敵です。

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spotify・・・音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有)
落語のすゝめ・・・落語専門ストリーミングサービス。月額648円。

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2.道具屋

~あらすじ~

20歳になっても働かない与太郎を見かねたおじさんが道具屋をやってみないかとすすめる。しかし何をやらせても上手くいかない与太郎はとことんお客さんに逃げられてしまう・・・

~概要~

小咄(短編話)を集めたオムニバス形式の話。その為寄席などでは途中で切り上げる事も多い。

【著者談】『道具屋』はここがポイント!

これもシンプルですが、笑えるポイントの数ではこれがトップ。露天の古道具屋が舞台なのでいろいろな品物が出てきて、その品物の数だけ笑いがあります。

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3.孝行糖

~あらすじ~

与太郎が親孝行をしていると奉行(武士の役職)から褒賞金をもらう。周りの人たちがそれを元手に商売を始めろと与太郎に勧める。親孝行した事から生じた商売「孝行糖」という飴を売ればいい、と勧めそれが飛ぶように売れるが・・・

~概要~

関西(上方)と江戸(東京)では周りの人が商売を始めろと勧める理由が異なる。上方では「上手くやれそうだから」、江戸では「褒賞金など若い人はすぐに使ってしまうのでもったいないから」。

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4.厄払い

~あらすじ~

いい年をして働かない与太郎を心配したおじさんが大晦日に近所の家々を回って「厄払い」を行い稼いでこいと告げる。早速厄払いの方法と文句をおじさんが与太郎に教えるがちっとも練習をせず与太郎は出かけていった・・・

~概要~

おじさんが与太郎に教える厄払いの文句は関西(上方)と東京(江戸)では多少異なる。東京の方が装飾されている。

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与太郎が主役・準主役として活躍する演目

 

この項目では、以上の演目以外で与太郎が主役・準主役として活躍する落語演目を3つご紹介します。

父親が与太郎に「おじさんの家に出掛けて新築の家をほめて小遣いをもらって来い」とすすめる『牛ほめ(うしほめ)』。

与太郎は『大工調べ』の大工のように最初から仕事に就いていたり、『錦の袈裟(にしきのけさ)』のように所帯持ちだったりすることもあります。

 

5.牛ほめ

~あらすじ~

何をやらせても上手くいかない与太郎を見かねた父親。父親の兄が新築を建てたという事で与太郎を行かせて家を褒めさせようとする。兄貴は家を褒めたらお金をくれるぞと与太郎に言うと与太郎もその気に。しかし与太郎は父親の教える褒め言葉を上手く言えない・・・

~概要~

元々『池田の牛ほめ』という上方(関西)の落語演目だったのが江戸に伝わった。別題『普請ほめ』。

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6.大工調べ

~あらすじ~

大工をしている与太郎であったが家賃が払えなくなり大家さんに仕事道具を取り上げられる。困った与太郎は大工の棟梁に一緒に返してもらいに大家さんのところへ行く。結局喧嘩になってしまうのだが与太郎が言う大家さんの悪口はとんちんかんで・・・

~概要~

前半と後半に分かれており、前半だけで切り上げるパターンもある。

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7.錦の袈裟

~あらすじ~

隣町に住んでいる仲の悪い若者たちが遊廓(ゆうがく)で大きく遊び「こんな真似は隣町のやつらにはできない」と言っていた、と町の若い衆が聞いてくる。そこで町の若い衆たちは質屋で10枚の錦(にしき:高価な布)を買い、それでふんどしを作って遊廓で遊んで隣町のやつらを見返そう、という話になるが11人で行くことになるので与太郎の分の錦が足りなくなる。そこで与太郎は和尚に錦の袈裟(けさ)を借りに行くが・・・

~概要~

戦時中には性的描写のある演目とされ、国により禁止されていた。別題に『金襴の袈裟(きんらんのけさ)』『錦の下帯(にしきのしたおび)』『ちん輪(ちんわ)』。

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与太郎が脇役・ちょい役で登場する演目

 

今挙げた7つの演目はすべて与太郎が主役・準主役として活躍する落語ですが、脇役やチョイ役で登場する『長屋の花見』『寄合酒』『芋俵(いもだわら)』『佃祭(つくだまつり)』などもあります。

 

8.長屋の花見

~あらすじ~

お金の無い連中が花見をしようと思い立つ。いざ花見に来てみるとお金持ちの連中がいて、彼らとの落差に消沈する。そこで喧嘩をしているふりをしてお金持ちを追っ払い、その隙に食べ物や酒を奪う策略を考え付くが、喧嘩のフリのつもりが本当に喧嘩になってしまう・・・

~概要~

上方落語では「貧乏花見」という名前の演目。短縮して演じられたり、オチ(サゲ)がいくつかあったりする。

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9.寄合酒

~あらすじ~

ある男がみんなで集まってお酒を飲もうと思いつく。しかし金がないので集まったそれぞれに酒の肴を持ち寄ってもらって宴会を開こうとする。しかし皆料理が苦手な男ばかりで持ち寄ったものがとんでもないものばかりになってしまう・・・

~概要~

寄合酒は「ん廻し(別名:運廻し)」という演目の前半部分。後半部分は「田楽喰い」という演目。

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10.芋俵

~あらすじ~

とある2人の盗賊が芋俵(いもを入れる俵)の中に入り、通りがかったお店に預け、夜になったら芋俵から出てお店のカギを内側から開けて盗みに入ろうという計画を立てる。そこで芋俵に入る人間を探したところ与太郎に白羽の矢があたる・・・

~概要~

上方(関西)落語では『芋屁』と呼ばれる。

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11.佃祭

~あらすじ~

とある旦那が佃島の祭りに行く。妻に必ず今日中に帰ると告げるが、最終の船に乗ろうとしたところ女に袖を引かれて乗り損ねる。聞けばその女は昔金が無くて思い詰めていたところへ旦那に5両をもらって生き延びた女だと言う・・・

~概要~

中国の逸話がモデルとなった噺。「情けは人の為ならず」が主題となっている。与太郎は最後に登場する。

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以上「与太郎」の紹介でした。与太郎以外の落語に登場するキャラクターについてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。

 

また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。

 

▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)

 

さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。

 

▼『落語初心者入門』(全23ページ)

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落語初心者のための基礎知識

Webon紹介目次著者
落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

落語初心者入門はこちらから!

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

『落語初心者入門』目次へ  (全23ページ)

 

まずは落語初心者のための基礎知識をお伝えします。

このページを読めば「落語とは何か」という基本的なことがわかり、なんとなく落語の全体像が見えてくるかと思います。

 

落語とは


By vera46 – originally posted to Flickr as rakugo, CC 表示 2.0, Link 

 

落語は江戸時代の日本で成立した伝統的な話芸です。

落語にはお決まりのストーリーがあり、内容は基本的に「滑稽で笑えるもの」となっています。(感動できるものもあります)

そして話の最後には「落ち(オチ)」がつくのが特徴となっています。

ちなみに落語では「話」を「噺(はなし)」とも表記します。

 

※決まり文句は言わない事も多くあります

 

また、落語家は着物を着て落語を演じるのが基本です。

ただ、落語家には階級があり「二つ目」以上の階級(下図参照)だと着物の上に羽織をはおっています。

落語を演じている最中に、落語家が羽織を脱ぐ時がありますがタイミングに明確な決まりはありません。

 

▼階級について詳しくは第1章の後のページで解説します!

 

落語の表現

 

落語は座布団の上に座っている落語家が1人で何役も演じて物語を展開します。

使用する道具は、基本的には扇子と手ぬぐいだけです。

扇子と手ぬぐいは様々な道具に見立てられます。扇子で「そばをすする箸」を表現したり、手ぬぐいを「財布」に見立てることもあります。

 

▼「扇子」で表現されるもの

扇子で表現されるもの 表現が見られる有名な演目
時そば/うどん屋
煙草 巌流島/粗忽の釘
そろばん 壺算/片棒
試し酒

▼「手ぬぐい」で表現されるもの

手ぬぐいで表現されるもの 表現が見られる有名な演目
財布 鰻のたいこ/堀の内
浮世床/稽古屋
短冊 崇徳院

 

落語家が1人で何役も演じ、お客さんの想像力によって物語が膨らんでいくというのも落語の魅力であり、こうしたスタイルのエンターテインメントは日本独自のものです。

 

また「落語はお決まりのストーリーがある」と先ほど説明しましたが、演じ手の表現によって同じ演目(ストーリー)でも全く違った魅力を堪能できます。

 

 

その為「お気に入りの落語家の方を1人見つけて、その落語家を掘り下げる」という楽しみ方もおすすめです。

当Webonでもおすすめの落語家や名人を紹介しておりますのこちらを参考に見つけていただければと思います。

▼名人紹介は第3章、第4章で!

 

落語の噺の構成

 

落語を観る上で知っておきたいのが噺の構成です。

決まった流れがあるので事前に知っておくと内容が入ってきやすくなると思います。

落語の噺は「①マクラ」「②本編」「③落ち(サゲ)」で構成されています。

 

 

「マクラ」から落語は始まります。

マクラは落語家さんのフリートークのような感じで、本編にちなんだ小噺をしたりします。マクラが盛り上がって本編に入らないなんてこともあったりします。

一般的なマクラの長さは5分~15分程度です。ただ、マクラの面白い落語家として有名な柳家小三治(やなぎや こさんじ)さんは1時間マクラをしゃべって落語は10分~15分なんてこともあります。

 

▼柳家小三治さん

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▼小三治さんの詳しい解説は第4章にて

▼例)マクラの動画:桃月庵白酒さん

 

 

「本編」では「まんじゅうこわい」「天狗裁き」などのお決まりの演目が披露されます。

本編で演じられる演目は、古典落語か新作落語の2つに分けることができます。

「古典落語」は江戸中期から明治にかけて作られた演目で、その数は500~800あると言われています。また、大正時代以降に作られた落語は「新作落語」と言います。

 

▼古典落語と新作落語の違いは第1章の後のページで解説!

▼定番の演目の内容は第3章で解説!

 

 

「落ち(サゲ)」は噺の最後に持ってくる結びの言葉のことです。

落ち(オチ)を言って頭を下げて終わりになります。以下に「オチ」がどのようなものかを示しています。

その演目のネタバレを含んでいるので知りたくない方は飛ばしてください。

 

▼オチの例 ※ネタバレを含む

演目 あらすじ オチ(赤文字)
まんじゅうこわい 饅頭が怖いという男を怖がらせてやろうと饅頭攻めにする。しかし、男は饅頭を食べている。してやられた男たちは男に問う。 「お前は一体何がこわいんだ」
「ここらで渋いお茶が一番怖い」
天狗裁き ぶつぶつ言いながら寝ている八五郎に奥さんが「どんな夢を見てた」ときかれ「夢なんか見ていない」と答える。その後、おれにだったら夢の内容を教えることができるだろうと色んな人に問いただされて、最後は天狗にまで聞かれる。 大天狗は八五郎を山奥へと連れて行くと「どんな夢だ。教えないと八つ裂きにする」と言われる。「うー、助けてくれー」と言う八五郎。
そこへ「ちょいとお前さん起きよ。どんな夢見てたんだい」

 

落語は以上のように「①マクラ」「②本編」「③オチ」という構成で展開します。

これを知っていれば落語をより楽しむことができるでしょう。

 

 

さて、②の本編には「決まった噺がある」と説明しましたが、この噺の種類は大きく二つに分けることができるのです。以下では噺の種類二つに分けて紹介します。

 

噺の種類

 

落語の噺の種類は大きく分けると「滑稽噺」「人情噺」の二つです。

 

 

滑稽噺は「噺の終わりにオチがあるおもしろいおかしい落語」のことです。落語と聞いてイメージするのはこの滑稽噺だと思います。

人情噺は「ストーリー性を重視し心温まる人情を描いた落語」のことです。

どちらも特別な知識がなくても楽しめます。

初心者の方におすすめの噺も第3章で紹介してますので、まずはどんな噺があるか知るとよいと思います。

 

落語を観るには

 

落語の醍醐味はプロの落語家の公演を生で観ることです。

1年365日毎日、生の落語を観ることができる「落語定席(らくごじょうせき)」という場所があります。

落語定席は東京には「浅草演芸ホール」「鈴本演芸場」「新宿末廣亭」「池袋演芸場」の4つがあります。

大体、昼は12時頃にはじまり夜は21時頃まで行われています。昼と夜の2部制が基本ですが、ほとんどの寄席が昼と夜でお客さんを入れ替えをしません。

そのため12時に入り21時までの間、たっぷりと落語を楽しむことができます。

基本的に飲食は可能で、演芸場によってはお酒を飲むこともできます。

ちなみに寄席では大体1人15分~20分の長さで演じます。トリが「大ネタ」と呼ばれる30分以上の長さの演目を披露することもあります。

 

▼落語定席の基本情報

開催日 基本的に毎日
公演時間 12時頃~21時頃
相場 2500円~3000円
チケット購入方法 当日券のみ
落語の長さ 1人15分~20分程度
都内おすすめ落語スポットについては第3章で詳しく解説!

 

ここまでざっくりと落語の基礎知識についてお伝えしていきました。続いては落語の歴史についてお伝えします。落語への理解を深めてより落語を楽しんでいただければと思います。

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目次著者

著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

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初心者におすすめ古典落語の演目11選 【人情噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選をご紹介しております。

前ページでは「滑稽噺」をご紹介しましたが、落語はおもしろおかしい滑稽噺だけではありません。

夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」と呼ばれる演目が数多くあります。

そんな人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を3つご紹介します。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【人情噺編】

9 芝浜(しばはま)

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んでぜんぜん働かない魚屋の勝五郎。

いつものようにぐうたら寝ている勝五郎を女房が叩き越こし「今日こそは働いてくれ」と、魚河岸(うおがし=魚市場のある河岸のこと)へ仕入れに行かせる。

渋々出かける勝五郎。

しかし朝早すぎて一軒の問屋も開いていない。

時間を潰そうと浜に出て一服つけていると、すぐそこに革の財布が落ちている。中を見ると驚くような大金。

家に戻って女房に財布を見せ「これでもう働かなくても楽しく遊んで暮らせる」と浮かれる勝五郎。仲間を集めてさんざん飲んで、酔っぱらって寝てしまう。

 

 

翌日、女房に起こされた勝五郎は「昨日の酒代のツケをどうするんだ」と女房に言われ「例の拾った金で払えばいいだろ」と返すが、女房は「そんな財布は知らない。夢でも見たんじゃないのかい」と呆れる。

探しても財布がないものだから女房の話を信じるしかない。

自分の情けなさを恥じ「これからは酒を断って真面目に仕事をする」と女房に誓う。

もともと腕はいい魚屋のこと、3年後には自分の店を構え、若い衆を雇うまでになる。

 

 

そして大晦日、勝五郎は女房と二人で除夜の鐘を聞きながら今までの苦労話をしていると、女房が大金の入った革の財布を取り出した。

「あれは夢じゃなかったんだよ、お前さん」

「でも、あのときおめえは夢だと・・・」

女房は手をついて謝りながら、なぜ嘘をついたのか、その理由を語り始める・・・。

 

–ネタバレ–

 

女房は勝五郎が「商いをやめて遊んで暮らす」というから、どうしようかと思って大家さんに相談に行った。そこで「夢だということにした方がいい」という助言をもらう。

女房は「なまけものに戻らないように隠してきた。腹が立つならぶつ蹴るしてもいい」と言うが、夫は女房の行動に感謝する。

女房は怒られると思っていたので、機嫌直しのためにお酒を用意していた。それを振る舞おうとする女房。

上機嫌で飲もうとする勝五郎だったが「だが待てよ」と躊躇する。

女房が「どうしたの?」と伺うと

「よそう、また夢になるといけねえ」と答える

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

人情噺といえば「芝浜」と答える人が多いほど人情噺の代表的な古典落語です。

勝五郎の女房は落語に登場する女房の中でも、これぞ「女房の鑑」という人物。

笑いどころも多く、でも最後はほろっとさせてくれる秀逸な噺です。昭和30年代には故・萬屋錦之介(よろずや・きんのすけ)主演で「江戸っ子繁昌記」というタイトルで映画化されているほど秀逸な噺です。

 

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10 子別れ

あらすじ

 

腕はいいのに酒ばかり飲んで働かない大工の熊五郎。

熊五郎は吉原(=幕府公認の遊郭(男性に性的サービスを行うお店がある区画))に居続けたあげく、しばらくぶりに家に帰ったが女房に謝るどころか女郎(遊郭で働く女性)ののろけ話をする始末。

ついに堪忍袋の緒が切れた女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。

 

 

その後吉原の女郎を後妻にするが、これがとんでもない悪妻でそのうち熊にも愛想を尽かして出て行ってしまう。

熊五郎は心を入れ替えて真面目に働くようになり数年後には暮らしも楽になった。

 

そんなある日、仕事先で別れた息子の亀吉に偶然出会う。

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亀吉に母親のこと聞くと「再婚もせず貧しいながら女手一つで頑張っている」とのこと。

熊五郎は亀吉に小遣いをやり「明日二人で鰻を食べに行こう」と誘い「俺と会ったことはおっかさんには内緒にしろ」と言い聞かせて別れる。

 

家に帰った亀吉。もらったお金が母親に見つかってしまう。

ごまかそうとするが「亀吉が盗んだんじゃないか」と疑った母親は金づちでぶとうとするので、父親からもらったことを白状してしまう。

 

 

怒るどころか、真面目になった熊五郎の話を聞いて嬉しそうな様子の母親。

 

翌日、熊五郎と亀吉が鰻屋の二階で鰻を食べていると、いても立ってもいられなくなった母親が鰻屋を訪ねて来る。

親子三人水入らずとなり両親とも嬉しいはずだが、お互いもじもじとするばかりで会話が成り立たない。

そこで見かねた亀吉が二人の仲を取り持ち、二人は徐々にお互いの気持ちを打ち明け合う――。

 

–ネタバレ–

 

ヨリを戻すことを提案する熊五郎。そして承諾する母親。

「こどもがあればこそおめえとも、またヨリが戻るんだな」と熊五郎。

「ほんとうですよ。子供は夫婦のかすがい(2つの材木をつなぐためのコの字型の釘)って言う通りですよ」

すると亀吉が「えっ、あたいがかすがいかい?だから昨日おっかさんがあたいの頭を金づちでぶとうとしたんだ」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

この「子別れ」はとても長い噺で、一般的には、上、中、下と三つに分けて演じられます。

上は「強飯の女郎買」、下は「子はかすがい」という題名です。いつの時代も家族の愛情は変わりません。

大人びた台詞を吐く亀吉、女房のいじらしさ、亭主の男としての照れが聞きどころの噺です。

 

▼筆者おすすめ「子別れ」が鑑賞できる作品

⚫柳家さん喬14「子別れ」-「朝日名人会」ライヴシリーズ94(Amazon Music Unlimited)

 

11 藪入り(やぶいり)

あらすじ

 

奉公(=住み込みで主人に仕えること)に出た息子の亀吉が、しばらくぶりに藪入り(年に二度の休暇)で帰って来る。

その前夜、父親はそわそわして寝つけない。

「あれも食べさせたいこれも食べさせたい」とうるさいのなんの。

 

 

まだ夜が明けないうちから、今度は息子と一緒に出かけたい場所を次々と挙げていき「落ち着け」と女房にたしなめられる。

そうしているうちにやっと夜が明ける。

父親が待ちきれない様子で家の前の掃除をしているところへ亀吉が帰って来る。

立派な挨拶をする息子に両親は感動。

 

 

息子を湯屋(=銭湯)へ送り出したあと、母親が亀吉の財布に大金が入っていることに気づく。

「ひょっとしたら店の金に手をつけたんじゃないか」と疑い、帰って来た亀吉を問い詰める。

口論となって父親は亀吉に手をあげ、母親はそれを制止し泣きながら問いただすと

「このごろペストが流行っているので、ネズミを捕まえて警察に持っていったら一匹十五円の懸賞に当たった。このお金は今日まで主人に預かってもらっていたけど、今日は藪入りだから持って帰って両親を喜ばせてやれと、主人が持たせてくれた」

というようなことを答える。

 

–ネタバレ–

 

両親はそれを聞いて安心する。

亀吉に父親は「これからも主人を大切にしなよ」と教える。そして

「これもやっぱりチュウ(忠とネズミの鳴き声をかけている)のおかげだ」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

息子が帰って来るのを心待ちにする両親の心情が伝わってくる、ほっこりした気持ちになる噺です。

うきうきが止まらず、とんちんかんな言動をする父親、それを温かく見守っている母親、立派に成長した息子、たがいに相手を思いやりながらも起こってしまう、気持ちのすれ違いが聞きどころです。

 

▼筆者おすすめ「藪入り」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平落語集 井戸の茶碗/藪入り(CD)

 

この第2章ではおすすめ古典落語についてお伝えしました。

次の章(第3章)からは実際に落語を鑑賞する方法についてお伝えします。落語が行われている「寄席」は飲食もオーケーであり気軽に入れるところなので、ふらっと足を運んでいただければと思っております。

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著者:ミドケン

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初心者におすすめ古典落語の演目11選 【滑稽噺編】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの古典落語11選を紹介しています。

 

このページでは、ただただ笑えるおもしろい落語を3つ紹介。

落語といえばやっぱり、おもしろおかしい「滑稽噺」!

難しいことは考えずに、とにかく笑えることが落語の魅力です。

 

初心者におすすめ古典落語11選 【滑稽噺編】

6 天狗裁き

あらすじ

 

家で寝ている八五郎は、笑ったりぶつぶつ言ったりしている。

それを見た女房が熊五郎を起こし「いったいどんな夢を見たんだい?」とたずねるが、熊五郎は「夢なんか見ていない」と言う。

 

 

嘘をつくなと問い詰めるが熊五郎は「見ていない」の一点張りで、ついには喧嘩になってしまう。

そこへ隣人が割って入り喧嘩をおさめる。しかし隣人もどんな夢なのか知りたくなり「女房に言えなくても、俺には言えるだろう」とたずねる。

しかし熊五郎は見ていないと言い、またもや喧嘩になるが今度は大家が来て仲裁をする。

 

女房と隣人の男を外へ出すと、大家が「親同然の大家になら言えるだろう」と迫る。

ここでも見ていないと答えると「だったら長屋から出ていけ」と無茶なことを言われ、困った熊五郎は奉行所(現在でいうところの裁判所)へ願い出る。

 

奉行の裁きにより長屋を出ていかなくてもよくなって熊五郎が喜んでいると、お奉行さまも「奉行になら喋れるだろう」と夢の話を聞きたがった。

「お奉行さまでも、見ていないものは喋れません」と答えると奉行の怒りを買って木に吊るされてしまう。

 

 

このまま死ぬのかと諦めかけたとき、一陣の風が吹いて熊五郎は飛ばされてしまう。

気がつけば山の中。

そして目の前には大天狗が立っていた。

 

 

–ネタバレ–

 

大天狗は八五郎を山奥へと連れて行くと「どんな夢だ。教えないと八つ裂きにする」と言われる。「うー、助けてくれー」と言う八号郎。

そこへ「ちょいとお前さん起きよ。どんな夢見てたんだい」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

見ていない夢のことでいろんな人から責められ、思わぬ事態に陥ってしまう熊五郎にはとても気の毒ですが、思わず笑ってしまいます。

天狗が出てくる不思議な噺ですがスピーディーな展開で飽きさせません。

そして最後のオチは秀逸だと思います!

 

【編集部コラム】実は続編がある?
「天狗裁き」は長編落語である「羽団扇」の前半部分の物語が独立した演目です。

そのため「羽団扇」では「天狗裁き」の続編のような噺を聴くことができます。「羽団扇」では、天狗に脅されていたところからなんとか脱出した後に、七福神と遭遇するという奇想天外な展開になっています。

 

▼筆者おすすめ「天狗裁き」が鑑賞できる作品

⚫特選!!米朝落語全集 第四集(DVD)

 

 

7 粗忽長屋(そこつながや)

あらすじ

 

同じ長屋に住む、八五郎と熊五郎は兄弟のように仲がいい。

ある日、日課である浅草の観音様詣に来た八五郎はその帰りに道端の人だかりに気づく。人だかりに聞くところ、行き倒れだという。

死体を確認した八五郎は「こいつは今朝会った熊五郎だ」と言う。

 

 

しかし役人は「こいつは昨晩からここにいるから、お前が言ってるのとは別人だ」と説明するが、熊五郎は「当人は死んでるのを忘れてんだよ、当人をここへ連れて来るよ」などと言い残し、急いで長屋へ戻った。

 

八五郎から話を聞いた熊五郎は「そんなはずはない」と反論するが「お前は粗忽者(そそっかしい人)だから自分が死んだことに気づいてないんだ」などと言われ、納得してしまう。

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自分の死体を引き取るために、熊五郎は八五郎と一緒に浅草観音へ向かうのだが・・・。

 

–ネタバレ–

 

死体を確認した後、死体が自分であると熊五郎は納得してしまう。

死骸を2人で持ち上げようとすると役人に、「(死骸は)お前さんじゃないんだから」と諭される。

「いいから遠慮するな、自分の死骸なんだから」と遠慮せずに死骸を抱いてしまうことを促す八五郎。

すると熊五郎が

「でも兄貴、なんだかわからなくなっちゃった。抱かれているのはたしかにおれだけれど、抱いてるおれは、一体どこのだれなんだろう」

と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「当人が自分の死体を引き取りに行く」という、あまりに不思議な噺ですが、八五郎と熊五郎のすっとぼけたやりとりが最高に面白い落語です。

粗忽者(そこつもの)とは「そそっかしい人」のことで、落語には「粗忽の〇〇」という演目がたくさんあります。

その粗忽シリーズの中でも個人的に一番好きなのが「粗忽長屋」です。

ぜひこの不思議でバカバカしい世界観を味わってください。

 

他の粗忽シリーズの例

⚫粗忽の釘

上方落語では「宿替え」として演じられる。江戸落語では「粗忽の釘」。そそっかしい男が引っ越しを行い、トラブルを起こす噺。

⚫粗忽の使者

原話は1701年に出版された「軽口百登瓢箪」に収録された話。「尻ひねり」とも呼ばれる演目。粗忽者の侍が使者として偉い人の屋敷に出向きトラブルを巻き起こす。

 

▼筆者おすすめ「粗忽長屋」が鑑賞できる作品

⚫林家たい平 落語集「粗忽長屋」「干物箱」(CD)

 

8 代書屋

あらすじ

 

自分で字が書けない男が、代書屋(=本人の代わりに書類や手紙などの代筆を行う商売)のもとに履歴書を代わりに書いてくれとやって来る。

代書屋はさっそく仕事に取りかかるが、何を聞いてもトンチンカンな答えばかりで一向に前に進まない。

 

 

名前、生年月日、住所、何ひとつまともに答えることができない男に困り果てながらも、必死に履歴書を完成させようと代書屋は四苦八苦。

果たして履歴書は完成するのか・・・。

 

–ネタバレ–

 

これ以上聞いても意味がないと思った代書屋は、最後に「賞罰」を聞く。

罰がないかを確認するために聞いたが実は賞があると言う「大きな賞状もろて、新聞に写真入りで載った」と聞いて代書屋は驚く。

「一昨年の秋の新聞社主催の大食い大会で大きなボタ餅を八十六食べて優勝して賞状もろて新聞に写真入り・・・・・」

「そんなアホなこと書けるかいな」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

もとは上方落語ですが現在は東京の落語家も演じています。

昭和の初めに四代目・桂米團治が作った新作落語ですが、今では古典に近い演目となっており多くの落語家が演じています。

 

▼四代目・桂米團治

 

代書屋は何人かの客が出てくる噺ですが最後までやることは希で、ほとんどが一人目の客のくだりで噺を切ります。(上記ネタバレ部分は一人目の客のくだりまで紹介)

とにかく笑いどころ満載の落語ですっとんきょうな掛け合いは爆笑ものです。

 

▼筆者おすすめ「代書屋」が鑑賞できる作品

⚫柳家権太楼2「不動坊火焔」「代書屋」-「朝日名人会」ライヴシリーズ22(Amazon Music Unlimited)

 

このページでは滑稽噺を紹介してきました。落語には夫婦愛、親子愛、師弟愛など、人間の情愛を描いた「人情噺」があります。次のページでは人情噺の中でも初心者の方でもわかりやすい「名作」と呼ばれる古典落語を紹介します。

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初心者におすすめ古典落語の演目11選 【定番編】

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ここまでの第1章では落語の基本的な情報をお伝えしてきました。

この第2章では【定番編】【滑稽噺編】【人情噺編】に分けて3ページにわたって初心者におすすめの11の古典落語をご紹介します。このページでは【定番編】と題して「定番の落語」と「個人的におすすめしたい落語」を紹介します。

古典落語の演目の数は現在寄席で演じられているのは200~300くらいと言われており、やる人がほとんどいないものも全部合わせると、その数は500とも800とも言われています。その中から厳選しておすすめします。

 

「古典落語って何?」などの演目の基礎知識は第1章で解説!(現在は第2章)

 

定番落語

 

まずは誰でも演目名だけは聞いたことがあるであろう有名な定番古典落語をご紹介します。とてもわかりやすくて短い噺ばかりなので、古典落語初心者でも楽しめますよ!

 

1 寿限無(じゅげむ)

あらすじ

 

とある若夫婦に男の子が生まれる。

息子に長生きしてほしいから縁起の良い名前をつけたいと、父親の八五郎は寺の和尚に相談しに行く。

和尚はいくつもの名前を候補として提案。

八五郎は「どれもおめでたいから全部つけちゃえ」ということで、息子はとんでもなく長い名前になってしまいます。

 

▼つけられた名前(一例)

寿限無、寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末食う寝る処に住む処 藪ら柑子の藪柑子 パイポ パイポ パイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助 

 

縁起の良い名前のおかげか息子はすくすくと成長するが、両親や友達など周りの人たちは長い名前をいちいち呼ばなければならない。

 

–ネタバレ–

 

大きくなってわんぱくになった息子。ある日「八五郎の息子になぐられてこぶができた」と八五郎の家にいいつけにきた子がいた。

「あーん、あーん、あのねぇ、おばさんのところの寿限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助が、あたいのあたまをぶって、こんな大きなこぶができたよ」

「あらまあ金ちゃんすまなかったね。あんたきいたかい、うちの寿限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助が金ちゃんのあたまにこぶをこしらえたんだって」

「じゃあなにかい、うちのうちの限無寿限無、五劫のすりきれ・・・(中略)・・・長久命の長助がこぶをこしらえたっていうのか。どれ金坊見せてみろ。こぶなんかないじゃないか」

「あんまり名前が長いから、こぶがひっこんじゃった」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

長い名前が引き起こしてしまうドタバタがシンプルで面白い噺です。

この噺を聴けばあなたも必ず「じゅげむじゅげむ~」と口にしたくなるはずです!

 

筆者おすすめ「寿限無」が聴ける作品

古典落語である「寿限無」を聴くなら林家たい平さんのCDがおすすめです。

▼林家たい平

人気演芸番組『笑点』でお馴染みのたい平さんですが、古典落語をこれほどわかりやすく演じてくれる落語家は他にいないと思います。たい平さんのCDは古典落語初心者の方にはおすすめなのです。

▼林家たい平落語集 たい平のはじめの一歩(CD)

 

2 まんじゅうこわい

あらすじ

 

町内の若い男たちが集まって嫌いなものや怖いものについて話をしている。

ずっと黙っている辰さんに、どんなものが怖いかと聞いたら

「こわいものなんかない」

と答える。

 

腹が立った男たちが本当にないのかとしつこく聞くと、辰さんは「まんじゅうが怖い」と打ち明ける。

それを聞いた男たちは「ちょいといたずらをしてやろう」と計略を練る。

辰さんを脅かしてやろうと菓子屋から大量に饅頭(まんじゅう)を買ってきて、まんじゅう攻めにするが・・・。

 

 

–ネタバレ–

 

饅頭と聞いただけで震えだす辰さんは、布団をかぶって寝てしまう。

男たちは辰さんを怖がらせようと「気付け薬だよ」と言って枕もとに大量の饅頭を置く。

男たちが辰さんを見てみると「まんじゅうが怖い」と言いながら辰さんは饅頭を食べている。

してやられた男たちは辰さんに問う「オイ!食うのをやめろ!本当は何が怖いんだ!?」

「ここらで渋いお茶が一番怖い」と辰さんは答える。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

自分を酷い目に遭わそうとしていることを知ってか知らずかわかりませんが、まんまと連中を騙してしまう辰さんの頭の良さに思わず感心してしまいます。

小学校に呼ばれた落語家が子供たちの前で演じることも多い、万人を楽しませる秀逸な落語です。

 

筆者おすすめ「まんじゅうこわい」が聴ける作品

「まんじゅうこわい」は桂文珍さんがおすすめです。

桂文珍さんは、1980年代以降「ニューウェーブ落語」と称したパフォーマンスがヒットしテレビ17本のレギュラーを持つようになりました。

独演会のチケットは入手困難と言われています。そんな文珍さんの「まんじゅうこわい」を是非お聴きくださいませ。

▼桂文珍(15)「宿替え」/「饅頭こわい」-「朝日名人会」ライヴシリーズ28 Live

 

3 時そば

あらすじ

 

天秤棒をかついで歩くそば屋を、ある男が呼び止める。

 

▼天秤棒をかつぐ人

 

男はそばを注文。男は、割り箸・どんぶり・つゆ・麺、とにかく何でもかんでも褒めまくりながらそばを食べる。

男は食べ終わり、勘定を支払う時になって

「細かい銭で払う。手の上の銭を置くから手を出してくれ」

と言い、一枚一枚銭を店主の手の上に置いていく。

「十六文だったね。ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな、やー」

と8まで数えたタイミングでそば屋の店主に「今何時だい?」と尋ねる。

「9時」と店主が答えると、9を飛ばして「とお、じゅういち、じゅうに・・・」と数えはじめて勘定をごまかす。

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その様子を陰からこっそり見ていた男がいた。

翌晩、男は小銭を用意し、昨晩見たの男の真似をしようとそばを食べに出かける。

昨晩の男のと同じように振る舞おうとするが、どうにもうまくいかない。

そして勘定を支払う段になって・・・。

 

–ネタバレ–

 

「じゃあいいかい、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、いまなんどきだい?」

「へえ、四刻(よっつ)で」

「いつつ、むっつ、ななつ、やっつ・・・」

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

「時そば」は上方落語の「時うどん」が東京に移植されてできた噺で、内容はほぼ同じです。そばをすするリアルな描写も楽しめます。

 

「時そば」をより楽しむための豆知識
「時そば」は江戸時代を舞台に描かれている噺です。当時は長屋(ながや)と呼ばれる集合住宅にひとり暮らしをしている男性がたくさんおりそば屋さんは繁盛していたそうです。
筆者おすすめ「時そば」が聴ける作品

「時そば」は柳家小三治(やなぎや こさんじ)さんの作品がおすすめです。

小三治さんは存命する唯一の人間国宝の落語家であり「最後の名人」とも称されています。飄々とした表情でぶっきら棒にしゃべる語り口や、芸に厳しい姿勢などもあり「孤高の落語家」とも呼ばれています。

▼落語名人会(37)~柳家小三治13 初天神/時そば(CD)

▼柳家小三治さんについては第4章で詳しく紹介しています!(現在第2章)

個人的におすすめな古典落語

 

ここからは私が初心者の人に個人的におすすめしたい古典落語をご紹介します。

 

4 はてなの茶碗

あらすじ

 

京都清水のとある茶店で、京都一の目利きと言われる「茶金」という男が茶を飲んでいた。

茶金はふと茶碗に目を止め、不思議そうにひねくり回しながら「はてな?」とつぶやく。

これを見ていた油屋(油を売る商売人)の男。

 

 

あの茶金が注目するなら値打ちがあるものに違いないと、半ば強引に茶店の主人から茶碗を買い取る。

 

その後、油屋は茶金の店に茶碗を持って行き、茶碗を見てもらうが「値打ちがない」と言われてしまう。

油屋は茶店で「茶金さんが不思議そうに茶碗を見ていたところを見ていた」と伝えると、茶金は「この茶碗はどこも割れていないのに水が漏れるのが不思議だった」と言い、油屋はがっかりする。

気の毒に思った茶金は茶碗を買い取る。

そしてこの茶碗のことを周囲の人間に話すと「割れていないのに漏れる茶碗の話」があっという間に広がる。関白という地位の高い人の耳に入り、この茶碗についての句を詠み上げるなどをして茶碗の価値が上がる。そして最終的に千両で売れてしまう。

 

–ネタバレ–

 

茶金さんは千両の半分を油屋に渡す。喜ぶ油屋。

数日後、茶金さんの店を訪れる油屋。

そして「十万八千両の儲けや!」と言う油屋。茶金さんが「なんやて?」と驚くと「水瓶の漏れるやつ。見つけて来た」と油屋。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

価値のないはずの安い茶碗にどんどん値がついていく過程が面白い。

最後にまた油屋が現れる、楽しいオチ(サゲ)にも注目です。

 

筆者おすすめ「はてなの茶碗」が聴ける作品

「はてなの茶碗」は桂米朝さんの作品がおすすめです。

上方落語界初の人間国宝の米朝さん。巧みな話術とギャグセンスに溢れた米朝さんの「はてなの茶碗」を是非堪能ください。

▼特選!!米朝落語全集 第四集(DVD)

 

5 松山鏡

あらすじ

 

鏡のない松山村に、「正直正助」という男が住んでいた。

親孝行な正助の評判が領主に届き、ごほうびがもらえることに。

望みを聞かれた正助は、死んだ父親にもう一度会いたいと言う。

 

 

すると領主は、箱に入れた鏡を取り出す。

正助が箱の中を覗くと中の鏡に正助の顔が映る。

鏡を知らない正助は、父親に会えて大感動。

 

 

領主は他人には見せないようにと申しつけ、箱に入った鏡をほうびとして与える。

正助は納屋(=物置小屋)のつづらの中に箱を隠し、毎朝、毎晩、そこへ足を運び、鏡に向かって話しかける。

 

▼つづら


By Ocdp投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link 

 

それを不審に思った女房のお光が、正助の留守に納屋へ行き、つづらのふたを取って鏡に映った自分の顔を見る。

同じく鏡を見たことがないお光は、正助が女をかこっていると思いこみ、帰って来た正助を問い詰め、夫婦ゲンカに発展してしまう。

 

–ネタバレ–

 

ちょうど表を通りかかった尼さんが夫婦喧嘩の仲裁に入る。

事情を聴く尼さん。女房のお光は「あれは女だ」と言い、正助は「あれは父だと」言う。尼さんが「自分が会ってよく言い聞かせる」と鏡を覗く。

そして尼さんが「ふふふ、お光よ、正さんよ、喧嘩せねえがええよ。おめえらがあんまりえれえ喧嘩したで、中の女ぁ、尼になって詫びている」と言う。

 

–ネタバレ終わり–

 

みどころ

 

鏡が珍しい時代ならではの噺です。

出てくる人物がすべて善人で、ほのぼのとした世界観が味わえます。

 

次のページでは、ただただ笑えるおもしろい落語である「滑稽噺」を3つ紹介したいと思います。

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十代目 柳家小三治 【おすすめ落語名人9選】

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この第4章では9ページにわたって落語名人を紹介しております。

次のページではマクラが面白いと評判で「マクラの小三治」と呼ばれる「十代目 柳家小三治(やなぎや こさんじ)」を紹介します。

 

▼おすすめ落語名人9選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

十代目 柳家小三治とは

名前 十代目 柳家小三治(やなぎやこさんじ)
本名 郡山 剛蔵(こおりやま たけぞう)
生年月日 1939年(昭和14年)12月17日
弟子 ・7代目 柳亭 燕路 (林家彦六賞を受賞)
・柳家三三(芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)受賞)
マクラが面白い落語家として有名で「マクラの小三治」と称される。1998年に小三治のマクラのみを集めた書籍「ま・く・ら」が出版されている。2014年には人間国宝に認定。芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章などの受賞歴を持つ。落語協会会長を務める。

 

略歴

 

学生時代から落語が大好きだったという小三治さん。高校時代にはラジオ東京の『しろうと寄席』で落語を演じ、15回連続の審査合格という快挙を果たしたそうです。

高校卒業後の1959年(20歳になる年)、のちに落語界初の人間国宝となる五代目 柳家小さん(やんぎや こさん)に入門。前座名「小たけ(こたけ)」を名乗ります。

 

▼師匠の五代目柳家小さん


▼柳家小さんの紹介は前ページにて!

 

 

1963年(24歳の年)に二つ目昇進を果たし「さん治」となります。

1969年(27歳の年)、17人抜きで真打昇進を果すとともに「十代目 柳家小三治(やなぎや こさんじ)」を襲名。

 

▼落語家の階級

落語家の階級について詳しくは第1章で!(現在第4章)

 

2010年(68歳の年)、 落語協会会長就任。四年間務めたのち、会長の座から勇退します。

2014年(72歳の年)、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。

存命する唯一の人間国宝の落語家であり「最後の名人」とも称される小三治さん。

飄々とした表情でぶっきら棒にしゃべる語り口や、芸に厳しい姿勢などもあり、「孤高の落語家」とも呼ばれています。

 

十代目柳家小三治のココがすごい!

① マクラが抜群に面白い

 

小三治さんは「マクラの小三治」と呼ばれているほど、マクラ(落語の導入部分で話すその落語家が考える小噺)が面白い落語家として有名です。

一般的にマクラは5分~15分程度ですが小三治さんのマクラはとにかく長く、1時間マクラをしゃべって落語は10~15分、ということもよくあります。

マクラだけしゃべって落語はやらないということもあり「落語が聴きたいのに関係のない話ばっかりして!」と怒るお客さんがいるのも事実ですが、そういうスタイルの小三治さんが好きというファンも多くいます。

フォークシンガーのなぎら健壱さんは小三治さんのマクラについて「もはや即興の新作落語」と言っていますが、まさにマクラそれ自体が落語一席に値するほどの「芸」になっているとも言える「究極のマクラ」です。

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なぎら健壱

1952年生まれの日本のフォークシンガー。タレントとしても活動し「おつだねー」というフレーズがよくものまねされていた。

 

ちなみに小三治さんは1996年にトークだけをおさめた『めりけん留学奮戦記』『ニューヨークひとりある記』『玉子かけ御飯』という、3枚の随談(ずいだん:随筆風に気軽に話す話)CDを出しています。

 

⚫柳家小三治トークショー 1 ~めりけん留学奮戦記[CD]

⚫柳家小三治トークショー 2 ~ニューヨークひとりある記[CD]

⚫柳家小三治トークショー 3 ~玉子かけ御飯[CD]

⚫ま・く・ら (講談社文庫)

 

「ま・く・ら」は、小三治さんのマクラや随談のみを集めた書籍です。1998年に出版され、大ヒットしました。

② 可愛さを描く達人

 

小三治さんが演じる人々は、とにかく「可愛さ」があります。

特別に面白い台詞をいっているわけではないのに、その自然体の可愛らしさになぜか笑ってしまうのです。

考えごとをするときの仕草、驚いたときの表情、ちょっとした視線の動きなど、日常生活の中で誰もがやっている普通の言動なのに、なぜかとても可愛く見えて思わず笑ってしまうのです。

 

小三治さんの十八番に『長短(ちょうたん)』という演目があります。

これは、気の長い男(長七)が気の短い男(短七)の家を訪ねる噺で、何事もテンポよく進めたい短七が、長七のマイペースに調子を狂わされて焦れる様が面白い落語です。

この2人を小三治さんが演じるとなんとも愛くるしく、抜群に面白いのです。

長七のゆったりとした煙草の吸い方にイラついた短七が「煙草はこう吸え」とお手本を見せる一連の仕草と、プクーっとほっぺたを膨らませる表情の可笑しさは、小三治落語の真骨頂といえます。

 

また『あくび指南(しなん)』もおすすめです。

『あくび指南』は、あくびのやり方を教える先生と教わる弟子の掛け合いが面白い噺ですが、小三治さんの『あくび指南』は若手の頃からメチャクチャ面白いです。

あまりに爆笑を取るので、師匠の小さんさんが「あの噺はそんなに笑わせちゃいけねぇんだ」と呆れたというほどのネタです。

こちらも先生と弟子を絶妙の可愛らしさで表現している、小三治さんの十八番演目です。

 

▼柳家小三治さんの可愛らしさの表現を堪能できる作品

⚫落語研究会 柳家小三治大全 上 [DVD]

※『長短』が収録されています。

⚫「あくび指南」「不動坊火焔」(CD)

 

以上、このページで『落語初心者入門』は終わりです!

ここまで読んでいただきましてありがとうございました。落語は生で観てその醍醐味を感じるのがよいと思っております。このWebonを参考にぜひとも、実際に寄席に足を運んでいただければと思います。

もう一度はじめから読む(目次へ)

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ニ代目 桂枝雀 【おすすめ落語名人9選】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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この第4章では9ページにわたって落語名人を紹介しております。

このページでは「上方落語の爆笑王」である「二代目 桂枝雀」を紹介します。

 

▼おすすめ落語名人9選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

二代目 桂枝雀とは

名前 二代目 桂枝雀(かつら しじゃく)
本名 前田 達(まえだ とおる)
生年月日 1939年(昭和14年)8月13日/没年1999年(享年59)
弟子 ・桂南光(関西テレビのローカル生番組「痛快!エブリデイ」の総合司会を務める)
上方落語の代表的落語家であり「東の志ん朝、西の枝雀」と称された。客を爆笑させるスタイルの落語を得意とする。周囲の人々が「稽古ばかりしている人であった」と口を揃えるほどの努力家。英語落語の先駆者。松本人志や千原ジュニアなど大物お笑い芸人たちがリスペクトする存在。

 

略歴

 

兵庫県神戸市に生まれた枝雀さん。子供の頃から人を笑わせることが大好きで、学校でもクラスメイトや先生を笑わせていたといいます。

弟と漫才コンビを組んで出場した素人参加の漫才番組の常連となりました。

「爆笑をかっさらう少年兄弟漫才コンビ」として有名になっていたという程なので、その才能がいかに飛び抜けたものだったかがわかります。

※枝雀さんの弟は、のちに「マジカルたけし」という名で活躍する奇術師(マジシャン)になります。

 

1961年(22歳になる年)、小学生の頃から成績優秀だった枝雀さんは神戸大学に進学しますが、わずか1年で辞めてしまい、三代目 桂米朝(かつら べいちょう)に入門。「小米(こよね)」を名乗ります。

 

▼三代目 桂米朝

▼桂米朝さんについては前ページで解説!

 

1973年(34歳の年)、二代目 桂枝雀(かつら しじゃく)を襲名。

1984年(45歳の年)、東京の歌舞伎座で「桂枝雀独演会」を開催。上方(関西)の落語家として初めて歌舞伎座の舞台に立ちます。

 

▼歌舞伎座

 

枝雀さんは、同世代で大活躍していた三代目 笑福亭仁鶴(しょうふくてい にかく)や桂三枝(かつら さんし)らのようにテレビやラジオなどのメディアで名前を売ったのではなく、落語で全国を周ってメジャーになっていきました。

 

▼三代目 笑福亭仁鶴

▼桂三枝

 

笑いに徹底的にこだわった枝雀さんは、常に完璧な爆笑落語を追求していた人で、そのプレッシャーから鬱になり、入退院を繰り返します。

1998年(59歳の年)1月の高座を最後に休演。

その後も「以前より面白い落語を見せる」という意気込みで努力していたようですが、気力・体力が回復せず、1999年3日13日の夜、残念ながら自ら命を絶ってしまいます。

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二代目 桂枝雀のココがすごい!

① 上方落語の爆笑王

 

枝雀さんは、笑いの多い落語を得意とする落語家がたくさんいる上方落語界においても、群を抜いて面白い落語家でした。

枝雀さんは小米(こよね)という芸名時代はわりと普通に落語をやっていたそうですが、枝雀を襲名した途端に芸風が激変し、豊かな表情と派手な身振り手振りを交えた爆笑落語へと舵をきっていったといいます。

その演じ方はとにかく尋常ではありません。

変幻自在の表情、オーバーなアクション、ときに座布団からはみ出しそうになったり、飛び上がったり、180度回転して背中を見せたり、床にドスンと頭をぶつけてみたりと、もうはちゃめちゃです。

その圧倒的なオリジナリティから生み出さられる面白さは「神の領域」ともいえるほど凄いものです。

 

② 海外でも大爆笑

 

枝雀さんは学生時代から英語が得意だったそうで、大人になってからも趣味で英語を勉強しているうちに、落語の演目を英語で演じる「英語落語」を手掛けるようになります。

1987年(48歳の年)には、ハワイ・バンクーバー・ロサンゼルスにて、初の英語落語での公演を行い、大成功をおさめます。

その後、約10年にわたり行った「英語落語海外公演」は笑いの本場イギリス(※「笑いの本場」についての考え方はいくつかあります)をはじめ多くの国で行いましたがどの国でも大ウケだったそうです。

国籍に関係なく、どこの会場でも、どんなお客さん相手でも大爆笑をかっさらう枝雀さんはまさに唯一無二の爆笑王であるといえます。

 

③ とにかく落語が好き

 

とにかく落語が大好きだった枝雀さん。

枝雀さんをよく知る人たちは「稽古ばかりしている人であった」と口を揃えます。

寝ているとき以外は落語の稽古をやっていたといわれる枝雀さんは、歩きながら稽古をするという癖があり、自宅の周りをブツブツ喋りながら歩いていることも多く、ときには不審者と間違われて通報されたこともあるそうです。

枝雀さんの一番弟子である桂南光(かつら なんこう)さんは「三百年の歴史のなかで、あれほど落語が好きな人はいない」とまでいっています。

 

▼桂南光さん

 

枝雀さんが凄いのは、それほどまでの稽古を「楽しんで」やっているという点です。

枝雀さんは「天才」と称される人ですが、才能はもちろんのこと「稽古を楽しみながらできる天才」だったともいえるのかもしれません。

 

桂枝雀の十八番 『代書』『宿替え』

 

誰も真似することのできない爆笑落語を築き上げた枝雀さんですが、持ちネタは60と決めていたといいます(年によっていくつか入れ替えることはある)。

その60の演目を徹底的に磨き上げて、とっかえひっかえしながら高座にかけていたそうですが、その中でも十八番中の十八番が『代書(だいしょ)』と『宿替え(やどがえ)』です。

※「代書」は「代書屋」とも呼ばれます。

 

枝雀さん曰くこの2つは「必ずウケるネタ」だそうで、私的にも分かりやすい内容で笑いどころの多い作品なので落語初心者にはおすすめしたい演目です。

注目のポイントは、枝雀さんの一挙手一投足すべてです。

最初から最後まで、その豊かな表情、派手な動き、妙な抑揚をつけた台詞回しなどなど、どれも見逃し厳禁です。

 

▼桂枝雀氏の『代書』『宿替え』が収録されている作品

⚫桂枝雀落語大全 【第一期】 DVD-BOX 全10枚セット

「代書(代書屋)」のあらすじなど詳しくは第2章で解説!(現在第4章)

 

次のページでは「マクラの小三治」と呼ばれる「十代目 柳家小三治(やなぎや こさんじ)」を紹介します。

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三代目 桂米朝 【おすすめ落語名人9選】

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この第4章では9ページにわたって落語名人を紹介しております。

このページでは1時間を超えるスケールの大きな噺の「地獄八景亡者戯」を得意とする「三代目 桂米朝」を紹介します。

 

▼おすすめ落語名人9選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

三代目 桂米朝とは

名前 三代目 桂米朝(さんだいめ かつらべいちょう)
本名 中川 清(なかがわ きよし)
生年月日 1925年11月6日/没年2015年
弟子 ・月亭可朝(コミックソングがレコード化され大ヒット)
2代目 桂枝雀(上方落語を代表する噺家として活躍)
・2代目 桂ざこば(毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー)
第二次世界大戦後滅びかけていた上方落語の復興に尽力した「上方落語四天王」の1人に数えられる。1987年紫綬褒章を受賞、1996年には人間国宝に認定され、2009年に演芸会初の文化勲章受章する。テレビやラジオにも多数出演し、お茶の間でも人気を博した。

 

経歴

 

1925年(大正14年)関東州(現・中国)大連市に生まれた米朝さん。

 

 

1930年(昭和5年:5歳になる年)父親の実家がある兵庫県姫路市に一家で戻ります。

寄席好きだった父親の影響により、子供の頃から寄席に通ったり『落語全集』を読んだりと、かなりの落語少年だったといいます。

 

1943年(18歳の年)中学校を卒業後、上京して大東文化学院に入学。在学中に、寄席研究家で作家の正岡容(まさおか いるる)に弟子入りします。

1945年(20歳の年)、招集されて入隊しますが、急性肝臓炎にかかり入院。陸軍病院のベッドで終戦を向かえます。

終戦後、神戸市にある雑貨の卸会社の会社員となり、姫路から大阪に通いながら、落語会を主催するなどの活動を行います。

1947年(22歳の年)、プロの落語家になりたいとの思いが抑えきれなくなり、会社勤めをしながら四代目 桂米團治(かつら よねだんじ)に弟子入り。以後「三代目 桂米朝」を名乗ります。

 

▼四代目 桂米團治

 

昔は15~16歳で弟子入りするのが一般的だったので、このとき22歳であった米朝さんは、少し遅い弟子入りだったといえます。

兵庫の姫路の家から神戸の会社に通い、大阪で落語家修業の日々を送る米朝さんでしたが、気力は充実していても体力が続かなくなり、会社を辞めて大阪の師匠宅に内弟子(うちでし:住み込みの弟子)として住み込むことになります。

低迷しきっていた上方落語の復興を願い、若手時代から落語会や落語勉強会を主催するなど、力を尽くします。

1957年(32歳の年)、若手が中心となって「上方落語協会」を結成。米朝さんは副会長に就任。寄席のみならずタレントとしても人気となり、テレビやラジオの司会でも大活躍します。

 

▼桂米朝出演番組の例:「ハイ!土曜日です」1967年から桂米朝が司会を務める。40年続いたワイドショー番組。


photo by 松嶌徹  CC 表示-継承 4.0

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1996年(71歳の年)、上方落語界では初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。また、2009年(84歳の年)には、演芸界初の文化勲章受章者となります。

 

文化勲章とは
芸術、科学などの分野において文化の発展に著しく功績のあるものに授与される日本の勲章。賞は直接天皇から授与される。

 

2015年、肺炎のため89歳で死去。

 

桂米朝の十八番

『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』

 

米朝さんの得意演目の代表ともいえるのが「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」です。

この噺は、ほとんどやり手がいなかったものを米朝さんが発掘し、再構成したもので、通しでやると1時間を超える大作です。

途中でお囃子(=楽器による演奏)が入るのが特徴で、江戸落語では「地獄めぐり」と呼ばれています。

 

江戸落語
落語は「江戸落語」「上方落語」の2つに分けることができる。江戸落語は江戸発祥の落語であり、上方落語は上方(関西)発祥の落語である。両者は同じ演目でもタイトルが異なる場合がある。詳しくは第1章で解説(現在、第4章)。

 

「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」は全編に時事ネタを絡めたギャグが盛り込まれるスケールの大きな爆笑噺です。「1時間を越えるスケールの大きな噺」であるため力量が試される噺でもありますが、米朝さんはこの時事ネタが抜群に面白いのです。

特徴的なのは、特定の時事ネタをやるのではなく上演するその日にあった出来事を新聞などで調べ、ギャグとして噺の中にどんどん取り入れていくこと。

そのため、米朝さんの「地獄八景」は「1つとして同じものがない」とも言われています。

晩年の米朝さんは体力的な問題もあり、口座では落語をやらずに雑談だけをやるようになりましたが、これは「米朝噺」と呼ばれ、大いにお客さんを楽しませました。

そんな巧みな話術とギャグセンスに溢れた米朝さんの、ギャグ満載の地獄八景は、桂米朝という落語家を楽しむうえで絶対に外せない一席です。

 

▼桂米朝氏の「地獄八景」が鑑賞できる作品

⚫特選!!米朝落語全集 第十集 [DVD]

 

『一文笛』

 

「一文笛(いちもんぶえ)」は米朝さんの十八番であり、自身で作った新作落語でもあります。

 

新作落語とは
落語の演目は「古典落語」「新作落語」の2種類がある。新作落語は大正時代以降に作られた落語のこと。古典に比べてわかりやすく爆笑しやすいのが特徴。両者の違いは第1章で詳しく解説。

 

古い落語を掘り起こして復活させることが自分の役割だと思っていた米朝さんが「1つくらい自分でも作ってみたい」と思い、1955年(昭和30年)30歳のときに完成させたのがこの噺です。

古くからあった演目のように思われていますが、「後世に残る新しい古典落語」として、今日では東京の落語家でも演じる人がいる名作でもあります。

「一文笛」は、スリ師を主人公とした噺で、ストーリー性があるような大ネタではありませんが、巧な会話や見事などんでん返しに思わず唸ってしまう落語です。

落語作家としての桂米朝の凄さを味わえる一席です。

 

▼桂米朝氏の「一文笛」が鑑賞できる作品

⚫特選!!米朝落語全集 第二十四集 [DVD]

 

次のページでは「上方落語の爆笑王」である「二代目 桂枝雀(かつら しじゃく)」を紹介します。

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七代目 立川談志 【おすすめ落語名人9選】

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この第4章では9ページにわたって落語名人を紹介しております。

このページでは、破天荒な言動や行動で好き嫌いが分かれる落語家「七代目 立川談志」を紹介します。

 

▼おすすめ落語名人9選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

七代目立川談志とは

名前 七代目 立川談志(ななだいめたてかわだんし)
本名 松岡 克由(まつおか かつよし)
生年月日 戸籍上は1936年1月2日(実際は1935年12月2日生まれ)/没年2011年11月21日
弟子 ・立川志の輔(「ためしてガッテン」の司会)
・立川談春(エッセイ「赤めだか」がTBSでドラマ化)
・立川志らく(2017年上半期のブレイクタレント部門1位にランクイン)
「自身が司会を務めるでラジオ番組でゲストを残して途中で帰る」「居眠りした客を追い出す」など破天荒な行動が目立ち、好き嫌いが分かれる落語家。独自の落語の型を持ち落語家としての評価は著しく高い。日本テレビ「笑点」の初代司会者を務める。また同番組は談志が企画して実現したものである。ヘアバンドやメガネを愛用し、自身のあごや頬をなでたりする癖、また「やだね~」などの口癖があるなどの個性的な振る舞いがあり、よくものまねされる対象となった。

 

略歴

 

東京府東京市小石川区(現在の東京都文京区白山)に生まれた談志さん。1952年に高校を中退し、16歳で五代目柳家小さん(やなぎや こさん)に入門し「柳家小よし(やなぎや こよし)」と名乗ります。

 

▼五代目柳家小さん


▼柳家小さんについて詳しくは前ページにて!

 

1954年(18歳になる年)に二つ目昇進を果たし「柳家小ゑん(やなぎやこえん)」に改名。

▼落語家の階級

落語家の階級については第1章で詳しく解説!(現在第4章)

▼1959年柳家小ゑん時代の七代目立川談志

 

1963年(27歳の年)に「七代目 立川談志」を襲名して、真打昇進を果たします(襲名は七代目だが色々と思うところがあって、本人は五代目を自称している)。

談志さんは若手時代から「天才現る!」と騒がれ、早くからテレビなどのメディアにも進出し人気者となります。

落語家としては評価が高く「落語界の風雲児」「落語の革命家」「天才落語家」など、数々の異名を持ち多くの落語ファンから愛されました。

一方でその型破りで破天荒な言動から、好き嫌いがはっきりと分かれる落語家でもあります。

 

七代目立川談志のココが面白い!

① 政治家になる

 

押しも押されぬ人気落語家であった談志さんは、1969年(33歳の年)に衆議院議員選挙に出馬して世間を驚かせました。

前年の1968年に石原慎太郎・青島幸男・横山ノックなど、タレント候補といわれた人が全員当選しました。それを受けて談志さんは「タレント議員がブームなら、それに乗らない奴は芸人じゃない」という理由で出馬したと言います。

初めての選挙は落選しましたが、1971年(35歳の年)に参議院議員選挙に出馬して当選。

1975年(39歳の年)には沖縄開発庁政務次官になりますが、わずか1カ月で辞任します。二日酔いで記者会見に臨んだことが辞任の引き金となったようです。

記者から「公務と酒とどちらが大切なのか」と聞かれ「酒に決まってるだろ」と返したというから驚きですね。

結局、議員活動は参議院議員1期6年だけで終わりました。

 

② 落語立川流創立

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1983年(47歳の年)真打昇進制度に不満を持ち(二つ目から真打に昇進する判断基準などがおかしいと)、落語協会会長であった師匠・柳家小さんと対立して破門となります。

同年、落語協会を脱会し「落語立川流」を創立。落語界初の家元制度(トップである家元が門下生に流儀を教えると共に免許を渡す制度)をつくり、上納金をとるようになりました。

そのことから談志さんは「家元」と呼ばれるようになったわけですが、ユニークなのは、3種類あるそのコース。

Aコースはプロの落語家(いわゆる一般的な弟子)。

Bコースは落語に興味を持っている文化人や芸能人。このBコースには、ビートたけし、高田文夫、赤塚不二夫、上岡龍太郎、山本晋也、横山ノックなど、錚々たるメンバーが顔をそろえています。ちなみに、入門すると落語を教えてもらえたり、立川○○という落語家の名前をもらうことができます。

Cコースは一般人が対象のコース。

 

立川流は「ためしてガッテン」の司会でおなじみの立川志の輔(しのすけ)「下町ロケット」などで役者としても活躍する立川談春(だんしゅん)、テレビにラジオに引っ張りだこの立川志らく(しらく)など、人気落語家を多く輩出する一門で、談志さん亡き後も、超個性派集団からは目が離せません。

 

▼立川志の輔

▼立川談春

▼立川志らく

 

談志の十八番① 『芝浜(しばはま)』

 

談志さんの十八番として真っ先に挙がる噺が『芝浜』です。

談志さんの『芝浜』は落語史に残る傑作であり、談志さん自身こだわりを持って演じていました。

 

注目なのは、従来の落語からすると過剰とも思えるほどの「感情移入の凄さ」です。

登場人物に完全に入り込み、実際にそこにその人物がいて喋っているのではないかと思わせるほどの圧倒的な迫力があります。

特に2007年によみうりホールで演じた「芝浜」は、「伝説の名演」として落語界で語り継がれています。

 

▼よみうりホールが入っている東京・有楽町駅前の「読売会館」

 

「落語の神様が談志に乗り移って登場人物に台詞を喋らせた」といわれるほど圧倒的に凄い「芝浜」であったそうです。

「芝浜」は、落語通ではない人でも最も談志落語の「凄み」を感じやすい演目だと思います。

 

▼2007年よみうりホールで行われた「伝説の名演」の「芝浜」が収録されている作品

⚫談志CD大全 21世紀BOX

「芝浜」のあらすじなど、詳しくは第2章で解説!(現在第4章)

 

談志の十八番②  『鼠穴』

 

談志さんの演者としての最大の魅力は、聴き手を噺の世界へ引きずり込む「迫真の演技力」です。

理不尽な目に遭った男の悲痛な叫びや怒りをリアルに描き出す演技力は抜群です。

その演技力は歳を重ねるごとに凄味を増し、研ぎ澄まされていきましたが、それを感じられる演目としておすすめしたいのは、談志さんの十八番「鼠穴(ねずみあな)」です。

この噺はただでさえドラマティックですが、そこに談志さんの迫真の演技力が存分に発揮されると、落語における「人情噺」の範疇を大きく飛び出し、強烈なドラマとなって聴く者の心を激しく揺さぶります。

無一文から築き上げた財産を一夜にして失い、絶望のどん底に突き落とされた男の悲痛な叫びをメリハリの効いた真に迫った演技でリアルに表現した談志さんの「鼠穴」。

落語の世界に引きずり込まれ、現実の世界に戻ってこられなくなるかもしれない。そんな一席です。

 

▼七代目立川談志「鼠穴(ねずみあな)」収録作品

⚫立川談志プレミアム・ベスト 落語CD集「饅頭怖い」「ねずみ穴」

 

次のページでは1時間を超えるスケールの大きな噺の「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」を得意とする「三代目桂米朝」を紹介します。

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