King Gnu入門 〜全人類必聴の歴史的革命バンド〜 【メンバーと軌跡編】はこちらから!
はじめに
第1章 軌跡
第2章 常田大希
第3章 井口理
第4章 勢喜遊
第5章 新井和輝
著者:渡辺和歌
1970年生まれ。音楽を愛して40年。中学時代は『ベストヒットUSA』を欠かさずチェック。当時の洋楽ヒット曲をラジオから録音しお気に入りのカセットテープを作成。ビートルズのアルバムは全て揃え『イエロー・サブマリン』などのビートルズ映画上映会にも欠かさず参加。中森明菜さんのファンで歌詞を耳コピして書き起こしていた。中島みゆき、中森明菜、尾崎豊、サカナクション、大島保克、元ちとせにも傾倒。King Gnuを聴いて生き方が変わるほどの感銘を受ける。現在はラジオやテレビ出演、SNSやライブなどでチェックしKing Gnuを追いかけている。
お問い合わせはこちらから
『King Gnu入門【メンバーと軌跡編】』目次へ (全16ページ)
この章ではは3ページにわたってKing Gnuのドラマーの勢喜遊(せき ゆう)さんという人物を【基本情報と略歴】【人間性】【音楽性】に分けて紹介します。
このページでは勢喜さんの音楽性についてお伝えします。
基本情報 ~音楽遍歴・使用楽器一覧~
名前 | 勢喜遊(せき ゆう) |
担当 | ドラム/サンプラー |
生年月日 | 1992年9月2日 |
音楽遍歴 | レッド・ホット・チリ・ペッパーズ/ウェルドン・アーヴィン/ダニー・ハサウェイ/ディアンジェロ/デズリー/ニーヨ/レデシー/マーズ・ヴォルタ/ケンドリック・ラマー/マック・ミラー/サンファ/グレッチェン・パーラト/スウィンドル/ジェイムス・ブレイク/スティーヴ・アオキ/ロック~ファンク~ラテン~ブラックミュージック~ジャズ |
使用楽器 | ・シェル:Kitano Stainless Shell ・スネア:Ludwig Black Beauty 14″×6.5″ ・ハイハット上:Paiste Signature Dark Crisp Hi-Hat Top ・ハイハット下:Paiste Signature Medium Hi-Hat Bottom ・クラッシュ:SABIAN AA Rocktagon 18″ ・クラッシュ:Zildjian FX Oriental Crash of Doom 22″ ・チャイナ:Koide Cymbals 503 China 18″ ・サンプラー:Roland SPD-SX |
King Gnuにおけるリズム隊の重要性
勢喜さんの音楽性について……ですが、冒頭からいきなり脱線します。
勢喜さんの存在がいかに重要かを知っていただくため、まずはKing Gnuにおけるリズム隊の重要性についてお伝えいたします。
アニメ『BANANA FISH』のエンディングテーマとして『Prayer X』を聴き、King Gnuというバンドがどうもアヤシイ……と思った私は、続いて『Tokyo Rendez-Vous』のMVを見ました。
▼『Tokyo Rendez-Vous』MV
MVを1回見た限りでは聴覚より視覚的なインパクトのほうが強く、ヒップホップのラップ調だし、ヤンチャなおしゃれ系バンドか……と思ってしまったわけです。個人的に「ヒップホップ・ヤンチャ・おしゃれ」という苦手な3要素がそろってしまったというくらい。
ただ、『Prayer X』とは全然曲調が違っていたので、もう少し聴いてみないとわからない……ということで『Vinyl』のMVを見ました。
▼『Vinyl』MV
そしてMVを1回見ただけで、度肝を抜かれました。それは歌のリズムが想定外だったから。
実はメロディー(主旋律)にもリズムはあるわけです。この流れだとこう続く……というなじみ深いパターンも存在します。その予想がことごとく裏切られ、メロディーを追うだけでもすかされたり、つんのめったり、タメがあったり、驚きの連続。それが『Vinyl』でした。
『Vinyl』のMVを見たことによって「King Gnuというバンドは音楽と真摯に向き合うという意味で、ヒップホップ(『Tokyo Rendez-Vous』)にもエモーショナルなアニメソング(アニメ『BANANA FISH』主題歌の『Prayer X』)にも取り組んでいたのか!」と気づいたのです。
「音楽を聴け!リズムを体感せよ!」ということか、と。
実際に私が驚いたポイントもリズムだったわけです。
そこからKing Gnuに関しても「メロディー(主旋律)重視の聴き方」と併せて「リズム重視の聴き方」をするようになり、この変態的ともいえるほどのリズムを生み出しているのがドラムとベース、すなわちリズム隊の2人であると認識します。
ベースの新井和輝(あらい かずき)さんについては後述しますので、まずドラムの勢喜遊(せき ゆう)さんから。
勢喜さんのドラム
常田大希さんの作曲の妙もありつつ、実際のグルーヴ(ノリ)を生み出しているのがフィルイン(一定パターンで刻むビート(拍)以外の変化のこと)も多く、圧倒的で複雑極まりないドラムというわけです。
ようやく勢喜さんの話に戻ってきました。この文章のトリッキーな展開も、自称“鋭角なボケ”を放つ「ズレ芸人」勢喜さんの幻のホームランを見習って……ということにしておきましょう。
時にはライブで持ち場を離れ、ステージ中央で踊り出すこともある勢喜さん。
そもそもお父様が“踊るドラマー”という、DNAも育った環境も“リズムの塊”なんですね。そのうえ「日曜日はスタジオが休みだから嫌」というほど、毎日のように練習に励むストイックなドラマーです。
幼少期からドラムに親しみつつ、(靱帯の怪我により断念したものの)7年ほどプロを志すほど熱心に取り組んだというダンスの経験も、現在のドラムに非常に役立っているそうです。具体的には「どう踊るか?」を意識してビートを刻んでいるとか。
たしかにドラムもダンスもリズム感が重要……ですが、「そういえばリズムって何?ビートって何?」という方もいるかもしれません。そのような疑問をお持ちの方は下記のコラムをご覧ください。
「ビート」とはたとえば4分の4拍子の楽曲なら「1・2・3・4」という「拍」のことです。ドラムにはまずタイトに(拍どおりきっちりと・ジャストに)ビートを刻む使命があります。簡単にいうとメトロノームの「1・2・3・4」がビートです。
ただ、ドラム演奏は「ジャストのビートでタイトに叩く=ビートを刻む」だけではありません。「1・2・3・4」などのビートの一定パターン以外に変化をつけること。これが「フィルイン」です。たとえば「1・2・3・4」と「1・2・3・4」の間に「タカトン」と入れるなど。
さらにタイトなビートだけでなく、ジャストより少し前(アヘッド)、ジャストより少し後(レイドバック)でビートを刻むことにより、リズムに揺らぎ・ノリが生まれます。これがグルーヴです。
わかりやすさ最優先で大ざっぱな解説になっている点はご了承ください。King Gnuのメンバー3人はたしかにセッション(即興演奏)シーン出身ですが、ライブでもその場で思いついたアドリブ(即興演奏)を入れるわけではありません。ドラムのフィルインも含め、あくまで考え抜かれたアレンジということになります。
きちんと説明すると長くなりますので、下記の意味とキーワードをヒントにリズムやグルーヴを体感してみてくださいませ。
【意味】
・ビート(拍):リズムの基本単位
・拍子:アクセントのあるビート(拍)の繰り返し
・テンポ:曲・ビート(拍)の速さ
・リズム:規則的な音のパターン
・グルーヴ:リズムのノリ・揺さぶり
【キーワード】
・ビート(拍):4ビート・8ビート・16ビート
・拍子:4分の4拍子/強拍・弱拍/表拍・裏拍/ダウンビート・アップビート
・テンポ:BPM(Beats Per Minute/1分間の拍数)
・跳ねないリズム:イーブンフィール・ストレート
・跳ねるリズム:バウンスフィール・スウィング・シャッフル
・グルーヴ:縦ノリ・横ノリ/前ノリ・後ノリ(ジャスト・アヘッド・レイドバック)
勢喜さんのドラムの特徴
また、ドラムを叩いたことがない方のためにざっくり解説しますと、ドラムセットには大まかにいわゆる太鼓の「ドラム」と金属の「シンバル」があります。
このドラムのまわりの部分の胴が「木製」か「金属製」かでも音の響きが変わります。勢喜さんは金属製の胴である「キタノのステンレスシェル」を中心に使っていらっしゃいます。
・木胴(ウッドシェル):メイプル・バーチ・オークなど
・金属胴(メタルシェル):スチール・ステンレス・ブラス・アルミなど
ロックではどちらかという一般的な木胴ではなく、金属胴。
「金属胴」はパワフルな“太い音”が特徴的です。
たとえば4分の4拍子だと2拍目・4拍目の弱拍(裏拍)で叩くスネアドラムは、金属胴である永遠の名器「ラディックのブラックビューティー」を使用。
▼Ludwig Black Beauty 14″×6.5″(画像クリックで商品詳細へ)
ものすごく大ざっぱな説明ですが、ファンクやジャズなど横ノリのグルーヴ感を出すには、このスネアのビートの刻み方が重要になります。
ビートを刻む際、基本となるのは「ハイハット(右手・左足)+スネア(左手)+バスドラム(右足)」(右利きの場合)。足でペダルを踏むことで2枚のシンバルが上下に合わさり、シャンシャンという音色が響くのがハイハットです。
勢喜さんはハイハットではキラキラ感、その他のシンバルではドライで枯れた、はかない音色を重視されているとか。
常田さんと出会ってから使うようになったサンプラー(音を録音したり出力したりする機器)は、タムタムの位置に配置という独特のスタイルです。
常に進化し続けている勢喜さんなので、状況に応じて機材や配置が変わることもあるでしょう。
リズムパターン、ビートの刻み方、フィルインの入れ方も非常に複雑ですが、基本の叩き方を知ると変態的と言いたくなるほどのドラミング(ドラムの叩き方)だとわかりやすいかもしれません。
勢喜さんの音楽遍歴
King Gnuサウンドの要となっているリズムやグルーヴがどのように生まれたのか?という点について理解する上で、勢喜さんの音楽遍歴をたどってみましょう。
ご両親が元プロミュージシャンで生まれたときから音楽にあふれた環境だった勢喜さんですが、自発的に音楽を意識されたきっかけはダンス。
ストリートダンスのなかでもヒップホップを中心に踊られていて、そもそもブラックミュージックにはなじみが深かったことになります。
ただ、勢喜さんが音楽的に大きな衝撃を受けられたのは、高校生のときに踊ったという“レッチリ”ことレッド・ホット・チリ・ペッパーズでした。
1983年結成のアメリカのロックバンド。全世界トータルセールス8000万枚以上。2012年にロックの殿堂入り。ロックをベースとしラップの要素を加えた音楽である「ファンクロック」のパイオニア的な存在。
▼レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Californication』
アメリカのファンクロックバンドなのでとくにファンク、その流れで様々なブラックミュージックに傾倒されたそうです。
また、ドラムの先生から教わったという、中南米のラテン音楽もリズムの宝庫。ひとくちにラテンといってもマンボ、サルサ、スカ、サンバ、タンゴなど様々なジャンルがありますので、それぞれのリズムパターンをひととおり吸収されたことでしょう。
ちなみに勢喜さんの“レッチリ”おすすめ曲は、1991年にリリースされた5枚目のアルバム『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』収録の『パワー・オブ・イコーリティ』。「ツインドラム(2人でドラムを演奏すること)を重ねていて、スネアの音がヤバイ」とのこと。
▼レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『パワー・オブ・イコーリティ』
80年代後半から90年代にかけてのレア・グルーヴ・ムーブメント(1980年代後半にイギリスで起きた知られてない名曲「レア・グルーヴ」を紹介するブーム)で再評価された鍵盤奏者ウェルドン・アーヴィン、ソウルシンガーのダニー・ハサウェイ、90年代ネオソウルのディアンジェロ、イギリスの女性ソウルシンガーのデズリーにも影響を受けたそうです。
勢喜さんがウェルドン・アーヴィンを知ったきっかけは、アルバム『シンバッド』(1976年)収録の名曲『アイ・ラブ・ユー』。おすすめ曲はジェイ・Zの『ディア・サマー』でのサンプリング(過去の曲の一部を引用し再構築すること)でも知られる『モーニング・サンライズ』で、ドラマーのオマー・ハキムに注目されています。
▼ウェルドン・アーヴィン『Morning Sunrise』(画像リンク先で試聴可。無料聴き放題期間有)
ダニー・ハサウェイのアルバム『ライヴ』(1972年)は勢喜さんが無人島に持っていきたい1枚だとか。マーヴィン・ゲイの『愛のゆくえ』、キャロル・キングの『きみの友だち』(ロバータ・フラックとデュエット)、ジョン・レノンの『ジェラス・ガイ』などのカバーが収録されています。
▼ダニー・ハサウェイのアルバム『ライヴ』(画像クリックで商品詳細へ)
ディアンジェロといえば3枚目のアルバム『ブラック・メサイア』が2014年にリリースされましたが、勢喜さんは2枚目のアルバム『ブードゥー』(2000年)から聴き始めたそうです。
▼ディアンジェロのアルバム『ブードゥー』(画像クリックで商品詳細へ)
デズリーのおすすめは2枚目のアルバム『アイ・エイント・ムーヴィン』(1994年)収録の『ユー・ガッタ・ビー』。勢喜さんいわく「KANさん『愛は勝つ』の洋楽版」。勢喜さんがセッションで参加されていた「エレクトリック神社バンド」で、いつもライブの最後に演奏されていたとか。
▼デズリー『You Gotta Be』
さらに勢喜さんはR&Bシンガーのニーヨやレデシー、プログレッシブ・ロックバンドのマーズ・ヴォルタ、ラッパーのケンドリック・ラマーやマック・ミラー、R&Bシンガー兼プロデューサーのサンファ、女性ジャズシンガーのグレッチェン・パーラトもリスペクトされています。
ニーヨはファーストアルバム『イン・マイ・オウン・ワーズ』(2006年)収録の『ソー・シック』、レデシーはジャズのスタンダード『枯葉』やディアンジェロなどをカバーしたセカンドアルバム『フィーリング・ オレンジ・バット・サムタイムズ・ブルー』(2002年)が勢喜さんのおすすめ。
▼ニーヨ『So sick]』
レッチリのギタリストだったジョン・フルシアンテの参加をきっかけに聴くようになったというマーズ・ヴォルタは、4枚目のアルバム『ゴリアテの混乱』(2008年)収録の『ワックス・シムラクラ』。
▼マーズ・ヴォルタ『Wax Simulacra』
ケンドリック・ラマーは3枚目のアルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』(2015年)。
▼ケンドリック・ラマーのアルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』(画像クリックで商品詳細へ)
マック・ミラーは5枚目のアルバム『スイミング』(2018年)。
▼マック・ミラーのアルバム『スイミング』(リンク先で試聴可。無料聴き放題期間有)
サンファはファーストアルバム『プロセス』(2017年)収録の『コラ・シングス』。
▼サンファのアルバム『プロセス』(画像クリックで商品詳細へ)
サンファの『コラ・シングス』はKing Gnuが音楽フェス『COUNTDOWN JAPAN』(カウントダウン・ジャパン)に出演した際、常田さんが楽屋にて爆音で流していたそうです。勢喜さんいわく、アフロビート(ジャズやファンクの要素を下地としたアフリカ音楽)の創始者フェラ・クティを彷彿とさせる“ネオ・アフロビート”とのこと。
グレッチェン・パーラトはセカンドアルバム『イン・ア・ドリーム』(2009年)収録の『ウィーク』が勢喜さんのお気に入り。
▼グレッチェン・パーラトのアルバム『イン・ア・ドリーム』(画像クリックで商品詳細へ)
グレッチェン・パーラトはデヴィッド・ボウイの遺作『★(ブラックスター)』(2016年)への参加でも知られる天才ドラマー、マーク・ジュリアナの奥様。『ウィーク』は女性R&BトリオSWV(シスターズ・ウィズ・ヴォイセス)が90年代に放ったヒット曲のカバーです。
そしてイギリスのスウィンドル(グライム&ダブステップ&ジャズのトラックメイカー)、シンガーソングライター兼プロデューサーのジェイムス・ブレイク(ポスト・ダブステップというジャンルで有名)も注目されている勢喜さん。
スウィンドルではセカンドアルバム『ピース・ラヴ・アンド・ミュージック』(2015年)収録の『ロンドン・トゥ・LA』、ジェイムス・ブレイクではファーストアルバム『ジェイムス・ブレイク』(2011年)収録の『アイ・ネヴァー・ラーント・トゥ・シェア』がおすすめだそうです。
▼スウィンドルのアルバム『ピース・ラヴ・アンド・ミュージック』(画像クリックで商品詳細へ)
▼ジェイムス・ブレイクのアルバム『ジェイムス・ブレイク』(リンク先で試聴可。無料聴き放題期間有)
ケーキ投げのパフォーマンスで知られるEDMのDJ兼プロデューサーのスティーヴ・アオキさんについては元SUPER BUTTER DOG(スーパー・バター・ドッグ)の竹内朋康さんに教えてもらったとか。
▼スティーブ・アオキ『Waste It On Me feat. BTS』
令和に入って勢喜さんがSNSで紹介されていたのは、マーズ・ヴォルタのドラマーであり、フライング・ロータスやサンダーキャットとのコラボでも知られるディーントニ・パークスのドラムソロアルバム『ホモ・デウス』(2018年)。
▼ディーントニ・パークスのアルバム『ホモ・デウス』(リンク先で試聴可。無料聴き放題期間有)
デビューアルバム『フール』(2016年)でフライング・ロータス主宰のレーベル「ブレインフィーダー」の仲間入りを果たしたプロデューサーのジェイムスズーの新作『メルクウェヒ』(2019年)。
▼ジェイムスズーのアルバム『メルクウェヒ』(リンク先で試聴可)
2019年5月に配信リリースされたYOSHIさんのファーストアルバム『SEX IS LIFE』や収録曲の『CHERRY BOY』も「名盤!新世代!」と絶賛されていました。
▼YOSHIのアルバム『SEX IS LIFE』(リンク先で試聴可。無料聴き放題期間有)
これまで列挙したのはすべて勢喜さんがリスペクトされていたり、おすすめされていたりするミュージシャンやアルバム・楽曲でした。
勢喜さんが生み出すグルーヴの魅力
勢喜さんが生み出すグルーヴの魅力を知る上で、まずは簡単にブラック・ミュージックの歴史についてお伝えします。
2018年のグラミー賞アルバム・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀アルバム)に輝いたのは、ブルーノ・マーズ3枚目のアルバム『24K・マジック』。その収録曲『フィネス』は「ニュー・ジャック・スウィング(NJS)」という音楽ジャンルへのオマージュとして話題になりました。
▼ブルーノ・マーズ『Finesse』
このブルーノ・マーズの『フィネス』は、女性ラッパーのカーディ・Bをゲストに迎えたリミックス・バージョンが2018年1月にシングルカットされ、大ヒット。洋楽に詳しくなくても、聴かれたことはあるかもしれません。
▼ブルーノ・マーズ『Finesse (Remix) (feat. Cardi B]』
さて「フィネス」は「ニュー・ジャック・スウィング」という音楽ジャンルへのオマージュとして話題になったとお伝えしましたが、どんなジャンルかよくわからない方もいるのではないでしょうか。
簡単にいうと、80年代後半に音楽プロデューサーのテディ・ライリーが提唱した「ヒップホップ(重厚な跳ねるビート)+R&B(ボーカル)」というブラックミュージックのサブジャンル。以下の具体的な楽曲を聴けば理解しやすいかと思います。
▼ボビー・ブラウンの『エヴリ・リトル・ステップ』
▼ブリトニー・スピアーズもカバーした『マイ・プリロガティヴ』
▼ジャネット・ジャクソンの『リズム・ネイション』
▼マイケル・ジャクソンの『リメンバー・ザ・タイム』など。
ブラックミュージックのなかでも、ヒップホップのリズムに、ラップではなくしっとりメロウに歌い上げるR&Bのボーカルをミックスしたところが新しかったわけです。
たとえばこうしたブラックミュージックの歴史や流れを、お父様から教わったという勢喜さん。
そんな勢喜さんが生み出すグルーヴは、これまでのリズムの歴史を踏まえたうえでなおかつ斬新。
井口理さんのJ-POPにも通じる歌に、圧倒的で複雑なグルーヴという組み合わせは、ブルーノ・マーズによってリバイバルブームになっているNJSの流れとも重なるかもしれません。
King Gnuなら、歌や歌詞を中心とした「メロディー(主旋律)重視の聴き方」でも、いつのまにかグルーヴを体感する「リズム重視の聴き方」になっているはず。
これまで勢喜さんが聴かれてきた音楽を、さらに新しいかたちで堪能できるので、非常に贅沢!より豊かな人生になるでしょう。
以上、勢喜遊さんについてご紹介しました。
続いて、新井和輝さんを見ていきましょう。
『King Gnu入門【メンバーと軌跡編】』目次へ (全16ページ)
はじめに
第1章 軌跡
第2章 常田大希
第3章 井口理
第4章 勢喜遊
第5章 新井和輝
著者:渡辺和歌
1970年生まれ。音楽を愛して40年。中学時代は『ベストヒットUSA』を欠かさずチェック。当時の洋楽ヒット曲をラジオから録音しお気に入りのカセットテープを作成。ビートルズのアルバムは全て揃え『イエロー・サブマリン』などのビートルズ映画上映会にも欠かさず参加。中森明菜さんのファンで歌詞を耳コピして書き起こしていた。中島みゆき、中森明菜、尾崎豊、サカナクション、大島保克、元ちとせにも傾倒。King Gnuを聴いて生き方が変わるほどの感銘を受ける。現在はラジオやテレビ出演、SNSやライブなどでチェックしKing Gnuを追いかけている。
お問い合わせはこちらから