King Gnu入門 〜全人類必聴の歴史的革命バンド〜 【メンバーと軌跡編】はこちらから!
はじめに
第1章 軌跡
第2章 常田大希
第3章 井口理
第4章 勢喜遊
第5章 新井和輝
著者:渡辺和歌
1970年生まれ。音楽を愛して40年。中学時代は『ベストヒットUSA』を欠かさずチェック。当時の洋楽ヒット曲をラジオから録音しお気に入りのカセットテープを作成。ビートルズのアルバムは全て揃え『イエロー・サブマリン』などのビートルズ映画上映会にも欠かさず参加。中森明菜さんのファンで歌詞を耳コピして書き起こしていた。中島みゆき、中森明菜、尾崎豊、サカナクション、大島保克、元ちとせにも傾倒。King Gnuを聴いて生き方が変わるほどの感銘を受ける。現在はラジオやテレビ出演、SNSやライブなどでチェックしKing Gnuを追いかけている。
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『King Gnu入門【メンバーと軌跡編】』目次へ (全16ページ)
この章ではKing Gnuのメンバーのギター・ボーカル・作詞・作曲担当の常田大希さんという人物を【人間性】【文学性】【音楽性】に分けて3ページにわたって紹介いたします。現代のカリスマと呼ばれる理由が伝われば幸いです。
前ページでは常田さんの人間性について紹介いたしました。King Gnuの音楽を「人間性」に重きを置いて楽しめるようになったのではないでしょうか。
このページでは「メロディー重視の聴き方」、つまり歌詞の文学性という観点からも常田大希さんを見ていきましょう。
まるで存在が音楽そのものかのような常田さんですが、King Gnu全曲の作詞をされているのも常田さんです。
目次
『Flash!!!』 ~重視されているのは“パンチライン”~
▲『Flash!!!』MV
最初に注目したい歌詞は『Flash!!!』の冒頭。
It’s Flash!!!
全ては冗談だって
ホンモンかニセモンかなんて
くだらねえぜ真実なんて
ただ下り坂を猛スピードで
駆け抜けるんだ
振り払えんだ、思いのままに
ブレーキは折れちまってんだ
It’s Flash!!!Flash!!!/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
「全ては冗談」と聴いて私が連想したのは、赤塚不二夫さんの『天才バカボン』です。
King Gnuというバンドの在り方について描かれているようでもあり、
聴き手の人生を重ねることもできるうえに、
「命とは一瞬の輝きである」という根源的・普遍的な意味
にも受け取れます。
常田さんが作詞で重視されているのは、ヒップホップ用語で聴かせどころ・印象的なフレーズを意味する“パンチライン”。
言葉は強烈で具体的なのに「誰もが自分の日常に置き換えやすい」「個と個で対峙できる物語になっている」という意味で、世界観は抽象的。ここが魅力です。
歌詞のパンチライン(聴かせどころ)を重視している常田さんですが「Aメロ→Bメロ→サビ(Cメロ)」というJ-POP独特の構成、すなわち「サビ重視の文化」はダサいと思っていたらしく、「日本で売れるためにはサビが重要」という考え方については米津玄師さんから教わったそうです。
国民的有名楽曲であるSMAPの「世界に一つだけの花」(作詞作曲/槇原敬之)を例に解説いたします。Aメロは楽曲の歌い出しから曲が変わるまでのことを指します。「花屋の店先に並んだ 色んな花を見ていた」から「バケツの中誇らしげにしゃんと胸を張っている」がAメロです。BメロはAメロの次に出てくるメロディーです。「それなのに僕ら人間は」から「一番になりたがる?」がBメロです。サビは楽曲の中で最も盛り上がるところ。「そうさ僕らは世界に一つだけの花」から「一生懸命になればいい」がサビです。
たしかに「メロディー重視の聴き方」ではなく「サウンド重視の聴き方」をすると、とくに海外ではサビのない音楽のほうが多いかもしれません。
しかし米津さんからアドバイスを受けた常田さんは、King Gnuでサビ重視の作詞・作曲を(する・しないも含め)非常に意識されています。
『Slumberland』『McDonald Romance』 ~昭和のニューミュージックぽい歌詞~
▲『Slumberland』MV
▲『McDonald Romance』MV
しかもサウンドは多種多様なのに、曲によっては昭和のニューミュージックっぽい歌詞すらあるほど。
1970年代から1980年代にかけて流行した日本のポピュラー音楽のジャンル。フォークソングにロックの要素が混じった、当時としては新しい音楽。吉田拓郎はニューミュージックの代表と称される。井上陽水、松任谷由実、さだまさし等もニューミュージックのミュージシャンとされる。
たとえば『Slumberland』は井上陽水さんの『傘がない』にヒントを得たそうです。初めて聴いてもどこかなじみ深い歌詞が「メロディー重視の聴き方」をする人にも響くポイント。
“Wake up people in Tokyo Daydream.”
Open your eyes, open eyes wide.
目を覚ませ、目を凝らせ
Rock’n’ roller sing only ‘bout love and life.
所詮ロックンローラーは愛と人生しか歌えないんだSlumberland/作詞:Daiki Tsuneta 作曲: Daiki Tsuneta
「愛と人生しか歌えない」という歌詞が深く心を貫く『Slumberland』。
King Gnuでは声質に合わせて
“愛について”を井口さん、
“人生について”を常田さん
がおもに歌うという分担になっています。
どちらにしても、常田さんはエモーショナル(叙情的)な要素を大切にされているそう。とくに常田さんは井上陽水さん、山下達郎さん、玉置浩二さんなど“色気”のある歌詞がお好みだとか。
King Gnuの『McDonald Romance』の歌詞から“色気”を感じます。
もう財布の底は
見えてしまったけど
それさえも
笑い合った
それさえも
恋だったMcDonald Romance/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
King Gnuの歌詞や歌、あるいは見た目も含めて「エロい、エモい」で済ましがちな方も見受けられます。
ただKing Gnuの曲は常田さんが“万人に刺さるJ-POP”を研究された果てにたどり着いた“色気”のある歌詞や歌だと考えると、受け取り方も深まるのではないでしょうか。
私自身がKing Gnuを聴いて「人生が変わった!」と大騒ぎしているのは、サウンドのおもしろさはもちろん、歌詞とサウンドの組み合わせの妙、そして歌詞そのものも大きく影響しています。
『白日』『あなたは蜃気楼』 ~人生を変える前向きな歌詞~
▲『白日』MV
▲『あなたは蜃気楼』MV
常田さんがご自身の経験やインプットをもとに、身近な方へのメッセージとして作詞されたとしても、聴く側はまるで自分に言われたかのように「そうだよね!」とダイレクトに反応するほどのインパクトがあります。
時には誰かを
知らず知らずのうちに
傷つけてしまったり
失ったりして初めて
犯した罪を知る白日/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
決して単純に明るいわけではなく、間違いを犯したり、お金がなかったり、フォークソングの四畳半世界のような日常的なネガティブさを踏まえたうえで「それでも生きよう!」「案外、幸せ!」といった超ポジティブな世界観が提示。この底抜けな前向きさに背中を押されます。
真っ新に生まれ変わって
人生一から始めようが
へばりついて離れない
地続きの今を歩いて行くんだ白日/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
とくに思春期にはネガティブな歌詞に共感する方も多いかもしれません。悩み多き年頃ですから。しかし切羽詰まった状態まで落ち込んだら、あとは浮かび上がるしかないのです。そして時間が経つと「どうしてあのときあんなに悩んでいたんだろう?」と昇華される案件も多いもの。
“あなたは蜃気楼”
心の内なんて
わかりゃしないって“あなたは蜃気楼”
後戻りなんて
もう無理だってあなたは蜃気楼/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
下世話なゴシップをバッサリ切り捨てるほど瞬発力のある常田さんの書く歌詞を耳にすると、悩みの解消にも時間はかかりません。結果、どんどん前向きに進むようになるので、人生が変わります。
少なくとも私がそうですし、この作用は私だけではないでしょう。
愛と人生についてしか歌えないロックンローラーが紡ぎ出す物語。
その“色気”は深い音楽愛・人間愛から生まれるもの。
King Gnuこそが「極上の音楽を幅広く伝えたい!」という愛の塊。
歌詞を重視した音楽の聴き方である「文系人間」の私が、何を捨て置いてもKing Gnuを推す最大のポイントは実はここです。
どんなに優れた音楽でも、歌詞の内容がネガティブだと現状維持、もしくは悪化の方向しかありません。
「とにかく前向きに生きる!」という圧倒的なパワーで輝くKing Gnu。シンプルなのに奥が深い、そんな歌詞の世界もご堪能ください。
以上、常田さんの文学性についてご紹介しました。
続いて常田さんの音楽性を見ていきましょう。
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はじめに
第1章 軌跡
第2章 常田大希
第3章 井口理
第4章 勢喜遊
第5章 新井和輝
著者:渡辺和歌
1970年生まれ。音楽を愛して40年。中学時代は『ベストヒットUSA』を欠かさずチェック。当時の洋楽ヒット曲をラジオから録音しお気に入りのカセットテープを作成。ビートルズのアルバムは全て揃え『イエロー・サブマリン』などのビートルズ映画上映会にも欠かさず参加。中森明菜さんのファンで歌詞を耳コピして書き起こしていた。中島みゆき、中森明菜、尾崎豊、サカナクション、大島保克、元ちとせにも傾倒。King Gnuを聴いて生き方が変わるほどの感銘を受ける。現在はラジオやテレビ出演、SNSやライブなどでチェックしKing Gnuを追いかけている。
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