安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

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「東映実録映画」とは「東映で製作された実話を元にしたヤクザ映画」です。事件の当事者の生々しい証言を反映し作られた作品は、現在では再現不可能と言えるでしょう。

東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!

はじめに

東映実録映画とは

第1章 東映実録映画の基礎知識

ヤクザ映画の歴史① 【東映実録映画の誕生】

ヤクザ映画の歴史② 【東映実録映画の終焉】

東映実録映画をより楽しむための予備知識

第2章 東映実録映画の題材になった事件

『仁義なき戦い』のモデルになった【広島抗争】解説

『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説

『沖縄やくざ戦争』のモデルになった【沖縄抗争】解説

『北陸代理戦争』のモデルに起きた【三国事件】解説

第3章 おすすめ実録映画7選

仁義なき戦い 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録・私設銀座警察 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

仁義の墓場 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

沖縄やくざ戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

日本の首領 三部作 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

北陸代理戦争 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】

第4章 実録映画の魅力的な俳優6選

菅原文太 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

松方弘樹 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

渡瀬恒彦 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

成田三樹夫 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

千葉真一 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

安藤昇 【実録映画(ヤクザ映画)の魅力的な俳優6選】

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから

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『東映実録映画入門』目次へ  (全21ページ)

 

実録映画(東映実録映画)は東映によって実話をベースに製作されたヤクザ映画のことです。

本章では圧倒的な存在感で実録映画を彩る偉大で魅力的な俳優6人について解説していきます。

それぞれのページでは実録映画における出演作品リストを付記しておりますので、お気に入りの俳優を見つけたという方は、そこから新たな作品を発掘していくのも面白いかもしれません。

このページでは、名優・安藤昇氏の魅力についてご紹介していきます。

 

▼実録映画の魅力的な俳優6選!それぞれのページで詳しく紹介!

①【菅原文太
②【松方弘樹
③【渡瀬恒彦
④【成田三樹夫
⑤【千葉真一
⑥【安藤昇

 

安藤昇とは

名前 安藤昇(あんどう のぼる)
生年月日 1926年5月24日(没年2015年12月16日)
出身地 東京府豊多摩郡(元・東京都新宿区6丁目)
多くのヤクザ映画の出演・主演を果たし人気を獲得した。左頬の傷跡はトレードマークと言える。500人以上の構成員が在籍した安藤組の元組長。安藤組は従来の暴力団とは異なる、背広を推奨するなどのファッショナブルなスタイルから若者から支持を獲得した。

 

安藤昇氏は1926年5月24日生まれの実業家・作家・俳優・歌手です。元ヤクザという異色の経歴の持ち主であり、しばしば自身の著書を原作とした映画に本人役で出演しています。

安藤がかつて率いていた安藤組は、愚連隊(=不良集団)上がりでありながら全盛期には500人以上の構成員を擁する大組織に膨れ上がっていました。

中には、作家の安部譲二氏や同じく作家の森田雅氏、素手喧嘩(ステゴロ)最強の呼び声高い伝説的なヤクザ・花形敬氏も所属していました。

花形敬氏は格闘漫画の金字塔「グラップラー刃牙」シリーズの人気キャラクター・花山薫のモデルとして知られており、また作家の安部譲二氏は著書「塀の中の懲りない面々」で獄中生活の様子を赤裸々に綴ってベストセラーを記録しました。

 

▼グラップラー刃牙の人気キャラクター・花山薫

▼安部譲二氏「塀の中の懲りない面々」(画像クリックで商品詳細へ)

魅力

本物のオーラ

 

私が安藤昇氏を初めて目にしたのは、映画「実録 私設銀座警察」でした。

▼「実録 私設銀座警察」(画像クリックで商品詳細へ)

 

劇中で安藤氏は住吉会系暴力団・大日本興業の創設者である高橋輝男氏をモデルにした役柄を演じていました。

その妙に据わった目つきに違和感をおぼえて調べてみたところ元安藤組々長という経歴の持ち主であることを知り、やはり「本物はオーラが違うんだなあ」と感心した記憶があります。

余談ですが、後に阪本順治監督「新・仁義なき戦い」で粟野組長の弟役を演じる大地義行氏(後に殺人罪で逮捕され、現在も服役中)の姿を目にしたときにも同じ感覚を味わいました。

 

▼「実録 私設銀座警察」予告編

 

本人役で出演「実録安藤組」

 

安藤昇氏の代表作が「実録安藤組」シリーズにおける本人役であることに異論のある方は少ないでしょう。

▼「やくざと抗争 実録安藤組」(画像クリックで商品詳細へ)

公開年度 作品名
1973年 やくざと抗争 実録安藤組
1973年 実録安藤組 襲撃編
1974年 安藤組外伝 人斬り舎弟
1976年 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録(シリーズ番外編)

 

東映は「仁義なき戦い」の主人公・広能昌三のモデルである美能幸三氏に続く人材として安藤氏に注目し、彼の半生を題材に数々の作品を製作・公開しました。

 

仁義なき戦い
「仁義なき戦い」は、美能幸三氏(=ヤクザ。広島抗争の中心人物の一人)が獄中(ろうやの中)で綴った手記をベースとなっている映画作品。

それまでのヤクザ映画というのは「時代劇の延長線上にあった任侠映画では侠客の生き様を美化して描くような作品」であった。それに対し「仁義なき戦い」では権謀術数の渦巻くヤクザの世界を社会の病巣として批判的に描くことで、ヤクザ映画の新境地を切り開いた。

 

実際の事件を題材にした実録路線の中でも、実在の人物を本人が演じているのは「実録安藤組」シリーズだけです。

正直なところ他の俳優陣と比較してしまうと演技力に難がないとは言い切れないのですが、安藤昇氏はそれを補っても余りある独特のオーラをもってシリーズ作品の主演という大役をしっかりとこなしています。

淡々と呟くような口調と自信に満ちた立ち居振る舞い、そして酷薄な印象を与える三白眼を武器に、安藤昇氏は唯一無二の俳優としての地位を確立しました。

▼「やくざと抗争 実録安藤組」プレビュー

 

安藤昇が携わる異色の作品

 

「実録安藤組」シリーズの番外編的な位置づけの「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」は、安藤氏の見に実際に起きた逃亡生活を愛人たちとの性生活に焦点を当てて描いた異色の実録作品です。

▼「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」(画像クリックで商品詳細へ)

 

シンプルな演出と淡々としたカメラワークによって、モキュメンタリー映画にも通ずる硬い質感に仕上がっています。

「モキュメンタリー映画」とは
映画やテレビ番組などで用いられるドキュメンタリー風の表現手法。実在しない人物や団体、虚構の事件に基づいて作品が制作される。ドキュメンターを模倣した手法ならではの、ニュース映像のような真面目さを「硬い質感に通ずるものを以上の作品から感じる。

随所で実際のニュースフィルムの映像を引用していることも実録映画として特筆すべきポイントです。

実録映画は実話に基づくリアリティが大きな特色のひとつなので、実際の映像を使用することはリアリティを演出する上で大きな効果があります。

ただ、実録映画の多くは当事者やその遺族への配慮のため、あえて虚飾を織り交ぜなければならないことも多く、実際の映像や新聞記事を引用することが難しいという事情があります。

そんな中、実際のニュース映像を引用している本作は実録映画において異例中の異例であると言えます。

 

また、続いて公開された「やくざ残酷秘録・片腕切断」では安藤氏自身が企画・構成・ナレーターを務めており、やくざ社会の内面を生々しくショッキングに描いています。

▼「やくざ残酷秘録・片腕切断」

「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」がモキュメンタリー映画であるならば、「やくざ残酷秘録・片腕切断」は典型的なモンド映画なので、実録映画ファンはもちろん、「ジャンク 死と惨劇」やグァルティエロ・ヤコペッティ監督の「残酷」シリーズに代表されるモンド映画マニアにもおすすめの一本です。

 

「モンド映画」とは
世界中の珍しい奇習、風俗、また事故、処刑の映像などを演出などをおりまぜて、構成して作られたドキュメンター映画のこと。グァルティエロ・ヤコペッティ監督はモンド映画というジャンルを築いた人物と言われている。 

 

安藤昇・出演実録映画一覧

 

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公開年 作品タイトル 役名
1972年 やくざと抗争 爆弾マッチ
1973年 やくざと抗争 実録安藤組 安藤昇
1973年 実録 私設銀座警察 矢頭昇
1973年 実録安藤組 襲撃編 安藤昇
1974年 三代目襲名 菅谷政雄
1974年 安藤組外伝 人斬り舎弟 安藤昇
1974年 新仁義なき戦い 海津卯之吉
1975年 仁義の墓場 野津喜三郎
1976年 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録 安藤昇
1976年 やくざ残酷秘録・片腕切断 ナレーター
1979年 総長の首 花森庄造

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おわりに

 

東映実録映画は一部のファンの間で熱狂的な人気を誇っているものの、筆者の世代(20代後半)における認知度は著しく低く、それどころかヤクザを主人公にした映画を鑑賞すること自体が不健全であるかのような風潮さえある始末です。

そのような流れが顕著になっているのか、現代ではヤクザの世界を描いた作品は劇場公開を前提としていないオリジナルビデオの低予算作品がほとんどであり、かつてのような大作映画が製作されることは少なくなってしまいました。

もはやロスト・テクノロジーと化してしまった感のある実録映画ですが、その面白さは数十年を経ても色褪せることはなく、むしろ時代の隔たりによってひときわ強い輝きさえ放っています。

このWebonを通じて、東映実録映画の魅力に触れていただければ幸いです。

 

 

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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」「エキゾチックアニマル」などのコンテンツ作成も手掛ける。
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