東映実録映画入門 ~実話を元にしたヤクザ映画~はこちらから!
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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『東映実録映画入門』目次へ (全21ページ)
実録映画(東映実録映画)は、東映(映画の会社)によって製作された実話をベースにしたヤクザ映画のことです。
この章では実録映画のおすすめ作品7選を紹介・解説いたします。
このページで紹介する作品は「仁義の墓場」です。
▼おすすめ実録映画7選!それぞれのページで詳しく紹介!
「仁義の墓場」とは
「仁義の墓場」は一貫してアウトローの生き様を描いた小説家・藤田五郎の同名小説を原作とする実録映画です。
▼原作「仁義の墓場」
本作では茨城県水戸市出身のヤクザ・石川力夫氏の半生が、「仁義なき戦い」シリーズに通ずる荒々しいドキュメントタッチで描かれています。
概要
公開 | 1975年2月15日 |
監督 | 深作欣二 |
脚本 | 鴨居達比古 |
出演 | 渡哲也、梅宮辰夫、田中邦衛、成田三樹夫、安藤昇、ハナ肇、室田日出男、山城新伍、曽根晴美、郷鍈治、多岐川裕美ほか |
▼予告編
作品解説
「ヤクザ映画の極北」と称される傑作
「仁義の墓場」は一貫してアウトローの生き様を描いた小説家・藤田五郎氏の同名小説を原作とする実録映画です。
本作では茨城県水戸市出身のヤクザ・石川力夫氏の半生が「仁義なき戦い」シリーズに通ずる荒々しいドキュメントタッチで描かれています。
主人公・石川力夫の厭世的(えんせいてき:人生を儚く捉える精神的な傾向)な破滅的な生き様は他の実録映画の登場人物と比べても比類がなく、実在の人物に基づいているとは俄に信じがたいほどです。
監督である深作欣二氏と石川力夫氏には同じ茨城県水戸市の出身であるという共通点があり、本作が「ヤクザ映画の極北」と称される傑作に仕上がったことと全くの無関係だとは考えられません。
※「極北」と称されているのは主人公が「厭世的な破滅的な生き様」であるがゆえに、明るい要素が一切ない冷めた作品であるため。
▼深作欣二氏
実家に住んでいた頃は、深作監督の作品を観てはメモリアルコーナーに通いつめ、当時の撮影風景に思いを馳せたものですが、筆者の他にメモリアルコーナー目当てに訪れているであろう人にはついぞ出会うことがありませんでした。
あくまでも筆者の体感なのですが、深作欣二監督映画「バトル・ロワイアル」の直撃世代であるにもかかわらず、深作監督が水戸市出身であることを知っている人は同世代にほとんどいなかったように思います。
そもそも「仁義の墓場」や「仁義なき戦い」シリーズに熱中するような中高生自体かなりの少数派なので、仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが、同郷の人間としてそこはかとない寂しさを感じたことを覚えています。
ヤクザ映画の金字塔
私は茨城県水戸市出身で、深作監督と石川力夫氏と同郷であります。それが故の思い入れの強さを抜きにしても、「仁義の墓場」が「仁義なき戦い」シリーズにも劣らないヤクザ映画の金字塔であることは疑う余地がありません。
公開した1975年に発表されたキネマ旬報オールタイム・ベスト100の日本映画篇では第38位にランクインしています。
「仁義なき戦い」が1973年版オールタイム・ベスト日本映画篇の第8位、さらに2009年版では第5位にランクインしていることと比べるとさすがに見劣りしてしまいます。
ただ「仁義の墓場」が「仁義なき戦い」よりもはるかに陰鬱でアンモラルで、観る者を選ぶような内容であり万人受けするような作品ではないことを考えると、ランクインすること自体が驚異的だと言えるでしょう。
石川氏へのインタビュー
「仁義の墓場」は石川氏を知る人たちへのインタビューから始まるのですが、これは演技ではなく実際の関係者に取材した様子を録音したものであり、また冒頭の台詞は深作監督自身の肉声です。
これはインタビューが水戸で取材した音声なので監督自身の水戸弁が混じっても問題ないだろうという深作監督の判断によるものであり、あくまで「仁義の墓場」に限った特例であると語っています。
関係者に取材した音声をそのまま使用するという演出は数ある実録映画でも他に例がなく、本作のリアリティを高めると同時に、視聴者を一気に劇中に引きずり込みます。
関係者らによって石川氏の少年時代が語られた後、テキ屋系組織の一員となった石川力夫氏の半生が描かれています。
クライマックス
凄まじい勢いで転落の一途をたどっていく様子は「壮絶」のひとことで、エンディングまで息をつく暇もない高い密度で物語が展開していきます。
深作監督の面目躍如たるロマンチシズム(=情緒・感傷を好み、現実離れした空想にひたる精神的傾向)溢れるクライマックスは実に美しく、どろどろとした情念の物語に潔く幕を引いています。
ちなみに、本作は三池崇史監督によって「新・仁義の墓場」(2002年公開)というタイトルでリメイクされており、リメイク版では渡哲也に代わって岸谷五朗が主人公を演じています。
▼リメイク版「新・仁義の墓場」写真中央にいるのが岸谷五朗氏
▼渡哲也氏
作品を観る方法
・AmazonPrimeVideo(ストリーミング)
・Hulu (2週間無料期間有り。月額933円税別で動画見放題)
・U-NEXT(31日間無料のお試し期間有り。月額利用料1990円税別で見放題)
・TSUTAYA TV (新規登録30日間0円。月額費933円税別で見放題)
・DVD
●新・仁義の墓場
・AmazonPrimeVideo(30日間無料体験有。月額400円(税込)で動画見放題)
・DVD
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はじめに
第1章 東映実録映画の基礎知識
第2章 東映実録映画の題材になった事件
『実録外伝 大阪電撃作戦』のモデルになった【明友会事件】解説
第3章 おすすめ実録映画7選
実録外伝 大阪電撃作戦 【おすすめ実録映画(ヤクザ映画)7選】
第4章 実録映画の魅力的な俳優6選
著者:國谷正明
北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。「ノワール文学」、「エキゾチックアニマル」、「昆虫」などのコンテンツ作成も手掛ける。お問い合わせはこちらから
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