『90年代J-popヒット曲入門』目次へ (全11ページ)
前ページに引き続き90年代J-POPヒット曲おすすめ20選【女性ボーカル編】をお伝えします。
目次
⑥ アジアの純真(PUFFY) ~90年代に吹き込んだ新しい風~
リリース年月 | 1996年5月13日 |
オリコン | 週間3位/1996年度年間15位 |
収録アルバム | 「amiyumi」 「The Very Best of Puffy/amiyumi jet fever」 「Hit&Fun」 |
キリンビバレッジ「天然育ち」CMソング。オリコンカラオケチャートで12週連続1位。発売から20年後の第67回NHK紅白歌合戦にこの楽曲で初登場した。 |
北京ベルリンダブリンリベリア
束になって輪になって
イランアフガン聴かせてバラライカ美人アリランガムランラザニア
マウスだって キーになって
気分イレブンアクセス試そうか引用:PUFFY「アジアの純真」作詞 井上陽水/作曲 奥田民生
小学校高学年の時に初めて「アジアの純真」を聴いたとき、正直言って「J-POPはここまで来てしまったか…」と少しがっかりとした気持ちになったことを覚えています。(生意気な子供ですね(笑))
美しい言葉が伝わるからこそ邦楽に魅力を感じていたので、これならばいっそ洋楽のほうが意味が解る…そんな風に思いました。
しかし。
クレジットを見て驚きました。井上陽水×奥田民生という、邦楽プロフェッショナルによるタッグとは。
井上陽水が作ったから、奥田民生が作ったから良い・悪いではない。
数多の名作を世に生み出してきた人たちも、常に変化をし続けている。
そこに感銘を受けました。
チャレンジャーがいなければ、エンターテイメントは変わらないのでしょう。
変わらないままを求めるのが人間でもあります。しかし変わらないままでは、いずれ出会うかもしれない宝物はいつまでも埋まったままです。
今でも、歌詞がわかるか、良いかと問われると答えが見つかりません。
しかし、この曲と出会ってから、私は音楽に対し柔軟に向き合えるようになった気がします。
意味があるとかないとか、伝わる伝わらないとかが大切なのではなく、いいものはいいしおもしろいものはおもしろい。その逆もまた然り。
白のパンダをどれでも全部並べて
ピュアなハートが世界を飾り付けそうに輝いている
愛する限り 輝いている
今 アクセス ラブ引用:PUFFY「アジアの純真」作詞 井上陽水/作曲 奥田民生
PUFFYはその後もオリジナリティを貫き、ヒット曲を多数発表しました。振付やファッションも面白いものであったし、90年代後半のやや混沌とした時代に確実に明るい風を吹き込んだ。
あらゆるソングライターが曲を提供したのも、うなずけます。
▼「アジアの純真」(期間限定無料聴き放題有)
⑦ 心を開いて(ZARD) ~ビーイングの代表的アーティスト・織田サウンド全開の曲~
リリース年月 | 1996年5月6日 |
オリコン | 週間1位/1996年度32位 |
収録アルバム | 「TODAY IS ANOTHER DAY」 「ZARD BEST The Single Collection 〜軌跡〜」 「Golden Best 〜15th Anniversary〜」 |
大塚製薬「ポカリスウェット」CMソング。初登場1位。累計売上枚数は約75万枚。 |
前章でお伝えした通り、90年代を語る上で外せないキーワードである「ビーイング系」。ZARDはビーイング系を代表するアーティストであり当時のヒットチャートの常連でした。
めったにメディアに姿を見せず、MVなどでちらりと映る美しい姿や貴重なテレビ出演はそのたびに大きな話題となり、そのミステリアスな魅力が人気に拍車をかけていました。
CM・アニメタイアップが多かったため、若者のみならず主婦層や子どもからも、幅広く愛されていたアーティストだと思います。
ZARDの名曲は多数あれど、私のナンバーワンは「心を開いて」です。坂井泉水作詞、織田哲郎作曲という名コンビによる作品。
私はあなたが思ってるような人ではないかもしれない
引用:ZARD「心を開いて」作詞 坂井泉水/作曲 織田哲郎
歌い出しから、あまり恋愛に器用ではなさそうな女性を感じます。
人と深く付き合うこと 私もそんなに得意じゃなかった
でもあなたを見ていると 私と似ていて もどかしい
そういうところが たまらなく好きなの引用:ZARD「心を開いて」作詞 坂井泉水/作曲 織田哲郎
「心を開いて」とは、相手に向かって伝えているのか、自分に向けているのか。
この2人はきっと似た者同士なので、そのどちらともいえるのでしょう。
恋愛や人付き合いに不器用で、一歩踏み出せないもの同士の恋。
織田哲郎の章でも触れた、織田サウンド全開の爽やかさが特徴的な曲です。
▼「心を開いて」シングルCD
⑧ NOW AND THEN~失われた時を求めて~(MY LITTLE LOVER) ~マイラバを聴くなら実はこれ!~
リリース年月 | 1996年10月28日 |
オリコン | 週間2位/1996年度年間69位 |
収録アルバム | 「PRESENTS」 「singles」 「Best Collection」 |
日本テレビ系ドラマ「ナチュラル 愛のゆくえ」オープニングテーマ。映画「メトロポリス」挿入歌。 |
90年代に多くの名曲をリリースしたMY LITTLE LOVER。
本来なら「DESTINY」や「ALICE」のほうが、タイアップもあり知名度は高いと思います。
ただ、私が個人的におすすめしたいのが「NOW AND THEN~失われた時を求めて~」です。
空の中で夢見た 無数の枝分かれと
自分の未来を見たような気がして 目が覚めた
引用:MY LITTLE LOVER「NOW AND THEN~失われた時を求めて~」作詞作曲 小林武史
自分らしく生きることなど 何の意味もないような朝焼け
引用:MY LITTLE LOVER「NOW AND THEN~失われた時を求めて~」作詞作曲 小林武史
誰もいない 朝の街に立ち構えてみる
短距離走者のように スタートライン心で描いてた
スポンサーリンク引用:MY LITTLE LOVER「NOW AND THEN~失われた時を求めて~」作詞作曲 小林武史
この曲には「朝」というワードが複数回登場します。
眠れずに朝を迎えて、空がだんだんと白み始める時間。
あるいはピンク色の朝焼け。
街が動き始める前の、冷たい澄んだ空気。
まるで世界に自分だけというような孤独と優越感。忘れていた、そういうものを思い出す曲です。
大人になってくると「朝」の尊さを少しずつ忘れてしまうような気がします。
むしろ憂鬱なものにさえなってくる。
若く、まだ何にでもなれるからこそ何をしていいか悩んだ日々。
ひと晩中抱え込んだまとまりのない鬱憤を、まっさらにするような澄んだ朝、見上げた空を思い出したいとき、ぜひおすすめしたい曲。
AKKOのオンリーワンの歌声が心にしみわたる名曲です。
▼「NOW AND THEN~失われた時を求めて~」(期間限定無料聴き放題有)
⑨ ひだまりの詩(Le Couple) ~ポケベル時代の手紙の歌~
リリース年月 | 1997年5月16日 |
オリコン | 1997年度年間3位/オリコン歴代シングルランキング76位 |
収録アルバム | 「Another Season -5番目の季節-」 「My Special Thanks」 「10年物語 〜All Singles of the decade and more〜」 |
フジテレビ系ドラマ「ひとつ屋根の下2」の挿入歌。自身初のオリコンチャート入り、初のミリオンセラー作品であり、代表作。第48回NHK紅白歌合戦に初登場を果たす。 |
会えなくなって どれ位経つのでしょう
出した手紙も 今朝ポストに舞い戻った引用:Le Couple「ひだまりの詩」作詞 水野幸代/作曲 日向敏文
現在に言い換えるなら「SNSがブロックされた」あるいは「送信できません」とメールが返ってきた、というところでしょうか。
「会えない」「音信不通」の虚しさや悲しさは変わらないのに、「手紙がポストに舞い戻る」というのは、なんだかもう絶望に近いくらいの虚無感があります。
きっともう、どうしようもない。
きっともう、二度と会うことは叶わないのでしょう。
感謝の言葉を伝えることさえ、きっと。引用:Le Couple「ひだまりの詩」作詞 水野幸代/作曲 日向敏文
この曲の発売当時はポケベルや携帯電話を持つ若者も増え、ほんのひとこと程度のショートメッセージが送れるようになったころ。
もはや「手紙」が主流の時代ではなかったのですが、あえて「手紙」を選ぶところにこの曲の良さ、そして切なさがつまっています。
いつの時代にも、まさに現在でも「手紙が届かない」悲しみは変わらないものだから。
それぞれ別々の人 好きになっても
あなた 愛してくれた すべて 包んでくれた まるで ひだまりでした引用:Le Couple「ひだまりの詩」作詞 水野幸代/作曲 日向敏文
たとえ恋が終わってしまったとしても、誰かが自分を愛してくれた、自分を選んでくれた、そういうあたたかな経験は、この先ずっと自分のなかに残り、自分を支えてくれるもの。
愛してくれた気持ちを「ひだまり」と表したこの曲は、素晴らしいものと思います。
▼「ひだまりの詩」(無料聴き放題期間有り)
⑩ Automatic(宇多田ヒカル) ~時代を分けた衝撃の曲~
リリース年月 | 1998年12月9日 |
オリコン | 1999年度年間5位/オリコン歴代シングルランキング19位 |
収録アルバム | 「First Love」 「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1」 |
オリコンカラオケチャートで13週間連続1位。COUNT DOWN TVの1999年年間TOP100で1位。フジテレビ系「笑う犬の生活-YARANEVA!!-」「笑う犬2008秋」のエンディングテーマ。 |
私にとっての邦楽は宇多田ヒカルの登場によって前後に分かれる、そう言っても過言ではないほど衝撃だった1曲です。
とはいえ当時の私にこの楽曲の何がわかるというわけではなく、覚えているのは連日TVで取り上げられていたこと。
「“七回目のベルで受話器を取った君”という歌詞が、彼女にかかれば“な・なかいめのベ・ルで受話器を取っ・た君”という歌い方になるんですよね」
「なるほど、新しいですねぇ~」
「“アクセスしてみると映るcomputer screenの中
チカチカしてる文字 手をあててみると I feel so warm”
分かりますか?これパソコンでのメールのやりとりのことなんだと思うんですよね」
「10代の女の子とは思えない表現ですよね」
「画面のぬくもりなのか、比喩を用いているのか…」
という具合に、中身があるようでないような「宇多田ヒカル論」が日々競うように語られていたのを覚えています。
「まだ10代の女の子」がなにやらスゴいことを成し遂げているというのは、私を含めあのころ10代だった人間にとってはやはり衝撃であったと思います。
シンガーソングライターやアーティストの低年齢化もそのころから進んだようにも思いますし、R&Bテイストの楽曲がこれまで以上に注目されるようにもなりました。
類まれな才能を持つ人を見ても「すごいなぁ」とまるで他人事だった少年少女にとって、ほぼ同世代の宇多田ヒカルの活躍は他人事ではなかったのかもしれません。
憧れはもちろん、少々の嫉妬もあったかもしれない。
でも宇多田ヒカルは、アーティストの世界が「若いから」とか「子どもだから」という理由で排除されるものではないこと、本物は認められるということを示しました。
それが、元々クリエイティブな人間になることを夢見ていた少年少女をたきつけ、若い才能が早くに花咲くきっかけにもなったように思います。
世間が、宇多田ヒカルの登場によって若い才能に柔軟になったともいえますが。
気付けば私も、当時の宇多田ヒカルのダブルスコアに差し掛かろうとしています。
あれほど大人びた歌詞は書けない、末恐ろしいなと、当時の大人たちの気持ちがようやく少し分かったような気がします。
▼「Automatic」(期間限定無料聴き放題有)
以上、90年代J-POPヒット曲おすすめ20選【女性ボーカル編】でした。
あらためて良い曲が多いなと気づかされました。
90年代J-POPとともに青春を過ごせたことをつくづく誇りに思います。
『90年代J-popヒット曲入門』目次へ (全11ページ)
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はじめに
第1章 ムーブメント
第2章 ヒットメーカー
第3章 ヒット曲20選
著者 シン アキコ
30代前半女性。邦楽ファン歴25年。70年代、80年代、90年代の邦楽を愛しています。「歌詞」「曲が生まれた背景」「当時の流行との関連性」などを分析することが好き。
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