『90年代J-popヒット曲入門』目次へ (全11ページ)
このWebonでは1990年代と当時のJ-POPシーンについて語ります。
このページでは筆者がなぜ1990年代J-POPが好きなのか、なぜ魅力的だと思うのか、どういった思い入れがあるかなどをお伝えいたします。
1990年代の主要な出来事一覧
年代 | 出来事 |
1990 | 『ちびまる子ちゃん』放送開始/スーパーファミコンがヒット/大学入試センター試験開始 |
1991 | バブル崩壊/「お立ち台」ディスコジュリアナ東京オープン/『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』等のトレンディドラマが全盛期 |
1992 | 日本人宇宙飛行士の毛利さんが宇宙へ/『美少女戦士セーラームーン』放送開始/学校週5日制スタート |
1993 | コギャルブーム/Jリーグ開幕/ポケベル普及 |
1994 | ドラマ『家なき子』アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送/プレイステーション発売 |
1995 | 阪神淡路大震災/地下鉄サリン事件/Windows95発売 |
1996 | アムラー/プリクラ登場/たまごっちブーム |
1997 | 消費税5%に引き上げ/映画『タイタニック』『もののけ姫』ヒット |
1998 | 長野オリンピック/お笑いコンビパイレーツの『だっちゅーの』が流行る |
1999 | iモードサービス/「2000年問題」が提起される/『だんご3兄弟』約290万枚の大ヒット |
▼宇宙飛行士の毛利さん
パブリックドメイン
▼たまごっち
By Tomasz Sienicki [user: tsca, mail: tomasz.sienicki at gmail.com] – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
はじめに
「あのころに戻りたい」そんなふうに思えるかけがえのない時間が、誰の心にもあるでしょう。
時折心を傾け懐かしむだけで「明日からまた頑張ろう!」と思える、いつも心の奥で自分を支えている「あのころ」。
今回語るのは筆者にとっての「あのころ」。
1990年代と当時のJ-POPシーンです。
筆者は1980年代後半生まれ。物心がつき思春期を迎えるまでの、人生で最も色濃く、単純に楽しかった時間、多感な時期を過ごしたのが90年代にあたります。
近年、90年代を彩ったアーティストたちがだんだんと姿を消していくのを見て、平成の終わりとともに自分の青春の終わりを感じています。
いつからでしょうか、ドラマやバラエティ番組を心待ちにしなくなり、CDも買わなくなってしまいました。自分自身も変わったくせに「時代が変わったのだな」と、世の中のせいにして勝手に寂しがっている日々です。
戻りたい。時々強くそう思います。
1990年代はどんな時代だったのか?
「1990年代とはどのような時代だったか?」当時を知る人はなんと答えるでしょうか。
良い時代であったかどうかは別として、間違いなく“アツイ”時代であったと私は思います。
現在より娯楽が少なかったことも要因のひとつですが、なんでもブームになった時代。ひとつのことに注ぐ熱量が、現代とは桁違いでした。
【1990年代のブームの例】
●インターネット文化の浸透:1992年に日本初のウェブサイト誕生。1997年にYahoo!Japanサービス開始
●Jリーグブーム:Jリーグは日本のプロサッカーリーグ。1993年に設立
●アムラー:1995年をピークに流行。歌手の安室奈美恵のファッションを模倣する若者が多く登場した。
●コギャルブーム:1996年頃から本格的にブーム。コギャルは、金髪にして肌を黒くする「ガングロ」というスタイルが特徴
▼1990年代登場したコギャル
By pepewk – https://www.flickr.com/photos/jennywebber/272217707/, CC 表示 2.0, Link
1990年代は「バブル経済の崩壊」「阪神淡路大震災」「松本サリン事件」「少年犯罪の増加」など、暗いニュースが多かった時代です。けれどもそれらに屈することなく、素晴らしいエンターテインメントが次から次へと誕生した、そういうエンタメ文化の「アツさ」を私は感じていました。
音楽面においては「GLAY EXPO(音楽史上最大動員数)」「宇多田ヒカルファーストアルバム「First Love」(歴代アルバム最大セールス)」など、数々の新記録が生まれました。
ミリオンセラーも他の年代に類を見ないほど連発した時代。肝心の音楽については、次の章からたっぷりと語らせていただきます。
1990年代は、始まりと終わりの時代でした。
元号が変わり、たった数年で90年代に突入。同時に世紀末という大きな節目、ひとつの終わりに向かって進むというどこか不思議な空気をまとっていました。
そもそも1999年には人類が滅亡するとも言われていたのだから、パッと咲いて消える花火のように、 いけいけどんどんの精神が誰の心にも少しくらいあったのかもしれません。
「1999年7月に人類が滅亡する」という「ノストラダムスの大予言」が広く流布していた。
だからでしょうか。
私よりいくらか年上の世代、この時代まさに青春を送った若者たちは、流行に非常に敏感であったし、楽しむ天才・楽しみを創り出す天才であったように思います。
変化する時代についていくばかりか、自分たちでブームを生み出していました。現に彼らは今もパワフルであり、パイオニアであり続けています。
◆バンドブームを彩った90年代デビューバンドが今も現役でいること
◆同じく90年代デビューのアイドルがいまも“アイドルとして”現役でいること
◆90年代デビューのアクターが今も“主演として”現役で活躍していること
当時では考えられなかったことであり、想像もしていなかった未来でした。
そして歌は世につれ世は歌につれ。
90年代のJ-POPシーンは実にアツイものでした。
「90年代感」といえば伝わる人もいるでしょう。いずれのヒット曲も、まごうことなき「90年代感」をまとっています。
聴いた瞬間、それこそイントロから「あの時代」に一気に引き戻されます。90年代のJ-POPが放つ引力はある意味「力技」です。
1990年代は終わったが音楽は生き続ける
90年代はとうに終わりました。
リスナーだった我々も、もう子どもでなければ若くもない。憧れた当時の彼らの年齢などはるか昔に追い越してしまいました。
それでも名曲たちは、一瞬で私を無垢な子どもに引き戻してくれる。多感な女の子にしてくれます。
街角でふいに90年代の曲に出会ったそのとき、思い出す情景や匂いもあれば、新しく生まれる感情もあります。
私たちは、生きている間にそれを何度も繰り返します。
曲と再会するたびに新しい側面が何通りも見えてきます。当時の想い出を多角的な方向から振り返ることができ、そのたび想い出が増えていく。
時代を超え、発売当初に産まれていなかった子どもが口ずさんでいたりします。
私たちが愛した名曲はそうして永遠に生きていく。
音楽は変わらない「核」を持ちながらも、変化してゆくものなのだとつくづく感じます。
なんとなく元気のない時代だからこそ、そして新しい時代のはじまりを迎える今だからこそ、1990年代のJ-POPが放つ“力技”のメッセージを伝えたいのです。
次の章からは実際のヒット曲を例に出し、その魅力やヒットの背景を独自に解説していきます。ぜひ改めて聴いていただきたいですし、ともに語り継いでもらいたいです。
当時を知らない世代には、色褪せない名曲たちが持つパワーが伝われば幸いです。
そして一番の願い。
読んでいただく皆様へ。ほんのひととき一緒に、あの時代へと戻りましょう。
『90年代J-popヒット曲入門』目次へ (全11ページ)
スポンサーリンク
はじめに
第1章 ムーブメント
第2章 ヒットメーカー
第3章 ヒット曲20選
著者 シン アキコ
30代前半女性。邦楽ファン歴25年。70年代、80年代、90年代の邦楽を愛しています。「歌詞」「曲が生まれた背景」「当時の流行との関連性」などを分析することが好き。
お問い合わせはこちらから