悪役俳優 | Webon（ウェボン）

名前	成田三樹夫（なりたみきお）
生年月日	1935年1月31日（没年1990年4月9日）
出身地	山形県酒田市
備考	個性的な脇役、悪役を数多く演じた。敵役として売り出され、1965年に公開された時代劇映画「座頭市地獄旅」でその地位を確立したと言われる。1979年のドラマ「探偵物語」では「工藤ちゃん」が口癖の服部刑事を演じ評判となる。

成田三樹夫は1935年1月31日生まれの俳優です。1990年に55歳という若さで亡くなっています。

前章でご紹介した渡瀬恒彦と同様に、実録映画において主演を務めることはありませんでしたが、端正な顔つきと鋭い眼光を活かしたクールな悪役を演じさせたら彼の右の出る者はなく、数々の作品で主役顔負けの存在感を見せつけました。

正直な話、筆者が「仁義なき戦い広島死闘篇」で初めて成田三樹夫の姿を目にしたときの第一印象は「変わった髪型だなあ。特に生え際」という程度の認識だったのですが、成田三樹夫の出演作を鑑賞するにつれてその存在感に目を惹かれるようになり、今では東映実録映画の常連俳優の中でもっとも好きな俳優です。

悪役俳優、成田三樹夫の魅力

主人公を食うほどの圧倒的な存在感

成田三樹夫氏は「仁義なき戦い」五部作で演じた松永弘を筆頭に、「日本暴力列島京阪神殺しの軍団」の松原哲男や、「新仁義なき戦い組長の首」の相原重彦など、成田三樹夫氏の演じる登場人物は知略を駆使して組織を支える「参謀タイプのキャラクター」が多く、直情的（感情的になりやすい）な人物が大半を占める実録映画の中でひときわ異彩を放っています。

「安藤組外伝人斬り舎弟」や「実録外伝大阪電撃作戦」といった作品では一転して武闘派のヤクザを演じています。

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その役柄の攻撃性と成田三樹夫氏特有のクールな佇まいが相俟って思わず身震いするほどの恐ろしい悪玉に仕上がっています。

特に「安藤組外伝人斬り舎弟」で演じた外島は出番も台詞もほとんどないチョイ役であるにもかかわらず、文字通り菅原文太氏演じる主人公を食うほどの凄まじい存在感で成田三樹夫氏が日本を代表する悪役俳優であることを確信させます。

▼「安藤組外伝人斬り舎弟」（予告編）

脚本の妙を視聴者にわかりやすく伝える演技力

個人的に「安藤組外伝人斬り舎弟」の外様に次いで印象的だったキャラクターが、「新仁義なき戦い組長の首」で演じた相原重彦です。

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関西有数の大組織・大和田組の若頭を務める相原は、組織の規律を乱す幹部を粛清（せいしゅく：不正な者を排除する事）し、自らより格下の幹部を次期組長候補に指名した現組長を謀殺するほどの極悪非道な男でした。

にも関わらず、「下がりボンボ（＝歴代のパートナーと例外なく死別している魔性の女）」と噂される情婦と同衾（どうきん：男女が同じ寝具で寝ること）する際には、噂を恐れて後ろからしか抱こうとしない気の小さい性格の持ち主でもあります。

結局は相原も他の男たちと同様に志半ばで死を遂げることになるのですが、どうして後ろから抱けば「下がりボンボ」の影響を受けないと思ったのか、疑問が残るところです。

▼「新仁義なき戦い組長の首」プレビュー

「噂は怖いがそれでも同衾したいがために後ろでしか抱かない」という相原の葛藤はどうしようもなく滑稽ですが、同時に人間の業、そして愚かしさが如実に表れているようで、徹底した悪人でありながらどこか憎めない、印象的な悪役に仕上がっています。

この多面性こそ、実録映画のオリジネーターのひとりである脚本家・笠原和夫氏の語る「人間喜劇」の体現であり、こうした脚本の妙を視聴者にわかりやすく伝達する成田三樹夫氏の演技は、実録映画を語る上で欠かすことのできない大きな功績のひとつであると言えるのではないでしょうか。

成田三樹夫出演・実録映画一覧

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公開年	作品タイトル	役名
1973年	仁義なき戦い広島死闘篇	松永弘
1973年	仁義なき戦い代理戦争	松永弘
1974年	安藤組外伝人斬り舎弟	外島
1975年	仁義の墓場	梶木昇
1975年	県警対組織暴力	川手勝美
1975年	日本暴力列島京阪神殺しの軍団	松原哲男
1975年	新仁義なき戦い組長の首	相原重彦
1976年	沖縄やくざ戦争	翁長信康
1976年	新仁義なき戦い組長最後の日	松岡光治
1976年	バカ政ホラ政トッパ政	田所英毅
1976年	やくざの墓場くちなしの花	野崎
1976年	実録外伝大阪電撃作戦	大東武司
1977年	やくざ戦争日本の首領	片岡誠治
1977年	日本の首領野望篇	片岡誠治
1977年	日本の仁義	川辺隆之
1979年	日本の黒幕	森島泰造