aikoの歌詞世界の魅力をファン歴20年の筆者が紹介!aikoに対して恋に恋する恋愛ソングばかりと感じているとすれば、それは誤解です。コアなファンにとってのaikoのキーワードである「哀愁」「渋み・エグみ」「普遍的な愛」に焦点を当てaikoの歌詞世界を解説!
『本当は深いaikoの歌詞 ~コアなファンが語る3つのキーワード~は』こちらから!
はじめに
実は誤解されているaikoのイメージ ~深遠な歌詞世界の魅力~
第1章 aikoという「存在」を理解する
第2章 aikoの歌詞世界を理解する3つのキーワード
第3章 今聴くべきaikoおすすめ作品
著者:MAKO
1980年代生まれ。aikoのファン歴20年。aikoの楽曲は全曲カラオケで歌うことができる(息継ぎまで再現できる)。子供の頃から母親の影響で60~70年代の邦楽・洋楽を聴いて育つ。中学3年の時aikoと椎名林檎の楽曲に出会い、青春を捧げる勢いでのめり込む。洋邦問わず、深みのある詞を書く、艶っぽい声のシンガーソングライターが大好き。今一番気になるアーティストは吉澤嘉代子。
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この章ではaikoのこれまでの軌跡を通してaikoが「誤解される理由」「20周年を越えてもなお愛される理由」をお伝えします。背景を知ることで、aikoの「歌詞」に切り込む意味を知っていただきたいと思います。
aikoの楽曲に対する「誤解」を増幅させている理由は、彼女がデビューしてからブレイクするまでの音楽界(特に女性シンガー界隈)の風潮が大きく関係していると感じております。
このページではaikoの一般的なイメージと深遠な歌詞世界とのギャップが生成されてきた過程を再確認していきましょう。
年表
▼このページで解説する出来事
年月 | 出来事 |
1995年5月 | 19歳の時にTEEN’S MUSIC FESTIVAL ’95「アイツを振り向かせる方法」でグランプリ受賞 |
1996年4月~ | FM大阪のラジオパーソナリティとして活躍 |
1997年12月 | インディーズアルバムリリース |
1998年7月 | メジャーデビュー |
1999年8月 | 3rdシングル「花火」 |
1999年11月 | 4thシングル「カブトムシ」 |
2000年2月 | 5thシングル「桜の時」 |
2000年9月 | 6thシングル「ボーイフレンド」 |
デビューまで
2019年6月に発売されたシングル集『aikoの詩。』のジャケットには、ピアノに向かう4歳頃のaikoの写真が使われています。
歌手になる夢はこんなに小さな時からすでに芽生えていたとのこと。
「どうしたら歌手になれるか?」と模索する中、aikoが「シンガーソングライター」という形にたどりついたのは、意外にも高校を卒業した後のことでした。
音楽短大へと進んだaikoは19歳の時、生まれて初めて出場した音楽コンテスト、「TEEN’S MUSIC FESTIVAL」でグランプリを受賞します。ステージで歌ったのは自身が初めて作詞作曲した曲。
のちにシングル「桜の時」にカップリング曲として収録される、「アイツを振り向かせる方法」(コンテスト時の表記は「アイツをふりむかせる方法」)でした。
底抜けに明るい曲ですが、かすかに憂いのある歌詞が印象的です。まさにaikoの原点であり、すでに「ラブソング職人」としての魅力的な要素が詰まっています。
その後FM大阪のラジオパーソナリティとして活躍するようになったaikoは、1997年にはインディーズアルバム『astral box』のリリースも果たします。そして1998年、ついにメジャーデビュー。この年は、音楽業界にとっても非常にメモリアルな1年でした。
1998年の特異性
1998年は、実は「日本でCDが最も売れた年」。80年代から90年代にかけて花開いたJ-POPの、ある意味ピークとも言える時期でした。
その1998年の特異性をさらに際立たせているのが、この年にデビューしたアーティストたちの顔ぶれの豪華さ。
特徴的なのはいわゆる「歌姫」と呼ばれる女性ソロアーティストが多いことです。しかも、それぞれに抜きんでたインパクトを持っています。
「圧倒的な歌唱力」のMISIA、
「女子高生のカリスマ」浜崎あゆみ、
「エロティックで尖った表現力」の椎名林檎、
「アメリカ育ちの15歳バイリンガル、しかも2世シンガー」の宇多田ヒカル。
デビューから20年以上を経た今もなお、それぞれに活動を続けています。
そしてaikoも、1998年デビューの歌姫の一人でした。
しかしaikoの一般的なイメージは、前述の歌姫たちが武器とする「強烈な個性」や「他の追随を許さない○○」といったカテゴリーとは少し異なるのではないでしょうか。
aikoの最大の武器は、いわば「等身大の魅力」。
強烈な個性を放つ歌姫たちの中で、aikoの持つ「普通さ」や「身近さ」、「親しみやすさ」といった要素が、逆説的に「強烈な個性」として彼女の人気を不動のものにしたと言えます。
親しみやすさについての「誤解」
1999年発売の3rdシングル「花火」をきっかけにメディアへの出演が増えはじめ、「カブトムシ」「桜の時」とヒットが続きます。
▼aiko「花火」
2000年発売の「ボーイフレンド」はオリコン週間チャートで最高位2位を記録し、この年紅白歌合戦への初出場も果たしました。
▼aiko「ボーイフレンド」
こうして「ボーイフレンド」はaikoの楽曲をあまり聞いたことがない人々へも広まり、「明るいラブソングを歌う元気な女の子」としてのイメージが定着していきます。
小柄でかわいらしいルックス、関西人ならではのトークセンス、「ボーイフレンド」をはじめとするわかりやすいラブソング、その全てが「親しみやすさ」へとつながっていきます。
確かに「親しみやすさ」はaikoの大きな魅力の一つであり、個性であると言えます。しかしその大衆イメージによって、aikoの楽曲の魅力さえも「親しみやすさ」という枠の中に閉じ込められてしまったところがあります。
同期デビューのシンガーソングライターである椎名林檎や宇多田ヒカルの楽曲は、デビュー当時からその芸術性や奥深さがしばしばメディアで取り上げられてきました。
aikoも全くないわけではありませんが、そのような文脈で語られる機会は比較的少ないのが事実です。
こうした違いには、アーティストがブレイクする過程で定着してしまった「イメージ」というものが少なからず影響しているでしょう。
たとえばaikoの代名詞のようになっている「ボーイフレンド」ですが、実はこの曲はaikoの数ある楽曲の中でも群を抜いて明るく、歌詞の上でも「陽」の部分が全面に出ている、どちらかというと少数派の異色作です。
aikoの歌詞世界は「陰」と「陽」の絶妙なバランスが魅力であり、aikoの「陰」の表現はまさに「隠し味」として作品における重要な役割を果たしています。
※aikoの歌詞世界については第2章(現在第1章)にて解説いたします。
「明るさ」ももちろんaikoの魅力ですが、その「明るさ」の魅力を際立たせ根底から支えているのは、あまり表には出てこない、彼女の持つ「陰」の表現なのです。
「かわいい」「明るく元気」「共感しやすい」といったaikoの楽曲に対する「陽」のイメージは、大勢の人に受け入れられる「親しみやすさ」を育てました。
しかしそれと同時に、楽曲の奥深さに気付かせる機会を奪っている可能性があります。
ブレイクした時期が違えば、彼女が担うイメージや役割はもしかすると今とは少し違ったものになり、こういった「誤解」は生じなかったかもしれません。
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はじめに
実は誤解されているaikoのイメージ ~深遠な歌詞世界の魅力~
第1章 aikoという「存在」を理解する
第2章 aikoの歌詞世界を理解する3つのキーワード
第3章 今聴くべきaikoおすすめ作品
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1980年代生まれ。aikoのファン歴20年。aikoの楽曲は全曲カラオケで歌うことができる(息継ぎまで再現できる)。子供の頃から母親の影響で60~70年代の邦楽・洋楽を聴いて育つ。中学3年の時aikoと椎名林檎の楽曲に出会い、青春を捧げる勢いでのめり込む。洋邦問わず、深みのある詞を書く、艶っぽい声のシンガーソングライターが大好き。今一番気になるアーティストは吉澤嘉代子。
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