おすすめノワールコミック(まんが)傑作5選

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ノワール文学(小説)を知っている方も知らない方も。「ノワール文学とは」から「おすすめノワール作品」までをご紹介。読めばノワール作品に興味が出る事間違い無し。

國谷正明氏による『ノワール文学(ノワール小説)入門』はこちらから

著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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『ノワール文学入門』目次へ  (全16ページ)

 

 

第4章では小説以外で見る事ができるノワール作品について紹介しています。

このページでは、ノワール文学の影響を色濃く表した「グラフィック・ノヴェル/漫画作品」をご紹介していきます。

 

グラフィック・ノヴェル
グラフィック・ノヴェルとは多くの場合、ストーリーが長く複雑で本の厚みがある形式のアメリカン・コミックを指す。

 

1 ウォッチメン(アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ)

タイトル(原題) ウォッチメン(Watchmen)
著者 アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ(Alan Moore, Dave Gibbons)
発表年 1986年~
著者出身国 イギリス

 

本作「ウォッチメン」は、優れたSF作品に贈られるヒューゴー賞や、アメリカで最も権威ある漫画賞であるアイズナー賞を受賞した、アメリカン・コミックを代表する作品のひとつです。

冷戦下のアメリカを舞台に「ヒーローが実在したらどうなるか」というSFを描いており、ヒーローたちの力でベトナム戦争にアメリカが勝利していたり、ウォーターゲート事件がもみ消されているなど、歴史の改変を大きな主題として扱っています。

 

ウォーターゲート事件
1972年にニクソン大統領の再選を目指したアメリカ共和党の大統領再選委員会が、ワシントンDCにあるウォーターゲートビル内の民主党本部に盗聴器をしかけようとした事件。

 

本作の主人公であるロールシャッハ(中折れ帽にトレンチコートを着こみ、目的のためなら拷問や殺人も厭わないキャラクター)が古典的なハードボイルド小説のパロディともいうべき造形である点や、

冷戦下の不安が通奏低音(つうそうていおん:表面には現れないが継続的に影響を与えているという意味)的に全編を暗く覆っている点など、スーパーヒーローを題材としていながらも、きわめてノワール的な作品であるといえます。

 

▼ロールシャッハ

 

また本作は、フランスを代表するノワール作家のひとり、ジャン=パトリック・マンシェット(Jean-Patrick Manchette)によってフランス語に翻訳されました。

 

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2 シン・シティ(フランク・ミラー)

タイトル(原題) シン・シティ(Sin City)
著者 フランク・ミラー(Frank Miller)
発表年 1991年~
著者出身国 アメリカ

 

本作「シン・シティ」は、「ウォッチメン」と並ぶアメリカン・コミックの金字塔「バットマン:ダークナイト・リターンズ(Batman: The Dark Knight Returns)」の作者フランク・ミラーによるノワール・コミックです。

 

▼バットマン:ダークナイト・リターンズ(コミック)

 

ベイスン・シティという腐敗した街を舞台に、己の信念に殉じる男たちの生きざまを描いた群像劇で、豪華なカラーリングが施されることの多いアメリカン・コミックには珍しく、全編のほとんどが白黒の荒々しい筆致で描かれています。

一つ前で紹介した「ウォッチメン」同様、映画化されており、原画の質感を忠実に再現した映像美は、原作ファンの間でも高く評価されています。

 

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3 ヒットマン(ガース・エニス、ジョン・マクレア)

タイトル(原題) ヒットマン(Hitman)
著者 ガース・エニス、ジョン・マクレア(Garth Ennis, John McCrea)
発表年 1996年~
著者出身国 イギリス

 

本作「ヒットマン」は、バットマンシリーズで知られる架空の犯罪都市「ゴッサム・シティ」を舞台にしたアメリカン・コミックです。

バットマンやスーパーマン、グリーン・ランタンといったDCコミックス(アメリカの漫画の出版社)のキャラクターが顔を出すなど、先ほど紹介した「シン・シティ」と比較して荒唐無稽なストーリーが多く、アメコミに馴染みの薄い方には少々とっつきにくいかもしれません。

一方で、凄腕の殺し屋やマフィアとの抗争を描いた、血と硝煙(しょうえん)の匂いが立ちこめる純度の高いハードボイルドなエピソードもあり、ノワールファンなら読んで損はない作品です。

本作「ヒットマン」の著者、ガース・エニスからの「ウォッチメン」に対する回答ともいうべき問題作「ザ・ボーイズ(The Boys)」も併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

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4 ジョーカー(ブライアン・アザレロ、リー・ベルメホ)

タイトル(原題) ジョーカー(Joker)
著者 ブライアン・アザレロ、リー・ベルメホ(Brian Azzarello, Lee Bermejo)
発表年 2011年(日本語訳初版)
著者出身国 アメリカ

▼ジョーカー

 

本作「ジョーカー」は、バットマンシリーズのヴィラン(「悪役」の総称のようなもの)、ジョーカーに憧れる街のちんぴら「ジョニー・フロスト」の視点から、悪逆の限りを尽くすジョーカーの姿を描いたノワール・コミックです。

ワニ肌の怪物キラー・クロックを黒人ギャングのボスとして描くなど、バットマンファンにはお馴染みのヴィランを現実的に置き換える工夫がなされており、シリーズに馴染みのない方でも充分に楽しめる作品となっています。

 

▼キラー・クロック

 

犯罪者の視点からバットマンを描くことで、彼の異常性を浮き彫りにすることにも成功しており、バットマンファンなら絶対に見逃せない一冊です。

また、本作「ジョーカー」の著者であるブライアン・アザレロは、影響を受けた作家として、ジム・トンプスン(Jim Thompson)とデイヴィッド・グーディス(David Goodis)の名を挙げています。

 

ジム・トンプスンについては第3章で紹介!(現在第4章) ジム・トンプスンについては第3章で紹介!(現在第4章)

 

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5 高3限定(梶本レイカ)

タイトル 高3限定(こうさんげんてい)
著者 梶本レイカ(かじもと れいか)
発表年 2012年
著者出身国 日本

 

本作「高3限定」は、とある男子校を舞台に教師と生徒の恋愛を描いたBL作品です――

と言うと拒絶反応を起こされる方も少なくないかもしれませんが、本作で描かれている凄惨な暴力と人間の底知れない心の闇は、名作と評されるノワール作品の数々と比較しても、なんら劣ることはありません。

作者は他にも、現在連載中(2018年時点)のサイコ・サスペンス「悪魔を憐れむ歌」や、

▼悪魔を憐れむ歌

アメリカを舞台に混血の警察官とギャングの愛憎劇を描いた「ミ・ディアブロ」、

▼ミ・ディアブロ

実際に起きた北海道警察の汚職事件をモチーフに刑事とヤクザの転落を描いた「コオリオニ

▼コオリオニ

など、ノワール要素の色濃い漫画作品を発表していますので、併せて読んでいただくことをおすすめします。

 

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次のページでは音楽の一ジャンルである「ブラックメタル」に潜んでいるノワールについて紹介します。

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著者:國谷正明

北関東在住の1児のパパ。フリーランスのライターとして、ゲームのシナリオや小説の執筆、記事作成を中心に活動しています。趣味は作曲と爬虫類飼育。好きな作曲家はエリック・サティ。好きな映画監督は深作欣二。好きなアニメはスポンジボブ。好きな学問は民俗学。苦手な調味料はマヨネーズ。敬愛する作家はジム・トンプスン。いいにおいのする文章を書こうと日々苦心しています。お問い合わせはこちらから
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