落語には「噺の終わりにオチがある、おもしろおかしい落語」滑稽噺と「心温まるような人情を描いた落語」である人情噺というジャンルに分けることができます。
滑稽噺の中でおすすめなのが「粗忽長屋」です。
このページでは「粗忽長屋」のあらすじや、どの落語家の「粗忽長屋」がおすすめかなどを徹底解説いたします。
※このページは10年前に落語にはまって以来ほぼ毎日落語を聴いているミドケン氏による『落語初心者入門』の内容をWebon編集部がまとめたものです。
▼『落語初心者入門』(全23ページ)
あらすじ
同じ長屋に住む、八五郎と熊五郎は兄弟のように仲がいい。
ある日、日課である浅草の観音様詣に来た八五郎はその帰りに道端の人だかりに気づく。人だかりに聞くところ、行き倒れだという。
死体を確認した八五郎は「こいつは今朝会った熊五郎だ」と言う。
しかし役人は「こいつは昨晩からここにいるから、お前が言ってるのとは別人だ」と説明するが、熊五郎は「当人は死んでるのを忘れてんだよ、当人をここへ連れて来るよ」などと言い残し、急いで長屋へ戻った。
八五郎から話を聞いた熊五郎は「そんなはずはない」と反論するが「お前は粗忽者(そそっかしい人)だから自分が死んだことに気づいてないんだ」などと言われ、納得してしまう。
自分の死体を引き取るために、熊五郎は八五郎と一緒に浅草観音へ向かうのだが・・・。
–ネタバレ–
死体を確認した後、死体が自分であると熊五郎は納得してしまう。
死骸を2人で持ち上げようとすると役人に、「(死骸は)お前さんじゃないんだから」と諭される。
「いいから遠慮するな、自分の死骸なんだから」と遠慮せずに死骸を抱いてしまうことを促す八五郎。
すると熊五郎が
「でも兄貴、なんだかわからなくなっちゃった。抱かれているのはたしかにおれだけれど、抱いてるおれは、一体どこのだれなんだろう」
と言う。
–ネタバレ終わり–
みどころ
「当人が自分の死体を引き取りに行く」という、あまりに不思議な噺ですが、八五郎と熊五郎のすっとぼけたやりとりが最高に面白い落語です。
粗忽者(そこつもの)とは「そそっかしい人」のことで、落語には「粗忽の〇〇」という演目がたくさんあります。
その粗忽シリーズの中でも個人的に一番好きなのが「粗忽長屋」です。
ぜひこの不思議でバカバカしい世界観を味わってください。
⚫粗忽の釘
上方落語では「宿替え」として演じられる。江戸落語では「粗忽の釘」。そそっかしい男が引っ越しを行い、トラブルを起こす噺。
⚫粗忽の使者
原話は1701年に出版された「軽口百登瓢箪」に収録された話。「尻ひねり」とも呼ばれる演目。粗忽者の侍が使者として偉い人の屋敷に出向きトラブルを巻き起こす。
おすすめの落語家
名前 | 五代目 柳家小さん(ごだいめ やなぎや こさん) |
本名 | 小林 盛夫(こばやし もりお) |
生年月日 | 1915年(大正4年)1月2日/没年2002年 |
柳家小さんさんの「粗忽長屋」はおすすめです。
柳家小さんさんは昭和を代表する落語名人の1人であり落語会初の人間国宝。
小さんさんは小学生の頃から始めた剣道の道を、生涯にわたって追求してきた人です。「北辰一刀流(ほくしん いっとうりゅう)」という流派の免許皆伝であり、範士七段(はんし ななだん)の位まで上り詰めた達人でもあります。
そんな小さんさんは剣道を通じて「噺の間」を学んだといっています。
「落語はお客さんに「ウケようウケよう」と思って演じると、かえって客からそれてしまう。そこで慌てて笑いをたたみかけるとさらに客は逃げる。
それは剣道も同じで「打とう打とう」と思って前に出ると打たれてしまう。逆に「さあ、どこでも打ちなさい」という気持ちで行くと、案外打たれないし、いい技も出てくる。」
というようなことをいっています。
小さんさんの落語を聴いていると「笑わせてやろう」という気負いがまったく感じられず、「力が抜けた自然体でそこに座っている」といった感じです。
だからこそ絶妙に面白い「すっとぼけた感」が登場人物に反映されているのだと思います。
その剣道に相通ずる「間」を味わうなら、小さんさんの十八番のひとつである「粗忽長屋(そこつながや)」をおすすめします。
荒唐無稽(こうとうむけい)な噺なので、お客さんに「バカバカしい」と思わせたらダメという難しい噺ですが、”八つぁん”と”熊さん”という2人のそこつ者(=そそっかしい人)を絶妙の会話の間で演じ分け、お客さんの笑いの波に乗ってトントンと噺を運んでいるところが実に見事です。
▼子さんさんの「粗忽長屋」収録CD:昭和の名人‾古典落語名演集 五代目柳家小さん 十三
粗忽長屋を聴く方法
「粗忽長屋」を聴くには、以上でおすすめしたCDを購入して聴く方法もありますが、音声の配信サービスを利用するという方法もあります。
以下では「粗忽長屋」が聴けるサービスを紹介いたします。
audible
audibleでは「粗忽長屋」を聴くことができます。
audibleはベストセラー小説からビジネス書、英字新聞まで、20以上の豊富なジャンルを音声で聴ける定額制サービスで、落語作品も数多く収録しています。人間国宝・五代目柳家小さん(やなぎや こさん)さんも収録。名だたるレジェンドたちの演目が手軽に聴けます。
▼audible公式サイト(プロナレーターの朗読配信サービス。無料お試し有)
Spotify
Spotifyでも「粗忽長屋」を聴くことができます。
Spotifyは音楽ストリーミング配信サービスですが、落語のコンテンツも充実しているのでおすすめです。
立川志らく(たてかわ しらく)、春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)、三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)、など、今をときめく落語家のラインナップが豊富なのが特徴です。
Spotifi公式サイト (音楽ストリーミングサービス。無料。(有料版有))
以上「粗忽長屋」の紹介でした。その他落語の定番演目についてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。
また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。
▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)
さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。
▼『落語初心者入門』(全23ページ)