落語の演目(お話)は上演回数の少ない珍しい古典落語を含めると、およそ500種類ほどと考えられています。
そんな落語の演目には何度も登場するお決まりのキャラクターというものが存在ます。中でも「与太郎」は落語の中で最も代表的な登場人物です。
「与太郎」のキャラクターの魅力を知れば、より落語が楽しめるでしょう。
※このページは落語作家なかむら治彦氏による『読んで楽しい落語の演目と知識』の内容をWebon編集部がまとめたものです。
▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)
目次
与太郎とは
落語の世界から生まれた最も有名なキャラクターといえば、与太郎です。
与太郎はちょっとおバカであまり物事は考えない性格ながら、たまに鋭い指摘をして周囲の者を驚かせるという、子供がそのまま成人したようなキャラです。
落語の設定では、世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まることが多めです。
与太郎は代表的な落語の登場人物。間抜けでマイペースな性格をしている。一人称は「あたい」で現在でいうとニートのような存在で語られる事が多い。噺によっては女房がいることもある。落語には、口を半開きの状態でゆっくりとしゃべると間抜けな感じに聴こえるという技術があり「与太郎口調」と呼ばれる。
与太郎の魅力
与太郎というキャラは江戸の昔から「おバカ」として落語界全体が作り上げた共有財産です。
落語の中ではヘンなことを言ったりヘンな行動をしたりする「愚か者」という業務上の役割が任されていますが、数百年の時代を経て、人格が少し変貌していったのではないか、と思います。
親戚のおじさんをちょっと大人びたシニカルな視線で評したり、いきなり核心をついたりするのは、長い落語の歴史の中で、きっと与太郎に愛着を持った落語家さんが「こんなことを与太郎に言わせたい」とか考えて、ストーリーに盛り込んだのだと思います。
今の落語ファンの方々の中には、
「与太郎って有名人に例えたら〇〇かな?」
というキャスティング遊びをなさる方がおられます。落語のキャラクターにより親しんでもらう、わかりやすく想像してもらうには、最適の遊びでしょう。
与太郎が登場する落語演目12選
以下では与太郎が登場する演目を
「親戚のおじさんが与太郎にお仕事を紹介しうる場面から始まる演目」
「与太郎が主役・準主役として活躍する演目」
「脇役やちょい役で登場する演目」
の3つのジャンルに分けて紹介いたします。
親戚のおじさんが与太郎にお仕事を紹介しうる場面から始まる演目
まずは世話焼きな親戚のおじさんが与太郎に仕事を紹介する場面から始まる演目を4つご紹介します。
1.かぼちゃ屋
~あらすじ~
20歳になってもろくに仕事もしない与太郎。面倒を見てくれているおじさんが見かねて与太郎にかぼちゃを売りに行かせる。元値を教え、そこに「上を見て売れ(売値をいくらか足して売れ)」と言われた与太郎であったが「上を見て売れ」の意味が分からず・・・
~概要~
人情噺『唐茄子屋政談』はまったく別の話。(「唐茄子」はかぼちゃの異称)
展開のわかりやすいシンプルな構成で、与太郎の性格が最もわかりやすい落語です。おじさんとのやりとりの中で口にする与太郎のへらず口が素敵です。
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2.道具屋
~あらすじ~
20歳になっても働かない与太郎を見かねたおじさんが道具屋をやってみないかとすすめる。しかし何をやらせても上手くいかない与太郎はとことんお客さんに逃げられてしまう・・・
~概要~
小咄(短編話)を集めたオムニバス形式の話。その為寄席などでは途中で切り上げる事も多い。
これもシンプルですが、笑えるポイントの数ではこれがトップ。露天の古道具屋が舞台なのでいろいろな品物が出てきて、その品物の数だけ笑いがあります。
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3.孝行糖
4.厄払い
与太郎が主役・準主役として活躍する演目
この項目では、以上の演目以外で与太郎が主役・準主役として活躍する落語演目を3つご紹介します。
父親が与太郎に「おじさんの家に出掛けて新築の家をほめて小遣いをもらって来い」とすすめる『牛ほめ(うしほめ)』。
与太郎は『大工調べ』の大工のように最初から仕事に就いていたり、『錦の袈裟(にしきのけさ)』のように所帯持ちだったりすることもあります。
5.牛ほめ
6.大工調べ
7.錦の袈裟
~あらすじ~
隣町に住んでいる仲の悪い若者たちが遊廓(ゆうがく)で大きく遊び「こんな真似は隣町のやつらにはできない」と言っていた、と町の若い衆が聞いてくる。そこで町の若い衆たちは質屋で10枚の錦(にしき:高価な布)を買い、それでふんどしを作って遊廓で遊んで隣町のやつらを見返そう、という話になるが11人で行くことになるので与太郎の分の錦が足りなくなる。そこで与太郎は和尚に錦の袈裟(けさ)を借りに行くが・・・
~概要~
戦時中には性的描写のある演目とされ、国により禁止されていた。別題に『金襴の袈裟(きんらんのけさ)』『錦の下帯(にしきのしたおび)』『ちん輪(ちんわ)』。
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与太郎が脇役・ちょい役で登場する演目
今挙げた7つの演目はすべて与太郎が主役・準主役として活躍する落語ですが、脇役やチョイ役で登場する『長屋の花見』『寄合酒』『芋俵(いもだわら)』『佃祭(つくだまつり)』などもあります。
8.長屋の花見
9.寄合酒
10.芋俵
11.佃祭
以上「与太郎」の紹介でした。与太郎以外の落語に登場するキャラクターについてさらに詳しく知りたい方は下記のページをご覧くださいませ。
また『読んで楽しい落語の演目と知識』では落語の演目の中から、あなたの好みにピッタリと合った落語演目をご紹介いたします。
▼『読んで楽しい落語の演目と知識』(全10ページ)
さらに「落語のマクラって何?」「どこで落語は観れるの?」など基礎から落語を学びたい方は『落語初心者入門』をぜひご覧くださいませ。
▼『落語初心者入門』(全23ページ)