三代目 桂米朝 【おすすめ落語名人9選】

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落語は誰が聴いてもわかりやすく面白い芸能です。落語の基本的な知識や初心者におすすめの演目の紹介、実際に落語を楽しむ方法などを通じて落語(特に古典)の魅力についてお伝えします。

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著者:ミドケン

落語が大好きなフリーライター。10年程前に落語にはまって以来、ほぼ毎日落語を聴いている。お問い合わせはこちらから

 

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この第4章では9ページにわたって落語名人を紹介しております。

このページでは1時間を超えるスケールの大きな噺の「地獄八景亡者戯」を得意とする「三代目 桂米朝」を紹介します。

 

▼おすすめ落語名人9選!それぞれのページで詳しく紹介!

 

三代目 桂米朝とは

名前 三代目 桂米朝(さんだいめ かつらべいちょう)
本名 中川 清(なかがわ きよし)
生年月日 1925年11月6日/没年2015年
弟子 ・月亭可朝(コミックソングがレコード化され大ヒット)
2代目 桂枝雀(上方落語を代表する噺家として活躍)
・2代目 桂ざこば(毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー)
第二次世界大戦後滅びかけていた上方落語の復興に尽力した「上方落語四天王」の1人に数えられる。1987年紫綬褒章を受賞、1996年には人間国宝に認定され、2009年に演芸会初の文化勲章受章する。テレビやラジオにも多数出演し、お茶の間でも人気を博した。

 

経歴

 

1925年(大正14年)関東州(現・中国)大連市に生まれた米朝さん。

 

 

1930年(昭和5年:5歳になる年)父親の実家がある兵庫県姫路市に一家で戻ります。

寄席好きだった父親の影響により、子供の頃から寄席に通ったり『落語全集』を読んだりと、かなりの落語少年だったといいます。

 

1943年(18歳の年)中学校を卒業後、上京して大東文化学院に入学。在学中に、寄席研究家で作家の正岡容(まさおか いるる)に弟子入りします。

1945年(20歳の年)、招集されて入隊しますが、急性肝臓炎にかかり入院。陸軍病院のベッドで終戦を向かえます。

終戦後、神戸市にある雑貨の卸会社の会社員となり、姫路から大阪に通いながら、落語会を主催するなどの活動を行います。

1947年(22歳の年)、プロの落語家になりたいとの思いが抑えきれなくなり、会社勤めをしながら四代目 桂米團治(かつら よねだんじ)に弟子入り。以後「三代目 桂米朝」を名乗ります。

 

▼四代目 桂米團治

 

昔は15~16歳で弟子入りするのが一般的だったので、このとき22歳であった米朝さんは、少し遅い弟子入りだったといえます。

兵庫の姫路の家から神戸の会社に通い、大阪で落語家修業の日々を送る米朝さんでしたが、気力は充実していても体力が続かなくなり、会社を辞めて大阪の師匠宅に内弟子(うちでし:住み込みの弟子)として住み込むことになります。

低迷しきっていた上方落語の復興を願い、若手時代から落語会や落語勉強会を主催するなど、力を尽くします。

1957年(32歳の年)、若手が中心となって「上方落語協会」を結成。米朝さんは副会長に就任。寄席のみならずタレントとしても人気となり、テレビやラジオの司会でも大活躍します。

 

▼桂米朝出演番組の例:「ハイ!土曜日です」1967年から桂米朝が司会を務める。40年続いたワイドショー番組。


photo by 松嶌徹  CC 表示-継承 4.0

 

1996年(71歳の年)、上方落語界では初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。また、2009年(84歳の年)には、演芸界初の文化勲章受章者となります。

 

文化勲章とは
芸術、科学などの分野において文化の発展に著しく功績のあるものに授与される日本の勲章。賞は直接天皇から授与される。

 

2015年、肺炎のため89歳で死去。

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桂米朝の十八番

『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』

 

米朝さんの得意演目の代表ともいえるのが「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」です。

この噺は、ほとんどやり手がいなかったものを米朝さんが発掘し、再構成したもので、通しでやると1時間を超える大作です。

途中でお囃子(=楽器による演奏)が入るのが特徴で、江戸落語では「地獄めぐり」と呼ばれています。

 

江戸落語
落語は「江戸落語」「上方落語」の2つに分けることができる。江戸落語は江戸発祥の落語であり、上方落語は上方(関西)発祥の落語である。両者は同じ演目でもタイトルが異なる場合がある。詳しくは第1章で解説(現在、第4章)。

 

「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」は全編に時事ネタを絡めたギャグが盛り込まれるスケールの大きな爆笑噺です。「1時間を越えるスケールの大きな噺」であるため力量が試される噺でもありますが、米朝さんはこの時事ネタが抜群に面白いのです。

特徴的なのは、特定の時事ネタをやるのではなく上演するその日にあった出来事を新聞などで調べ、ギャグとして噺の中にどんどん取り入れていくこと。

そのため、米朝さんの「地獄八景」は「1つとして同じものがない」とも言われています。

晩年の米朝さんは体力的な問題もあり、口座では落語をやらずに雑談だけをやるようになりましたが、これは「米朝噺」と呼ばれ、大いにお客さんを楽しませました。

そんな巧みな話術とギャグセンスに溢れた米朝さんの、ギャグ満載の地獄八景は、桂米朝という落語家を楽しむうえで絶対に外せない一席です。

 

▼桂米朝氏の「地獄八景」が鑑賞できる作品

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『一文笛』

 

「一文笛(いちもんぶえ)」は米朝さんの十八番であり、自身で作った新作落語でもあります。

 

新作落語とは
落語の演目は「古典落語」「新作落語」の2種類がある。新作落語は大正時代以降に作られた落語のこと。古典に比べてわかりやすく爆笑しやすいのが特徴。両者の違いは第1章で詳しく解説。

 

古い落語を掘り起こして復活させることが自分の役割だと思っていた米朝さんが「1つくらい自分でも作ってみたい」と思い、1955年(昭和30年)30歳のときに完成させたのがこの噺です。

古くからあった演目のように思われていますが、「後世に残る新しい古典落語」として、今日では東京の落語家でも演じる人がいる名作でもあります。

「一文笛」は、スリ師を主人公とした噺で、ストーリー性があるような大ネタではありませんが、巧な会話や見事などんでん返しに思わず唸ってしまう落語です。

落語作家としての桂米朝の凄さを味わえる一席です。

 

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次のページでは「上方落語の爆笑王」である「二代目 桂枝雀(かつら しじゃく)」を紹介します。

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